釣り・釣具業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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コロナ禍を経て日本国内のアウトドア市場が拡大していますが、釣具業界もこうしたアウトドアブームの波に乗って近年市場が拡大傾向にあります。

一方で、1990年代のバスフィッシングブーム時に創業した釣具メーカーの業歴が30年近くなってきたこともあり、業界全体として事業承継(後継者不在)問題を抱える業界でもあります。こうした背景から、近年ではM&Aによる第三者承継もみられ始めています。

本記事では、そうした釣具業界の市場動向を解説するとともに、釣具業界におけるM&Aのメリットや、M&A・売却・買収事例を、売り手・買い手それぞれの立場からまとめてご紹介します。

目次

釣具業界の概要・市場動向

釣具業界とは

釣具業界は、主に釣りを趣味とする消費者向けに、釣り用品を企画・製造する釣具メーカー、流通を担う卸売業者、消費者へ販売する小売店で構成されています。

主な釣具のジャンルとしては以下があります。

  • 釣竿
  • リール
  • 釣針
  • 釣糸
  • ウキ
  • 加工餌・生餌
  • 疑似餌(ルアー)
  • その他ケースやバッグなど

淡水・海水・渓流等のエリア別や、ブラックバス・イカ・スズキ等の魚種別によっても商品特性が大きく異なり、各種メーカーがそれぞれの領域に強みを持って棲み分けている業界です。

釣具業界の市場動向

釣り人口の減少

2021年に発表されたレジャー白書によると、国内の釣り人口は2012年の810万人から、2020年時点では550万人まで減少しています。

90年代のバス釣りブーム時に新たに釣りを始めた釣り人(アングラー)が高齢化してきており、一方で若者で釣りを始める人が少ないことが背景にあります。

一方で、直近ではコロナ禍を契機に新たに釣りを始める若者や女性、ファミリーなども増えており、再び市場は活況の様相を呈しています。

顧客単価の上昇による市場成長

日本釣用品工業会の調べによると、釣り人口の減少とは裏腹に、釣り用品全体の市場規模(出荷ベース)は、2012年の1,754億円から、2022年時点では2,649億円と、年平均成長率4.2%の高成長を記録しています。

背景には顧客の消費単価上昇があり、2021年には釣り人口一人当たりの消費単価が約21,000円程度だったところから、2020年には43,000円程度まで上昇しています。

一部のコアなアングラーの存在を背景に製品のプレミアム化が進んでおり、こうした人々によって近年の市場成長が支えられています。

ソルトルアー市場の成長

近年の釣具市場の成長を支える最も主要な領域が海釣り用ルアー(ソルトルアー)市場の成長です。

かつては釣具市場はブラックバス向け製品が市場を牽引していましたが、近年ではスズキ、イカ、タイ、タチウオなどを狙った海釣り用ルアー製品が非常に人気となっています。

日本釣用品工業会の調べによると、国内ソルトルアー市場(出荷ベース)は2017年には469億円でしたが、2021年には741億円と、年平均成長率12.1%と非常に高い成長率をみせており、近年の市場成長を牽引しています。

海外釣具市場の成長

国内の釣り人口が減りゆく一方で、海外の釣具市場は大きく成長しています。

Global Industry Analysis社の推計によると、2020年から2027年にかけて世界の釣具市場規模は年平均3.4%で成長していくことが予測されています。

この成長を下支えしているのは世界最大の釣具市場であるアメリカ市場の成長と、新興釣具市場である中国市場の成長です。特に中国は2020年から2027年にかけて年平均5.9%で市場成長することが予測されており、非常に魅力的な市場であると言えます。

