製薬会社・医薬品業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

製薬会社・医薬品業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。製薬会社・医薬品業界では近年大手企業同士のM&Aも盛んに行われており、業界再編が進んでいます。
本記事では、そうした製薬会社・医薬品業界の市場動向を解説するとともに、製薬会社・医薬品業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
製薬会社・医薬品業界の概要・市場動向
製薬会社・医薬品業界とは
製薬会社・医薬品業界とは、医薬品を開発し、生産・販売を手掛ける会社を指します。
医薬品は医師の処方箋が必要で、病院や薬局で処方される「医療用医薬品」と、処方箋が不要でドラッグストアや薬局で販売される「一般医薬品」の2つに分けられます。
医薬品業界の新薬開発はハイリスク・ハイリターンと言われ、1つの薬の開発に9~17年、数百億以上の投資がなされることもあります。また有効性や安全性を確かめる段階で期待したような効果が得られず、開発が中断されるケースもあります。
一方、ジェネリック医薬品は特許期間が終了した後に他社が製造・販売できるため、先発医薬品に比べ開発コストがかからず、医療費削減が期待されています。


製薬会社・医薬品業界の市場動向
薬価改定による市場成長の鈍化
厚生労働省「薬事工業生産動態統計年報」によると2019年の日本の医薬品支持上規模は約9.5兆円で、前年度比27.3%増でした。
高齢化の影響により、医薬品の需要が伸びていましたが、国は医療費の増大を止めるため、薬価引き下げの政策を行っています。
日本では医療保険に適用できる医薬品の品目と価格は国によって定められており、2020年度までは薬価改定が2年に1度行われていましたが、2021年度以降は毎年行われることになり、医療費の抑制が推進されると見られています。
その結果、近年では市場規模の拡大は鈍化しており、今後は縮小する懸念もあります。
ジェネリック医薬品の普及
近年医薬品業界ではジェネリック医薬品の使用が広がっています。
理由としては医療費削減のため、政府がジェネリック医薬品を推奨しているためです。政府は全国でジェネリック医薬品の数量シェア80%を目標にしていましたが、2021年9月に79%まで到達しています。
今後は2023年までに全ての都道府県で80%以上を目標に掲げています。
一方、ジェネリック医薬品は新薬と成分が同様でも添加物や製造過程に違いがあるため、十分な効果が得られなかったり予期せぬ副作用が起こる可能性があり、品質の徹底管理が求められています。
海外進出と競争の激化
日本の薬価改定により、医薬品市場の縮小を懸念し、海外進出を進める企業が増えています。2018年時点では多くの国内大手製薬メーカーの売上の約50%が海外売上になっています。
医薬品業界で国際的な激しい競争が進んでおり、国内のメーカーも自社の注力分野から外れる分野を他社に譲渡したり、専門分野を譲り受けるなど「選択と集中」による業界再編が行われています。
また、業界内での生き残りをかけて、最先端技術をもつ海外の医薬品メーカーとの提携や、有望な創薬ベンチャーのM&Aも活発です。
製薬会社・医薬品業界のM&A動向
医薬品業界では「選択と集中」が進んでおり、自社の注力分野以外は他者に譲渡したり、逆に自社の強みとなる分野を他社から譲り受けるM&Aが多く見られます。
また、他社との差別化を図る上で新薬開発が重要視されていますが、開発には非常に高いハードルがあります。
新薬開発が成功する確率は約3割と言われており、かなりリスクが高いと言えます。また、ジェネリック医薬品の台頭により薬の低価格化が起き、医薬品メーカーの収益が下がったことで、新薬開発にますますコストをかけにくくなっています。
したがって、M&Aにより他社の人材や設備を獲得し、コストを抑制しようとする事例が見られます。近年は国内の市場縮小を懸念し、海外進出のために海外企業のM&Aを実施するケースも増えています。
製薬会社・医薬品業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
製薬会社・医薬品業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手企業の資本力を生かして研究開発が実施できる
- 創業者利益の獲得によって新たな事業を始められる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
製薬会社・医薬品業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の抱える優秀な研究員を獲得することができる
- 売り手の技術力や研究開発ノウハウを獲得できる
- 新規に業界参入する時間とコストを削減できる
- 必要な設備投資にかかる時間とコストを削減できる

製薬会社・医薬品業界のM&A・売却・買収事例
科研製薬によるARTham TherapeuticsのM&A
製薬会社である科研製薬は、バイオベンチャーであるARThamを子会社化しました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:5,500百万円
- 目的:シナジーの獲得と開発能力の向上

大塚製薬によるVISTERRA INC.のM&A
製薬会社である大塚製薬は、アメリカのバイオベンチャー企業であるVisterra Inc.を子会社化しました。
- 実行時期:2018年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新薬の開発と抗体医薬のパイプラインの獲得
ロート薬品と三洋化成工業の資本業務提携
製薬会社であるロート薬品と、化学メーカーである三洋化成工業は資本業務提携を結びました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大と企業価値の向上
メディパルホールディングスと日医工の資本業務提携
医薬品卸を手掛けるメディパルHDは、後発医薬品メーカーの最大手である日医工と資本業務提携を結びました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:新たな流通モデルの創出


小林製薬による梅丹本舗のM&A
医薬品や医薬部外品を手掛ける小林製薬は、梅肉エキスを使用した健康食品の製造・販売を手掛ける梅丹本舗を子会社化しました。
- 実行時期:2019年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ヘルスケア領域の強化
ジーエヌアイグループによるBAB社のM&A
創薬会社であるジーエヌアイグループは、中国を拠点に製薬事業を手掛けるBAB社を子会社化しました。
- 実行時期:2020年12月
- スキーム:合併、株式交換
- 取引価額:非公開
- 目的:グローバルマーケティングの強化


ファーマフーズによる明治薬品のM&A
機能性製品の開発・販売を手掛けるファーマフーズは、製薬会社の明治薬品を子会社化しました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:両社の経営資源の統合による収益拡大
おわりに
本記事のまとめ
製薬会社・医薬品業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
医薬品業界は国が主導する医療費削減の動きにより、今後厳しい状況に置かれると考えられます。特にジェネリック医薬品など、安価で高品質な医薬品が台頭し、新薬開発への資金調達が難しくなっています。
新薬開発のコスト削減のため、M&Aによって優秀な人材・設備の獲得を図る製薬会社が増えています。また国内の市場縮小を危惧し、海外での収益獲得を狙った海外企業とのM&Aも盛んに行われています。
こうした製薬会社・医薬品業界のM&Aによる業界再編は、今後ますます進んでいくと考えられています。

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