内装・外装工事業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

内装・外装工事業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。内装・外装工事業界では、新築住宅の着工件数減少を受け、経営戦略としてM&Aを活用する企業が増えています。
本記事では、そうした内装・外装工事業界の市場動向を解説するとともに、内装・外装工事業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
内装・外装工事業界の概要・市場動向
内装・外装工事業界とは
内装・外装業界とは、建築工事の最終段階としてテックス工事、室内工事、壁紙工事、店舗外装などを請け負う業界をいいます。
主な工事には、オフィス内の仕上げ工事、店舗やホテルの室内工事、住宅の室内工事などがあります。
内装・外装工事は全工事の最終段階にあたるため、新築住宅の着工戸数や建設市況と連動して市況が変動します。なお、500万円以下の小規模工事の場合は許認可が必要ないため、関連業務を行う事業者が内装・外装工事を担当する場合もあります。

内装・外装工事業界の市場動向
新築住宅着工数減少に連動した市場縮小
内装・外装工事は建築工程の最終段階に行われるため、内装・外装市場規模は新築住宅の着工件数に大きく依存しています。
国土交通省「建設工事統計調査」によると、内装工事の完成工事高はリーマンショック後に大きく落ち込み、その後2017年まで元の水準に回復していないことが分かります。なお、2018年には内装市況が回復しましたが、2019年からの消費税増税を見越した需要の前倒しが要因の一つだと考えられます。
新築住宅の着工件数は今後も低迷することが見込まれるため、新築住宅関連の需要に限定すると内装・外装市場は今後も縮小すると予測されます。
リフォーム市場からの受注増加
新築住宅の内装・外装需要が停滞した結果として近年ではリフォーム市場に進出する企業が増加しています。
従来では内装・外装工事は建設業者の下請けとなる場合が多かったですが、近年ではリフォームを直接受注するケースも多く存在します。
リフォーム市場は建築業界の中でも成長が見込める分野であるため、リフォーム事業者との取引や協業が加速しています。リフォーム工事には内装・外装の改装工事も含まれるため、内装・外装事業にとって事業領域の転換は今後の成長に不可欠です。

新規参入による競争激化
停滞する内装・外装工事市場に反して、内装・外装工事事業者数は増加しています。これは内装・外装工事の参入障壁が低いことに起因します。
内装・外装工事は少人数で行うことが可能であり、設備投資も比較的数内少ないことが特徴です。需要が限られる中で競合数が増加しているため、競争はますます激しくなっており、各事業者は自社の特徴や技術力、提案力を生かして他社との差別化図る必要があります。
内装・外装工事業界のM&A動向
内装・外装工事業界では、新築住宅の需要停滞を踏まえて、業務転換を目的としたM&Aが増加しています。
新築住宅の内装・外装工事からリフォーム住宅の工事に転換する事業者が多いため、内装・外装工事のみならず隣接業界を含めたM&Aも増加すると予想されます。
今後は元請け・下請けの業務を一貫して行いたい事業者や、内装・外装工事を自社内で提供したい大手グループ会社などによって、M&Aを通じた内装・外装技術の獲得が進んでいくでしょう。
内装・外装工事業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
内装・外装工事業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手グループの経営資源を活用し事業基盤を強化できる
- 買い手の技術やノウハウを活用できる
- リフォーム分野での営業チャネルを獲得できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
内装・外装工事業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の保有する技術力のある職人を確保できる
- 売り手の事業地域での受注増加に繋げることができる
- 売り手の提案力を活用し新たな需要にアプローチできる

内装・外装工事業界のM&A・売却・買収事例
山元によるウエタニのM&A
商業施設・ブランド店舗向けの什器レンタル・販売事業などを手掛ける山元は、あおぞら銀行と日本アジア投資が共同設立したファンド運営会社であるAJキャピタルから、関西エリアで内装工事・家具什器製造事業を手掛けるウエタニの全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:営業基盤の強化



東宝ファシリティーズによるシコーのM&A
ビルの総合マネジメント事業、賃貸物件管理代行・施設運営代行事業を手掛ける東宝ファシリティーズは、商業施設の内装工事監理業務を強みに内装工事を手掛けるシコーの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:建設関連事業の業容拡大

ヨシックスホールディンングスによる芝産業のM&A
「や台ずし」を中核ブランドとする飲食チェーン運営事業、店舗内装などの健装事業、コーポレートベンチャーキャピタル事業を展開する企業グループの持株会社であるヨシックスホールディングスは、関東で大手飲食チェーンを主要顧客に店舗内装の設計・施工・監理事業を手掛ける芝産業の全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:飲食チェーンのスピーディーかつ低コストな出店戦略を支える建装事業強化

ヤマタホールディングスによるコナン住建のM&A
注文住宅、不動産売買、カフェ・レンタルスペース運営、アパレル・雑貨・家具販売などを手掛けるヤマタホールディングスは、建築資材販売・内外装工事などを手掛けるコナン住建の全株式取得しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:建築資材の仕入れ力強化と施工力の確保

サンフロンティア不動産によるコミュニケーション開発のM&A
不動産再生・収益化事業、賃貸仲介・ビルメンテナンス・資産コンサルティングなどの不動産サービス事業、ホテル開発・運営事業、地方創生事業などを手掛けるサンフロンティア不動産は、オフィス向けネットワーク工事・電話工事・内装工事や携帯基地局設置工事などを手掛けるコミュニケーション開発の全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:内装・通信インフラ・5G基地局設置工事の内製化

OCHIホールディングスによるアイエムテックのM&A
建材・住宅設備機器の卸売などを手掛けるOCHIホールディングスは、広島県を中心にマンションやオフィスビルなどの改装工事を手掛けるアイエムテックの自己株式を除く発行済全株式を取得しました。
- 実行時期:2020年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:中国地区での事業拡大

エー・ディー・デザインビルドによる澄川工務店のM&A
建築工事業などを行っているエー・ディー・ワークスの子会社で建設業を手掛けるエー・ディー・デザインビルドは、内装工事事業を手掛ける澄川工務店の全株式を取得しました。
- 実行時期:2019年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:建設部門の事業規模拡大
おわりに
本記事のまとめ
内装・外装工事業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
内装・外装工事業界は新築住宅着工数の減少による市場縮小を受ける一方、リフォーム市場での需要が拡大している業界です。また、近年は事業者数の増加により競争環境がますます激化しています。
今後もこうしたトレンドは継続することが予測され、他社とは異なる提案力・技術力を確保するための手段として、業界内でのM&Aはさらに活発化していくと見込まれます。

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