熊本県のM&A・会社売却・買収事例、事業承継の動向
現在、熊本県をはじめとした全国の中小企業において、後継者不在や事業の更なる成長を目的としたM&Aが注目を集めています。
本記事では、そうした熊本県のM&A動向を解説するとともに、熊本県における会社売却・買収事例や、事業承継の動向をまとめてご紹介します。
熊本県のM&A・事業承継動向
熊本県の現状
熊本県の概要
熊本県の人口は172.7万人です。また15歳未満の人口は22.6万人(13.1%)、15~64歳の人口は95.0万人(55.0%)、65歳以上の人口は55.0万人(31.9%)です。
地域別では熊本市が73.8万人、八代市が12.1万人、天草市が7.4万人で上位三市で県の人口の半分以上を占めています。(参照:熊本県「令和3年 熊本県の人口と世帯数」)
熊本県は世界有数のカルデラがあることから「火の国」と呼ばれています。紀元前から営まれた人々の歴史・文化があり、古社・阿蘇神社など神話にまつわる場所も多いことで知られています。
また郷土料理も数多く、加藤清正が広めたと言われている馬肉が最も有名です。他には春雨を使った太平燕(タイピーエン)や、味噌と和からしを蓮根の穴に詰めた辛子蓮根などがあります。
熊本県の県内総生産と製造業
熊本県の県内総生産額は6兆3634億円です。
うち第一次産業が1877億円、第二次産業が1兆6216億円、第三次産業が4兆5156億円です。熊本県は第一次産業の占める割合が高く、全国で8位になっています。(参照:熊本県「令和元年度 県民経済計算 推計結果」)
熊本県の製造業の事業所数は1987事業所で九州で3番目に多くなっています。また従業者数は9万5110人で九州地方で2番目、出荷額では3番目に多くなっています。
産業中分類別では「食料品」の事業所が最も多く、製造業の25.0%を占めています。次いで「金属製品」(9.6%)、「生産用機器」(7.8%)となっています。三業種を2017年と比較すると、生産用機器の事業所のみ増加しています。(参照:熊本県「熊本県の工業(2019年)」)
熊本県の経済と休廃業動向
熊本県の経済は海外の経済動向や原材料価格の変動、感染状況に注視する必要があるものの持ち直していると考えられます。
また熊本県内企業の2022年の休廃業・解散件数は586件で、九州地域で福岡県に次いで2番目に多くなっています。
休廃業・解散した企業の代表者の平均年齢は70.5歳で、70代が最も多くなっています。この数値から代表者の高齢化が進んでいるにも関わらず、事業所系がスムーズに行えず休廃業に至ってしまったケースが多いことが分かります。
九州全体の休廃業・解散を業種別で見ると建設業(788件)が最も多く、次いでサービス業(694件)、小売業(372件)となっています。
また前年と比べて化粧品卸売業での休廃業・解散件数が大幅に増加しており、コロナ禍によりリモートワークや外出自粛で化粧品重要が落ち込んだ影響を受けていると考えられます。(参照:帝国データバンク「九州・沖縄地区での『休廃業・解散』動向調査(2022年)」)
熊本県のM&A・会社売却・事業承継動向
熊本県内で後継者が未定、または不在の企業は50.0%でした。
事業承継が進んでいない要因として「後継者の育成に時間がかかる」、「専門家がおらず経営状況の把握が難しい」、「M&Aを具体的に考えている企業が少ない」といった理由が考えられます。
熊本県の事業承継者は「親族」が多いことが特徴です。
事業承継した会社の先代経営者との関係性は同族承継が最も多く51.8%でした。しかし2019年の55.4%から3.6ポイント減少しており、年々割合は低下しています。
一方M&Aによる事業承継は17.5%で2019年から5.1ポイント上昇しており、今後M&Aによる事業承継はより盛んになっていくと考えられます。
事業承継の方法としてM&Aは有効な手段の一つであり、支援機関や専門家への相談が効果的です。
熊本県でM&A・事業承継を推進するには
M&A仲介会社などの専門家へ相談する
熊本県でM&Aや会社売却を推進する手段として、M&A仲介会社などの専門家に相談する方法があります。
M&A仲介会社とは、M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーが売り手企業と買い手企業の間に立って、中立的な立場でM&Aの成立を支援する会社です。
M&Aにおいては法務的な手続きや税務処理、相手企業の選定まで、幅広い領域の専門性が必要不可欠であるため、こうした専門のアドバイザーに相談することは有効な手段の一つと言えます。
M&A仲介会社は得意領域や事業規模によって多数の会社が存在しているため、自社に合った会社を見つけることが重要です。
公的機関や金融機関へ相談する
熊本県よろず支援拠点
熊本県よろず支援拠点では経営課題を抱える中小企業・小規模事業者に、無料でサポートを行っています。
