化粧品業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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化粧品業界は近年M&Aが活発な業界の一つで、各ブランドごとの戦略に応じてM&Aが実施されることが特徴です。

本記事ではそうした化粧品業界の市場動向を解説するとともに、化粧品業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

化粧品業界の概要・市場動向

化粧品業界とは

化粧品業界とは、化粧品を製造・販売する業界を指します。

化粧品は、薬機法により「洗浄・メイクアップなどを目的に人体に塗るなどの方法で使用されるもので機器ではないもの」と定義されています。種類としてはスキンケア用品・メークアップ用品・ヘアケア用品・ボディアップ用品・フレグランス用品などがあります。

大手化粧品会社では研究開発・製造・販売までの一気通貫したビジネスを展開することが多い一方、中堅・中小の化粧品会社ではいずれかに特化して事業を行うことが一般的です。

化粧品業界の市場動向

コロナ禍やインバウンド需要減による市場縮小

矢野経済研究所によると、国内化粧品市場は2010年から2019年にかけて年率約1.5%と緩やかに成長しており、特に2015年から2019年にかけては年率約3%の高い成長率を記録していました。

こうした高い成長率は海外(特に中国)からのインバウンド需要が背景にあります。

一方で、個人バイヤーによる転売を防ぐ中国EC法が2019年に施行されたことや、コロナ禍により外国人観光客が減少したことで、近年ではインバウンド需要が激減しています。

国内でもテレワークの拡大や外出自粛に伴って化粧品需要が減少しており、これらを背景に2020年の化粧品市場規模は大幅に縮小しました。

海外展開による新たな需要創出

化粧品市場はGDPとの相関が高いため、人口減少や低成長が懸念される日本国内での成長率は鈍化しています。

そのため、国内市場のみでの成長は見込めないことから、今後は海外進出が化粧品市場の成長ドライバーであると考えられています。

現状、海外大手化粧品会社と比較して国内大手企業の海外売上比率は低い水準にありますが、近年では海外での販売網を拡張する企業も増加してきています。

商品ラインナップの多様化

近年の化粧品市場の特徴として、ターゲットの細分化や、多種多様な消費者ニーズに対応した商品開発が挙げられます。

具体的には、個々の悩みに着目した化粧品、配合される成分に配慮した化粧品、男性向けの化粧品など様々な化粧品が展開されています。

また、業界全体でデジタル化も進行しており、商品開発やマーケティングのみならず、近年では個々人の肌に最適な化粧品を提案する際に様々な技術が活用されています。

異業種参入による競争の激化

食品・飲料メーカーや医薬・化学メーカーによる新規参入をはじめとして、既存事業でのノウハウやネットワークを化粧品事業に活用する事例が近年増加しています。

ニッチな商材を自社ECサイトで拡販するモデルが確立したことで、小規模事業者の参入も加速しています。化粧品はOEMやODMの利用により開発や製造を委託できることも、新規参入が増え競争が激化している要因の一つといえます。

化粧品業界のM&A動向

近年ますます厳しさを増す競争環境へ対応するためには、ブランドのポートフォリオ拡充、海外進出、販売チャネルの拡大、開発技術の獲得などの対応が求められます。

これらを実現するための手段として、化粧品業界ではM&Aを活用する企業が増加しています。

大手化粧品会社は多くのブランドを展開しているため、特定のブランドを拡張するためにブランド単位で事業を譲り受ける場合が多く存在します。このように、ブランドごとにM&Aを戦略的に活用する企業が多いため、業界全体としてM&Aが活発であると言えます。

また、他業界からの参入時にもM&Aが活用されています。メンズコスメや化粧品D2Cなどの業界内でも成長が期待できる分野に特化したベンチャー企業への投資も活発化してきています。

化粧品業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

化粧品会社のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手企業の顧客基盤や開発ノウハウを活用できる
  • 販売チャネルを統合することで更なる拡販を目指せる
  • マーケティング機能を共通化することで業務を効率化できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

化粧品会社のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • ブランドポートフォリオを拡充できる
  • 販売チャネル拡充やオムニチャネル化を通じて新たな顧客層にアプローチできる
  • 売り手の研究開発部門とのノウハウ共有により新技術を開発できる
  • ECサイトやデジタルマーケティング機能の獲得により新たな顧客接点を獲得できる

化粧品業界のM&A・売却・買収事例

プライムダイレクトによるコンビのM&A

化粧品・食品・フィットネス商品を展開するアイケイの子会社のプライムダイレクトは、機能性食品や自然派化粧品の製造を手掛けるコンビから化粧品事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年6月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:自社のマーケティング事業を活用した譲受ブランド商品の販売拡大

ロレアルによるSpartyのM&A

パリに本社を置く大手化粧品メーカーのロレアルは、パーソナライズ化粧品のD2C事業を手掛けるSpartyに出資しました。

  • 実行時期:2022年5月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:パーソナライズ化粧品事業の拡張

アクシージアによるユイット・ラボラトリーズのM&A

化粧品・サプリ・美容機器やサロン向けスキンケアブランドの製造販売事業を手掛けるアクシージアは、自社ブランド化粧品・医薬部外品の製造・卸売・通信販売やOEMなどの事業を手掛けるユイット・ラボラトリーズを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:製品開発の効率化

資生堂によるヘンケル社のM&A

ビューティーケア事業手掛ける独ヘンケル社は、化粧品の製造・販売を手掛ける資生堂のプロフェッショナル事業(ヘアサロン向け業務用ヘアケア剤、ヘアカラー剤、パーマ剤、スタイリング剤など)を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アジア地域での事業拡大

ジョイフロンティアによるLyckaのM&A

美容品・健康食品・医薬品の開発などを手掛けるジョイフロンティアは、ヘアケア・ボディケア製品の製造事業などを手掛けるLyckaから化粧品ブランドを譲り受けました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ブランドの拡充

住友商事によるSACI-CFPAのM&A

大手総合商社の住友商事は、フランスで化粧品メーカーへの化粧品素材の卸売を手掛けるSACI-CFPAの約90%の株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:欧州での事業基盤強化

花王によるOribe Hair Care社のM&A

化粧品、スキンケア・ヘアケア、ヒューマンヘルスケア、ファブリック&ホームケア事業を手掛ける花王は、米国でサロン向けヘアケアブランドを手掛けるOribe Hair Care社を譲り受けました。

  • 実行時期:2017年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:不明
  • 目的:事業ポートフォリオの拡大と顧客基盤の強化

おわりに

本記事のまとめ

化粧品業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

近年、化粧品業界では、国内市場の成長鈍化や他業種からの新規参入を背景に、ますます競争が激化しており、こうした市場環境への対応としてM&Aを活用する企業が増えています。

今後は海外進出やブランドポートフォリオの充実などの目的に留まらず、デジタルマーケティングやパーソナライズ商品といった新たな需要を喚起するための手段としても、ますますM&Aが活発化していくと予想されます。

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