中小企業の事業承継M&Aを成功させるポイント

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かつては大企業中心であったM&Aですが、中小企業においても珍しいものではなくなり、近年は増加傾向にあります。コロナ禍による一時的な停滞はあったものの、業種を跨いだM&A事例も増え、後継者のいない中小企業の事業承継問題を背景に今後はますます増えていくものと考えられます。

中小企業庁が実施した企業調査によると、M&Aを「良い手段だと思う」と回答した企業の割合は4割を占めるようになり、多くの企業にとって有効な手段として受け入れられ始めています。

本記事では、M&Aを検討中の経営者に向け、中小企業のM&Aの仕組みや流れを解説します。中小企業庁の発表した「中小M&Aガイドライン」の内容も取り上げながら解説します。

目次

中小企業のM&Aの現状

中小企業の定義

中小企業の定義は、中小企業基本法第2条第1項に定められています。各業種における資本金の額または出資の総額と、常時使用する従業員の人数によって以下のとおり定められています。

業種資金額・出資金総額従業員数
製造業・その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
小売業5千万円以下50人以下
サービス業5千万円以下100人以下

中小企業の中でも、小規模企業として扱われるためには、製造業その他場合は従業員数は20人以下、卸売業、小売業、サービス業の場合は従業員数5人以下であることが必要になります。

この定義は、一部の例外を除いて中小企業基本法を始めとした中小企業に関連した基本政策に適用される原則となっています。

中小企業M&Aの動向と予測

株式会社レコフデータが1985年から日本企業のM&Aに関して実施した統計データによると、2019年のM&Aは約4,000件を記録しており、20年前と比較して6倍にまで増えています。

2006年から2011年頃はリーマンショックや東日本大震災の影響もあり1,600件ほどまで減少したものの、そこから再び上昇基調となり、2013年には2,000件超、2017年には3,000件超となり現在に至っています。

直近は新型コロナウイルスの蔓延による影響でM&Aをはじめとした積極的な投資が見送られ、M&Aの成立件数は減少しました。一方で、コロナ禍によって活況を呈しているEC事業やネット広告事業といった業種においては、すでにM&Aによるビジネス拡大の動きも確認され始めており、今後の経済活動の回復に伴って他業界においても再び増加がみられると予想されます。

中小企業M&Aガイドラインについて

中小企業庁は2020年3月に「中小M&Aガイドライン」という文書を公開しています。これは、中小企業に向けて第三者への事業引き継ぎを円滑に進めるための各種方法や進め方をガイドラインとして示したものです。中小企業のM&Aをサポートする業者、支援機関などに向けてのガイドラインも示されています。

中小M&Aガイドラインは2部構成になっており、第1章は売り手である中小企業向けの手引きになっています。M&Aの事例や従業員・取引先への基本姿勢、M&A成立までの流れなどが具体的に解説されています。

第2章は中小企業のM&Aをサポートする業者、支援機関向けの内容になっています。依頼者の利益を最大化する役割や基本姿勢、M&A専門業者が取るべき行動指針などがガイドラインとして示されています。M&Aに関わる業者が網羅されているため、どのような専門家を選定するべきかについての資料としても活用できます。

中小企業におけるM&Aの目的

後継者問題を解決したい

近年、オーナー経営者の保有する株式を承継できる後継者がいないことにより、廃業・解散を選択する中堅・中小企業が増加しています。

中小企業にとって後継者不在といった問題の解決は、事業承継のための大きな課題となっています。

後継者不足で廃業・解散した場合、経営者個人だけの問題ではなく、働いている従業員も職を失うことになるため、このような背景から、後継者不在の課題解決を目的として、第三者へ事業を承継するためにM&Aという選択肢を選択する中小企業が増えています。

事業の更なる成長を目指したい

M&Aを活用し、買い手・売り手両社の営業基盤や技術・ノウハウを融合することで、これまで単独では為し得なかった非連続的な成長機会を獲得することが可能になります。

例えば、買い手側企業の規模が非常に大きな場合、大企業のネームバリューやさまざまなノウハウを得ることで、経営基盤を安定させたり資金援助による規模拡大が目指せます。

このように、単独では実現が難しい飛躍的な成長を実現するための手段としても、M&Aはよく活用されています。

廃業・清算を回避したい

会社の廃業・清算を回避する目的でもM&Aが活用されることがあります。

会社の業績不振による事業停滞が続く中で、廃業ではなく再建を目指したい場合や、事業に将来性があり清算したくないという背景からM&Aを選択するケースがよくみられる例です。

