給食業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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給食業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。給食業界は将来的な急成長が見込めない中、事業譲渡を中心にM&Aが活発化しています。

本記事では、そうした給食業界の市場動向を解説するとともに、給食業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

給食業界の概要・市場動向

給食業界とは

給食業界とは、施設を利用する人や不特定多数の人に向けて飲食サービスを提供する業界をいいます。

給食業界は営業給食と集団給食に大別されます。営業給食とは、レストラン、一般食堂、専門飲食店、宿泊施設での食事・宴会料理を指します。一方、集団給食とは、学校、病院、会社などと契約して、不特定多数の利用者に継続して食事を提供するサービスを指します。

2002年には厚生労働省により、集団給食を提供する施設の内うち1回100食以上または1日250食以上の食事を提供する施設が特定給食施設と定められました。

給食業界に対し、テイクアウト・配達飲食業界は中食業界と呼ばれています。これは家庭での食事を内食と、飲食店での食事を外食を表現することに対応しており、すでに調理済みの料理が配達されるために内食・外食と区別されています。

コロナを経て営業給食を提供する施設が中食事業を展開する動きが加速しました。

給食業界の市場動向

コロナ禍による需要減少

給食業界は、コロナにより営業給食、集団給食ともに大きく市場規模を縮小しました。

集団給食の市場規模は年々縮小しており、1997年の3兆9,470億円から2019年には3兆3,538億円まで15%以上減少しています。

一般社団法人日本フードサービス協会「令和2年(令和2年1月~令和 2年12月)外食産業市場規模推計について」によると、2020年にはコロナにより休校などの影響を受けた学校給食は前年比で16.9%の減少に、事業所給食に関してはテレワークなどの働き方の多様化が加速したことで社員食堂等給食が18.5%、弁当給食が22.3%の減少と大きく売上を落としました。

病院給食は従来の医療活動が停滞したもののコロナ対応の影響で5.2%の減少に留まっています。

コロナ禍以前の営業給食に関しては、2000年代には経済危機の影響により市場が縮小していましたが、2012年以降一貫して上昇していました。

2019年には、過去最高の18兆,3125億円を記録した1997年に迫る17兆8997億円まで回復しましたが、2020年にはコロナ禍での営業自粛により市場規模が前年比で29.0%減少しました。

営業給食は給食業界全体の69.8%を占めており、一定の需要を確保できる集団給食以上にコロナの影響を受けたことで給食業界全体の縮小を加速させたことが分かります。

特定分野でのニーズの高まり

給食業界全体で見ると急激な需要拡大は見込めないため、特定分野で事業を展開する動きが加速しています。

営業給食はコロナ収束以降は再度市場が拡大が見込まれますが、集団給食は今後も横ばいで推移することが予想されています。

近年では共働き夫婦の増加や、待機児童問題の影響を受けた保育事業の拡大により学校給食・保育所給食のニーズは高まっていますが、少子化による需要減を食い止めることは難しい状況です。そこで、今後給食需要が増加すると予測される福祉施設や病院での給食事業を展開する企業が増加しています。

厚生労働省「令和2年度 衛生行政報告例 概況」によると、介護老人保健施設・老人福祉施設・児童福祉施設の給食施設数は2016年から2020年にかけて増加しており、同分野での給食事業を拡大することで他分野での需要減少を補完することができます。

また、コンビニの普及により社員食堂を持たない会社からの弁当需要は減少していますが、弁当の供給先を高齢者が住む自宅、介護施設、保育園などに転換することで新たな需要を獲得することも可能になります。

コスト上昇による収益悪化

給食業界ではコスト増加による収益悪化が課題とされています。大型設備は既に自社で保有している、もしくは依頼先が用意する場合が多いため、給食事業の費用の大半を人件費と食材費が占めています。

給食業界の給与水準は他業界と比較して低く、離職率の原因になっています。業界全体での慢性的な人手不足を解消するために人件費を上昇させたことで、収益率の低下に繋がっています。

