ネット通販・EC業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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ネット通販・EC業界はM&Aが活発な業界の一つです。近年では、ネット通販・ECサイトを自社で運営することを目的としたEC事業者の買収が増加しています。

本記事では、そうしたネット通販・EC業界の市場動向を解説するとともに、ネット通販・EC業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

ネット通販・EC業界の概要・市場動向

ネット通販・EC業界とは

ネット通販・EC業界とは、インターネットを通じて物・サービスを販売する業界をいいます。

経済産業省の報告書では「インターネットを利用して受発注がコンピューターネットワークシステム上で行われること」と定義されています。以下ではネット通販業界とEC業界を個別に説明します。

ネット通販業界とは、小売業の一種でありメディアで商品を展示して受発注を行う業界をいいます。無店舗販売で成立する形態で、従来はテレビ通販やカタログ通販が主流でしたが、近年ではアプリを活用したチャネルが一般的になっています。

EC業界とは、電子商取引を扱う業界をいいます。日本でECサイトが導入されたのは1993年と言われており、1997年の楽天市場の誕生以降、急速に拡大しました。

ネット通販・EC業界の市場動向

販売チャネルとしての地位を確立

ネット通販・EC市場は、インターネットの普及や利便性の高さを理由に、販売チャネルの一つとして急速に拡大しています。

経済産業省「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、ネット通販・EC市場のうち個人消費者を対象にしたBtoC市場規模は、2010年の7兆8,800億円から2019年には19兆3,600億円まで成長しました。

2019年の個人向けのネット通販・ECの内訳は、物販系が52%、サービス系が37%、デジタル系が11%です。コロナ禍では旅行減の影響でサービス系が縮小したものの、オンラインゲームや動画配信によりデジタル系が拡大しました。

事業者を対象にしたBtoB市場では、2015年の287兆円から2019には352兆円まで成長しています。

近年でのネット通販・ECの特徴としてオムニチャネル化が挙げられます。具体的には、通販サイト事業者が実店舗でショールームを出店したり、ECサイトで購入した商品を自社の実店舗で受け取れるようにする動きが加速しています。今後も、他チャネルと組み合わせた販売戦略が加速することで、ネット通販・EC市場のさらなる拡大が予想されます。

CtoC市場の拡大

従来のBtoC市場でのネット通販・ECの利用に加えて、CtoC市場でも成長が顕著です。

CtoCとは、個人間による電子商取引を意味しており、販売者が一般消費者である点がBtoCとの違いです。

2017年時点では、ネットオークション市場規模は1兆1,200億円に及び、このうち3割にあたる3,600億円分のネットオークションがCtoC市場で行われました。

CtoC市場の台頭はスマートフォンの普及が大きな役割を果たしています。高性能のカメラが内蔵されるようになったことや、スマホアプリでキャッシュレス決済ができるようになったことが背景にあります。利用者の販売手続きや利用者間のコミュニケーションはいずれもスマホのみで完結できるため、スマホ経由での取引は今後もネット通販・EC市場の成長要因になると考えられます。

SNSマーケティングとの高い親和性

ネット通販・ECは単なる販売チャネルのみならず、SNSとあわせてマーケティング戦略の一環としても活用されています。

SNS利用者の傾向として、趣味嗜好が似ている他の利用者から収集した情報を基に、自身の購買活動を決定するという行動が見られます。この動向を活用して、商品に対しての評価をSNS上で収集して分析するネット通販・EC事業者が増加しています。

また、自社が発信したいことを伝えるだけでなく、各消費者の興味関心に合致した情報を発信するコンテンツマーケティングの場としてもネット通販・ECが利用されています。

ネット通販・EC業界のM&A動向

今後も成長が期待されるネット通販・ECの市場動向を反映して、他業種からの参入やアプリ・サイトの新規開設を目的としたM&Aが増加しています。

特に、既にリアル店舗を展開する事業者が、販売チャネルの拡大に向けてネット通販・EC事業者を買収する事例が典型的です。

また同業者間のM&Aも加速しています。ネット通販・EC業界は店舗設置の固定費などを削減できる一方で、会員獲得のために莫大な広告費用が必要となります。このようなビジネスモデル下で競争力を高めるために、キャッシュレス決済技術の獲得や越境サイトを目的としたM&Aも増加しています。

ネット通販・EC業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

ネット通販・EC業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • ネット通販・EC事業以外の本業がある場合、事業の選択と集中を図れる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

ネット通販・EC業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 新規参入する場合、売り手の保有する既存ECサイトやシステムを活用できる
  • 自社商品を売り手の持つ新たなチャネルで販売できる
  • 売り手の顧客を引き継ぐことで集客コストを削減できる
  • ECサイトの販売網やキャッシュレス技術を獲得できる

ネット通販・EC業界のM&A・売却・買収事例

インターファクトリーによるジグザグのM&A

「ebisumart」を通じてEC事業者の国内自社ECサイトの運営支援を手掛けるインターファクトリーは、海外販売を始める事業者に対して決済から発送まで一気通貫して提供する越境EC対応サービス「WorldShopping BIZ」を手掛けるジグザグと資本業務提携しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:EC事業者への支援体制の強化

オーイズミによるバブルスターのM&A

遊技場設備機器、太陽光発電、不動産賃貸、酒類醸造、農産物加工食品などを手掛けるオーイズミは、健康食品などの製造及びEC、食品輸入などを手掛けるバブルスターの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業領域の拡充

綿半ホールディングスによる大洋のM&A

スーパー・ホームセンターなどの小売事業、建設事業、貿易事業を手掛ける綿半ホールディングスは、組み立て家具の製造、卸売、ネット通販事業を手掛ける大洋の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:取扱商品の拡充

ロコンドによるFashionwalkerのM&A

靴とファッションのECサイト「LOCONDO.jp」を運営するロコンドは、ワールドの子会社であったFashionwalkerの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アパレル領域のEC事業強化

TSIホールディングスによるEfuego CorpのM&A

ファッション・アパレル事業を手掛けるTSIホールディングスは、米国でアクションスポーツ専門のECサイト事業を手掛けるEfuego Corpの株式88%を取得しました。

  • 実行時期:2020年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アメリカ現地子会社とのシナジー効果

ヴィーダによるインタートレードヘルスケアのM&A

会員コミュニティーの運営や冠婚葬祭事業を展開するヴィーダは、健康補助食品・化粧品販売のインタートレードヘルスケアから通信販売事業を譲受しました。

  • 実行時期:2020年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:EC領域の事業展開

ZホールディングスによるZOZOのM&A

ECサイトや検索エンジンを筆頭に200種類を超えるサービスを手がけるZホールディングスは、ファッションECサイト「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの株式50.1%を取得しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式公開買付
  • 取引価額:4,007億円
  • 目的:EC事業の強化

おわりに

本記事のまとめ

ネット通販・EC業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

ネット通販・EC業界は、BtoC、CtoCともに急速に成長している業界です。自社の製品を販売するためのチャネルとしての役割に加えて、他チャネルと融合させたマーケティング戦略の一環としても注目されています。

今後は、競争が激しくなる業界内での既存顧客や既存システム獲得を目的としたM&Aがより加速すると予想されます。

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