飲食・外食業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

飲食・外食業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。コロナ禍によって飲食業界は厳しい状況にあり、多くのM&Aが行われています。
本記事では、そうした飲食・外食業界の市場動向を解説するとともに、飲食・外食業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
飲食・外食業界の概要・市場動向
飲食・外食業界とは
飲食・外食業界とは飲食店を営む事業者を指し、食品衛生法に定められる「食品等事業者」の一種に当たります。
飲食店営業を行う場合は飲食営業許可が必要になり、都道府県知事が定める製造施設・製造設備などの基準に適合しなければならず、保健所で基準等の確認が必要です。
飲食・外食業界は競合が多く、競争が激しいことが特徴です。また店舗管理、接客対応、メニュー開発など様々なスキルが求められる業態です。
そのため、調理スキルだけでは生き残りは難しく、いかに他店との差別化を図るかが重要になっています。


飲食・外食業界の市場動向
深刻な人手不足
飲食・外食業界は深刻な人手不足に陥っています。
帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」(2022年7月)によると73%の飲食店が人手不足であると言われています。他の多くの業界も人手不足で苦しんでいますが、飲食店は特にこの傾向が顕著です。
理由としては、24時間365日営業の店舗も多いため長時間労働に陥りやすく、また休みも取りにくいといったイメージにより、採用が難しくなっていることが挙げられます。
また人手が不足しているため一人当たりの労働量が増え、離職率が高くなってしまうといった悪循環が起きているケースも少なくありません。
新型コロナウイルスによる業績悪化
飲食業界はもっともコロナ禍の影響を受けている業界の一つです。
帝国データバンク「新型コロナウイルス関連倒産動向調査」によると、2022年11月の時点で飲食店の倒産は667件で、業種別で最も多い倒産件数です。
コロナ禍によって宴会など、飲食店に人が集まる機会が大幅に減ったことが大きな要因です。そのため、飲食業界の中でも、酒場やビアホールの倒産件数が多くなっています。
対して、テイクアウトやデリバリーの需要は堅調なため、これらの需要を取り込めるかが重要になっています。
原材料の高騰によるコスト増
コロナ禍やウクライナ侵攻、円安の影響で食材価格の高騰が進んでいます。
飲食店リサーチによる『「原材料の価格高騰」に関するアンケート調査』によると、原材料費の高騰が店舗運営に影響していると答えた飲食店は9割を超えました。
特に影響を及ぼしている食材として、小麦や食用油が挙げられました。
近年はスマホで簡単に他店との比較が可能なため、原材料費が上がっても簡単に値上げしにくい状況です。原材料費が高騰してもなるべく商品の価格を上げないように、飲食店は様々な努力を強いられています。
飲食・外食業界のM&A動向
コロナ禍だけでなく、人手不足や材料費の高騰など、飲食業界は厳しい状況に置かれています。
そのため、大手企業の傘下に入ることでブランド力やノウハウを活かし、安定した経営を行うべくM&Aを実施する事業者が増えています。
また、同業とM&Aをすることで店舗拡大や新メニューの開発を図るケースもあります。
少子高齢化により日本の飲食業界の市場は今後縮小していくと考えられ、飲食業界は参入障壁が低く競合も多いことから、海外市場への参入を考え海外企業とのM&Aを行う大手企業も増えています。
飲食・外食業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
飲食・外食業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 撤退に際して発生する費用や原状回復が不要になる
- 大手企業の傘下に入ることで安定した事業を継続できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
飲食・外食業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 新規参入する場合、売り手企業の保有するノウハウを獲得できる
- 売り手の抱える従業員を獲得し、人手不足を解消できる
- 売り手の持つ飲食店経営に必要な営業権を獲得できる
- 異なる客層の企業を買収することで、新しい客層にアプローチできる

飲食・外食業界のM&A・売却・買収事例
コロワイドによるフレッシュネスのM&A
牛角やしゃぶしゃぶ温野菜を運営するコロワイドは、フレッシュネスバーガーを運営するフレッシュネスを子会社化しました。
- 実行時期:2016年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業領域の拡大

ゼンショーホールディングスによるココスジャパンのM&A
すき家を運営するゼンショーホールディングスは、ココスを運営するココスジャパンを子会社化しました。
- 実行時期:2019年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新規客層の獲得
ゼンショーホールディングスによるAdvanced Fresh Concepts Crops.のM&A
すき家を運営するゼンショーホールディングスは、アメリカで持ち帰り寿司を手掛けるAFC社を子会社化しました。
- 実行時期:2018年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:海外での中食事業の展開
C-UnitedによるポッカクリエイトのM&A
全国にカフェ事業を展開するC-Unitedは、200店舗以上のカフェチェーンを運営するポッカクリエイトを子会社化しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:マルチブランド戦略の推進
プレナスによる宮島醤油フレーバーのM&A
ほっともっとややよい軒を運営するプレナスは、調味料やインスタント食品の販売を手掛ける宮島醤油フレーバーを子会社化しました。
- 実行時期:2016年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:生産コストの削減
日本KFCホールディングスとビー・ワイ・オーの資本業務提携
ケンタッキー・フライド・チキンを運営する日本KFCホールディングスは、和食チェーン店を運営するビー・ワイ・オーと資本業務提携を結びました。
- 実行時期:2018年2月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:新たな事業機会及びシナジーの獲得
WDIによるちんやのM&A
レストラン運営とブライダル事業を展開するWDIは、老舗すき焼き店のちんやの事業を継承しました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:不明
- 取引価額:非公開
- 目的:ブランド力の向上
おわりに
本記事のまとめ
飲食・外食業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
飲食業界は新型コロナウイルスの感染拡大によって大きな打撃を受けました。その後も慢性的な人手不足や、円安・不安定な海外情勢による原材料の高騰など様々な問題に悩まされています。
こうした現状を背景に、中小事業者と大手企業とのM&Aが盛んに行われています。
また、縮小が懸念されている日本の飲食市場だけでなく、海外の飲食市場に参入するために海外企業とのM&Aを行う企業も増えてきています。
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