Web制作業界の業界動向、M&A・売却・買収事例29選
Web制作業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。Web制作業界では、エンジニアの確保や企業力向上のためM&Aを実施する企業が増加しています。
本記事では、そうしたWeb制作業界の市場動向を解説するとともに、Web制作業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
Web制作業界の概要・市場動向
Web制作業界とは
web制作業界は各社に得意分野があり、様々な分類で分けることができます。
主に会社概要や事業内容を掲載した「コーポレートサイト」、サイト内で商品を売買する「ECサイト」、サービスへの申し込みや問い合わせを増加させ、売り上げ増加につなげるための「新規顧客獲得サイト」、まとめ記事やニュース記事など専門性の高いコンテンツを提供する「メディアサイト」、ヘルプページやQ&Aと呼ばれユーザーに情報を提供する「サポートサイト」などの制作が存在します。
技術面ではグラフィックやHTML、CSSなど画面上の高いデザイン性に強みを持つ企業や、データベースとの連携によるシステム開発を得意とする企業など多様な企業が存在します。
Web制作業界の市場動向
急速な市場成長
経済産業省「特定サービス産業動態統計月報」によると、2020年のWeb業界における市場規模は約1兆9,256億円で前年比10.1%増となっています。
背景にはスマートフォンの普及によってインターネット利用が日常化したこと、小規模・フリーランスエンジニアの増加、クラウドソーシングやアウトソーシングなど受注経路の多様化が考えられます。
また、コロナ禍によって対面での接触を避け、オンラインでの活動が増えたこともウェブ制作の需要が高まった一因として考えられます。
新たなビジネスモデルの出現
Web制作業界ではIT技術の進歩と共に様々なビジネスモデルが生まれています。
例えばウェブサイトやウェブサービスの一部を広告スペースとして販売し、広告料を得る広告モデルや、サービスや製品を継続的に使い続けてもらうことで、売上を積み上げ、収益を得るサブスクリプションモデルなどが存在します。
また、近年はユーザーが個人間でやり取りを行うプラットフォームを提供する事で収益を獲得するマッチングモデルが注目されています。
不用品を売りたい人と買いたい人を繋げるメルカリや、空き家を貸したい人と借りたい人を繋げるAirbnbが代表的なマッチングモデルに当たります。
エンジニアの不足
Web制作の需要が急速に増加する一方、エンジニアの不足が顕著になっています。
経済産業省「IT人材需給に関する調査」ではエンジニアの不足数は2030年に最高で約79万人に上ると試算されています。
このようなエンジニアの不足によって、一人のエンジニアにかかる負担が大きくなり、長時間労働や休日出勤に繋がるケースも少なくありません。
エンジニア不足はWeb業界全体の問題として、一刻も早い解決が望まれています。
Web制作業界のM&A動向
Web制作会社は中小企業や零細企業が多いため、後継者が見つからずに廃業してしまう企業が多く存在します。近年はこの解決策としてM&Aを行うケースが増えています。
また昨今は多くのWeb制作会社が設立され、競争が激化しています。競争力向上のため同業同士でのM&Aや、競合が多く先行きに不安を感じる事業者がM&Aによって事業を手放すケースも増えています。
また昨今はフリーランスや転職の増加から人の移動が激しくなっています。そのため、これまで以上に人材の確保が難しくなっており、人手不足に悩む企業が多く存在します。
こうした問題をの解決のため、M&Aによってエンジニアの獲得を図るケースは今後増えていくと考えられます。
Web制作業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
Web制作業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手企業の傘下に入ることで、安定した経営を続けられる
- 創業者利益を獲得し、生活資金や新規事業に活用できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
Web制作業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 新規参入する場合、事業立ち上げの時間とコストを削減できる
- 売り手の抱える優秀なエンジニアやデザイナーを獲得できる
- 売り手側の有する技術やノウハウを獲得できる
Web制作業界のM&A・売却・買収事例
デザインワン・ジャパンによるアマネクコミュニケーションズのM&A
インターネット事業や開発事業を手掛けるデザインワン・ジャパンは、ウェブ制作を含めた広告代理店を運営するアマネクコミュニケーションズを子会社化しました。
- 実行時期:2021年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新しいサービスの提供
デジタルアイデンティティによるぱむのM&A
デジタルマーケティングを手掛けるデジタルアイデンティティは、金融に特化した広告代理店でweb制作や動画制作を手掛けるぱむを子会社化しました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:5億7,000万
- 目的:金融業界での新規顧客の開拓
SHIFTによるさうなしのM&A
ソフトウェアの品質保証やテストを手掛けるSHIFTは、web制作会社のさうなしを子会社化しました。
- 実行時期:2019年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:BtoB市場でのサービス展開
ソネット・メディア・ネットワークスによるASAのM&A
アドテクノロジーやマーケティングソリューションを手掛けるソネット・メディア・ネットワークスは、デジタル広告のプロデュースから開発までを手掛けるASAを子会社化しました。
- 実行時期:2019年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:マーケティングテクノロジー分野での事業拡大
UTグループによるLei Hau’oliのM&A
