医療機器卸業界の業界動向、M&A・売却・買収事例30選

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医療機器卸業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。医療機器市場は医療費の増加とともに拡大傾向にある一方、収益機会が限られている業界です。

本記事では、そうした医療機器卸業界の市場動向を解説するとともに、医療機器卸業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

医療機器卸業界の概要・市場動向

医療機器卸業界とは

医療機器卸業界とは、レントゲン装置や吸入器、歯科医療機器などの医療機器の卸売りを行う業界をいいます。

医療機器は、人や動物の疾病の診断、治療、予防のために使用される機械器具や、身体の構造や機能に影響を及ぼすことを目的とする機械器具を指します。

医療機器の販売には医療機器製造販売業許可が、高度管理医療機器及び特定保守管理医療機器の販売には高度管理医療機器等の販売業及び賃貸業の許可が、管理医療機器の販売については都道府県知事への届出がそれぞれ必要です。

医療機器卸業界の市場動向

医療費増加に伴う市場拡大

医療機器卸業界は、医療費の増加と比例して成長しています。

日本では高齢化を背景に年々医療費が増加しており、厚生労働省「令和3年度 医療費の動向」によると令和3年度には44.2兆円まで達しています。令和2年度はコロナの影響で一時的に医療費が抑制されましたが、中長期的には医療費増加が予想されています。

医療機器市場も同様に成長しており、厚生労働省医政局「薬事工業生産動態統計年報の概要」によると医療機器の生産金額は平成23年から令和2年度にかけて3割増加しています。また、医療機器輸入金額も平成28年度から令和2年度にかけて7割増加しており、医療機器の生産・輸入拡大に伴い医療機器卸市場も拡大しています。

優秀な営業マンの確保が課題

医療機器卸業界は営業マンの知識や素養が非常に重要になります。

医療機器卸業界の得意先である医療機関は人の生命や健康に関する医療行為を行っているため、既存の機器に異常がない場合は新たな機器を導入したがらない傾向にあります。

また、取扱製品に既存機器からの明確な技術進歩が確認される場合は医療機関への営業は容易ですが、機器の進歩は医療機器卸業界にとって外生的な要因であるため交渉のハードルが高いといえます。

したがって、営業マンは医療機器の専門的な知識を備えることが不可欠であり、各営業マンの知識や素養が業績に大きく営業する業界であると言えます。

価格決定権が制限された業界構造

医療機器卸業は、機器の販売価格や取扱店数に関して厚生労働省の意向が反映されます。したがって、市場での需給を考慮した価格決定権が制限されている業界といえます。

医療機器卸事業においては、医療機器をいきなり販売するのではなく、医療機関へ試用を持ちかけることがあります。貸出期間は数か月に及ぶことも珍しくなく、実際の購入判断までは相当の時間を要するために、この試用期間中は医療機器卸事業者が機器の在庫を負担しなければなりません。

医療機器卸業界は価格決定権が制限された中で在庫負担に耐えうる資金力を有する必要があるため、専門的な機器を扱う業界ながら利益を確保する難易度が高い業界といえます。

医療機器卸業界のM&A動向

医療機器卸業界では、大手事業者がスケールリットにより競争力強化を図っている一方、中堅・中小事業者の経営環境は厳しくなってきています。

前述の通り、医療機器卸事業には資本力と営業力が不可欠な事業です。資本力のある事業者ほど高性能の機器を提案できるため、専門知識を有する人材も資本力のある大手事業者へ流れる傾向があります。

こうした背景から、今後は大手事業者を買い手とした業界再編が加速していくとみられています。

買い手の観点からは、業界には地域密着型の事業者が多いことを踏まえて売り手のエリアへの新規進出を測る際にM&Aが活用されています。

また、海外医療機器の独占販売権が他社との差別化に繋がるため、M&Aを通じて売り手の流通網を取り込むことで競争力を高める動きも見られます。

医療機器卸業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

医療機器卸業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手の販売網や営業力を活用することができる
  • 買い手が独占的・専門的に取り扱う機器を提案できるようになる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

医療機器卸業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 医療機器に精通する売り手の営業人材を確保できる
  • 売り手の持つ新たな顧客基盤にアプローチできる
  • 売り手が独占的・専門的に取り扱う機器を提案できるようになる
  • 売り手が基盤を持つ新たな事業エリアに進出できる

