お弁当・総菜屋のM&A・売却・買収事例、業界動向

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お弁当・惣菜屋業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。お弁当・惣菜屋は、単身世帯の増加を踏まえて順調に成長しており、今後も配食サービスなどの新たな需要の獲得が見込まれます。

本記事では、そうしたお弁当・惣菜屋業界の市場動向を解説するとともに、お弁当・惣菜屋業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

お弁当・総菜屋業界の概要・市場動向

お弁当・総菜屋業界とは

お弁当・惣菜屋業界とは、携帯できるようにした食糧のうち食事に相当するものを提供したり、主食とともに食べる副食を提供する業界をいいます。

お弁当・惣菜は、外食業界・中食業界・内食業界のうち、持ち帰って食べる中食業界に該当します。

食材を加工して提供する場合、昼食業界でも食衛生法に基づいた食品営業許可が必要になります。調理加工しない場合でも食材によっては、魚介類販売業・食肉販売業などの営業許可が必要になることがあります。

お弁当・総菜屋業界の市場動向

増加する中食需要

お弁当・惣菜屋需要は右肩上がりで拡大しています。

日本フードサービス協会「データから見る外食産業」によると、お弁当・惣菜屋が該当する料理小売業の市場規模は一貫して増加しており、2019年には7兆7,594億円に達しています。(注:消費者の注文によって調理をして提供する事業者は除く)

コロナの影響を受けた2020年でも3.2%の減少にとどまっており、外出自粛を踏まえてデリバリーサービスを始めたお弁当・惣菜屋が増加したことに鑑みると、売上の回復が期待できます。

お弁当・惣菜屋業界が安定して成長する背景には、生活様式の変化があります。

近年では晩婚化、未婚化が進行しているため単身世帯が増加しており、手軽に食べられるお弁当・惣菜が好まれています。供給側も消費者の嗜好に合わせたお弁当・惣菜の開発に強化しており、コンビニでもプライベートブランドとして惣菜が売り出されています。

コンビニが惣菜市場を牽引

惣菜市場の成長はコンビニによって牽引されています。

一般社団法人日本総菜協会「2021年版惣菜白書ダイジェスト版」によると、惣菜市場は2010年以降一貫して拡大しており、2019年には2010年比で27.1%増加しています。

2020年時点での惣菜市場の割合を見ると、CVSが最も多く32.1%を占めています。2014年比での成長率も20.4%と最も高いため、CVS業界全体が惣菜の販売を強化していることが分かります。

食料品スーパーでも惣菜が充実しており、2021年には2014年比で19.2%拡大し、惣菜市場全体の26.6%を占めています。

近年では消費者のニーズが多様化していることに着目して、新規開店している惣菜屋も多く見られます。

しかし、専門店全体の規模は2014年からほとんど変化していないことから、コンビニ・スーパーなどとの消費者獲得競争が激化していることがうかがえます。

拡大する宅配サービス

今後のお弁当・惣菜屋の成長ドライバーには、宅配サービスの拡大が挙げられます。

食品宅配市場は2020年度には前年比14.3%増の2兆4,969億円に及んでおり、2025年度までには2兆9,321億円までの拡大が予測されています。

大手宅配サービス事業のUber Eatsの加盟店舗数は2021年5月から2022年1月の間に10万から15万店舗まで拡大しており、新たに宅配サービスに加盟することでお弁当・惣菜屋市場が拡大することが期待されます。

今後の動向として、高齢者向けの配食サービスの拡大が予想されます。

高齢者世帯数の増加や医療・介護の在宅化が進行したことで、お弁当・惣菜屋の配食サービスが栄養管理の役割を担うことが期待されています。この将来的な需要に着目して新たに高齢者向けの配食サービスに参入する事業者も見られます。