技術者派遣やアウトソーシング事業を手掛けるUTグループは、webコンサルティングを手掛けるLei Hau’oliを子会社化しました。
- 実行時期:2017年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:IT・web領域への進出
Kaizen PlatformによるディーゼロのM&A
DXやUXなどのサービスを展開するKaizen Platformは、ウェブ制作の企画から運用まで手掛けるディーゼロを子会社化しました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:4億3,100万円
- 目的:提供サービスの価値向上
NTTデータによるネットイヤーグループのM&A
データ通信やシステム構築事業を手掛けるNTTデータは、デジタルマーケティングサービスを提供するネットイヤーグループを子会社化しました。
- 実行時期:2019年2月
- スキーム:TOB
- 取引価額:非公開
- 目的:デジタルマーケティング力の獲得
ニーズウェルによるビー・オー・スタジオのM&A
独立系のシステムインテグレータのニーズウェルは、デジタルマーケティング、Web制作等を行っているビー・オー・スタジオを子会社化しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:7億8,900万円
- 目的:Web制作行程の一気通貫での提供
ビーウィズによるドゥアイネットのM&A
コンタクトセンター・BPOサービスの提供等を行っているビーウィズは、アプリ・ソフトウェアなどのシステム開発、Web制作等を手掛けるドゥアイネットを子会社化しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:「VSCore」の高度化
mannakaによるildeとonakasuitaのM&A
Web制作・システム開発事業等を行っているmannakaは、広告事業を主業とするtildeと、外食事業を主にWeb制作なども展開するonakasuitaを吸収合併しました。
- 実行時期: 2022年04月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:マーケティング支援における価値提供と、外食事業とマーケティング事業とのシナジーの創出
テモナAISのM&A
BtoC事業者向けクラウド型システムを提供しているテモナは、WEB広告事業やWEB制作受託事業を行っているAISを子会社化しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新サービス提供を通じたクライアントの事業成長貢献および取引拡大
燦キャピタルマネージメントによるセブンスターのM&A
投資事業、ソリューション事業を展開している燦キャピタルマネージメントは、不動産特定共同事業やWeb制作等を行っているセブンスターを子会社化しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式交換
- 取引価額:非公開
- 目的:ストック収入モデルの強化
カゴヤ・ホールディングスはによるミップのM&A
グループにて図書管理クラウドサービス等を展開しているカゴヤ・ホールディングスは、ホームページ制作やWebソリューション事業を行っているミップを子会社化しました。
- 実行時期: 2022年09月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コンテンツ制作とシステム開発の技術・ノウハウを活かしたDX支援サービスの拡充
ニューラルポケットによるネットテンのM&A
画像解析AIソリューションを提供しているニューラルポケットは、デジタルLEDサイネージ販売、ホームページ制作を行っているネットテンを子会社化しました。
- 実行時期:2022年02月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:約24億1,900万円
- 目的:AIを搭載した屋外電子看板やAIサイネージを普及・運用するための体制拡充
ネオマーケティングによるダリコーポレーションのコンテンツマーケティング事業のM&A
マーケティング支援事業を展開しているネオマーケティングは、ホームページ制作、翻訳サービス等を行っているダリコーポレーションより、コンテンツマーケティング事業の事業譲渡契約を締結しました。
- 実行時期: 2022年01月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:独自のマーケティングフレームワーク「4K」におけるカイタク部門の強化
Link-UによるリベラルマーケティングのM&A
サーバープラットフォーム事業を展開しているLink-Uは、ホームページ制作などの、コンサルティング事業を行っているリベラルマーケティングを子会社化しました。
- 実行時期:2020年9月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:5億400万円
- 目的:業界のDXの発展
日本ジョイントソリューションズによるリバースのM&A
デジタルマーケティングやWebサイトのプロデュース等を行う日本ジョイントソリューションズは、Webサイトの企画・制作・運営等を行うリバースを子会社化しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:案件獲得機会の拡大や利益率の向上を通じた成長
イルグルムによるボクブロックのM&A
マーケティングDX支援サービスの提供を行っているイルグルムは、EC-CUBEをベースとしたECサイト制作や「EC FANTAS」の提供を行うボクブロックを子会社化しました。
- 実行時期:2022年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ECサイト構築からマーケティング支援までを垂直統合型で提供するソリューションの展開と事業領域の拡大
Adliveによる関西ぱどのM&A
WEB広告などの伴走型コンサルティング事業を行っているADliveは、WEB等を駆使した広告を得意とする関西ぱどと資本業務提携をしました。