こうしたときにM&Aでは、業績が悪化している部門をだけを事業として切り離したり、他社に譲渡する形をとって企業の再建を試みることが可能です。

引退後の生活資金を確保したい

経営者としての立場を引退した後の生活資金を確保する目的でM&Aを実施する場合もあります。

売り手となるオーナー経営者は、自身の保有する会社の株式を譲渡すると、多くの場合は売却益を得ることが可能です。獲得した売却益は、引退後の生活費や新たな事業の創業資金などにも充てることができます。

株式を譲渡する以外の方法では廃業も挙げられますが、会社の資産が低い価格でしか売却できなかったり、従業員への退職金を支払ったりするケースもある点が問題です。また、株式譲渡益とは税制が異なることもあり、廃業するよりも株式譲渡のほうが手取りの受取額が多くなる傾向にあります。

個人保証を解除したい

中小企業では、多くの場合会社の借入に対して経営者が個人保証を付けていますが、M&Aでは会社の財産移転に伴って多くの場合こうした個人保証が外れるため、経営者やその家族にとっては安心することができます。

こうした会社借入の個人保証を解除する目的でM&Aを検討するケースも多くあります。

中小企業M&Aを円滑に進めるポイント

M&Aという選択肢の妥当性を検討する

M&Aを検討する前に、まずは事業承継の全体像を理解する事がポイントとなります。

M&Aは事業承継方法の一つにすぎません。事業承継には、親族への承継、親族以外の社内役員などへの承継、M&Aによる第三者への承継といった大きく3つの手段があります。

そもそも、M&Aによる事業承継が最も良い手段なのかということを改めて考え、M&Aありきで進めるのではなく、他の選択肢と比較検討してからどの選択肢が最適解か判断することが非常に重要です。

そのためには、そういった目的で今回M&Aを検討するのか、他の手段とのメリット・デメリットはどういった点かといったことを、専門家の意見も求めながら丁寧に整理していくことが求められます。

利害関係者との調整を適切に進める

M&Aを進めるにあたり、株主、取引先、役員や従業員、金融機関といった自社の利害関係者を適切に把握し、事前にどのように調整を行っていくかを検討することが重要です。

特に、株主については直接の利害が絡むため、M&Aを進める前から、どのように了解を得るかについて慎重に対策を講じていく必要があります。

例えば、持分比率の高い株主が反対すれば、M&Aそのものが成立し得ないということも起こり得るため、誰が、どれだけの持分比率を保有しているかを適切に把握し、M&Aに反対しそうな人はいるかをしっかり見極めておくことがポイントになります。

株式価値を適切に把握する

自社の株式がいくらで売れるのか、ということは、M&Aを検討する際に非常に重要なポイントとなる一方で、多くのオーナー経営者にとって自社の株式価値の適正額は把握がしづらいものになっています。

こうした自社の適正価格について、M&A専門家に算定を依頼するなどして、目安の金額を知っておくことは重要なポイントと言えます。

専門家の協力を得る

中小企業M&Aを成功させる最大のポイントは、交渉を円滑に進めることです。

中小企業M&Aの場合、交渉が長引きM&A自体が破談になってしまうケースが少なくありません。相手先が多く見つかるようであれば問題はありませんが、中小企業M&Aでは条件に合う相手先を見つけにくいのが現状です。

現在ではM&Aのマッチングサイトなどもでてきており、個人でも相手先を探して交渉を進められますが、M&Aには専門的な知識・見解や交渉力が必要となるため、中小企業のM&Aに強い専門家の協力を得ながら交渉を円滑に進めることが重要です。

おわりに

本記事のまとめ

中小企業がM&Aを行う主な目的は、以下のとおりです。

  • 後継者問題を解決したい
  • 事業の更なる成長を目指したい
  • 廃業・清算を回避したい
  • 引退後の生活資金を確保したい
  • 個人保証を解除したい

中小企業がM&Aを成功させるためには、経営者が自ら情報を収集し、知識を深めることに加えて、知識・実績があり、かつ信頼できるM&Aの専門家と適切な戦略のもとで交渉を進めることが肝要です。

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