リース・レンタル業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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リース・レンタル業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。景気動向に比例して需要が停滞するリース・レンタル業界では、M&Aを通じた業界再編が加速しています。

本記事では、そうしたリース・レンタル業界の市場動向を解説するとともに、リース・レンタル業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

リース・レンタル業界の概要・市場動向

リース・レンタル業界とは

リース・レンタル業界とは、企業などに設備・機械を貸し出す業界をいいます。

リース・レンタル事業者は、企業が必要とする設備・機械・ソフトウェアなどを購入して一定期間貸出し、その期間中に定額料金を受け取ります。

リースとレンタルは貸出期間によって区別されます。リースでは年単位で長期間貸し出されるのに対して、レンタルの貸出期間は数日や数か月などの短期間です。リースは中途解約する場合残りのリース料を支払わなけれなならない一方、レンタルで長期間借りるとコストが高くなるため、利用側は使用用途や試用期間に応じて選択する必要があります。

リースには、「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」があります。「ファイナンス・リース」とは、リース契約に要する費用(設備や物件の取得価格・資金コスト・保険料など)のほぼ全額を支払うものをいいます。さらに、所有権移転ファイナンス・リースと、所有権移転外リースに分類できます。

「オペレーティンググ・リース」はファイナンス・リース以外のリースを指し、ファイナンス・リースよりも契約期間が短期な点が特徴です。

リース・レンタル業界の市場動向

経済動向に依存する不安定な市場環境

リース・レンタル業界の市場は、民間企業の設備投資などの景気動向に依存しています。

バブル期にあたる1986年から1991年までにリース取扱高は2倍拡大し、過去最高の8.8兆円まで達しました。バブル崩壊後は7兆円台で推移していましたが、リーマンショックを契機として取扱高は大きく減少し、以降5兆円台で横ばいで推移しています。民間企業の設備投資額に占めるリースの割合も2002年の8.44%をピークに、2020年には5.06%まで低下しています。(参照:公益社団法人リース事業協会「リース統計(2020年度)」)

相次ぐ経済ショックに対応して引き下げられた金利もリース・レンタル需要減少の要因です。金利が低下した環境下では、企業の借り入れによる設備投資・購入を加速させるためリースの利用機会が失われました。

業界全体では需要低下傾向が見られる一方、一部分野では需要が増加しています。企業向けの建機レンタル業界では震災による復興需要や東京オリンピックに向けた建設需要を背景に、直近10年間で倍近くまで拡大しました。

いずれの場合もリース・レンタル市場は、経済動向に依存していると言えます。

会計基準に市場動向が依存

2019年から国際会計基準において、オペレーティング・リースを含むすべてのリース取引をオンバランス処理することになりました。

以前まで費用として計上していたリース対象を資産として計上しなければならなくなったことで、会計上のリースの利点が失われてしまいました。

日本の会計基準も国際会計基準の動向に合わせて改訂されることが一般的です。会計基準の改定が行われた場合はリースのオフバランス処理が制限、もしくは撤廃されるため、リース・レンタル事業者は会計基準に注視する必要があります。

サブスクリプション型サービスの台頭

近年ではリース・レンタル事業の競合としてサブスクリプション型サービスが拡大しています。

サブスクリプションとは、使用する分だけサービスとして提供を受けて利用する形態であり、モノの所有に立脚したサービスであるリース・レンタルの利用機会を奪う形態と言えます。

特にサブスクリプションの拡大が顕著な分野はソフトウェア分野です。クラウド上のサブスクリプション型ソフトウェアは、オーダーメイドのシステムやパッケージ販売のソフトウェアをサーバ上で運用するよりも低いコストで導入でき、必要とする設備や機器のスリム化も可能です。

リース取扱高を機種別でみるとソフトウェアは全体の7.2%にとどまります。(参照:公益社団法人リース事業協会「リース統計(2020年度)」)しかし、他分野でもサブスクリプション型サービスが拡大した場合、リース・レンタル市場の縮小が加速すると予想されます。

リース・レンタル業界のM&A動向

リース・レンタル業では需要の拡大が期待できないため、M&Aによる業界再編が加速しています。

リース・レンタル事業には安定した収益確保が課題であり、収益を確保しつつリース資産残高を増加させる必要があります。そこで、グループ内に独自の事業基盤を有しているメーカー系・企業系リース会社とのM&Aが頻繁に見られます。

