学習塾の買収・売却事例!学習塾業界のM&A最新動向やメリット

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学習塾業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。特に中小規模の塾を中心とした業界再編が加速しています。

本記事では、そうした学習塾業界の市場動向を解説するとともに、塾をはじめとした教育施設のM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

学習塾業界の概要・市場動向

学習塾業界とは

学習塾業界とは、公教育とは別に学習指導や進学指導などを行う教育施設を運営する業界を指します。

総務省が公表する日本標準産業分類では、学習塾を「小学生、中学生、高校生などを対象として学校教育の補習教育または学習指導を行う事業所」と定義しています。

学習塾の分類方法としては、教育指導の目的に着目した分類(受験指導を行う塾、公教育の補習を行う塾など)や指導方式による分類(1人の講師が大人数を指導する塾、個々の生徒に合わせた個別指導の塾など)があります。

学習塾業界の市場動向

少子化による生徒数の減少

学習塾のような教育施設の市場規模は生徒数に比例することから、少子化が進行する日本では塾間の競争が激化しています。文部科学省の学校基本調査からも在学者の減少は顕著であり、今後も継続して減少することが見込まれます。

塾の利益構造は、人件費、広告宣伝費、施設費などの固定費が大半を占めているため、生徒数の減少が利益を大きく押し上げることになり、中小・個人経営の学習塾は利益を維持することが困難になってきています。

個別指導塾の増加

昨今では、一人の講師が多数の生徒に指導する集団指導とは異なり、個々の生徒の理解度に合わせて指導を行う個別指導の教育施設が主流にになりつつあります。

この傾向は、小学校や中学校受験の増加にみられるように、子どもの将来を重要視する家庭が増加していることに起因します。実際、参議院企画調査室の調査でも、子どもの数は減少する一方で一人当たり年間教育費は増加傾向にあります。

教育環境の変化

近年では個別指導の新形態としてeラーニングの導入が進行しています。事前に録画した講義を、生徒の都合の良い時間に個々のペースで視聴できる形式は、学習効率の向上にも寄与しています。

また、カリキュラムの提案時にAIにより生徒の理解度を分析して、最適なカリキュラムを提供するオーダーメイド学習を取り入れる学習塾も増加しています。こうした傾向は個別指導への需要を一層高めることになります。

今後はプログラミング教育や英語必修化などの教育課程の変化に対応して、学習塾が提供する教育範囲も拡大していくと考えられます。

労働集約型の事業モデル

塾業界においては講師が重要な経営資源です。

特に、eラーニングの普及により地理的な制約なしで遠隔指導を受けられることから、人気講師の獲得や育成は教育施設の課題になっています。

近年では人事確保のために講師の待遇が改善した一方、従来から大きな割合を占めていた人件費が一層増加したことで、利益率が低下するという新たな課題も発生してきています。

学習塾業界のM&A動向

大手学習塾では顧客層や事業セグメントの拡大を目的としてM&Aを活用した塾同士の提携や再編が相次いでいます。

こうした業界内の提携や再編が進行したことで、各社のターゲット層の拡大やノウハウの拡充が進行し、事業を拡大する大手事業者が増えてきています。

昨今の市場環境においては、eラーニングなどのデジタル教育をはじめとして、各学習塾は教育環境の変化に対応することが求められています。特に中小規模の塾では対応が遅れている企業も多く存在するため、今後はM&Aを通じた業界再編がさらに加速していくと予想されます。

学習塾業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

学習塾のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 事業を存続し生徒の学習環境を維持できる
  • 大手グループ傘下で充実したカリキュラムを提供できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

学習塾のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の抱える優秀な講師を獲得できる
  • 指導方法などのノウハウを獲得することで多様なニーズに対応できる
  • 新たな年齢層の生徒を獲得できる
  • 新たな地域へとすぐに進出できる

学習塾・教育施設のM&A・売却・買収事例

ヤマノホールディングスによる東京ガイダンスのM&A

グループとして美容事業、和装宝飾事業、DSM事業、教育事業を手掛けるヤマノホールディングスは、スクールIEに加盟し東京・神奈川で16店舗の運営を手掛ける東京ガイダンスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2022年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億4,300万円
  • 目的:グループ内の教育事業の拡大

昴によるタケジヒューマンマインドのM&A

沖縄で大学受験専門予備校「即解ゼミ127°E」の運営を手掛けるタケジヒューマンマインドは、九州・沖縄で68校の学習塾の運営を手掛ける昴を吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益力の強化と事業運営の効率化

明光ネットワークジャパンによるSimpleのM&A

「明光義塾」などの学習塾事業や人材事業を手掛ける明光ネットワークジャパンは、保育士・幼稚園教諭に特化した転職支援サービス「しんぷる保育」、 栄養士に特化した転職支援サービス「しんぷる栄養士」を運営するSimpleの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:人材事業でのシナジー効果

ヒューリックによるリソー教育のM&A

不動産の所有・賃貸・売買・仲介業務を手掛けるヒューリックは、学習塾「TOMAS」を運営を運営するリソー教育の株式を取得し、資本・業務提携契約を締結しました。

  • 実行時期:2019年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:教育事業への参画

城南進学研究者によるCheer plusのM&A

保育園や英語教室などを運営する城南進学研究社は、認可外保育園「サニーキッズインターナショナルアカデミー」を運営するCheer plusの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2015年
  • スキーム:公開買付
  • 取引価額:128億円
  • 目的:保育園や英語教室などの乳幼児教育事業の拡大

ZEホールディングスによる栄光ホールディングスのM&A

Z会のブランドで通信教育事業や対面教育事業を展開するZEホールディングスは、関東圏を中心に「栄光ゼミナール」ブランドで学習塾を展開する栄光ホールディングスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2015年
  • スキーム:公開買付
  • 取引価額:128億円
  • 目的:両社シナジー創出による市場環境変化への対応

おわりに

本記事のまとめ

学習塾業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

塾業界は近年生徒数が減少し市場縮小がみられる一方で、個別指導やeラーニングをはじめとしたデジタル教育といった新たな需要も生まれつつある業界です。また、労働集約型のビジネスモデルである故、人気講師の獲得や育成は多くの塾の共通課題となっています。

今後はこのような市場環境に対応するための手段として、売り手、買い手ともにM&Aを検討する企業がますます増加していくと予想されます。

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