食品製造業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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食品製造業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。食品製造業界では変化する市場への対応の手段としてM&Aが活用されています。

本記事では、そうした食品製造業界の市場動向を解説するとともに、食品製造業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

食品製造業界の概要・市場動向

食品製造業界とは

食品製造業とは、原材料を加工し食品・飲料の製造・販売を手掛ける業界を指します。

一般的には原料を仕入れ、製造したものを卸売業者に販売し、小売業者や外食業者に渡ります。販売先である小売業者や外食業者に直接商談するケースが多いですが、流通や口座の関係で間に卸売業者が入るケースが多いです。

食品製造業界には大きく分けて、加工部門に原料を供給する「素材型」と、仕入れた原料で加工品を製造する「加工型」があります。素材型には製糖、製粉、製油などがあり、加工型にはパン、菓子、麺類などがあります。

食品製造業界の市場動向

人口減少や低単価化による市場縮小

少子高齢化や食料品の低価格化により、市場全体は縮小傾向にあります。

マクロ環境として日本の人口は減少しているため、これによって国内の食品需要は減少傾向にあり、将来的には供給過多になることが懸念されています。

また、消費者の節約志向や所得水準の減少により、食料品の低価格指向が進んでいることを背景に価格競争が激化しており、国内市場のさらなる縮小が危惧されています。また流通業界の集約化による値下げ圧力も、低価格の一因となっています。

食品製造コストの増大

食品の低価格化が進む一方で、食品製造にかかるコストは上昇傾向にあります。

近年は穀物の高騰や、原油価格の高騰、食の安全を確保するための品質保証などコスト増加の要因が数多く存在します。特に、円安の傾向が強まっていることから、海外から輸入している原料費の負担が増えています。

また、食品ロスや海洋プラスチックごみの問題などへの対応も求められており、食品製造業界は多くの問題の解決が求められています。

こうしたコストの増大に対応するため値上げを検討する企業も多いですが、食品の低価格化に逆行するため難しい状況が続いています。

「食の安全」確保に向けた対応

近年は食品の健康志向ブームなど、消費者のニーズが多様化していると言えます。

また、食品の偽装表示問題などから、消費者の「食の安全」への意識も高まっています。食の安全の確保は企業の存続に関わる重大な問題のため、各社早急な対応を迫られています。

この問題の解決策として、生産・加工・流通の段階において食品の移動を確認する「食品トレーサビリティ」の導入が進んでおり、すでに米・牛肉の分野では義務化されています。

食品製造業界のM&A動向

食品製造業界では、コストの増大や価格競争を背景に近年業界再編が進んでいます。

特に、素材型の企業では他者との差別化が難しいため、コストの削減やスケールメリットの獲得を目的としたM&Aが多く見られています。また、新しい加工品の開発など、事業の多角化を意図したM&Aも行われています。

加工型の企業では、素材型の企業とのM&Aにより事業の多角化を目指したり、海外進出を見据えた外国企業とのM&Aが進んでいます。

また、消費者ニーズの多様化を受け、健康食品を取り扱う企業の食品製造業への新規参入など、周辺企業のM&Aも頻繁に行われています。

食品製造業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

食品製造業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 有力な大手企業のもとで安定的な経営を持続できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

食品製造業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 垂直統合することで製品と流通を一括化できる
  • 新商品の開発に必要な技術やノウハウを獲得できる
  • 売り手と事業を統合することでスケールメリットを享受できる
  • 異業種からの新規参入の場合、技術や設備を短期間で獲得できる

食品製造業界のM&A・売却・買収事例

小林製薬による梅丹本舗のM&A

栄養補助食品を中心に事業を展開する小林製薬は、梅専門メーカーである梅丹本舗を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウの獲得による事業の拡大

不二製油とcottaの資本業務提携

植物性の原料を中心とした食品素材を手掛ける不二製油は、製菓・製パン材料のECサイトを手掛けるcottaと資本業務提携を結びました。

  • 実行時期:2022年5月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:約2億8800万円
  • 目的:新商品の開発を新規需要の創造

亀田製菓によるマイセンのM&A

米菓の製造・販売を手掛ける亀田製菓は、グルテンフリー食品の製造・販売を手掛けるマイセンを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新商品の開発とノウハウの獲得

21LADYによるあわ家惣兵衛のM&A

ライフスタイル事業を展開する21LADYは、和菓子メーカーのあわ家惣兵衛を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の相互活用によるシナジー創出

エア・ウォーターによる元気のM&A

食品・農業・医療関連事業など幅広く展開しているエア・ウォーターは、黒にんにくを製造・販売する元気を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の相互活用によるシナジー創出

味の素とおいしい健康の資本業務提携

食品の製造・販売を手掛ける味の素と、栄養管理アプリや医療機関と連携した患者支援を手掛けるおいしい健康は資本業務提携を結びました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:第三者割当増資・資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の技術を活用したオープンイノベーションの創造

フジッコによるフーズパレットのM&A

食品製造を手掛けるフジッコは、百貨店を中心に中華総菜を販売するフーズパレットを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウの獲得による事業の拡大

おわりに

本記事のまとめ

食品製造業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

食品製造業界は少子高齢化や価格競争によって市場が縮小傾向にあります。また、原材料の高騰や食の安全確保への対応を迫られることで負担すべきコストは年々上昇しています。

こうした問題を背景に、食品製造業界ではM&Aによる業界再編が進んでいます。また、ニーズが多様化したため、周辺業界のM&Aも頻繁に実施されており、今後もこうした傾向は続くとみられています。

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