個別相談だけでなく出張相談会、セミナー、少人数勉強会など幅広い支援メニューを展開しています。
熊本県事業承継・引継ぎ支援センター
熊本県事業承継・引継ぎ支援センターは国が実施している事業で、無料で相談することができます。
中小企業のM&Aに精通した専門家がワンストップで支援を行っています。
熊本第一信用金庫
熊本第一信用金庫では親族間の引継ぎ、社内の人材へのバトンタッチ、M&Aによる第三者への譲渡を支援しています。
熊本県事業承継・引継ぎ支援センターと連携し事業承継に取り組んでいます。
熊本銀行
熊本銀行では地域に根差した金融機関として蓄積した情報を活用し、M&A専門スタッフが最適なM&Aアドバイザリーサービスを提供しています。
M&Aスキーム策定のサポートから実行まで支援しています。
熊本県のM&A・売却・買収事例
日清製粉グループ本社とDAIZの資本提携
製粉、食品、中食・惣菜事業などを手掛けるグループの経営戦略の立案、グループ企業の管理・支援を行っている日清製粉グループ本社は、発芽大豆由来の植物性食品の開発・生産・販売を手掛けるDAIZ(熊本県熊本市)と業務資本提携を結びました。
- 実行時期:2022年9月
- スキーム:資本提携
- 取引価額:非公開
- 目的:持続可能な社会と企業成長の両立
SFPホールディングスによるジョー・スマイルのM&A
海鮮居酒屋「磯丸水産」や手羽先から揚げ専門店「鳥良」や寿司料理をメインにした「きづなすし」を運営するSFPホールディングスは、熊本県で居酒屋や喫茶店などの飲食サービスを手掛けるジョー・スマイル(熊本県熊本市)の全株式を取得しました。
- 実行時期:2019年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ブランドの育成・強化
肥後交通グループとミハナタクシーの新設合併
熊本県で観光タクシー、マイクロ、ジャンボタクシーなどを手掛ける肥後交通グループ(熊本県熊本市)は、1949年設立でユニバーサルデザインタクシーも取り入れているミハナグループ(熊本県熊本市)は新設合併し、TaKuRooを新設し県下最大のタクシー事業者になりました。
- 実行時期:2021年4月
- スキーム:新設合併
- 取引価額:非公開
- 目的:統合による競争力強化
フージャースホールディングスによるホームステージのM&A
全国の中心市街地にて新築分譲マンション・シニア向け分譲マンション・新築分譲戸建て・スポーツクラブ運営などを手掛けるフージャースホールディングスは、マンション分譲・賃貸を手掛けるホームステージ(熊本県熊本市)の株式を100%取得し完全子会社化しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:九州地方への事業拡大
レノバによる大津ソーラー匿名組合事業のM&A
再生可能エネルギー事業を展開するレノバは、大津町ソーラー発電所(熊本県大津町)を所有する大津ソーラー匿名組合事業の出資持ち分を追加取得し子会社化しました。
- 実行時期:2017年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:6億4300万円
- 目的:地域に根差した再生可能エネルギーによる発電事業
オカダアイヨンによる南星機械、南星ウインテック、暁機工のM&A
大割機・小割機、油圧ブレーカー、鉄骨切断機などの建設機械の製造・販売・修理を手掛けるオカダアイヨンは、不動産業の南星(熊本県菊池市)からクレーンやローダー製造の南星機械、ウインチやケーブルクレーンの南星ウインテック、機械部品の暁機工を完全子会社化しました。
- 実行時期:2017年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:8億2800万円
- 目的:グループの経営基盤強化
イズミによる広栄のM&A
中国、四国、九州エリアでスーパーマーケットチェーンを運営するイズミは、熊本市内で地域密着型のスーパーマーケットを4店舗運営する広栄(熊本県熊本市)の全株式を取得し子会社化しました。
- 実行時期:2014年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ドミナント戦略の推進
おわりに
本記事のまとめ
熊本県におけるM&A・事業承継の動向や、会社売却・買収事例をご紹介しました。
熊本県でM&Aを行う際は、熊本県で実績のあるM&A仲介会社などの専門家や、全国を対象にM&Aを取り扱う仲介会社を活用することがおすすめです。
各M&A仲介会社は、業種や地域、取引規模、手数料体系などで強みが分かれ、提供しているサービスも異なるため、地域への強みに加え、こうしたポイントも事前に確認しておくとよいでしょう。
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