運送・物流業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

運送・物流業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。禁煙では運送・物流業界は業績が厳しい企業も多く、M&Aを検討する中小企業が増えています。
本記事では、そうした運送・物流業界の市場動向を解説するとともに、運送・物流業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
運送・物流業界の概要・市場動向
運送・物流業界とは
物流業は、商品が生産者やメーカーから消費者に届くまでの輸配送・流通加工・保管・情報管理など多岐にわたる業務を担っている業界を指し、輸配送を行う運送業と、保管サービスを行う倉庫業に分けられます。
運送業はトラック運送業・宅配便業・鉄道業・海運業・空運業に分けられ、運送・物流業界の中小企業はAmazonなどのネット通販の仕事を手掛けるケースが多くみられます。近年、通販のユーザーは増加しており、トラックやバイクの需要は増えています。
業界内には数多くの運送・物流企業が存在し、市場は飽和状態にあるため、激しい価格競争のため利益の出ずらい業界となっています。
運送・物流業界の市場動向
深刻な人手不足
EC市場の拡大により宅配便の需要が伸びている一方、ドライバーの高齢化やなり手不足から深刻な人手不足が起きています。
原因としては宅配業務の負担が大きい、シフトが不規則、長時間労働といったハードな仕事内容のイメージが主な原因となっています。
2015年に政府は「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」を設置し、新卒ドライバーや女性ドライバーの増加を目指しています。
こうした人材不足を解消するために、国土交通省は実働性の向上や実車率の向上などの施策を挙げています。
具体的には、宅配BOXの設置による再配達の防止や、IT化による配送スケジュールの最適化などが行われています。このようにドライバーの労働生産性を上げる取り組みが、大手企業を中心に行われています。
利益の出しづらい業界構造
インターネットショッピングの急成長による競争の激化や、ガソリン費の高騰による収益の悪化、企業数増加による価格競争のため運送・物流業を営む中小企業は厳しい状況に置かれています。
業界全体として運送・物流業界は赤字体質であり、また市場は縮小傾向にあります。
このような状況を受けて、日本郵政公社と日本通運の業務提携のように、業界内での生き残りをかけた業界再編が行われています。中小企業の多い業界のため、今後は大手企業への集約が活発化すると見られています。
2024年問題への対処が急務
運送・物流業界には「2024年問題」というものが存在します。
2024年問題とは、2024年4月から働き方改革関連法により「自動車運転業務における時間外労働時間の上限制限」が適用されることを指します。これによりドライバーの労働時間に制限が設けられるため、売上減少やドライバーの収入減少などの影響が出ると見られています。
2024年問題に対応するためには、多くのドライバーの確保が必要になります。慢性的な人材不足が起きている中小企業では対処に限界があるため、問題の解決策としてM&Aを検討する企業が増えています。
運送・物流業界のM&A動向
運送・物流業界では深刻な人材不足が起きています。前述の2024年問題に対応するためにも、ドライバーの確保は急務であり、この問題を解決するためにM&Aを検討する企業がが増えています。
また、運送・物流業界は多くの経営者が引退の時期を迎えており、後継者・事業継承問題の解決を目的としたM&Aも増えています。
さらに、システム投資によって消費者ニーズを満たし新規顧客を獲得するため、大手企業がIT・ベンチャー企業を内部に取り込む動きも見られます。

運送・物流業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
運送・物流業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手企業の傘下に入ることで安定した経営基盤を構築できる
- 2024年問題への解決に繋がる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
運送・物流業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の保有する車両・設備を獲得し事業拡大できる
- 売り手の持つ技術やノウハウを一度に獲得できる
- 事業基盤の拡大によるスケールメリットを獲得できる
- 売り手の抱えるドライバーを取り込み人材不足を解消できる

運送・物流業界のM&A・売却・買収事例
セイノーHDによる貨物自動車運動業者4社のM&A
大手運輸企業西濃運輸グループの持株会社であるセイノーホールディングスは、貨物自動車運送事業を手掛ける西濃運輸、関東西濃、濃飛西濃、東海西濃を西濃運輸を存続会社として合併しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:合併
- 取引価額:非公開
- 目的:効率的かつ柔軟性のある物流プラットフォームの構築

東部ネットワークによる東北三光のM&A
運送・物流を手掛ける東部ネットワークは、セメント輸送などを手掛ける東北三光を子会社化しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業エリアの拡大、人材の確保

日本通運と名鉄運輸の資本業務提携
大手運送会社の日本通運は、名古屋市で陸運事業を手掛ける名鉄運輸の株式を20%取得し、資本業務提携を結びました。
- 実行時期:2016年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:輸送ネットワークの相互利用
日本郵政によるトール・ホールディングスのM&A
日本郵政は、国際宅急便などを手掛ける豪州最大手のトール・ホールディングスの株式を買収しました。
- 実行時期:2015年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:海外への事業拡大
ファイズHDによる中央運輸のM&A
3PLを手掛けるファイズHDは、貨物自動車運送事業を手掛ける中央運輸を子会社化しました。
- 実行時期:2020年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業エリアの拡大
ハマキョウレックスによるシティーラインのM&A
3PLを手掛けるハマキョウレックスは、物流センターを手掛けるシティーラインを子会社化しました。
- 実行時期:2019年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業エリアの拡大
ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業のM&A
3PLを手掛けるヒガシトゥエンティワンは、一般貨物輸送事業を手掛ける山神運輸工業を子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ノウハウの獲得
おわりに
本記事のまとめ
運送・物流業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
運送・物流業界は数多くの中小企業が存在し、価格競争が激しいだけでなく、人材不足や2024年問題などにより多くの企業の経営が厳しい状況にあります。さらには、多様化するインターネットショッピングへの対応も迫られています。
こうした動きに対抗するため、近年運送・物流業界M&Aを行う企業が増加しています。今後はデジタル化による業務効率化を目的に、大手企業がIT企業を買収するケースも増えていくと見られています。

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