- 実行時期:2022年04月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:店舗型ビジネスの集客と、オペレーションのDX化支援の加速
リアルワールドによるクラフツのフィンテック・メディア事業のM&A
メディア事業・フィンテック事業を展開しているリアルワールドは、アプリ開発事業・メディア事業等を行っているクラフツよりフィンテック・メディア事業であるクレジットカードマイスターを譲り受けました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:400万円
- 目的:クレジットカードマイスターのさらなる成長
リグアによるヒゴワンのM&A
接骨院向けに売上向上や、組織マネジメントなどを行うリグアは、ホームページ制作やWEBマーケティング等を行っているヒゴワンを子会社化しました。
- 実行時期:2020年9月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:接骨院ソリューション事業の商品ラインナップの充実と、接骨院に対するワンストップサービスの拡充
テンダによるアールフォース・エンターテインメントのM&A
クラウドサービスやモバイルサイト開発等を手掛けるテンダは、ゲーム用ソフトウェアの企画、制作等を行っているアールフォース・エンターテインメントを子会社化しました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コンシューマー事業の強化
MRTによるメディアルトのM&A
医療関係者に医療情報のプラットフォームを提供しているMRTは、医師向け情報提供用Webサイトの構築などを手掛けるメディアルトを子会社化しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:4億5,100万円
- 目的:医療従事者会員の満足度向上およびネットワークの拡大
YUIDEAによるサンドのM&A
顧客の企業価値向上や事業の成果創出を支援しているYUIDEAは、多様な業種の広告キャンペーンの企画制作などを手掛けるサンドを子会社化しました。
- 実行時期:2022年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:VMDメソッドの融合による事業成長
オークファンによるトラストエフォートのAmazonセラー専用アプリ事業のM&A
価格と販路を最適化するサイト運営を展開しているオークファンは、プロモーションコンテンツの制作等を行っているトラストエフォートより、Amazonセラー専用アプリ「Amacode」 の事業を譲受しました。
- 実行時期:2022年08月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:グループのビジネス利用アカウント数の拡大と、サービスの強化、各サービスのクロスセルによるGMV、ARRの増加
ベクトルによるジオベックのM&A
PR業務代行・コンサルティングなどを行っているベクトルは、ウェブやスマホサイトの企画・制作・運営を行っているジオベックを子会社化しました。
- 実行時期:2022年07月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:ノウハウとグループの様々なサービスとの連携
エルテスによるアクターのM&A
ビッグデータ解析によるソリューションの提供を行っているエルテスは、WEB広告運用やWEBサイト企画等を行っているアクターを子会社化しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:デジタルマーケティング領域への進出の加速
共同印刷によるMediBangのM&A
一般商業印刷事業を展開している共同印刷は、イラスト・マンガ制作ツールおよびイラスト・マンガ投稿サイトを展開すMediBangと資本業務提携を締結しました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:NFTを活用したコンテンツ領域でのリアルとデジタルを融合させた事業機会創出の推進
アンダーワークスによるClickr Media Pte. Ltd.のM&A
Webサイト制作などを行っているアンダーワークスは、デジタルコンサルティング支援を展開しているClickr Media Pte. Ltd.を子会社化しました。
- 実行時期:2022年05月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:シンガポールをはじめAPAC地域におけるグローバル市場での事業展開
おわりに
本記事のまとめ
Web制作業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
Web制作企業はクライアントの意向に合わせて、様々な用途のWebサイトを制作します。近年はコロナ禍による巣ごもり需要のため、ECサイトの需要が高い傾向にあります。
Web制作の需要は高く多様なビジネスモデルが生まれるなど今注目を集めている業界ですが、多くのWeb制作会社で深刻なエンジニア不足が起きています。
また、近年は多くのWeb制作会社が乱立しているため、今後はますます市場競争が激しくなると考えられます。
エンジニアの確保や企業力向上を背景として、企業の規模に関わらず、Web制作業界でのM&Aは今後も活発に行われていくと考えられます。
M&A・事業承継のご相談はハイディールパートナーズへ
M&A・事業承継のご相談は経験豊富なM&Aアドバイザーの在籍するハイディールパートナーズにご相談ください。
ハイディールパートナーズは、中堅・中小企業様のM&Aをご支援しております。弊社は成約するまで完全無料の「譲渡企業様完全成功報酬型」の手数料体系を採用しており、一切の初期費用なくご活用いただけます。
今すぐに譲渡のニーズがない企業様でも、以下のようなご相談を承っております。
- まずは現状の自社の適正な株式価値を教えてほしい
- 株式価値を高めるために今後何をすればよいか教えてほしい
- 数年後に向けて株式価値を高める支援をしてほしい
- どのような譲渡先が候補になり得るか、業界環境を教えてほしい
ご相談は完全無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。