工作機械業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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工作機械業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。工作機械業界では他の製造業界と同じく、後継者問題や人材不足の解消を目的としたM&Aが多く見られます。

本記事では、そうした工作機械業界の市場動向を解説するとともに、工作機械業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

工作機械業界の概要・市場動向

工作機械業界とは

工作機械業界とは、主に製造業で使用される機械を製造する業界を指します。

自動車、飛行機などの乗り物から、スマートフォン、テレビ、パソコンなど日常的に使われる製品を作るための機械を製造しています。作られる機械は多種多様で様々な強みや製品をもつ企業があります。

工作機械業界はメインとなる自動車をはじめ製造業界の景気に左右されます。例えば自動車の需要が高まれば自動車を作る機械も必要になるため、工作機械の需要は高まります。

逆に製造業界の景気が悪化すれば工作機械の需要も減少します。近年ではアメリカと中国の貿易摩擦により、商品である日本の自動車の製造も滞ったため、自動車の工作機械の需要も減少しました。

工作機械業界の市場動向

設備投資の再開による需要の回復

経済産業省「生産動態統計年報」によると、2021年の金属工作機械の販売額は9234億円で前年比21.2%増でした。大幅に減少した2020年から、大幅に回復しています。

金属工作機械の販売額は一定の周期で増減を繰り返しています。2016年から2018年は増加傾向、2018年から2020年は減少傾向、2021年になり再び増加傾向にあります。

2018年から2020年までは米中の貿易摩擦や新型コロナウイルスの感染拡大により需要が低迷していました。

しかし2021年に入り、コロナ禍により設備投資を抑えていた企業が一気に投資を開始したため、需要が回復したと考えられます。

周期的な需要の推移

工作機械の受注サイクルは景気の先行指数とも呼ばれています。それは多数ある設備投資の中でも工作機械が最初に投資される分野だからです。

2018年から2020年は米中貿易摩擦や新型コロナウイルスにより工作機械の需要は低迷していましたが、2021年に生産額が上昇に転じたため、下落トレンドから上昇トレンドに転換したと考えられます。

工作機械業界は大きく「高級機・高価格製品の宇宙、航空機、医療機器」「中級機・中価格製品の自動車、電機精密部品」「低級機・低価格製品の一般部品」に分けられます。

日本の工作機械企業は主に中級機から高級機の製造を手掛けていますが、近年は新興国企業が高級機も手掛けるようになり、国際競争はますます激しくなると考えられます。

工作機械と先進技術の融合

工作機械業界では省人化設備や自動運転関連、5G関連の機械の需要が高まっています。

日本のみならず先進国では人手不足や人件費の高騰が問題となっており、FAなどの工場における生産ラインや検査を自動化する機械の需要が高まっています。先進国だけでなく新興国でも、製造効率向上のため自動化機械の需要があります。

また、自動運転技術や次世代のIT技術である5GやAI、IoTなどの新たなテクノロジーへの設備投資が、工作機械業界の需要を高めるのではないかと期待されています。

工作機械業界のM&A動向

工作機械業界では人手不足が問題になっています。製造業全般で人口減少による人手不足が問題となっており、工作機械業界もその一つです。

また後継者不足も重大な問題の一つです。帝国データバンク「後継者不在率動向調査」によると、後継者問題に直面している製造業の中小企業は53.7%に上っています。

これらの問題解決のためM&Aは今後ますます活用されていくものと見られます。

また、近年はNC装置の技術力向上を目指して、IoTが取り入れられるようになりました。

IoT事業への取り組みは機械の性能をあげるだけでなく、ソフトウェアやサービスの見直し、コスト削減による経営効率の向上など多くのメリットを生み出します。

そのためIT技術の獲得や強化を目的としたM&Aも今後増えると考えられます。

工作機械業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

工作機械業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
  • 創業者利益を獲得できる
  • 単独では難しい海外進出を狙える

買い手のメリット

工作機械業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 隣接業種から工作機械業界に新規参入できる
  • 新しい地域への進出や顧客を獲得できる
  • 売り手の持つノウハウや技術力を獲得できる
  • 既存の技術とのシナジーを享受できる
  • 売り手の抱える技術力を持った人材を確保できる

工作機械業界のM&A・売却・買収事例

クボタホールディングスヨーロッパB.V.によるブラベンダーテクノロジーのM&A

クボタの欧州機械統括子会社であるクボタホールディングスヨーロッパB.V.は、量産式フィーダの世界的メーカーであるドイツのブラベンダーテクノロジーを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:製品ラインナップの拡充、ネットワークの相互活用

アルフレッサHDとドーナッツロボティクスの資本提携

医薬品、医療用検査試薬、医療用機器などの卸売業者であるアルフレッサと、羽田空港ロボットプロジェクトや世界初のスマートマスクを手掛けるドーナツロボティクスは資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2021年5月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ロボット・デジタル技術への注力

横浜ゴムによるTRELLEBORG WHEEL SYSTEMS HOLDINGのM&A

日本三位のタイヤ販売額を誇るタイヤ・ゴムメーカーの横浜ゴムは、スウェーデンに本社を置く農業機械や産業車両用のタイヤを生産・販売するTrelleborg Wheel Systemsを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:売上分野の偏りの改善

ジャパンエレベーターサービスHDによるトヨタファシリティーサービスのM&A

エレベーターなどの保守・管理を手掛けるジャパンエレベーターサービスホールディングスは、エレベーターや立体駐車場の保守点検サービスを手掛けるトヨタファシリティーサービスを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:関西圏・首都圏での事業基盤強化

リックステクノによるCEMのM&A

リックスの連結子会社で自動車部品洗浄装置・その他産業用機械の製造販売を手掛けるリックステクノは、搬送機や加工機を手掛けるCEMを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:産業機械の内製化

凸版印刷によるアイオイ・システムのM&A

世界最大規模の総合印刷会社である凸版印刷は、デジタルピッキングシステムや製造業DXを手掛けるアイオイ・システムを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:技術・ノウハウの獲得

おわりに

本記事のまとめ

工作機械業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

工作機械業界では人手不足や後継者問題が深刻となっており、これらの問題を解決するために盛んにM&Aが行われています。

また、工作機械業界ではIoTやIT化が進んでおり、他業界との業務提携などのM&Aも行われています。こうした傾向は、今後もますます進んでいくと考えられます。

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