こうした海外市場の成長を背景に、日本の多くの優良釣具メーカーも積極的な海外展開に取り組んでいます。

釣具業界のM&A動向

既に一部の企業でみられるように、釣具業界では今後、中小釣具メーカーの事業承継(後継者不在)を背景にM&Aによる業界再編がより活発化していくと予想されます。

特に、中堅釣具メーカーが、M&Aを契機にさらに商材の幅を拡大し、「総合メーカー」化を目指す動きが今後より活発化していくと考えられます。

また、釣具業界の市場成長を背景に、アウトドア大手がブランド力を梃子に、M&Aや業務提携によって新規参入する動きも今後より活発化していくと考えられます。

このような市場環境においては、中堅メーカー同士の統合による販売力増強や、異業種の新規参入によって資本力勝負の側面が強まり、単独路線を貫く中小メーカーはシェアを縮小する恐れがあります。

釣具メーカーにおけるM&Aのメリット

売り手のメリット

釣り業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • ブランドやマーケティングに強みを持つ買い手と組むことで自社製品の販売力を高められる
  • 買い手企業の営業基盤(海外販路を含む)や技術を生かした販路拡大を実現できる
  • 買い手企業の持つ生産拠点を活用することで生産能力を高めることができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

釣り業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 自社製品と親和性の高い隣接商材を手に入れることで総合メーカー化を目指せる(例:ルアーメーカーがリールメーカーを買収、など)
  • 単独で一から立ち上げることが難しい技術を手に入れられる(例:リール製造技術や生分解性ワームの製造技術、など)
  • 未進出の地域での営業基盤を獲得できる
  • 売り手の持つ生産拠点を活用した生産力増強を実現できる

釣具業界のM&A・売却・買収事例

アイ・シグマ・キャピタルによるジャッカルのM&A

総合商社の丸紅が出資し、日本の中堅・中小企業への投資を手掛ける投資ファンドのアイ・シグマ・キャピタルは、ルアー・ロッドなど釣具の企画・開発・製造・販売を手掛けるジャッカルおよびジャッカル米国法人への資本参加を実施しました。

  • 実行時期:2021年8月
  • スキーム:非公開
  • 取引価額:非公開
  • 目的:丸紅グループのネットワークを活用した販路拡大、仕入・物流面での効率化など

ハヤブサによるレインのM&A

釣具を中心としたアウトドア総合メーカーのレインは、ワームを中心に釣具の企画・開発・製造を手掛けるレインの全株式をを取得し、子会社化しました。

  • 実行時期:2019年
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外展開の推進、事業承継問題の解決

ゼットエーによるSaltの漁業関係者向け交流サイト事業のM&A

中古釣り具の買取販売チェーンのつり具ランドを展開するゼットエーは、Saltが手掛ける漁業関係者向け交流サイト「漁師コミュニティ」事業のM&Aを実施しました。

  • 実行時期:2020年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:中古漁具釣具販売・買取チェーン事業と漁師コミュニティ事業のシナジー創出

デュオ、レイドジャパン、ヴァルケインによる新会社設立

ルアー製造を手掛けるデュオ、レイドジャパン、ヴァルケインの3社は新会社アトラスジャパンホールディングスを設立し、3社がアトラスジャパンの子会社となる形で経営統合しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:詳細不明
  • 取引価額:不明
  • 目的:営業、物流、事務、知的財産権の管理機能統合によるシナジー創出

スノーピーク、ティムコ、アイビックによる新会社設立

アウトドア用品大手のスノーピークは、釣り用品やアウトドアウェアを製造・販売するティムコ、釣具製造卸のアイビックとともに新会社キャンパーズアンドアングラーズを設立しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:新会社設立
  • 取引価額:スノーピーク・ティムコ・アイビックがそれぞれ3,000万円、アイビック食品が800万を出資
  • 目的:4社の強みを生かしたキャンプ・フィッシング・食を融合した体験型施設の展開、新たなアウトドアカルチャーの価値創造

おわりに

本記事のまとめ

釣具業界のM&A・売却・買収事例や業界動向についてご紹介しました。

釣具業界は、事業承継問題を背景に今後M&Aがより活発化し、業界再編が進むと考えられる業界です。アウトドア大手の参入も既にみられはじめ、業界における競争環境はより厳しくなっていくものと思われます。

こうした業界環境の中で、買い手側となる企業も売り手側となる企業も、M&Aをこれまで以上に重要な経営戦略として位置づけ、積極的に活用していくことが求められています。

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