スポーツジム・フィットネスクラブのM&A・売却・買収事例、業界動向

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スポーツジム・フィットネスクラブ業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。業態が多様化するスポーツジム・フィットネスクラブ業界では、コロナを契機として新たな業態を展開するためのM&Aが増加しています。

本記事では、そうしたスポーツジム・フィットネスクラブ業界の市場動向を解説するとともに、スポーツジム・フィットネスクラブ業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

スポーツジム・フィットネスクラブの概要・市場動向

スポーツジム・フィットネスクラブとは

スポーツジム・フィットネスクラブとは、会員制サービスによって健康維持や健康増進のために運動施設や専門指導を提供する施設をいいます。

事業者によってスポーツクラブ、ヘルスクラブ、アスレティッククラブなど表現されることがあります。スポーツジムの業態には、総合施設型、セルフトレーニングジム、サーキットトレーニングジム、パーソナルトレーニングジム、ヨガなど様々な種類があります。

日本では1970年代に誕生し、健康志向が高まった2000年代以降急速に普及しました。

スポーツジム・フィットネスクラブの市場動向

健康・美容に対するニーズの高まり

経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、スポーツジム・フィットネスクラブ業界の売上高、及び利用者数は2001年から2019年まで右肩上がりで増加していることが分かります。

成長の背景には、消費者の健康や美容に対する関心が高まったことが挙げられます。特に、ジム・スタジオ・プールなどを備えて総合的なメニューを提供する大型総合施設が、シニア層の顧客を取り込めたことが要因の一つと考えられます。

一方で、スポーツジム・フィットネスクラブ業界はコロナにより大きく売上を減少した業界です。

しかし、消費者の関心やニーズが変容したわけではなく、外出自粛やテレワークに伴い運動の機会が減少したことで新たな需要を取り込む機会も生まれています。

中長期的にはスポーツジム・フィットネスクラブ業界の市場規模はコロナ以前の成長率に戻ると予想されています。

事業者の業態が多様化

かつては大型総合施設が主流でしたが、2010年代には小規模で特定のサービスを提供する事業者が増加しました。

24時間営業ジム、ホットヨガ、パーソナルトレーニングジムなど細分化されたニーズに対応しようとする動きが加速しており、業界内の顧客獲得競争はますます激しくなっています。

フランチャイズを活用した小規模での店舗展開を戦略とする運営会社が増加したことも、業界の成長要因の一つです。

コロナ禍を経て優勝劣敗が明確化

コロナによるスポーツジム・フィットネスクラブ業界の落ち込みは前述しましたが、売上減少の影響は業態によって異なっています。

大型総合施設やサーキットとレーニングジムではシニア層の比率が高いためジムの利用を控える消費者が多かったり、一人のインストラクターが多数に指導を行う形態のトレーニングやヨガでは、入室人数を制限するなどの対応が必要となり、運営効率が低下しています。

一方で、顧客層が若い24時間営業のトレーニングジムでは密を回避しやすい構造でもあるため、コロナによる利用機会減少は早期に回復しています。

影響の大きい業態で展開している運営会社の中には、オンラインレッスンやアウトドア型フィットネスなどのコロナ禍の影響を受けにくい業態を新規展開しようとする動きもあります。

潜在的な更なる成長ポテンシャル

これまで順調に成長してきたスポーツジム・フィットネスクラブ業界ですが、まだまだ海外と比較すると日本のフィットネス市場規模は小さいと言えます。

クラブビジネスジャパンの「日・米・英の民間フィットネスクラブ市場規模データ(2016年〜2021年)」によると、日本のフィットネスクラブへの参加率は2016年から2019年の平均で3.9%となり、米国と英国は同平均がそれぞれ18.8%、14.9%であることからも日本での普及率の低さが見受けられます。

市場売上高も同期間の平均で、英国は日本の1.5倍、米国は日本の6.6倍と日本の市場規模が小さいことが分かります。

これらのことから、今後日本国内においてフィットネス市場はさらに高い成長率が見込める業界ともいえます。

スポーツジム・フィットネスクラブのM&A動向

スポーツジム・フィットネスクラブでは会員の確保、多店舗展開、既存施設とのシナジーを目的として大手企業による中小企業のM&Aが活発化しています。

業界シェアの半分近くを業界大手5社が占めていることもあり、コロナによる売り上げ減少により設備費、人件費などの固定費を吸収できない中小事業者を大手事業者が買収されるケースが増加しています。

