山口県のM&A・会社売却・買収事例、事業承継の動向
現在、山口県をはじめとした全国の中小企業において、後継者不在や事業の更なる成長を目的としたM&Aが注目を集めています。
本記事では、そうした山口県のM&A動向を解説するとともに、山口県における会社売却・買収事例や、事業承継の動向をまとめてご紹介します。
山口県のM&A・事業承継動向
山口県の現状
山口県の概要
山口県の人口は約134.2万人です。うち15歳未満の人口は約15.3万人(11.5%)、15~64歳の人口は約72.3万人(53.9%)、65歳以上の人口は約46.4万人(34.6%)です。高齢者の人口比率が全国で3番目に高く、高齢化が特に進んでいる地域と言えます。(参照:山口県「令和2年国勢調査」)
山口県の気候は幅広いため、米、野菜、果物など多様な農産物を生産しています。
特に長州藩時代の四白政策(和紙・ロウ・米・塩の生産を強化した経済政策)により米作りが盛んです。野菜ではキャベツや玉ねぎなどの露地野菜や、いちご、トマトなどが有名です。(参照:やまぐち総合教育支援センター「やまぐちを知ろう」)
また、テレビCMやロケ地としても使用された角島大橋や、山口名物のフグやタイ、ハマチの市場として有名な唐戸市場などの観光地も多い地域です。
山口県の産業
山口県には52,083の事業所があります。
売上金額を産業大分類別に見ると「卸売業・小売業」(37.0%)が最も多く、次いで「製造業」(16.6%)、「医療・福祉」(13.7%)の順になっています。
山口県は2次産業の全国より10%ほど高くなっており、製造業が盛んな地域です。(参照:山口県「令和3年経済センサス」)
山口県の瀬戸内海には大正時代から造船・化学・機械などの工場が進出しています。その後は石油化学コンビナートが形成され全国有数の工業地帯になりました。
また、石油や化学製品の他に輸送用機械の製造も盛んです。自動車のマツダ、鉄道車両の日立製作所、造船の三菱重工業などの工場が集積しており、特に自動車製造では近隣の県と合わせて年間約200万台を生産しています。(参照:山口県「山口県企業立地ガイド」)
山口県の経済動向
山口県の経済は持ち直し始めている状況です。
輸出や生産にはやや踏みとどまっている傾向が見られますが、個人消費や設備投資には持ち直しの傾向が見られます。また、労働需給は引き締まっており、雇用者所得は改善してきていると言えます。
今後は海外の経済・物価情勢と国際金融市場の動向、資源・原材料価格の動向、新型コロナウイルスの感染状況などが金融経済に影響を及ぼすと考えられています。
また2020年に休廃業・解散した山口県内企業は530社で倒産した企業は57社でした。どちらも前年より減少していますが、新型コロナウイルス対策のための援助政策による一時的なもので状況が改善したとは言えません。
山口県のM&A・会社売却・事業承継動向
山口県内企業の後継者不在率は71.0%(全国4位)で、山口県は後継者問題が深刻な地域であることが分かります。山口県は少子高齢化が特に進んでいることが原因の一つと考えられます。
後継者がいないため黒字経営であっても休廃業・解散を余儀なくされた企業も多く存在します。
このような状況を改善するため山口県では官民で事業承継を支援する動きが活発化しています。その中でも買い手企業と売り手企業のマッチングによるM&Aが注目されています。
また、売上規模や従業員数の少ない中小企業ほど後継者が決まっていない傾向が強く、M&Aは中小企業にとって有効な手段であると考えられます。
山口県でM&A・事業承継を推進するには
M&A仲介会社などの専門家へ相談する
山口県でM&Aや会社売却を推進する手段として、M&A仲介会社などの専門家に相談する方法があります。
M&A仲介会社とは、M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーが売り手企業と買い手企業の間に立って、中立的な立場でM&Aの成立を支援する会社です。
M&Aにおいては法務的な手続きや税務処理、相手企業の選定まで、幅広い領域の専門性が必要不可欠であるため、こうした専門のアドバイザーに相談することは有効な手段の一つと言えます。
M&A仲介会社は得意領域や事業規模によって多数の会社が存在しているため、自社に合った会社を見つけることが重要です。
公的機関や金融機関へ相談する
山口県よろず支援拠点
山口県よろず支援拠点では、事業承継だけでなく生産性向上、補助金・助成金の相談などあらゆるサポートを行っています。
令和3年の累計相談件数は12,828件で、課題の大小を問わず何度でも相談可能です。
やまぐち事業承継・M&A協同組合
やまぐち事業承継・M&A協同組合では、事業承継、M&A、事業提携などの課題に対して専門家がチームで支援を行っています。
自治体の事業承継・M&Aに関するセミナーへの専門家の派遣や、事業承継・M&Aを考えている企業へのコンサルティングを実施しています。
