不動産管理業界の業界動向、M&A・売却・買収事例30選
不動産管理業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。不動産管理業界は多様化するニーズや激化する競争に対応するため、M&Aが活発に行われています。
本記事では、そうした不動産管理業界の市場動向を解説するとともに、不動産管理業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
不動産管理業界の概要・市場動向
不動産管理業界とは
不動産管理業界とは、ビルやマンションといった不動産の維持管理を請け負い、具体的には清掃や修繕といった日常的な管理業務やメンテナンス業務を行う業界のことを指します。賃貸管理やマンション管理、ビル管理などの会社が不動産管理会社に該当します。
近年不動産の投資や購入に対する需要が高まっており、それに伴って不動産管理の需要も高まっています。
さらに不動産管理会社に求められるサービスの質も高まっており、管理業務に加えてオーナーへの経営上のアドバイスや提案を行う企業も現れています。
こうした不動産に関するトータルサポートが、不動産管理会社には求められています。
不動産管理業界の市場動向
安定的な市場成長
不動産管理業界は経済の影響を受けやすい不動産業界と異なり、毎月決まった額の収入が見込めるストックビジネスで、堅調に成長しています。
特に、賃貸管理分野は家賃収入が目的のため、業界の中でも安定していると言われています。
収益が安定しているため、不動産販売や仲介などのフロービジネスを営む企業が、ストック収入を得るために不動産管理業を手掛ける場合もあります。
また、不動産賃貸は主に首都圏で家賃が上昇傾向にあるため、資産価値が増している物件も数多く存在します。
ニーズの多様化
不動産管理は需要の高まりと共に求められるサービスが多様化しています。
従来の維持管理や入退去管理に関する業務に加えて、不動産投資のオーナーに対するアドバイスを求められるケースが増えています。
近年不動産投資の需要が高まり、経営面でのアドバイス・提案をしてほしいというオーナーが増え、このような業務を担う不動産管理会社が増えています。多様化するニーズに応えるために、各社さまざまな戦略を打ち出し競争が激化しています。
他業種からの参入が増加
不動産管理業は多くのオーナーとの付き合いが発生するため、オーナー向けのビジネスを展開する企業が顧客獲得のため参入してくるケースがあります。
具体的にはオーナーの所有する不動産のリフォームや外壁塗装、土地の管理や売買を請け負うことで収益を上げるような場合です。
このように不動産管理業を通してオーナーと関係を深め、仲介や買取、再販など他のビジネスとつなげることで収益を得られるため、他業種からの参入が多い業界となっています。
不動産管理業界のM&A動向
不動産管理業界は昨今幅広いニーズに対応することが求められています。こうしたニーズに自社だけでは対応しきれないと考えた企業がM&Aを検討するケースが増えています。
特に、中小企業では全てのニーズに対応することが難しいため、同業他社とのM&Aによって両社のノウハウや強みを活かし、トータルサポート体制を構築するケースがあります。
また関連会社とのM&Aにより、事業の拡大や顧客基盤の拡充を目指す不動産管理会社も多くあります。関連会社とのM&Aによって、新しいサービスの提供が実現し、多様化するニーズへの対応も可能になります。
新規参入を目論む場合には自社で新規事業を立ち上げるよりもスピーディかつ低コストで、ノウハウやシステムを得ることができます。
不動産管理業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
不動産管理業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手企業ならではのノウハウやシステムを享受できる
- 大手企業の傘下に入ることで安定した経営を実現できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
不動産管理業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の抱える人材を獲得することで人手不足を解消できる
- 売り手の得意とする地域へ事業エリアを拡大できる
- 売り手の得意な事業領域を活かしたサービスを立ち上げることができる
- 売り手のノウハウを獲得することで新規参入がしやすくなる
不動産管理業界のM&A・売却・買収事例
オリックスによる大京のM&A
リース事業や不動産事業を手掛けるオリックスは、マンション開発を手掛ける大京を子会社化しました。
- 実行時期:2018年10月
- スキーム:株式公開買付
- 取引価額:770億円
- 目的:綿密な情報共有による連携
大京による穴吹工務店のM&A
大京は不動産開発や不動産販売を手掛ける穴吹工務店を子会社化しました。
- 実行時期:2013年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:307億円
- 目的:事業エリアの拡大と顧客基盤の拡充
ヤマイチ・ユニハイムエステートによるニューライフサービスのM&A
不動産の開発から販売・賃貸までを手掛けるヤマイチ・ユニハイムエステートは、不動産管理を手掛けるニューライフサービスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:サービス提供領域拡大による企業価値の向上
綿半ホールディングスによるAICのM&A
