解体工事業界の業界動向、M&A・売却・買収事例17選

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解体工事業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。近年は空き家の増加に伴い業界は成長傾向にあり、M&Aの件数も増えています。

本記事では、そうした解体工事業界の市場動向を解説するとともに、解体工事業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

解体工事業界の概要・市場動向

解体工事業界とは

解体工事業界とは建物や家屋を取り壊し撤去する工事を担う業界のことを指します。敷地を更地の状態に戻すだけでなく、内装のみを撤去する場合もあります。

2019年からは解体工事を行うには「解体工事事業登録」という認可が必要で、高い専門性が求められます。工事ごとに作業が異なるため、さまざまな技術が必要とされるうえ、コストや工期も異なるため、顧客や周辺住民への細かな対応が求められます。

解体工事業界は中小企業や個人事業主が多く、経営者が見積作成や営業など幅広く請け負う企業も多く存在します。ゼネコンを頂点とした下請け構造があり、受注単価が上がりにくいため多くの中小企業は厳しい状況を強いられています。

解体工事業界の市場動向

建物の老朽化による需要増加

高度経済成長期(1950年代から1970年代)に建設された建築物やインフラ設備の老朽化のため、解体工事の需要が高まっています。

また、1970年代から2000年代に大量に建築された木造建築物も解体の時期を迎えており、解体工事の件数は年々増えています。

国土交通省によると2028年にピークを迎えると見られています。また解体・改造・補修工事件数は年間73万~188万件と予想され、解体工事には多くの需要があるとされています。

自然災害による需要増加

東日本大震災で全壊した建物は約13万棟と言われており、2012年は解体工事件数が大幅に増加しました。

地震のみならず、日本では近年台風や豪雨などの自然災害が頻発していることから、解体工事、建て替え工事の需要が高まっています。

今後もこうした自然災害は発生すると考えられるため、その度に解体工事の需要が高まると見られています。

空き家の増加による需要増加

少子高齢化による人口減少に伴って、全国の空き家件数は増加傾向にあり、総務省「土地統計調査」によると2018年の空き家率は平均13.6%で、18%を超す県も存在します。

空き家は建物の老朽化などの理由から買い手が見つかりにくいため、土地売却や転用のために更地にするケースが多く、解体工事の需要が高まっています。

また、空き家を放置したままにすると、周囲の景観を損ねたり犯罪に利用される危険性があるため、国や自治体も対応を進めています。

空き家件数は非常に多いため、この需要は中長期的に続くものと見られています。

解体工事業界のM&A動向

解体工事需要の高まりに伴い、事業拡大や人材確保のためM&Aが活発に行われています。さらに現在は技術の進歩や工事の低価格化により、効率化のためにM&Aを行う企業も増えています。

また関連・周辺事業からのM&Aも多く、廃棄物処理やリサイクル関連企業、環境分野の企業が解体工事業の中小企業に対してM&Aを行う場合もあります。

下請け構造の業界のため受注単価が上がりにくいという特徴から、下請け企業は元請け企業の傘下に入り受注金額を上げるというメリットを得られます。事業の上流と下流の統合によって、買い手側は事業の効率化が図れ、売り手側は経営基盤の安定化を図ることができます。

解体工事業界におけるM&Aのメリット 

売り手のメリット

解体工事業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手と組むことでアスベスト対応などの環境対策の強化ができる
  • 買い手の経営基盤の活用や、大手傘下での雇用の安定化を図ることができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

解体工事業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 周辺業界から新規参入する場合にノウハウや機材を引き継ぐことができる
  • 売り手企業の職人を獲得して人材不足を解消できる
  • 売り手企業特有の強みを取り込んで競争力を向上できる

解体工事業界のM&A・売却・買収事例

ベステラによる矢澤のM&A

プラント解体工事を手掛けるベステラは、アスベスト・ダイオキシン対策工事を手掛ける矢澤を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:環境関連工事への対応力向上

鈴木商会による木村工務店のM&A

様々なリサイクル事業を手掛ける鈴木商会は、解体工事を手掛ける木村工務店を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:解体から廃棄物処理まで一気通貫での提供体制構築

トーヨーカネツによる環境リサーチのM&A

物流事業とプラント事業を手掛けるトーヨーカネツは、アスベストなどの調査事業を手掛ける環境リサーチを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:買い手の既存事業とのシナジー創出

シンセイとエヌフロントの資本業務提携

愛知県を中心に産業廃棄物処理業を手掛けるシンセイは、環境再生事業を手掛けるエヌフロントと資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2019年10月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:産業廃棄物処理業のサービス向上