山口県事業承継・引継ぎ支援センター
山口県事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継に関する専門家が無料で相談を受け付けています。
事業承継・引継ぎ支援センターに直接申し込むか、商工会議所や銀行を通して紹介してもらうことで相談申し込みが可能です。
下関商工会議所
下関商工会議所では会員に対して様々な経営課題への支援を行っています。
相談を受け付けるだけでなく、経営に役立つセミナーも開催しています。
山口商工会議所
山口商工会議所では中小企業診断士や税理士による事業承継支援を行っています。
山口市の事業承継支援事業のサイトでは、事業承継「見える化」と「磨き上げ」を目的とした動画が公開されています。
山口県のM&A・売却・買収事例
リゾリートによるアルファクス・フード・システムのM&A
ホテル事業を展開するリゾリート(山口県山陽小野田市)は、外食企業向けにASP/クラウド方式による各種基幹業務サービスや自社製品を導入したホテル・レストランを運営するアルファクス・フード・システムから、ナチュラルグリーンパークホテル(山口県山陽小野田市)の宿泊部門と天然温泉に関する事業を取得しました。
- 実行時期:2023年7月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:10万円(建物・土地などの固定資産は2億円)
- 目的:ASP事業への集中
イオンによるレッドキャベツのM&A
大手流通企業であるイオンは山口県と九州北部でスーパーマーケット事業を展開するレッドキャベツ(山口県下関市)の発行する第三者割当増資を引き受け子会社化しました。
- 実行時期:2014年9月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:提携による競争力強化
丸久による中央フードのM&A
山口県、広島県、島根県、福岡県でスーパーマーケット事業を展開する丸久(山口県防府市)は、山口県東部で10店舗のスーパーマーケットを展開する中央フード(山口県岩国市)の株式を取得し子会社化しました。
- 実行時期:2014年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:山口県での営業力強化
丸久によるピクロスのM&A
山口県、広島県、島根県、福岡県でスーパーマーケット事業を展開する丸久(山口県防府市)は、山口県東部に8店舗のスーパーマーケットを運営するピクロス(山口県平生市)を子会社化しました。丸久はピクロスに自己株式の一部を譲渡する代わりに、ピクロスの株式を68.27%取得しています。
- 実行時期:2008年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
フランスベッドホールディングスによるホームケアサービス山口のM&A
家庭用ベッド、医療・介護用ベッド、福祉用具、その他の家具の製造・販売を手掛けるフランスベッドホールディングスは傘下企業を通じて、福祉用具の販売・レンタルを手掛けるホームケアサービス山口(山口県下関市)の全株式を取得し子会社化しました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:メディカルサービス事業の拡大
エストラストによる建和住宅のM&A
山口県と九州地方で「オーヴィジョン」シリーズのマンション・分譲戸建を手掛けるエストラスト(山口県下関市)は、戸建て住宅の建設を手掛ける建和住宅(山口県下関市)の全株式を取得し子会社化することを決定しました。
- 実行時期:2023年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:住宅事業の強化
第一交通産業による玖珂駅構内タクシーのM&A
タクシー・ハイヤー事業や路線バス、不動産関連事業を展開する第一交通産業は、玖珂駅構内タクシー(山口県岩国市)の全株式を取得し子会社化しました。このM&Aで第一交通産業の山口県内のタクシー保有台数は277台になります。
- 実行時期:2020年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
おわりに
本記事のまとめ
山口県におけるM&A・事業承継の動向や、会社売却・買収事例をご紹介しました。
山口県でM&Aを行う際は、山口県で実績のあるM&A仲介会社などの専門家や、全国を対象にM&Aを取り扱う仲介会社を活用することがおすすめです。
各M&A仲介会社は、業種や地域、取引規模、手数料体系などで強みが分かれ、提供しているサービスも異なるため、地域への強みに加え、こうしたポイントも事前に確認しておくとよいでしょう。
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