学校法人・専門学校のM&A・売却・買収事例、スキームや対価は?

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学校法人・専門学校は近年M&Aが活発な業界の一つです。同業界は少子高齢化の影響を受けて生徒数の確保が喫緊の課題になっています。

本記事では、そうした学校法人・専門学校の市場動向を解説するとともに、学校法人・専門学校におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

学校法人・専門学校の概要・市場動向

学校法人・専門学校とは

学校法人とは、公益法人の一つで私立学校の設置を目的として法人を設置する業界をいいます。専門学校とは、学校教育法124条によって定めらる学校を指し、教育施設である専修学校のうち専門課程を置いている専修学校をいいます。

幼稚園・小学校・中学校・高校・大学はなどは学校教育法1条によって定められており、一条校とも呼ばれます。一方、専門学校は準一条校とも呼ばれ、基礎的な教育課程を経た人がより専門的な知識を得ることを目的に通う学校です。

学校法人・専門学校には高い公共性が求められるため、文部科学省などからの許可・監督・指導を受ける必要があります。また、意思決定機関である理事会、諮問機関である評議員会、監査を担う監事の設置が求められるなど特殊なガバナンス体制を特徴とします。

学校法人・専門学校の市場動向

少子化を背景とした生徒数減少

学校法人・専門学校は、少子高齢化を背景とした生徒数の減少により学校間の競争が激化しています。

文部科学省「学校法人を取り巻く環境と課題等について」によると、18歳人口は1992年の205万人から右肩下がりで減少しており、2018年までに4割以上減少しています。

今後の予測では2032年に100万人を割り、2040年には88万人まで減少することが推計されています。18歳人口に比例して高校・高等教育機関に進学する人数も減少しているため、生徒の受け入れ競争が加速すると考えられます。

生徒数全体の減少に反して、大学への進学者数はわずかながら増加傾向が見られます。高等教育機関への進学率は83.8%、大学への進学率は54.9%といずれも過去最高を記録しています。

この背景には、学歴や専門知識を身に付けることで就職を有利に進めようと考える人が増加していることが挙げられます。また、新しい学部(IT、環境分野など)の創設や留学生の受け入れも生徒数の増加に寄与したと推測されます。

収益が生徒数に依存

私立大学における収入のうち学生生徒等納付金が7割超を占めているため、生徒数の減少は学校法人にとって収益悪化に直結します。

特に大学の場合、学生が大学を選別する際の基準はブランド、立地条件、教育内容など多岐に渡るため、理事会には生徒への訴求ポイントを明確にしたうえで宣伝することが求められます。

近年では新たなニーズに応えた学部・学科の新設を通じて他大学と差別化を図ることで、学生を取り込もうとする動きも見られます。ただし、生徒募集や学部・学科の新設などの改善施策は生徒数増加に効果的である一方、効果が顕在するまでのタイムラグを考慮しなければなりません。

願書募集後の学生募集は翌々年度になるまで効果を把握できず、学部・学科の新設にはカリキュラム設定や許認可まで長期間を要します。したがって、学校側が生徒数の増加を図る際には長期的な計画が不可欠と言えます。

大学教員数の増加

大学における教員数は増加傾向にあります。

大学教員が増加している理由には、学生のニーズに合わせて学部・学科を増設したことや非常勤講師の採用が増加していることがあります。教員の平均年齢も上昇していることから平均給与水準が上がっていることも要因の一つです。

一方、私立大学や私立短期大学での支出のうち5~6割を人件費が占めており、教員の増加は収益悪化に繋がります。収益構造を改善するための人件費削減は学生のニーズに対応するためのカリキュラム多様化とトレードオフの関係にあるため、理事会は学校の運営手腕が問われています。

学校法人・専門学校のM&A動向

学校法人・専門学校のM&Aでは、一般的な法人とは異なり株主や株式が存在しないことが特徴的です。

学校運営を担う理事長や理事を交代することで対象の学校法人・専門学校を取得できます。また、通常のM&Aのスキームである事業譲渡や合併が選択される場合もあります。合併の場合、理事会を開催したうえで理事の3分の2の同意が必要となります。

