データセンター業界の業界動向、M&A・売却・買収事例21選!

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データセンター業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。データセンター業界は、通信量の増加に伴い需要が急拡大しています。

本記事では、そうしたデータセンター業界の市場動向を解説するとともに、データセンター業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

データセンター業界の概要・市場動向

データセンター業界とは

データセンター業界とは、メインフレームやサーバーなどのコンピュータやデータ通信用設備の設置・運用に特化した施設を運営する業界をいいます。

データセンターでは円滑なネットワーク環境を維持するために大量電源や冷却設備が備えられており、災害の多い日本では耐震性や免振性に優れていることが重要です。

データセンターには、個々の企業のIT機器をデータセンターに預ける形態と、データセンター側のサーバーなどを借りる形態に分類されます。

クラウドサーバーでは一連の準備・管理はサーバー側が担うのに対して、データセンターを利用する場合はハードウェア機器の準備や管理はユーザー自身が行うという違いがあります。

データセンター業界の市場動向

急成長するデータセンター市場

データセンター市場は、5GやIoT化の普及により今後も成長が期待されています。

IDC「国内データセンターサービス市場予測を発表」によると、2021年の市場規模は1兆7,341億円となり、2020年から2025年まで年率12.5%で拡大することが見込まれています。

コロナパンデミック初期には投資の先送りが発生したことで需要が一時停滞しましたが、ITインフラにおけるリモート運用やクラウドサービスの利用が増加したことでデータセンターの利用も拡大しました。

今後のデータセンター業界の傾向としては、クラウドサービスが市場を牽引する一方でデータセンター内に設置されたサーバーを貸し出すホスティングサービスは縮小することが見込まれます。

また、クラウドへの移行が進行することでSIer系事業者の縮小も予測されています。

通信量の増加

データセンターの需要は通信料の増加に伴い高まっています。

総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2022年5月分)」によると、固定系ブロードバンド(大容量のデータを高速で通信できるインターネット回線全般)サービス契約者の総ダウンロードトラフィックは、右肩上がりで増加しており2022年5月期には前年同月比で8.8%増加しています。

データ通信量増加に伴って、データを演算や蓄積を行うサーバーへの需要の高まりも予測されます。

ハイパースケールデータセンターの拡大

増加する通信量に対応するために、従来のデータセンターよりも規模が大きいハイパースケールデータセンター(HSDC)が急拡大しています。

2020年時点でのHSDC数は597で、このうち6%が日本国内にあるとされています。

今後はHSDCのラック数がリテール型のラック数を上回ることが見込まれており、現在も多くのHSDCの建設が予定されています。

消費電力のグリーン化

データセンターでは電力消費量の大きいサーバーを常時稼働しているため、消費電力のグリーン化が課題になっています。

経済産業省・総務省「デジタルインフラ(DC等) 整備に関する有識者会合(第1回事務局説明資料)」では、データセンターの省エネに関してデータセンター業共通の省エネ目標を定めることが提案されています。

また、経済産業省「次世代デジタルインフラの構築」においても、光電融合技術を用いることで省エネ化・大容量化・低遅延化が実現させて、2030年までにデータセンターあたり40%以上の省エネ化を実現することが示されています。

EUでは2030年までにデータセンターがカーボンニュートラルになることを求めているほか、北欧では熱のリサイクルやデータセンターの節電に関する研究が盛んに行われています。

日本ではデータセンターにおける再生可能エネルギーの利用は少ないため、今後は品質の維持とともに消費電力のグリーン化も進展していくと考えられます。

データセンター業界のM&A

データセンター業界では、データセンターが設置される地域の情勢や自然環境を背景としてクロスボーダーM&Aが活発です。

日本では地震などの災害リスクが高い一方、地政学リスクは低いです。海外ではテロや内戦などのリスクが高い地域もあるため、リスク分散を目的にクロスボーダーM&Aが選択されやすい傾向があります。

近年ではデータセンターを運営する企業数が減少していますが、これは大手事業者による中小規模の事業者の買収が増加していることが背景にあります。

データセンター業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

データセンター業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 大手資本の下で効率的な運用を実現することができる
  • データ量の増加に対応することができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

データセンター業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の抱える専門知識を有する人材を確保できる
  • 売り手の抱える既存顧客を取り込める
  • 複数拠点を構えることでリスクを分散できる
  • システムや設備をそのまま活用できる

データセンター業界のM&A・売却・買収事例

TOKAIホールディングスによるアムズブレーンのM&A

エネルギー事業、総合リフォーム事業、情報通信サービス事業などを手掛けるTOKAIホールディングスは、岡山県のソフトウェア企業であるアムズブレーンの株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:システム開発力の強化

さくらインターネットによるIzumoBASEのM&A

データセンター事業を手掛けるさくらインターネットは、従来ハードウェアが提供してきたストレージ機能をソフトウェアで実現し、より高い効率性や自動化等を実現するストレージ仮想化技術を用いた「Izumo FS」の製品開発を手掛けるIzumoBASEの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2018年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ストレージサービスの共同開発