医療機器卸業界のM&A・売却・買収事例

ホームケアサービス山口によるフランスベッドホールディングスのM&A

福祉用具のサービス事業、特定施設入居者生活介護事業などを手掛けるホームケアサービス山口は、ベッド、家具類、療養ベッド・福祉用具などの製造・仕入、レンタル・小売および卸売を手掛けるフランスベッドホールディングスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:メディカルサービス事業の基盤強化

メディアスホールディングスによる佐野器械のM&A

医療機器販売や医療材料の物流管理を行うグループ会社の経営管理を手掛けるメディアスホールディングスは、医療機器の販売および修理を手掛ける佐野器械の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販売エリアの拡大

芙蓉総合リースによる日本信用リースのM&A

情報関連機器、事務用機器、産業機械、工作機械、商業用店舗設備、医療機器、輸送用機器、建築土木機械などのリースおよび割賦販売業務を手掛ける芙蓉総合リースは、介護福祉用具、医療機器、情報機器のリース・割賦販売を手掛ける日本信用リースの株式を使取得して子会社化しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療・福祉事業の強化

東和薬品によるプロトセラのM&A

医療用医薬品の製造・販売を手掛ける東和薬品は、疾病リスクの検査サービス事業、診断用及び治療用医薬品の研究開発と販売を手掛けるプロトセラの株式77.1%を取得しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:第三者割当増資引受
  • 取引価額:非公開
  • 目的:検査事業の立ち上げ

インターネットインフィニティーによるフルケアのM&A

ヘルスケアソリューション事業、在宅サービス事業を手掛けるインターネットインフィニティーは、福祉用具・医療機器のレンタルおよび販売、住宅リフォーム工事の設計・施工、リハビリ型デイサービス・レコードブック運営事業を手掛けるフルケアの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:介護保険外及び生活支援サービスの創出

大丸エナウィンによるサンキホールディングスのM&A

LPガス販売を中核とするリビング事業を中心に、アクア事業や医療・産業ガス事業などを手掛ける大丸エナウィンは、近畿地区を中心に医療用ガスの販売や、在宅医療で使用される医療機器のレンタルを手掛けるサンキホールディングスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販売面・保安面・供給面におけるシナジ創出

グンゼによるメディカルユーアンドエイのM&A

アパレル事業、機能ソリューション事業、ライフクリエイト事業などを手掛けるグンゼは、形成外科・脳神経外科・口腔外科・美容外科・小児外科・心臓血管外科・皮膚科など関連医療機器の販売などを手掛けるメディカルユーアンドエイの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:メディカル事業の拡大

エムスリーによる東和産業のM&A

インターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っているエムスリーは、眼科医療機器の販売及び卸売業などを行う東和産業を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年01月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業拡大

ソフト99コーポレーションによるアズテックのM&A

家庭用ケミカル用品などの製造販売事業を展開するソフト99コーポレーションは、アズテックおよび、医療機器販売を手掛けるその子会社1社を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年08月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:長期的かつ持続的な企業成長

ドクターズによるファーマックメディカルのM&A

デジタルヘルスサービスの開発支援を行うドクターズは、整形外科用医療機器設計・企画・製造などを行うファーマックメディカルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療機器の製造販売に関する事業の展開

朝日インテックによるレイクR&DのM&A

医療用ステンレスワイヤーロープを製造している朝日インテックは、医療機器製造販売業を行うレイクR&Dを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グローバル展開の推進

アクティブメディカルによる渋谷メディカルの医療機器販売事業のM&A

医療機器販売事業を展開しているアクティブメディカルは、眼科領域の医療機器を取扱う専門ディーラーの渋谷メディカルより眼科領域の医療機器販売事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年8月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業拡大

メディキットによるBolt MedicalのM&A

医療機器の開発・販売等を行っているメディキットは、血管内治療用医療機器の研究・開発・製造を行っているBolt Medicalを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:患者への治療貢献性向上

伊藤超短波によるヒロセ電機の医療機器・健康機器製造販売事業部門のM&A

病院用治療器などの製造・販売を行う伊藤超短波は、医療機器等の製造販売事業を展開するヒロセ電機の医療機器・健康機器製造販売事業部門を譲り受けました。

  • 実行時期:2019年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業拡大

オーソエッジジャパンによる栗原医療器械店の整形外科領域事業のM&A

医療機器卸事業を担うオーソエッジジャパンは、医療機器販売事業を行っている栗原医療器械店の整形外科領域事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年7月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:専門性の強化