また、金融機関への売却により総合的な金融ソリューションの提供を実現する事例も増加しています。

国内リース・レンタル需要の停滞を踏まえて、リース・レンタル需要の拡大余地がある開発途上国への進出も盛んです。海外では特定の分野に特化したリース会社が一般的であるため、国内総合リース会社が現地企業を買収する動きも活発化しています。

リース・レンタル業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

リース・レンタル業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手の持つ安定した事業基盤を活用できる
  • 買い手に顧客に新たにアプローチすることができる
  • 買い手のリース・レンタル用資産を活用することができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

リース・レンタル業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の有するリース残高を増加できる
  • 売り手の有するリース・レンタル用資産を活用できる
  • 新規参入の場合、リース・レンタル事業のノウハウや資産を獲得できる
  • 売り手が海外販路を持つ場合、海外進出の足掛かりにできる
  • 納入後のサポートやメンテナンスなどの付帯サービスを拡張できる
  • 売り手の有する顧客層にリーチできるようになる

リース・レンタル業界のM&A・売却・買収事例

東京センチュリーによる十八総合リースのM&A

総合リース・レンタル、海外進出支援、IT・IoTソリューションなどの事業を手掛ける東京センチュリーは、長崎県を中心に十八親和銀行の取引先にリース・割賦販売などを提供する十八総合リースの一部株式を取得し、資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:リース・レンタル関連業務での協業

三菱HCキャピタルによるCAIのM&A

総合リース・レンタル、資産・機器の有効活用、環境・エネルギーソリューションなどを手掛ける三菱HCキャピタルは、米国を拠点に海上コンテナリース事業を手掛けるCAIの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:1,219億円
  • 目的:海上コンテナリース事業の競争力強化

芙蓉総合リースによるWorkVisionのM&A

総合リース・割賦販売、金銭貸付その他金融業務などを手掛ける芙蓉総合リースは、SaaS型システムソフトウェアの開発・販売・運用やクラウド基盤構築サービスなどを手掛けるWorkVisionの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:BPO・PCライフサイクルマネジメント事業の強化

JA三井リースの日本包装リースのM&A

総合リース・割賦販売、農林水産事業者向けリース・資金サポート、スタートアップ企業向けエクイティ・ファイナンス、再生可能エネルギー事業参入支援などを手掛けるJA三井リースは、包装機械や関連機器のリース、割賦販売を手掛ける日本包装リースの株式55.6%を取得しました。

  • 実行時期:2021年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:包装機械・食品機械分野での専門性向上

東京センチュリーによる日通商事のM&A

総合リース・レンタル、海外進出支援、IT・IoTソリューションなどを手掛ける東京センチュリーは、物流関連商品や石油・LPガスの販売・リース、保険代理店、車両建設機械整備・トレーラ製作、架装・コンテナ製作、ロジスティクス・サポート(輸出梱包、国際調達)、不動産賃貸などを手掛ける日通商事が設立した日通リース&ファイナンスの株式49%を取得しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:吸収分割・株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:リース事業の効率化

芙蓉総合リースによる大和リースのM&A

総合リース・割賦販売、金銭貸付その他の金融業務などを手掛ける芙蓉総合リースは、運送事業者に対するトラックリース、中古トラックマッチングアプリによるトラック流通サポートサービスなどを手掛ける大和リースの株式60%を取得しました。

  • 実行時期:2020年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:33億円
  • 目的:サービスラインナップの拡大

昭和リースによる神鋼リースのM&A

新生銀行グループの一員としてグループの総合力を活かした金融ソリューションを提供する昭和リースは、神戸製鋼所グループの建設機械製造・販売会社コベルコ建機との連携により、建設機械を中心とした動産のリース・賃貸・売買・割賦販売・保守管理などを手掛ける神鋼リースの株式80%を取得しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:金融ソリューションの拡充

おわりに

本記事のまとめ

リース・レンタル業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

リース・レンタル市場は停滞する景気や低金利により今後の需要拡大が大きく見込めない状況にあります。また、サブスクリプション型サービスの台頭や会計基準の改定に伴って激しい競争にさらされています。

こうした市場環境を踏まえて、今後は業界内での再編や新たな需要を求めた海外進出を目的としたM&Aが加速すると予想されます。

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