中電工によるRYB Engineering Pte. Ltd.のM&A

中電工は、シンガポールにおいてデータセンター工事を手掛けるRYB Engineering Pte. Ltd.の発行済株式70%を取得しました。

  • 実行時期:2017年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:東南アジアにおける事業拡大

ブロードバンドタワーによるジャパンケーブルキャストのM&A

コンピュータプラットフォーム事業、メディアソリューション事業を手掛けるブロードバンドタワーは、ケーブルテレビ事業者向け映像、音声、データ配信の専用プラットフォームサービスを提供するジャパンケーブルキャストの株式を取得しました。

  • 実行時期:2017年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:関係強化

アエリアによるImpressionのM&A

データセンターの運用などを手掛けるアエリアは、投資用不動産の販売を主体として、投資用マンション開発や住居用不動産販売並びにリノベーション事業などを手掛けるImpressionを株式交換完全子会社とする株式交換を実施しました。

  • 実行時期:2017年7月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:不動産テックの拡充

ミライトホールディングスによるLantrovision(s)LtdのM&A

総合エンジニアリング会社としてデータセンター関連事業などを手掛けるミライトホールディングスは、シンガポールでLAN配線関連事業を手掛けるLantrovision(s)Ltdを子会社化しました。

  • 実行時期:2016年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外での事業展開

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズによるLux e-shelterのM&A

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズは、欧州大陸にデータセンターを保有するドイツ最大手のデータセンター事業者であるLux e-shelterを子会社化しました。

  • 実行時期:2015年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:欧州での需要拡大

アイシンによるアイシン・インフォテックスのM&A

住生活関連製品の製造販売を行っているアイシンは、データセンターの運営を行っているアイシン・インフォテックスを吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:開発リソーセスの確保とデジタル人材育成の強化

日本サード・パーティによる日商エレクトロニクスのM&A

海外メーカの日本市場参入をサポートしている日本サード・パーティは、情報通信設備事業等を展開する日商エレクトロニクスと資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2020年6月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:4億2,300万円
  • 目的:既存事業領域の拡大

都築電気によるツヅキインフォテクノ東日本およびツヅキインフォテクノ西日本2社のM&A

情報システム事業等に取り組む都築電気は、通信機器及び電気通信設備メンテナンス等を行うツヅキインフォテクノ東日本とツヅキインフォテクノ西日本2社を吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年10月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益の拡大

協立情報通信による神奈川協立情報通信のM&A

情報通信設備の構築やソフトウエア事業を行う協立情報通信は、同じく情報通信設備事業に取り組む神奈川協立情報通信を吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年7月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:管理体制の効率化

中部テレコミュニケーションによるKDDIの中部地区におけるauひかりマンション事業のM&A

電気通信事業を行っている中部テレコミュニケーションは、日本大手の電気通信事業者KDDIの中部地区におけるauひかりマンションのau one net事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:FTTH事業のさらなる成長

電源開発によるJ-POWERテレコミュニケーションサービスのM&A

エネルギーと環境の共生を目指す電源開発は、電力保安通信設備等の運営を行うJ-POWERテレコミュニケーションサービスを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:一体的・機動的サービス提供が可能な体制への移行

北陸電話工事によるメディア・テクノ・サービスのM&A

総合エンジニアリング企業の北陸電話工事は、電気通信設備の設計・工事・保守等を行っているメディア・テクノ・サービスを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:施工力・保守力/民需事業の強化

ICコーポレーションによるエフティコミュニケーションズのM&A

有価証券を含む資産の取得売買などを行っているICコーポレーションは、情報通信設備販売を行っているエフティコミュニケーションズを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値拡大

新栄通信による新栄電設のM&A

通信線路工事事業等を展開している新栄通信は、光通信設備のインフラ構築を手掛ける新栄電設を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:通信インフラ事業のさらなる拡大

電気興業によるディーケーシーのM&A

各種電気通信施設・通信機器の製造・建設等を行う電気興業は、電気通信施設の設計・建設工事の施工を行っているディーケーシーを吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業の集中・営業力の強化、消化能力の強化

アンリツによる高砂製作所のM&A

情報通信機器、デバイスなどの事業を展開するアンリツは、情報通信機器、制御通信機器事業に取り組む高砂製作所を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:「EVおよび電池測定」分野の開拓

TISによるEntropica Labs Pte. Ltd.のM&A

データセンターなどのITソリューションを提供するTISは、量子コンピュータ上の応用に注力するEntropica Labs Pte. Ltd.と資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2020年05月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:技術者育成や市場開拓

三菱重工業によるConcentric, LLCのM&A

三菱グループの重工業メーカーの三菱重工業は、産業用電源システムソリューションのトップサービスプロバイダーであるConcentric, LLCを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年07月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:先進的でクリーンかつ効率的な電源ソリューションの提供

KDDIによるAllied Properties REITのM&A

日本大手の電気通信事業者KDDIは、カナダでデータセンター事業の運営を行っているAllied Properties REITよりデータセンター事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年06月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:約1,446億円
  • 目的:北米エリアにおけるデータセンター事業の強化

おわりに

本記事のまとめ

データセンター業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

同業界では、5G・IoT・AIの進展に伴い通信量が増加したためにデータ管理・運用の需要が高まっています。

今後はより大規模なデータを処理するためのハイパースケールデータセンター(HSDC)の建設や消費電力の効率化などが求められています。

今後もデータセンターの需要はますます高まることが予想されるため、リスク分散や処理可能なデータ量の増加を目的としたM&Aが実施されると見込まれます。

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