また、ニーズの細分化に対応するために自社で展開していないサービスを扱う会社を傘下に入れることで、サービスを拡充する動きも多くみられます。

スポーツジム・フィットネスクラブにおけるM&Aのメリット

売り手のメリット

スポーツジム・フィットネスクラブのM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手の保有する既存顧客層にアプローチできるようになる
  • 買い手の保有するサービスを活用することで新たな業態に展開できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

スポーツジム・フィットネスクラブのM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の既存顧客層や会員を取り込むことができる
  • 新たな設備投資や店舗改装なしに新規店舗を保有できる
  • 売り手の店舗網を取り込むことで新たな地域で多店舗展開できる
  • 自社で扱っていない業態のサービスを展開できる

スポーツジム・フィットネスクラブのM&A・売却・買収事例

オカモトによるテーオー総合サービスのM&A

「ジョイフィット」ブランドでスポーツクラブを展開するオカモトは、保険代理業、総合施設型スポーツクラブの運営事業などを手掛けるテーオー総合サービスからスポーツクラブ事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ジョイフィット事業の拡大

ケイズグループによるRIPPLEのM&A

全国130店舗の鍼灸整骨院・エステサロンの運営、療養費請求代行、人材紹介コンサルティングなどを手掛けるケイズグループは、パーソナルトレーニング・ジムを手掛けるRIPPLEの一部株式を取得し、オンライン部門を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:事業譲渡、資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:実店舗運営に留まらぬオンライン事業の展開

エア・ウォーターによるプラスのM&A

産業ガス関連事業、ケミカル関連事業、医療関連事業、エネルギー関連事業、農業・食品関連事業、物流関連事業、海水関連事業などを手掛けるエア・ウォーターは、食料品小売、不動産賃貸、スポーツクラブ経営などを手掛けるプラスの株式51%を取得しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:農業・食品関連事業とのシナジー創出

アトラグループによるOne Third ResidenceのM&A

柔道整復師・鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師向けの情報サービス事業などを手掛けるアトラグループは、24時間営業ジム6店舗の運営と、ミラー型デバイス「Fitness Mirror」によるオンライントレーニングサービスの事業を手掛けるOne Third Residenceの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:フィットネスクラブのフランチャイズ事業と「Fittnes Mirror」事業の共同展開

ルネサンスによるBEACH TOWNのM&A

東京都を拠点にスポーツクラブの運営を手掛けるルネサンスは、アウトドアフィットネス・ヨガスタジオ・ボルダリングジム・トレーニングジム・スケートボードパーク・ランニングステーションなどのスポーツ施設の事業プロデュースを手掛けるBEACH TOWNの株式51.7%を取得しました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アウトドアフィットネス分野への本格参入

フィットイージーによるファミリーマートのM&A

顔認証による入会・入館システムや豊富なオンラインレッスンなどの最先端デジタルサービスを活用した24時間営業ジム「FIT-EASY」66店舗を東海エリアなどで展開するフィットイージーは、コンビニ店舗併設の24時間営業ジム「Fit&GO」を展開するファミリーマートから「Fit&GO」の事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:運営店舗の展開エリア拡大

アクトスによるアプローチのM&A

スーパーマーケットチェーンなどを営むグループ持株会社バローホールディングスの傘下で、スポーツクラブなどを手掛けるアクトスは、大阪市においてテニス・バドミントン関連を中心とするスポーツ用品の販売を手掛けるアプローチの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:物販・情報提供機能の強化

おわりに

本記事のまとめ

スポーツジム・フィットネスクラブ業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

近年、健康志向の高まりからスポーツジム・フィットネスクラブの需要は高まっており、今後も新たな業態で運営されるスポーツジム・フィットネスクラブは増加していくと考えられrます。

コロナ禍に大きな打撃を受けたフィットネス業界ですが、消費者の需要自体は依然として強いため、今後も規模拡大や業態変化を実現するために業界全体としてますますM&Aが活発化していくと予想されます。

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