学校法人・専門学校業界では、生徒数の確保がM&Aの主要な目的となり、垂直的統合と水平的統合のどちらも用いられています。

垂直的統合では大学を運営する学校法人が中学・高校と合併することで、内部生として生徒数を確保することが可能になります。水平的統合においては既存学部の補完となる学部を有する大学と合併することで総合大学としての魅力度向上が図られます。

学校法人・専門学校におけるM&Aのメリット 

売り手のメリット

学校法人・専門学校のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 廃校せず所属生徒に継続して教育を提供できる
  • 買い手の学校の知名度やブランドを利用できる
  • 買い手の持つカリキュラムを採用できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し従業員の雇用を守ることができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

学校法人・専門学校のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の資産を活用しブランド力を強化できる
  • 付属校を持つことで学生を囲い込むことができる
  • 学部の新設をスピーディに実施できる
  • 指導経験のある教員を確保できる
  • 業務の特殊性が求められる場合(医療法人など)、業務に不可欠な人材(衛生士や看護師など)を専門学校で養成したのちに自社で採用できる
  • 売り手の保有する既存の建物や土地を活用できる

学校法人・専門学校のM&A(スキーム・対価)事例

学校法人駿河台学園とよるリソー教育の資本業務提携

駿河台予備校をはじめ駿台グループで難関大学への進学実績とノウハウを持つ学校法人駿河台学園は、完全1対1の進学個別指導の教育サービスを提供するリソー教育の株式7.01%を取得し、資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:受験進学指導サービスの向上

国立大学法人京都大学による関西ティー・エル・オーのM&A

京都大学を運営する国立大学法人京都大学は、複数の大学の知的財産を活用した技術移転・研究交流・ベンチャー支援を提供する関西ティー・エル・オーの株式68%を取得しました。

  • 実行時期:2016年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:産官学連携本部との連携強化

学校法人龍谷大学と学校法人平安学園の合併

龍谷大学及び龍谷大学短期大学部を運営する学校法人龍谷大学は、龍谷大学付属平安高等学校及び龍谷大学付属平安中学校を運営する学校法人平安学園と合併しました。

  • 実行時期:2015年4月
  • スキーム:合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:運営体制の強化

学校法人南山学園と学校法人聖園学院の合併

南山大学、南山高等学校などを運営する学校法人南山学園は、聖園女学院高等学校、聖園女学院中学校、聖園女学院附属聖園幼稚園、聖園女学院附属聖園マリア幼稚園を運営する学校法人聖園学院と、学校法人南山学園を存続法人として合併しました。

  • 実行時期:2015年6月
  • スキーム:合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:オーナーの高齢化を背景とした経営の引継ぎ

学校法人星美学園と学校法人目黒星美学園の合併

星美学園短期大学などを運営する学校法人星美学園は、1956年に星美学園から分離していた学校法人目黒星美学園と合併しました。

  • 実行時期:2016年4月
  • スキーム:合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:合併を通じた中長期的な教育事業の発展

中央大学と横浜山手女子学園の合併

MARCHの一角で関東地方にキャンパスを構える中央大学は、横浜山手女子中学校・高等学校を運営する横浜山手女子学園と合併しました。

  • 実行時期:2010年4月
  • スキーム:合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:生徒数の確保

おわりに

本記事のまとめ

学校法人・専門学校業界の市場動向、M&A動向、スキーム・対価、買収事例についてご紹介しました。

学校法人・専門学校業界は、生徒数の減少により生徒数を確保するための競争がますます激しくなっています。また、学生のニーズに応えた新学部・学科の創設には効果が顕在するまでリードタイムが生じるため、先行して発生する大学教授への人件費増加にも繋がります。

こうした問題を解決し、生徒数の確保に加えて学校としての魅力度を高める手段として、学校法人・専門学校におけるM&Aは有効です。

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