自動車部品業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

自動車部品業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。自動車部品業界は技術革新により、業界再編が進んでいます。
本記事では、そうした自動車部品業界の市場動向を解説するとともに、自動車部品業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
自動車部品業界の概要・市場動向
自動車部品業界とは
自動車部品業界は自動車の部品を製造する業界を指し、トヨタ系・日産系・ホンダ系のようにほとんどは自動車メーカーの系列企業です。
自動車は日本の基幹産業であり国際競争力も高いですが、電気自動車や自動運転技術の登場により自動車部品業界は転換期にあります。
経済産業省「工業統計調査」によると、2019年の輸送用機械器具製造業の製造品出荷額は約67兆9,900億円で前年比3.0%減でした。この中で自動車産業は9割近くを占め、全製造業でも約2割を占めています。
就業者数も全国で約550万人ほどおり、日本最大の産業といえます。
自動車部品業界の売り上げトップはデンソー、アイシン、豊田自動織機でトヨタ系がトップ3社を占めています。その後に住友電気工業、日立製作所が続いています。
自動車部品業界の市場動向
生産額は3年ぶりの増加
経済産業省「生産動態統計」によると、2021年の自動車部品業界の生産額は3年ぶりに増加に転じています。
自動車部品業界の生産額は多少の増減はあるものの、8兆円前後で推移しています。
しかし、2020年には新型コロナウイルスの影響で7兆円台前半まで落ち込みました。2021年には7兆5951億円まで回復したものの、コロナ禍以前の水準には達していません。
2020年から2021年には世界的な半導体不足や原材料不足により自動車減産の動きがありましたが、電気自動車やハイブリッド車の需要は増加しています。
原材料の不足と円安によるコスト増
自動車部品業界は世界経済の影響を受けやすい業界と言われており、過去にも世界同時不況の際には非常に大きなダメージを受けました。
昨今は原材料費や物流費の高騰、円安の影響を受けコストがかさみ、収益が少なくなっていると言われています。特に鉄やアルミニウム、銅などの金属、樹脂や合成ゴム、プラスチックなどの原油由来の材料が高騰しています。
さらに、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で原油高や物流の混乱が起きており、海上輸送費の値上がりも企業を圧迫しています。
自動運転車への対応
自動運転技術の開発は国際的に行われており、日本でも2020年4月から自動運転中の前方注意義務が免除される半自動運転が可能になりました。
自動運転に関する技術は着々と進化を遂げており、全自動運転にはAIや各種センサー、5Gの応用が必要だと言われています。全世界のIT企業が開発に取り組んでおり、国際競争に発展しています。
自動車部品業界もこれらの電動化・自動化への対応が求められ、ITやICT、AIなどの高機能部品の開発と生産の必要性に迫られています。
こうした開発競争に遅れないため、他社との提携により新たな技術の開発を図る企業も多く見られます。
自動車部品業界のM&A
自動車部品業界では中小企業同士のM&Aと、大手企業同士のM&Aが多く見られます。
中小企業では後継者不在問題や人手不足を解消する手段としてM&Aが用いられるケースが多くあります。
大手企業同士のM&Aでは資本提携や合併による業界再編の動きも見られます。自動車部品業界は技術革新などにより転換期を迎えており、業界再編の動きは今後も続くと考えられます。
またEVや自動運転の発展により、自動車にもデジタル製品の技術が求められるようになり、電子部品・機器メーカーを対象にしたM&Aも行われています。こうした業界を跨いだM&Aも近年はよく見られます。


自動車部品業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
自動車部品業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 買い手企業の資本力を生かして安定した経営を続けることができる
- 単独では難しい新規事業や大規模投資を実現できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
自動車部品業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の保有する技術力やノウハウを獲得できる
- 売り手の設備を引き継ぎ、事業を拡大できる
- 売り手の従業員を獲得し人手不足を解消することができる
- 同業を取り込むことでスケールメリットを享受できる

自動車部品業界のM&A・売却・買収事例
愛三工業によるデンソーのフューエルポンプモジュール事業のM&A
トヨタ自動車の持分会社である愛三工業は、自動車部品業界最大手のデンソーからフューエルポンプモジュール事業を譲り受けました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:両社の連携による地球にやさしいモビリティ社会の実現

黒田電気によるインドネシア自動車部品メーカーのM&A
自動車関連、ディスプレイ関連、モバイル関連事業を展開する黒田電気は、インドネシアの自動車部品メーカーであるPT TRIMITRA CHITRAHASTAを子会社化しました。
- 実行時期:2013年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:インドネシアにおける自動車産業への参入

SPKによるデルオートのM&A
自動車補修部品および産業車両を扱うSPKは、外国車・輸入車の修理を手掛けるデルオートを子会社化しました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:シナジーの獲得
住友商事によるドイツ自動車部品メーカーのM&A
住友商事は、武蔵精密工業が全株式を保有しているドイツの自動車部品メーカーであるHay Holding GmbHの株式を25%取得しました。
- 実行時期:2016年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業価値の向上
大和精工による石川総研の温調理器事業のM&A
自動車部品と農業機械を手掛ける大和精工は、素材をほぐすATOMZなどのオリジナル製品の設計・開発を手掛ける石川総研から低温調理器の事業を譲り受けました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:後継者不在問題の解決
ニチアスによる日本ラインツのM&A
プラントや住宅向けの断熱材やシール材などを展開するニチアスは、自動車部品メーカーの日本ラインツを子会社化しました。
- 実行時期:2016年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:シナジーの獲得
JVCケンウッドによる欧州の車載用部品事業会社のM&A
モビリティ、テレマティクスサービス事業を手掛けるJVCケンウッドは、イタリアのASK Industries S.p.A.を子会社化しました。
- 実行時期:2015年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:カーエレクトロニクス事業の強化
おわりに
本記事のまとめ
自動車部品業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
自動車部品業界は基幹産業として長年日本の産業を支えてきましたが、電気自動車や自動運転の登場により転換期を迎えています。
電気自動車や自動運転などの技術革新の流れを受けて大手企業同士のM&Aが活発に行われています。また、中小企業同士でも後継者不在問題や従業員不足を解消する手段として、M&Aが行われています。
こうしたM&Aのトレンドは今後も続くと見られ、今後ますます業界再編は進んでいくと考えられます。

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