お弁当・総菜屋業界のM&A動向

弁当・惣菜屋業界では同業者間のM&Aが多いですが、新規参入を図りやすい点も特徴的です。

同業者を買収する場合、製造・販売ノウハウの共有や事業エリアの拡大、設備や店舗の獲得などがM&Aの目的とされます。

新規参入においては、他業界と比較すると大手企業のシェアは高くなく初期投資も安価に抑えられるため、参入障壁が低い業界です。

近年では女性や高齢者向けのお弁当・惣菜需要が高まっていることから、健康関連業界からの参入も増加しています。

お弁当・総菜屋業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

お弁当・惣菜屋業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手企業の購買力を生かして食材を安価で仕入れることができる
  • 買い手企業の知名度やブランドを利用できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

お弁当・惣菜屋業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の持つ厨房や調理機器をそのまま活用できる
  • 売り手の抱える既存顧客を獲得できる
  • 仕入れ・物流面でスケールメリットを享受できる
  • 消費者のニーズに合わせて多種類展開ができるようになる

お弁当・総菜屋のM&A・売却・買収事例

ぐるなびによる楽天デリバリーと楽天リアルタイムテイクアウト事業のM&A

飲食店の情報を集めたウェブサイトを運営するぐるなびは、出前・宅配サービスの専門サイトである楽天デリバリーと、近隣の飲食店のテイクアウトをWebで簡単に注文できて店頭で待たずに受け取れるサービスを手掛ける楽天リアルタイムテイクアウトを楽天グループから譲り受けました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:1,300万円
  • 目的:飲食店に対する送客力の向上

レパストによるマシモの食品工場事業の譲り受け

給食や食堂の受託運営および在宅配達事業などのフードサービスを提供するレパストは、寿司・弁当を製造して大手食品スーパーなどに販売するマシモから食品工場を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年11月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:食を取り巻く環境変化への対応の強化

ダスキンによる宅配ピザ事業のM&A

クリーンサービス、ユニフォームサービス、ターミニックス、ホームリペアなどの事業を手掛けるダスキンは、「ナポリの窯」および「ストロベリーコーンズ」の宅配ピザブランドを保有するいちごホールディングスと、同社の子会社であるストロベリーコーンズから宅配ピザ事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年6月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:フード事業の拡大

スマイルダイニングによる「パティスリー雪乃下」事業のM&A

神奈川県横浜市を拠点に、弁当販売店・居酒屋、会員制ワインバーなど各種飲食店の運営を手掛けるスマイルダイニングは、居酒屋や和食・洋食、洋菓子などの飲食店を運営するエイトから「パティスリー雪乃下」の事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:M&Aを活用した業容拡大

あいネットグループによる惣菜・仕出し事業「楽多厨房」のM&A

互助会を基盤にした結婚式・葬儀などの冠婚葬祭サービス・ホテルサービスを手掛けるあいネットグループは、「楽多厨房」を通じて顧客に手作り惣菜とお弁当を提供する和田フードセンターから惣菜・仕出し事業である「楽多厨房」を譲り受けました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ブランドの確立

日清製粉グループ本社によるトオカツフーズのM&A

日清製粉グループの持株会社であり、ニップン・昭和産業・日東富士製粉とで製粉大手4社を構成する日清製粉グループ本社は、総合中食サプライヤーで日清製粉グループ本社関連会社であるトオカツフーズの株式51%を取得しました。

  • 実行時期:2019年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:中食・惣菜事業の拡大

小僧寿しによるデリズのM&A

持ち帰り寿司店「小僧寿し」などを展開する小僧寿しは、宅配代行サービス事業を手掛けるデリズを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:デリバリー事業の拡大

おわりに

本記事のまとめ

お弁当・惣菜屋業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

お弁当・惣菜屋業界は、コロナ禍を契機に消費者の生活様式が変化したことを背景に安定した成長を続けています。

コロナ後も宅配サービスの充実や高齢者向けの配食サービスなど、新たに消費者を取り込む余地がある業界であるため、自社で提供できるメニューの拡大を目的とした事業譲渡を中心にM&Aが活発化すると予測されます。

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