人材派遣業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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人材派遣業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。大手への集約化が進む人材派遣業界では、大手企業による中小人材紹介会社のM&Aが増加しています。

本記事では、そうした人材派遣業界の市場動向を解説するとともに、人材派遣業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

人材派遣業界の概要・市場動向

人材派遣業界とは

人材派遣業界とは、派遣元の事業主が、自社で雇用する労働者を他社へ派遣し、その労働者は派遣先の指揮命令を受けて労働に従事する事業を営む業界をいいます。

人材派遣事業には、自社のデータベースに求職者を登録し、求人側のニーズを踏まえて紹介する方法と、スカウティングを行って企業に人材を斡旋する方法の二つがあります。

人材派遣に似たものとして業務請負がありますが、派遣された労働者が人材会社の指揮命令を受けて業務を遂行する点に人材派遣との違いがあります。

人材派遣業界の市場動向

市場規模が外部環境に依存

人材派遣会社は派遣先企業の要請に応じて労働者を派遣するため、派遣先企業の業績、業界動向、季節変動などに応じて自社の業績が変動します。特に中小派遣会社の場合はこの傾向が強くなります。

また、人材派遣市場は景気動向などの外部要因からも影響を受けます。リーマンショックの影響により、2008年に7兆8,000億円あった市場売上は2013年には5兆1,000億円まで減少しています。

リーマンショック後には企業が労働者を一方的に解除する派遣切りが批判されたり、現在では派遣労働者の労働条件が問題視されています。このように派遣労働が社会問題に発展することで、企業が派遣労働者の使用を控えることもあります。

派遣人材育成を通じた差別化

派遣企業にとって、派遣人材そのものが商品であるため各人材の能力が他社との差別化要因になります。

派遣先の要求水準を満たすため、派遣企業には派遣労働者の見極め、ビジネスマナー教育、専門的なトレーニング、カウンセリングなどの支援を通じて人材の質を高めることが求められます。

近年ではIT人材やグローバル人材の需要拡大に伴って、特定の領域において専門性を持った人材育成に取り組む会社も出始めています。

大手派遣会社への集約化

人材業界は法改正によって市場環境が大きく変化している点が特徴的です。1986年に労働派遣法が施行されて以降、規制緩和に伴って市場規模は急拡大しました。

一方で、近年の法改正は人材派遣業界への参入障壁を高くしています。2015年には派遣労働者に対するキャリアアップ支援の義務化が定められ、2020年にはへ県労働者の同一労働同一賃金の適用が定められています。

これらの結果、リクルートホールディングスやパーソルホールディングスのような大手企業のシェアが拡大しており、中小規模の人材派遣会社間の競争はますます激化しています。

人材派遣業界のM&A動向

人材派遣業界のM&A件数は、リーマンショック後は停滞したものの2015年以降は右肩上がりで増加しています。

人材不足で即戦力の人材確保が困難になっている影響で、業績にかかわらず事業を売却する中小人材派遣企業が増加しています。結果として、今後も大手人材派遣会社への集約は加速すると予想されます。

近年では、派遣職種の多様化や規模の拡大を目的としたM&Aに留まらず、海外企業の買収や、BPOや請負・受託系の専門領域を獲得する企業も増加しており、業界再編が加速しています。

人材派遣業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

人材派遣業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 派遣法改正後の許可要件である純資産額を満たすことができる
  • 大手傘下の下で新たな企業への派遣案件を獲得できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

人材派遣業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 経験のある社員や登録スタッフの母集団を確保できる
  • 派遣数を増加し事業規模を拡大できる
  • 抱える派遣人材が増えることで企業とのマッチング率を上げることができる
  • 専門分野に特化した人材を確保することで派遣先の範囲を拡大できる

人材派遣業界のM&A・売却・買収事例

iDAによるリンクスタッフィングのM&A

ファッション業界に特化した人材紹介・派遣事業などを手掛けるiDAは、リンクアンドモチベーションの子会社であり、営業・販売職に特化した国内人材紹介・派遣事業などを手掛けるリンクスタッフィングから人材派遣事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:より強固な収益基盤の確立

UTグループによる富士通エフサス・クリエのM&A

製造業向けの技術者派遣やアウトソーシング事業を手掛けるUTグループは、富士通グループである富士通エフサスの完全子会社で、ICT関連の人材派遣・紹介などを手掛ける富士通エフサス・クリエの株式51%を取得しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:富士通グループとの関係性強化

クラウドワークスによるコデアルのM&A

クラウドソーシングサイトを運営するクラウドワークスは、エンジニアを中心としたダイレクトマッチングサービスを手掛けるコデアルの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:マッチング事業の中長期的な収益性確保・成長力強化

パソナグループによるMore-Selections社のM&A

人材派遣・紹介、BPO、再就職支援、教育・研修、人事コンサルティングなどを手掛けるパソナグループは、企業法務に特化した人材派遣、就職支援・転職支援・スカウトサイトの運営、研修・セミナー開催などを手掛けるMore-Selectionsを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:コンプライアンス領域の事業拡大

ディア・ライフによるDLXホールディングスのM&A

不動産事業、不動産投資事業、人材サービス事業などを手掛けるディア・ライフは、コールセンターによる保険契約の取次業務人員の派遣に特化した事業を手掛けるDLXホールディングスの株式51.22%を取得しました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:不動産部門の派遣事業への進出

デルタホールディングスによるエヌジェイホールディングスのM&A

人材派遣や人材紹介、請負サービスなどを手掛けるデルタホールディングスは、化学や情報分野を専門とするエンジニアの人材派遣を手掛けるトーテックの株式70%を取得しました。

  • 実行時期:2018年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客ネットワークの獲得

オートバックスセブンによるサポート・エーのM&A

主力であるオートバックス事業に加えて、海外での卸売事業や輸入車ディーラー事業を手掛けるオートバックスセブンは、テンプスタッフの子会社として人材派遣事業やアウトソーシング事業を手掛けるサポート・エーの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2017年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:安定的な人材確保

おわりに

本記事のまとめ

人材派遣業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

人材派遣業界の市場規模は経済動向や法規制といった外部要因に依存するため、安定して事業を運営可能な大手への事業集約といった業界再編が進んでいます。

さらに、あらゆる業界で人材不足が深刻化している現在では人材派遣の需要はますます拡大しているため、派遣人員を確保するためにも、人材派遣業界におけるM&Aは今後もさらに加速していくでしょう。

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