不動産売買を手掛ける綿半ホールディングスは、不動産管理などを手掛けるAICを子会社化しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:情報の集約、不動産管理部門の強化
中央日土地レジデンシャルサービスによる神鋼不動産ジークレフサービスのM&A
中央日本土地建物グループの子会社による合弁会社の中央日本土地レジデンシャルサービスは、神戸・阪神を拠点としてマンション管理を手掛ける神鋼不動産ジークレフサービスのマンション管理事業を吸収分割により継承しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:吸収分割
- 取引価額:非公開
- 目的:マンション管理事業のサービス向上
ジェイ・エス・ビーによる東京学生ライフ、湘南学生ライフ、ケイエルディのM&A
学生向けの不動産事業を手掛けるジェイ・エス・ビーは、マンション管理を手掛ける3社を子会社化しました。
- 実行時期:2019年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ノウハウ獲得による事業強化
アジアゲートホールディングスによる東日本不動産のM&A
不動産コンサルティングと不動産投資を手掛けるアジアゲートホールディングスは、東北地方を中心に不動産業を手掛ける東日本不動産を子会社化しました。
- 実行時期:2018年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業規模の拡大
シェアリングテクノロジーによる藤澤不動産のM&A
生活トラブル関連の解決に関する情報発信を行うシェアリングテクノロジーは、害獣・害虫駆除およびハウスクリーニング等を行っている藤澤不動産を子会社化しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大とさらなる企業価値拡大
ケイアイスター不動産によるエルハウジングのM&A
注文住宅事業や総合不動産流通事業を行っているケイアイスター不動産は、仲介や賃貸管理、リフォームを行っているエルハウジングを子会社化しました。
- 実行時期:2023年02月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:仕組みやノウハウ等の経営資源の融合
アイピーサポートによる情報企画の不動産管理事業のM&A
不動産管理を行っているアイピーサポートは、金融機関の業務支援システムを開発している情報企画の不動産管理事業を譲り受けました。
- 実行時期:2023年1月
- スキーム:会社分割
- 取引価額:非公開
- 目的:不動産賃貸事業の運営機動化や、業務の効率化
ヤマイチ・ユニハイムエステートによるニューライフサービスのM&A
不動産事業をワンストップサービスで提供しているヤマイチ・ユニハイムエステートは、不動産の賃貸、管理、代理業他を行っているニューライフサービスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:住替需要やリフォームニーズへの対応
Liv-upによるフットワークのM&A
戸建住宅や収益不動産の開発販売を行っているLiv-upは、不動産売買仲介、賃貸管理事業を展開しているフットワークを子会社化しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:賃貸管理戸数を更に拡大による安定収益の基盤の強化
リログル―プによるステージプランナーのM&A
賃貸管理・借上社宅管理等の事業を展開しているリログル―プは、不動産管理企業のステージプランナーを子会社化しました。
- 実行時期:2022年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:顧客満足度向上や事業シナジーの創出
日本商業開発によるツノダのM&A
不動産投資事業等を展開している日本商業開発は、賃貸土地及びその管理を行うツノダを子会社化しました。
- 実行時期:2021年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:不動産投資商品事業の推進
トーモクによる玉善のM&A
住宅事業や商事事業等を展開しているトーモクは、不動産の事業や自社賃貸ビル・駐車場の管理業務を行っている玉善を子会社化しました。
- 実行時期:2021年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:愛知県住宅市場での事業基盤強化
AVANTIAによるドリームグループ3社のM&A
宅地造成事業、マンション事業、仲介事業等を展開しているAVANTIAは、不動産の売買及び仲介、不動産賃貸の仲介及び管理を行うDream Town、ドリームホーム、ドリームホーム3社と資本提携を行いました。
- 実行時期:2021年2月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:事業基盤の強化と成長の加速
APAMANグループによるマイハウスのM&A
シェアパーキングを行う運営APAMANグループは、2,622の戸賃貸管理等の事業を展開しているマイハウスを子会社化しました。
- 実行時期:2020年04月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
香陵住販によるKASUMICのM&A
茨城県つくばにて賃貸管理を行う香陵住販は、不動産の売買、賃貸、仲介、管理を行っているKASUMICを子会社化しました。
- 実行時期:2019年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:3億1,000万円
