管工事業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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管工事業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。管工事業界は人手不足・後継者問題といった課題が深刻で、課題解決のためにM&Aが行われています。

本記事では、そうした管工事業界の市場動向を解説するとともに、管工事業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

管工事業界の概要・市場動向

管工事業界とは

管工事業界とは、空調や給排水、冷暖房、ガスなどの設備や、管を使ってガス・水・油・水蒸気などを通すための設備を設置するための工事を請け負う業界を指します。

管工事業界は大きく「元請け・下請け」「自己建設」の2つに分けられます。

「元請け・下請け」とは工事依頼者が総合建設業者であるゼネコンに工事を発注し、ゼネコンが管工事業者に工事を発注する構造を指します。管工事業者の大半はこの下請け企業に当たります。

「自己建設」とは工事依頼者から受注を受け、工事の計画立案から工程管理、品質管理を一社で請け負う企業を指します。自己建設には安定したサービスを提供できる、全工程におけるノウハウを蓄積できるといったメリットがあります。

管工事業界の市場動向

需要の回復と多重下請け構造

国土交通省「設備工事に係る受注高調査(主要20社)」によると、2022年の4月~9月の管工事受注高は8,975億円で前年比24.5%増でした。特に民間からの受注が伸びており、8,419億円で前年比32.2%増でした。

業界全体の需要は拡大していますが、多重下請け構造の動きは加速しています。

建設業界には大手ゼネコンが工事依頼者から受注し、下請けに発注、さらにその下請けに発注するという多重下請け構造があります。

この構造は管工事業界にもあり、実際に工事を行う下請け企業の取り分が非常に少なくなることが問題視されています。

高齢化と慢性的な人手不足

管工事業界全体で、職人の高齢化が急速に進んでいます。

原因として教育体制が十分に整っていない企業も多く、若手の育成が間に合わないため、若手への橋渡しが上手くいっていないケースが考えられます。

日本全体で少子高齢化が進んでいるだけでなく、建築業界は業務内容がきついイメージがあり、若手のなり手が少ないことも原因です。

ベテランの職人が引退し、若手の職人も不足しているため、結果として慢性的な人手不足が生じています。

人手不足が原因で廃業に追い込まれる事業者も少なくありません。人手不足の問題は管工事業界の最重要課題の一つと言えます。

深刻な後継者問題

管工事業界の大きな課題の一つに後継者不足があります。

特に中小企業では後継者を見つけられずに、そのまま廃業してしまうケースが多く見られます。

一方、大企業の中には従業員や職人の確保のために買収を進めている企業も多くあるため、売り手と買い手のニーズがマッチし廃業せず自社を売却できるケースもあります。

後継者問題の解決手段として、M&Aの需要は高まっています。

管工事業界のM&A動向

管工事業界では主に後継者問題の解決、従業員の雇用確保、事業承継税制のためにM&Aが行われています。

管工事業界では後継者不足が問題になっており、M&Aによって事業を売却したいと考える事業者が増えています。地方自治体、商工会議所、地方銀行は事業承継の周知を進めていることから少しずつ成立件数は増え始めています。

また管工事業界では人手不足も問題になっています。

廃業した場合、経営者には整理解雇や従業員の次の就職サポートなどの負担が発生します。しかし事業承継であればそれらの負担は無くなり、従業員の雇用も継続することができます。

また平成30年度に事業承継税制が改正されたことにより、活用しやすくなったため、事業承継を視野に入れる事業者が増えました。具体的措置に株式数上限の撤廃、雇用要件の見直しなどがあります。

管工事業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

管工事業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 隣接業界の大手企業とグループを形成することでワンストップサービスを提供できる
  • 廃業にかかる手間や負担を無くすことができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

管工事業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 他地域への進出、新規顧客を獲得できる
  • 隣接業界への進出を効率的に行える
  • 優秀な職人や従業員を獲得できる
  • 企業のブランドイメージを向上できる

管工事業界のM&A・売却・買収事例

中電工による杉山管工設備のM&A

中国電力系の設備工事会社であり屋内電気工事、空調管工事などを手掛ける中電工は、空気調和設備の設計施工、給排水衛生設備の設計施工などを手掛ける杉山管工設備を子会社化しました。

  • 実行時期:2016年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:優秀な人材と顧客の獲得

協和日成によるガイアテックのM&A

建物内のガス設備工事、地中のガス導管工事などを手掛ける協和日成は、都市ガス工事や床暖房工事を手掛けるガイアテックを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の共有、事業連携の強化

イシイ設備工業による東海管工のM&A

空調・給排水工事の設計から施工までのトータルサポートを手掛けるイシイ設備工業は、給排水衛生設備、消火設備、冷暖房設備などの設計・施工管理を手掛ける東海管工を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の拡充、事業エリアの拡大

コムシスホールディングスによる朝日設備工業のM&A

ワンストップソリューションプロバイダとして情報通信工事事業、電気設備工事事業などを手掛けるコムシスホールディングスは、主に岐阜県で水回りのリフォームや給排水衛生設備工事を手掛ける朝日設備工業を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年10月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:東海地域での営業基盤の強化

TTKによる塚田電気工事のM&A

宮城県仙台市に拠点を置き、情報通信設備の設計・保守を手掛けるTTKは、設計・施工、メンテナンス、リニューアル工事などを手掛ける塚田電気工事を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大

北海道エア・ウォーターによる丸電三浦電機のM&A

綜合エネルギーサービス事業を展開する北海道エア・ウォーターは、札幌地区を中心に電気設備工事、情報通信工事などを手掛ける丸電三浦電機を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:受注範囲の拡大化

九電工によるエルゴテックのM&A

電気設備工事、空調給排水衛生工事を手掛ける九電工は、空調・衛生工事・設備リニューアル工事などを手掛けるエルゴテックを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大と優秀な人材の確保

おわりに

本記事のまとめ

管工事業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

管工事業界は近年成長傾向にあるものの、多重下請け構造や職人不足などの問題に直面しています。特に中小企業ほどこれらの問題は深刻で、業界の最重要課題になっています。

人材不足や後継者問題の解決策としてM&Aが取られています。M&Aによって承継先が見つかれば、廃業によって必要になる整理解雇や従業員の就職サポートも不要になります。

また事業承継税制の改正により活用しやすくなったため、M&Aを視野に入れる事業者は今後増えると考えられます。

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