葬儀業界の業界動向、M&A・売却・買収事例16選!

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葬儀業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。葬儀業界は葬儀需要の増加を成長機会を捉えて新規参入が加速している業界です。

本記事では、そうした葬儀業界の市場動向を解説するとともに、葬儀業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

葬儀業界の概要・市場動向

葬儀業界とは

葬儀業界とは、一般的に人が亡くなった際に葬儀を行い、火葬から寺社供養までの一連のプロセスに関わる業界をいいます。

具体的な業務には、遺体の衛生保全、火葬の手配、霊柩車の提供、葬儀の取り仕切りなどがあり、それぞれを個別の企業が担い葬儀社が関わる企業を取りまとめる形で顧客へサービス提供されます。

葬儀会社以外にも、冠婚葬祭を総合的に取り扱う企業や全日本葬祭業協同組合連合会会員、JA、生協、自治体などが葬儀業を行っています。

時間や曜日に限らず人が亡くなれば業務が発生し、遺族のケアを行いながら葬儀を準備しなければならない業務であるため、葬儀業は究極のサービス業とも呼ばれます。

葬儀業界の市場動向

葬儀需要の拡大

葬儀業界は、死亡者数の増加に伴って売上が増加しています。

戦後以降、現在のような段々飾りの祭壇を使った告別式が一般階級に普及し、1990年代には寺や自宅に設営されていた葬式会場が斎場に設置されて葬儀が執り行われるようになりました。

そのため、今日では斎場で行われる葬儀の需要は死亡者数との間に高い相関が見られます。

厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」によると、死亡数は年々増加しており、令和3年には平成元年の788,594人の約2倍となる1,439,856人が亡くなっています。

死亡者数の増加に伴い葬儀市場も拡大しています。経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、葬儀業の売上高は2000年の2,633億円から2017年の過去最高となる6,112億円まで約2.3倍拡大しています。

以降は6,000億円前後で推移していましたが、2020、2021年には5,100億円まで減少しました。この背景には、コロナ禍で大規模な葬儀が制限されたことが挙げられます。

今後も日本社会では高齢化が加速して2040年まで死亡者数が増加することが予測されているため、葬儀需要も拡大すると推測されます。

異業種参入による競争激化

葬儀需要の増加に伴い、他業種を含めて葬儀業界への新規参入が加速しています。

葬儀業界では寡占化が進行しておらず、主要10社の売上高は業界全体の20%足らずとなっています。

葬儀は一般的には近隣の葬儀社を利用するため、商圏内の利用者の比率が高いことが特徴的です。公営火葬場の場合、近隣の居住者とその他の利用者で利用料金が異なるため、遠距離の斎場や火葬場を利用することは少ないです。

主要企業でも全国展開せずに地域に根付いたビジネスを展開するため、参入障壁が低い業界と言えます。

経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によると、葬儀業を営む事業者数は2000年から一貫して増加しており、参入者の多さが反映されています。

前出の厚生労働省「令和3年(2021)人口動態統計(確定数)の概況」と組み合わせると、事業所一所あたりの売上高は2000年には4,712億円でしたが、2021年には1,916億円まで減少しています。

この減少傾向には、新規参入による競争激化に加えて後述する葬儀ニーズの変化も影響しています。

葬儀ニーズの変化

近年の葬儀の傾向として、葬儀の小規模化・個性化が特徴的です。

コロナ禍の影響もあり、葬儀の形態として家族や親族のみで葬儀を行う家族葬が増加しています。高齢者の葬儀の場合、知人や友人が既に亡くなっているために参列者が少なく、葬儀を行わない事例も見られます。

また、葬儀の個性化により以前までは見られなかった葬儀が増加しています。

具体的には、故人の好きな音楽を流す、生前の映像を流す、スポーツや楽器などの趣味になぞった墓石を用意するなどがあります。葬儀会社は遺族の多様な意向を汲み取ることで、他社との差別化を図っています。

葬儀に関連して終活が認知されたことで、葬儀会社のサービスの幅も拡大しています。

今後も葬儀ニーズは変化し続けるため、自社のサービスを拡充することで会社の規模にかかわらず安定した事業基盤を築くことが可能になります。

葬儀業界のM&A動向

葬儀業界でのM&Aは、商圏拡大を図るM&Aと、霊園管理などの関連事業への展開を図るM&Aに大別されます。

各葬儀会社のシェアは低いため、地域密着型の同業者を買収することでサービスを提供する範囲を拡大しようとする動きが見られます。他社との差別化を図る目的で、石材事業など葬儀に付随した事業を手掛ける企業を買収することで自社サービスの拡充を図る事例も増加しています。

また、葬儀業界の成長を見越して、業界を問わずM&Aを通じた異業種からの参入も活発です。

葬儀業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

葬儀業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 施設稼働率の安定化が見込める
  • 買い手の知名度やブランドを利用することができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

葬儀業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の得意とするサービスを導入できる
  • 売り手が拠点を構える事業エリアへ拡大できる
  • 同エリアで展開する売り手を買収する場合、その地域を寡占化できる
  • 葬儀事業に新たに参入する場合、売り手のノウハウを獲得できる
  • 売り手の保有する斎場をそのまま活用できる
  • 自社の提供できるサービスの幅を拡充できる

葬儀業界のM&A・売却・買収事例

きずなホールディングスによる備前屋のM&A

グループ90店舗の体制で葬儀葬祭に関する一切の業務を全国7道府県で展開するきずなホールディングスは、岡山県で家族葬・一般葬を手掛ける葬儀葬祭事業者である備前屋の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:中国地方への進出

