繊維・衣服・装飾品業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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繊維・衣服・装飾品業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。繊維・衣服・装飾品業界は厳しい状況にあり、こうした状況を打破するため多くのM&Aが行われています。

本記事では、そうした繊維・衣服・装飾品業界の市場動向を解説するとともに、繊維・衣服・装飾品業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

繊維・衣服・装飾品業界の概要・市場動向

繊維・衣服・装飾品業界とは

繊維・衣服・装飾品業界とは、衣料品一般に関する製造・販売・流通に属し、ファッション業界の一部を構成する業界です。

アパレル業界を上流から分けると素材メーカー、アパレルメーカー、ファッション小売業があります。

素材メーカーは原料となる繊維や糸を製造する繊維素材メーカー、その繊維や糸から生地を製造する生地メーカー、生地を染色する染色メーカーなど様々な分野のメーカーが存在します。

アパレルメーカーは企画を行い、生地メーカーから生地の調達をし、衣料品を製造します。

製造工程は自社の向上で行う以外に、外部の協力工場に委託するケースも多くあります。製造工程は労働集約型の行程が多いため、人件費の安い海外の工場に委託する場合もあります。

繊維・衣服・装飾品業界の市場動向

EC販売の成長

矢野経済研究所「国内アパレル総小売市場規模推移」によると、2021年のアパレル業界の市場規模は7兆6,105億円で前年比101.3%でした。

前年度と比較すると、百貨店や専門店など2020年は新型コロナウイルスにより休業を余儀なくされた分野の回復が目立ちました。

2019年頃から本格的に普及しているECの売上は引き続き好調ですが、実店舗での集客は伸び悩んでいる状況です。

ECでの売上はあるもののコロナ禍による影響は大きく、今後はECによる販売だけでなくECと実店舗との連動を図る取り組みが注目されています。

新たな販売形態の登場

消費者のファッションへの消費額は年々減少しています。

近年の旅行や外食などの「コト消費」にお金をかける傾向だけでなく、ファッションの低価格志向やカジュアルトレンドも追い打ちをかけています。

AmazonやZOZOのような通販サービスが一般化したことで、実店舗での集客は以前より難しくなっています。

またメルカリやシェアリングサービスといった消費者間での取引も普及し、小売店で購入する機会が減少しました。

こうした新たな業態の登場によりアパレル業界は厳しい状況に置かれています。

海外進出と新たな戦略

少子高齢化によって国内の市場は縮小してくと見られるため、海外進出を強化する企業も多くあります。

特に人口増加と経済成長が進むアジア諸国を中心に、欧州、北米などをターゲットにしています。

少子高齢化だけでなく新型コロナによる消費の落ち込みやメルカリなどのフリマアプリの登場による購入先の多様化により、苦しい状況のアパレル業界は、消費者のニーズに合った新たな商品開発や海外事業の展開が注目されています。

繊維・衣服・装飾品業界のM&A動向

繊維・衣服・装飾品業界では業界再編に繋がるM&Aが多く見られます。

経済産業省「工業統計調査」によれば、2016年以降繊維業界の国内事業者数は年々減少しています。また、繊維業界の製造品出荷額もほぼ横ばいを推移しています。

業界全体の成長が鈍化しており、生き残りをかけた業界再編の時期を迎えていると言えます。

また、大手企業による海外企業のM&Aも多く行われています。

化学繊維事業を展開する大手企業は、海外で原料調達から販売まで一貫した管理体制を敷くため、海外企業とのM&Aによって効率的に事業を行っています。

繊維・衣服・装飾品業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

繊維・衣服・装飾品業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
  • 大手企業の傘下に入ることで、安定した経営を続けることができる

買い手のメリット

繊維・衣服・装飾品業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 新規事業立ち上げに比べ低コストで事業を拡大することができる
  • 売り手の繊維や衣服の製造工場を確保できる
  • 売り手の有する高いブランド力を獲得できる
  • 売り手の抱える従業員を確保できる

繊維・衣服・装飾品業界のM&A・売却・買収事例

ダイセルによるグンゼのM&A

セルロース、有機合成、合成樹脂などの化学品メーカーであるダイセルは、肌着、インナー、ストッキングなどの繊維製品を手掛けるグンゼを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業構造の最適化

東洋紡による帝人フィルムソリューションのM&A

繊維を中心に化成、バイオ、医薬などを幅広く手掛ける大手化学企業の東洋紡は、PETフィルム、PENフィルム、加工フィルムなどを手掛ける帝人フィルムソリューションを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外生産能力の向上

帝人によるBenet AutomotiveのM&A

マテリアル、ヘルスケア、繊維製造などを手掛ける化学メーカーの帝人は、チェコに拠点を置く自動車用複合材料部品メーカーのBenet Automotiveを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:欧州での販売チャネルの強化

日本毛繊によるフジコーのM&A

衣料繊維事業や産業機材事業を手掛ける日本毛繊は、独自の不織布、フェルト技術を活用した製品を販売するフジコーを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年5月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シナジー効果の獲得

小松マテーレによる吉田産業のM&A

染色を基盤に合成繊維の製造・販売を手掛ける小松マテーレは、ラッセル編みに特化しニットを製造する吉田産業を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新商品開発、顧客基盤の拡大

ReSTARTファンドによる山喜のM&A

アパレル業界の投資ファンド事業・コンサルティング事業を展開するReSTARTファンドは、様々な場面に合わせたワイシャツを販売する山喜の子会社を取得しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:工芸品のものづくり事業の強化

共同印刷によるクレハの中容量・大容量ブローボトルの製造事業のM&A

情報コミュニケーション・セキュリティ、生活・産業資材事業を手掛ける共同印刷は、クレハから中容量・大容量ブローボトルの製造事業を引き継ぎました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ブローボトルの外装やシュリンクラベルの製造による新たな付加価値の提供

おわりに

本記事のまとめ

繊維・衣服・装飾品業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

繊維・衣服・装飾品業界は販売形態の多様化や、若者のカジュアル志向、アパレル消費の減少により厳しい状況にあります。さらに少子高齢化により日本の市場は長期的に縮小していくと考えられます。

こうした背景から、繊維・衣服・装飾品企業は海外への進出や、競合他社とのM&Aにより生き残りを図っています。これからもこの流れは続くと見られ、今後も業界内のM&Aはますます増加すると考えられます。

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