- 目的:拠点網の拡大による賃貸管理戸数の拡大とドミナント展開
日本管理センターによるシンエイとシンエイエステートのM&A
賃貸管理周辺事業を展開している日本管理センターは、不動産事業を展開するシンエイと、不動産信託受益権の販売業務を行うシンエイエステートを子会社化しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:27億円
- 目的:収益性向上
エムジーホームによるTAKI HOUSEのM&A
分譲マンションの企画および販売を行っているエムジーホームは、戸建分譲住宅および注文住宅の管理等を行うTAKI HOUSEを子会社化しました。
- 実行時期:2020年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:8億円
- 目的:関東エリアでのさらなる事業拡大
日本駐車場開発のロクヨンのM&A
駐車場に関する総合コンサルティングを行っている日本駐車場開発は、不動産の売買や管理を行うロクヨンを吸収合併しました。
- 実行時期:2023年7月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:組織の合理化
ビーロットによる横浜富士霊廟のM&A
不動産投資開発事業を主な事業として展開しているビーロットは、納骨堂の不動産管理を行う横浜富士霊廟を子会社化しました。
- 実行時期:2019年4月
- スキーム:3億7,500万円
- 取引価額:株式譲渡
- 目的:新たな事業領域への進出
ビケンテクノによる連蘇和のM&A
総合ビルメンテナンス事業を行っているビケンテクノは、不動産管理事業を行っている連蘇和を吸収合併しました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:経営の効率化および経営資源の有効活用
Robot Homeによるアイ・ディー・シーのM&A
賃貸住宅の IoT プラットフォーム「Residence kit」の提供しているRobot Homeは、賃貸不動産管理業などを行うアイ・ディー・シーを子会社化しました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:PMプラットフォーム事業および不動産コンサルティング事業の成長
ハウスコによる宅都のM&A
不動産賃貸建物の仲介・管理業務などを展開しているハウスコは、不動産賃貸仲介や不動産賃貸事業等を宅都を子会社化しました。
- 実行時期:2021年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:10億円
- 目的:事業規模の拡大と人材の成長・組織の活性化
グローバルキッズCOMPANYによる東京建物キッズのM&A
保育所・学童保育の運営を行うグローバルキッズCOMPANYは、保育施設の開発・管理運営を行っている東京建物キッズを子会社化しました。
- 実行時期:2023年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:3億7,000万円
- 目的:保育事業の規模拡大と一部本社機能の運営効率化
イオンディライトによるアスクメンテナンスのM&A
施設管理の大手企業のイオンディライトは、設備管理、マンション管理、建設施工等を行っているアスクメンテナンスを子会社化しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:九州における事業基盤を拡大と品質向上
四電ビジネスによるよんでんライフサポートのM&A
ビル賃貸、建物総合管理などのオフィス業務などを担う四電ビジネスは、高齢者向け住宅の管理運営をしているよんでんライフサポートを子会社化しました。
- 実行時期: 2022年07月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:社会のニーズに応える事業の展開
カジマ・デベロップメント・PTE・リミテッドによるセントラル・キャヒタル・ホールディングス・PTE・リミテッドのM&A
アジアにて総合建設会社として展開するカジマ・デベロップメント・PTE・リミテッドは、オフィスビルの賃貸および管理を行っているセントラル・キャヒタル・ホールディングス・PTE・リミテッドを子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:希少性が高い当該オフィスビルの取得
ASIAN STARによる徳威不動産及びU-HOME、特庫伊投資の3社のM&A
不動産の賃貸管理事業を行うASIAN STARは、不動産賃貸管理などを主な業務とする徳威不動産及びU-HOME、特庫伊投資の合計3社を子会社化しました。
- 実行時期:2020年08月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:日本人向け不動産サービスのノウハウの連携
おわりに
本記事のまとめ
不動産管理業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
不動産管理業はストックビジネスであり安定した収益を得られることから周辺事業からの参入も多い業界です。また不動産のオーナーと信頼関係を築くことで、新たなビジネスに繋がるチャンスもあります。
一方、求められるサービスの幅が広くなったことにより、自社だけでは対応できないと考えM&Aを検討する企業が増えています。また競争の激しい業界であるため、M&Aにより生き残りを図る企業もケースもあります。
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