また、食材価格は給食事業者がコントロールできず、食材価格の高騰により利益の確保が難しくなります。そのため、安価に食材を仕入れることができるように給食事業者70社以上が参画して共同機構を運営するなど、業界全体で安定した事業運営が目指されています。

給食業界のM&A動向

給食業界では事業基盤の拡大、顧客獲得、人材確保を目的としたM&Aが見られます。

給食センターなどの設備投資が必要となる給食事業はスケールメリットが得られやすいビジネスモデルです。そのため、競争力強化を目指す同業者によりM&Aを通じた業界再編が活発化すると考えられます。

また、他業種から新たにフードサービス事業を展開することを計画している企業や、高齢者向けのフードサービス展開を図る企業がM&Aを通じて参入する事例も注目されています。

給食業界警備業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

給食業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手と共同で一括して原材料を仕入れることができる
  • 買い手が提供する給食分野で新たな需要を取り込むことができる
  • 運送面でスケールメリットを享受できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

給食業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手が契約している顧客を獲得できる
  • 売り手の給食センターの拠点や設備をそのまま取得できる
  • スケールメリットを生かし原材料をより安価で仕入れることができる
  • 各施設への配送を売り手と統合し効率化できる
  • 売り手の抱える人材を確保することができる

給食業界のM&A・売却・買収事例

トーカンによる三給のM&A

セントラルフォレストグループの傘下で食品・酒類の食品卸を手掛けるトーカンは、外食・給食事業者の業務用食材料の卸売業を手掛ける三給の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:給食市場への新規参入

レバストによるマシモのM&A

給食事業・食事宅配事業を手掛けるレバストは、寿司・弁当などの製造、販売を手掛けるマシモから食品工場部門を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年11月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:中食事業への参入

ACA NextによるタイリョウのM&A

給食事業、ソリューション事業、メディカルサービス事業などを手掛けるACA Nextは、給食事業を手掛けるタイリョウの給食事業の一部を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販路拡大

京進によるリッチのM&A

個別指導塾のフランチャイズ展開、英会話サービス、保育サービス、介護サービス、国際人材交流事業などを手掛ける京進は、産業給食事業、食堂委託事業、園児給食事業などを手掛けるリッチの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:配食サービスのノウハウ共有

シダックスによるミツウロコプロビジョンズのM&A

学校・医療施設などを対象とした給食事業をはじめ、バス・自家用車による運送事業や、各種施設の管理・事務事業などを手掛けるシダックスは、飲食に関する直営の販売店と給食事業の事業などを手掛けるミツウロコプロビジョンズから子会社を通じてショップ・レストラン事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2019年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:既存事業とのシナジー効果

京都ケータリングによるフンドーダイ五葉のM&A

ACA Nextの100%子会社で医療機関・介護施設などへの給食・配食サービス、医療機関・介護施設などへの給食・配食サービスを手掛ける京都ケータリングは、しょうゆ・みそ事業、ソフトフーズ事業を手掛けるフンドーダイ五葉からソフトフーズ事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2018年6月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販路拡大

ヤマト食品によるさいたま給食のM&A

CSSホールディングスの100%子会社で献立つき食材販売および受託給食事業を手掛けるヤマト食品は、埼玉県内3カ所の老人ホームにおける受託給食と埼玉県内1カ所の特別養護老人ホームにおける給食サービスコンサルティングを手掛けるさいたま給食から高齢者福祉施設の給食事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2017年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業基盤の強化

おわりに

本記事のまとめ

給食業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

給食業界はコロナにより大きく売上が減少した業界の一つで、コロナからの回復後も市場規模は横ばいで推移することが予測されています。また人件費の高騰や昨今の食材価格の高騰により収益が圧迫される経営状態が続いています。

このような競争環境下で、今後給食需要が拡大される介護、福祉事業へ向けた事業を展開するためにM&Aが加速すると見込まれています。

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