平安レイサービスによるさがみライフサービスとシンエイ・クリエート・サービスのM&A

神奈川県平塚市を拠点に、冠婚葬祭業のほか介護・互助会・物流事業などを手掛ける平安レイサービスは、冠婚葬祭事業を手掛けるさがみライフサービスと、ビジネスホテルの経営を手掛けるシンエイ・クリエート・サービスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:神奈川県への事業展開

木下によるアイ・セレモニーのM&A

冠婚葬祭の施行業務のほか、文化事業などを手掛ける木下は、佐賀県伊万里市を拠点に葬儀事業を手掛けるアイ・セレモニーの株式95%を取得しました。

  • 実行時期:2019年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の有効活用

こころネットによる北関東互助センターのM&A

葬祭・石材・婚礼・互助会などの事業を手掛けるこころネットは、栃木県宇都宮市を拠点に葬祭・互助会事業を手掛ける北関東互助センターの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2018年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:営業エリアの拡大

サン・ライフによるペットセレモニーWAVYのM&A

神奈川県平塚市を拠点に、ホテル・ブライダル事業、葬儀・式典事業、メンバーズシステム事業、少額短期保険事業、介護事業など手掛けるサン・ライフは、連結子会社「ペットセレモニーウェイビー」を通じて、ペット葬儀のサポート全般を手掛けるペットセレモニーWAVYからペット葬事業を譲受しました。

  • 実行時期:2017年9月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客ニーズへの対応

ビューティ花壇によるビンクのM&A

生花の卸売や生花祭壇の企画・設営を手掛けるビューティ花壇は、冠婚葬祭事業者に対する人材派遣事業を手掛けるビンクの株式99.9%を第三者割当増資を通じて取得しました。

  • 実行時期:2012年6月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:自社サービスの拡充

ライフアンドデザイン・グループによるセレサのM&A

葬儀業界に特化したコンサルティング事業を手掛けるライフアンドデザイン・グループは、子会社であり葬祭のための施設提供、葬祭用具の賃貸及び販売事業などを手掛けるセレサの葬儀事業を、同じく子会社であり葬祭の装飾設備の執行や手続き全般の請負業務を手掛ける洛王セレモニーに吸収分割により承継させました。

  • 実行時期:2019年3月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販売力やサービス提供力の強化

ライフエンディングテクノロジーズによるDMMファイナンシャルサービスの「DMMのお葬式」事業のM&A

葬儀関連のシステム開発・運営を行うライフエンディングテクノロジーズは、マーケティング会社のDMMファイナンシャルサービスの「DMMのお葬式」の主なサービス事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:マーケティング及びオペレーション手法などの相乗効果

よりそうによるライブネットのライフログピクチャー事業のM&A

インターネットを介した葬儀・供養サービスを提供するよりそうは、訃報連絡・思い出写真の共有等を行うライブネットのライフログピクチャー事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年1月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:葬儀社向けクラウドサービスの強化

こころネットによるCEMETERY PARK INVESTMENT AND MANAGEMENT COMPANY LIMITEDのM&A

霊園経営などを行うこころネットは、ベトナムの霊園マネジメント会社CEMETERY PARK INVESTMENT AND MANAGEMENT COMPANY LIMITEDを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:5億1,700万円
  • 目的:ベトナム進出

エヌエスアイによる堀田丸正の葬儀等の会葬品ギフト品卸売事業のM&A

新聞・出版物取次事業等を行うエヌエスアイは、繊維の専門卸売商社の堀田丸正が持つ葬儀等の会葬品ギフト品卸売事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:地域に根付いた事業運営および拡大

東京博善によるTSO Internationalの祭業界の展示会事業のM&A

総合斎条の運営を行っている東京博善は、イベント会社TSO Internationalが主催する、葬祭業界の展示会であるエンディング産業展事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:最適なサービス・ソリューションの提供

ハウスボートクラブによる鎌倉新書のお別れ会プロデュース事業のM&A

海洋散骨事業を中心に行っているハウスボートクラブは、終活関連サービス事業を行っている鎌倉新書のお別れ会プロデュース事業を譲り受けました。

  • 実行時期: 2022年02月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シナジー効果の発揮

ビーロットによる横浜富士霊廟のM&A

不動産投資開発事業を主な事業とするビーロットは、納骨堂「富士記念館・富士霊廟」を所有運営している横浜富士霊廟を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億7,500万円
  • 目的:新たな事業領域への進出

日香リソーセスによるイオのM&A

仏事関連商品の設備の管理運営等を行う日香リソーセスは、墓石加工・販売、霊園企画等を行うイオを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:生活者や寺院の仏事課題の解決

こころネットによるKANNO VIET NAM TRADING COMPANY LIMITEDのM&A

霊園経営などを行うこころネットは、ベトナムの墓石加工販売会社KANNO VIET NAM TRADING COMPANY LIMITEDを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:4,000万円
  • 目的:ベトナム進出

おわりに

本記事のまとめ

葬儀業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

葬儀業界は、高齢化社会が進行する中で葬儀需要が増加し市場規模が拡大しています。一方で、需要増加を見越した他業種による新規参入を通じて競争が激化した結果、一社当たりの売上が減少しています。

商圏が限られる中で遺族のニーズに対応した葬儀サービスを提供するために、他地域の同業者や関連サービスを提供する会社を対象としたM&Aが今後加速していくと考えられます。

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