マブチモーターによる応研精工のM&A

小型モーターに関する事業を行っているマブチモーターは、医療機器等向けの小型ポンプの製造及び販売を行っている応研精工を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シナジー創出

大陽日酸によるアイ・エム・アイのM&A

呼吸関連事業と先端医療事業へ注力する大陽日酸は、人工呼吸器を主軸に治療機器の提供を行っているアイ・エム・アイを買収しました。

  • 実行時期: 2018年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:呼吸関連事業領域での事業拡大

イシダによる日本精密測器のM&A

表示関連の機器を開発する機械メーカーのイシダは、医療機器や監視カメラ用アイリスの開発・製造・販売を行う日本精密測器を子会社化しました。

  • 実行時期: 2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グローバルな展開

ウイン・パートナーズによるトライテックのM&A

医療機器商社グループのウイン・パートナーズは、医療機器の輸入販売業を行っているトライテックを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客基盤強化および事業規模拡大

日本メガケアによる大陽日酸東関東販売の医療事業のM&A

医療専業販売店である日本メガケアは、医療用ガスや、高度管理医療機器等販売業を展開している大陽日酸東関東販売の医療事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客への更なるサービスの向上

テスコによるトーセイメディカルのM&A

医療機器の販売事業を展開しているテスコは、医療機器の販売、賃貸、修理および保守を行っているトーセイメディカルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客基盤強化と事業規模拡大

エムスリーによるインディー・メディカルのM&A

インターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っているエムスリーは、熱傷等治療機器に関する日本での独占開発・販売権を有するインディー・メディカルを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療機器領域での事業展開の加速

ニプロメディカルヨーロッパ N.V.によるMTN Neubrandenburg GmbHのM&A

ベルギーにて医療機器事業を行っているニプロメディカルヨーロッパ N.V.は、透析液の製造・販売を行っているMTN Neubrandenburg GmbHを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年08月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:製品製造販売体制の確立

ニプロファーマパッケージングインターナショナルN.V.によるPiramida d.o.o.のM&A

医療機器事業を展開しているニプロの海外子会社のニプロファーマパッケージングインターナショナルN.V.は、医療用ガラス容器の製造・販売事業を行っているPiramida d.o.o.を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年05月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ヨーロッパ全域におけるシェアの拡大

朝日インテックによるKARDIA S.R.LのM&A

医療機器の開発・製造・販売を手掛ける朝日インテックは、医療およびヘルスケア材料などの事業を展開しているKARDIA S.R.Lを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:37億4,400万円
  • 目的:市場シェア拡大

ニプロアジアPTE LTDによるJMI Marketing Ltd.のM&A

医療機器事業を展開しているニプロの海外子会社のニプロアジアPTE LTDは、シリンジ等のディスポーザブル医療機器販売を行うJMI Marketing Ltd.を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年01月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業拡大

丸紅によるLunatus Marketing & Consulting FZCOのM&A

大手総合商社の丸紅は、医薬品・医療機器の販売事業を行っているLunatus Marketing & Consulting FZCOと資本業務提携をしました。

  • 実行時期: 2022年06月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:日本の医療機器メーカーのワンストップ体制の構築

Enlight Medical Limitedによる心宜医疗器械のM&A

構造的心疾患等の製品を取り扱っているEnlight Medical Limitedは、日本ライフライングループとして医療機器の製造販売を行う心宜医疗器械を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益性の向上

リベルタによるファミリー・サービス・エイコーのM&A

PRマーケティング企画などの事業を展開しているリベルタは、医療機器など様々な商品の企画・製造・販売を行うファミリー・サービス・エイコーを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販路拡大

アクティブメディカルによるノアインターナショナルのM&A

医療機器販売事業を展開しているアクティブメディカルは、医療機器販売事業を行っているノアインターナショナルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウや情報の共有

おわりに

本記事のまとめ

医療機器卸業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

医療機器卸業界は、高齢化に伴う医療費増加の恩恵を享受している業界です。一方で、価格決定に際しては厚労省の意向が反映されており、求められる専門性の高さゆえに優秀な営業マンの確保に課題を抱えています。

こうした背景の下、地域に根付いた事業者や独自の販売権を有している事業者のM&Aにより、競争力を高めようとする動きが今後ますます活発化していくと見込まれています。

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