居酒屋業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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居酒屋業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。居酒屋業界は、アルコール需要の減少に加えてコロナの影響を受けて売上が減少している業界です。

本記事では、そうした居酒屋業界の市場動向を解説するとともに、居酒屋業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

居酒屋業界の概要・市場動向

居酒屋業界とは

居酒屋業界とは、日本式の酒場であり酒類を中心に料理などを提供する飲食店を営む業界をいいます。

昔ながらの大衆酒場のほか、立ち飲み式の居酒屋、コンセプト居酒屋など様々な形態が存在します。かつては幅広い料理を低価格で提供する画一的な居酒屋チェーンが主流でしたが、近年では特定の料理に特化した居酒屋や地域性を意識した居酒屋など斬新なビジネスモデルを採用するケースも増加しています。

居酒屋業界の市場動向

コロナによる業績の悪化

居酒屋業界は、コロナの影響により大きく売上が減少しました。コロナ当初の緊急事態宣言により客足が遠のいて以降、コロナが常態化した状況でも居酒屋離れが進行しています。

特に、宴会需要の低迷は顕著です。若者や企業による大人数の宴会が控えられており、コロナが収束した後もこの傾向が継続すると考えられます。

飲酒習慣の減少

アルコール自体の需要低下も居酒屋業界の縮小に繋がっています。

国税庁「酒のしおり」によると、酒類販売量数量は平成8年度の9,657千キロリットルをピークに、令和元年にはピーク時の84%に当たる8,128千キロリットルまで減少しています。この傾向は人口減少に加えて若者のアルコール離れや健康志向の高まりに起因します。

特に若者のアルコール離れは顕著です。厚生労働省「平成28年度国民健康・栄養調査報告」によると、20代の飲酒習慣者(週に3回以上飲酒し、飲酒日1日当たり1合以上飲酒すると回答した者)の割合は平成15年から平成28年にかけて男性が20.2%から10.9%に、女性は7.0%から4.4%まで低下しています。全年代の割合は男性が37.4%から33.0%、女性が6.6%から8.6%に変化しているため、若者の飲酒機会が特に減少していることが分かります。

これらの状況を踏まえて業界全体で新たな需要を取り込むため、若者でも飲みやすいお酒やノンアルコール酒を備えるなど若者向けをコンセプトにした居酒屋も増加しています。

居酒屋以外での飲酒増加

近年では、居酒屋以外の場でアルコールを嗜む機会が増加しています。

他業種からはファミレスやラーメン店がアルコールの提供などを通じて居酒屋部門に進出しています。「ちょいのみ需要」増加を収益機会と捉えた新規参入者が増加することで、居酒屋以外でもアルコールを摂取することが常態化しています。

また、コロナによる外食自粛は家飲み需要の増加に繋がっています。ホットペッパーグルメ外食総研の「トレンド座談会」レポートによると、コロナ前後で「家で食事とともに飲酒する機会」「飲酒を楽しむ目的として家で1人で飲酒する機会」が増加したと回答した割合はそれぞれ21.8%、17.1%に上ります。

コロナ収束後も一定数の家飲み需要が継続した場合、居酒屋需要の下押し圧力に繋がります。

居酒屋業界のM&A動向

居酒屋業界では、アルコール需要が減少する市場環境下で競争力を高めるためにM&Aが活用されています。

M&Aによって期待できるシナジーとして、提供メニューの拡大、エリアの拡大、物流の効率化、仕入れ時の価格交渉力などがあります。

近年では日本料理や日本式の居酒屋が海外に流行しているため、大手居酒屋運営会社が海外展開を進める際にM&Aが活用されることがあります。

居酒屋同士のM&Aのほか、外食業界の他業態企業が居酒屋事業に進出する際に既存の居酒屋事業を買収する例も見られます。

居酒屋業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

居酒屋業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手のブランドや知名度を利用できる
  • 仕入れを安価で行える
  • 買い手のメニューを提供できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

居酒屋業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 新たなエリアに進出できる
  • 既存の店舗をそのまま利用できる
  • 売り手のメニューやコンセプトを取り入れることができる
  • 売り手の常連客を取り込むことができる
  • 他業態からの参入の場合、居酒屋のノウハウを獲得できる

居酒屋業界のM&A・売却・買収事例

ダイナックホールディングスによるRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCのM&A

パブレストラン・居酒屋・バーの運営を手掛けるダイナックホールディングスは、サントリーが展開しているレストランサントリーの一つであり、ワイキキにある高級和食レストランサントリーホノルル「燦鳥」を運営するRESTAURANT SUNTORY U.S.A.,INCの株式51%を取得しました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業基盤の強化

フジオフードシステムによる暮布土屋のM&A

「まいどおおきに食堂」「神楽食堂 串家物語」「手作り居酒屋 かっぽうぎ」「つるまる」などを展開するフジオフードシステムは、関西を中心に直営店7店舗・のれん分け2店舗を展開する蕎麦専門店である暮布土屋の株式90%を取得しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新業態での店舗展開

チムニーによるシーズライフのM&A

「はなの舞」「さかなや道場」などの居酒屋を手掛けるチムニーは、東京関東圏を中心に焼肉店10店舗・居酒屋1店舗を運営するシーズライフの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:焼肉業態への進出

クリエイト・レストランツ・ホールディングスによるいっちょうのM&A

居酒屋など多業態の飲食店運営を手掛けるクリエイト・レストランツ・ホールディングスは、北関東を中心に和食レストランや居酒屋チェーン店の運営を手掛けるいっちょうの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:70億1,000万円
  • 目的:自社ブランドの多様化

梅の花によるテラケンのM&A

外食事業として「湯葉と豆腐の店 梅の花」「和食鍋処 すし半」を展開するほか、テイクアウト事業として「古市庵」「梅の花」の運営を手掛ける梅の花は、海産物料理の居酒屋「さくら水産」「大衆酒屋 てらけん本家」「豊漁居酒屋 わっしょい」などを展開するテラケンの株式58%を取得しました。

  • 実行時期:2019年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:購買面・物流面でのシナジー創出

SFPホールディングスによるジョー・スマイルのM&A

海鮮居酒屋「磯丸水産」や手羽先唐揚専門店「鳥良」「きづなすし」などを手掛けるSFPホールディングスは、熊本県で居酒屋をはじめ多業態の飲食店を展開するジョー・スマイルの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:売り手ブランドの育成・強化・広域展開

トリドールホールディングスによるMC GROUP PTE.LTD.のM&A

釜揚げうどん店「丸亀製麺」をはじめ、居酒屋やレストランなどを手掛けるトリドールホールディングスは、シンガポールの人気カレー店を運営するMC GROUP PTE.LTD.の株式70%を取得しました。

  • 実行時期:2018年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シンガポールへの事業展開

おわりに

本記事のまとめ

居酒屋業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

居酒屋業界は、コロナによる居酒屋離れに加えて若者のアルコール需要が減少しているため、アルコールの提供のみに依存する形態からの脱却が求められています。

日本式の居酒屋が人気な海外への進出や、アルコール需要減少が顕著な若者に向けたメニュー・コンセプトの立案など、新たな需要を取り組むことを目的にしたM&Aは今後ますます活発化していくと予想されます。

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