諏訪重機運輸による橋本建材興業のM&A

廃棄物の運搬・処理を手掛ける諏訪重機運輸は、がれき類の運搬・処理を手掛ける橋本建材興業を買収しました。

  • 実行時期:2012年10月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大

クラッソーネによるJICベンチャー・グロース・インベストメンツとBonds Investment Groupからの資金調達

解体工事の施主と工事会社をつなぐマッチングプラットフォームを手掛けるクラッソーネは、投資事業を展開する政府系ファンドであるJICベンチャー・グロース・インベストメンツと、社会課題に取り組む事業を対象として投資を行うBonds Investment Groupに第三者割当増資を実施しました。

  • 実行時期:2020年12月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:約8億円
  • 目的:マッチングサービスの認知度向上

リサイクルクリーンによるサスダイ工業のM&A

静岡県を中心に産業廃棄物処理業を手掛けるリサイクルクリーンは、基礎鉄筋製造を手掛けるサスダイ工業を子会社会しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の経営資源統合によるシナジー創出

オカダアイヨンによる南西ウィンテック、南西機械、暁機工のM&A

建設機械の製造・販売を手掛けるオカダアイヨンは、解体工事用機械の製造・販売を手掛ける南西ウィンテック、南西機械、暁機工を子会社化しました。

  • 実行時期:2017年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の経営資源統合によるシナジー創出

新東京グループによるグリーンシステムズのM&A

環境プロデュース事業及び建設解体工事事業を主力事業とする新東京グループは、産業廃棄物の収集、運搬、処理並びに再生業務を展開しているグリーンシステムズ完全子会社化しました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業地域を拡大と業界全体の維持と活性化

三木資源によるウエストのM&A

金属類を中心に産業廃棄物をリサイクルする三木資源は、解体工事のウエストを傘下に収めました。

  • 実行時期:2022年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:8,500万円
  • 目的:事業の多角化

住友商事によるワーナー・エアロのM&A

住友グループの総合商社である住友商事は、航空機部品販売を行うアメリカのワーナー・エアロに出資しました。

  • 実行時期:2022年8月
  • スキーム:不明
  • 取引価額:10億円未満
  • 目的:新規事業への参入

新日本建設による冨士工のM&A

建設事業、開発事業を展開している新日本建設は、解体工事業を含め幅広く工事業を手掛ける冨士工を子会社化しました。

  • 実行時期: 2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:150億円
  • 目的:新たな収益機会の確保、開発事業における自社プロジェクトの施工能力拡大

オリエンタル白石による業山木工業ホールディングスのM&A

プレストレストコンクリートの建設工事および製造販売等を行うオリエンタル白石は、建築工事業や土木工事業、建築工事等を手掛ける業山木工業ホールディングスを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:37億3000万円
  • 目的:橋梁工事の受注機会の拡大

特種東海製紙による駿河サービス工業のM&A

特殊紙の技術をベースに生活関連用品製造業を展開する特種東海製紙は、木質系廃棄物を中心とし建物の解体業等も展開する駿河サービス工業を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:環境関連事業セグメントの強化・拡充

関西タクトによる尾藤建設のM&A

解体工事などの土木工事事業を展開する関西タクトは、解体・仮設・土木・建築などの鉄道関連工事事業を展開する尾藤建設と資本業務提携を実施しました。

  • 実行時期:2019年4月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:舗装・港湾・解体工事の技術活用によるサービス拡大

三木資源によるウエストのM&A

金属類を中心に産業廃棄物をリサイクルする三木資源は、解体工事のウエストを傘下に収めました。

  • 実行時期:2023年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:8,500万円
  • 目的:徳島県内での鉄スクラップ事業の先細りを見据えた新たな商材や商圏の開拓

木村工務店によるホリイのM&A

解体工事・産業廃棄物処理・リサイクル製品の販売を行う木村工務店は、総合解体工事施工・管理を行っているホリイの事業を承継し、経営統合を実施しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:更なる利便性向上を追求と、資源循環のインフラとしての地域貢献

おわりに

本記事のまとめ

業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

近年は高度経済成長期に建てられた建築物や空き家など、解体工事の必要な建物が増えています。

さらに、自然災害の影響による解体の必要性は今後も発生すると考えられています。これにより解体工事は今後高い需要が続くと見られており、それに伴って解体工事業界とその周辺業界のM&Aも盛んに行われると考えられます。

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