倉庫業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

倉庫業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。倉庫業界は、EC利用が拡大したことで今後も引き続き需要の高まりが期待される業界です。
本記事では、そうした倉庫業界の市場動向を解説するとともに、倉庫業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
倉庫業界の概要・市場動向
倉庫業界とは
倉庫業界とは、寄託を受けた荷物を倉庫において補完する業界をいいます。
かつては国土交通省の認可による許可制が採用されていましたが、2022年からは倉庫管理責任者を選任したうえで国土交通省の登録を受けることが義務付けられています。
業務内容は場所の賃貸に限らず、検品、在庫管理、流通加工、通関業務、受注発注なども含んでいるため、運送業と並んで物流の中核と見なされています。

倉庫業界の市場動向
倉庫需要の拡大
EC拡大の恩恵を受けて、倉庫業界の市場規模は拡大しています。
国土交通省「第11回全国貨物純流動調査(物流センサス)の調査結果(速報)」によると、全国貨物純流動量は2015年から2021年にかけて8.2%減少していますが、倉庫業だけは15.4%の増加を記録しています。
出荷1件当たりの貨物量は2015年には1.73トンでしたが2021年には1.09トンまで減少しており、小ロット化が進行しています。これは消費者が物品の大きさにかかわらずECを利用する機会が増加していることを反映していると推測されます。
今後もこの傾向がは継続するため、商品を保管・管理する倉庫業界にとっては追い風になっています。
倉庫の自動化・機械化
倉庫業界では、労働力不足や業務の効率化を目的に自動化・機械化が進行しています。
リストや注文書をもとに指定の品物を集めるピッキングや、箱やケースをパレットに積上げるパレタイズにロボットを活用するほか、無人フォークリフトや無人搬送車が導入されています。
また、倉庫の利用者と提供者のマッチングを効率的に行って物流施設の遊休スペースを最小化する倉庫シェアリングには、物流の最適化において大きな役割が期待されています。
これらの導入には相応の資金が必要ですが、倉庫業界は中小企業が大半を占めているため資金を用意できない事業者も存在します。
この業界構造はシェアを拡大したい大手企業からすると、買収を通じて売り手の業務効率化を推進できる余地が大きいと言えます。
そのため、国が「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」として支援策を講じるといったことや、中小事業者の機械導入事例を表彰して金融支援を行うなどの取り組みがなされています。
倉庫事業の多機能化
近年の倉庫業界では、産業構造の変化や物流施設に求められる役割の変化を背景に、倉庫の総合化・高機能化が進行しています。
バブル崩壊以降、企業の生産拠点が海外に移されたことで企業が資産圧縮を推し進めた結果、倉庫事業を始め物流事業が外部委託されるようになりました。
倉庫事業者も、在庫の最適化やリードタイムの縮小などサプライチェーンを最適化したい企業の要求に応えるために、保管機能に対応した保管型倉庫から、大規模なフロア面積に多数のバース(荷物の積卸のためにトラックを停車する場所)を備えるスルー型の物流センターへとシフトしました。
高機能化の代表的な例が3PL(3rd Party Logistics)です。3PLとは、荷主企業に代わって第三者が効率的な物流システムを提案したり、物流業務の企画・設計・運営を包括して請け負う業態を指します。
3PL事業は国土交通省も推進しており、国土交通省「物流:3PL事業の総合支援」では、人材育成推進事業の実施、ガイドライン等の策定、税制特例などの支援が明記されています。
倉庫業界のM&A動向
倉庫業界では、大規模な拠点網を有する大手事業者と中小事業者間でのM&Aが活発です。
倉庫業界の大手4社のシェアは10%程度であるため、輸送網を拡大することで物流ビジネスの最適化を図る大手事業者と機械化により業務の効率化を図りたい中小事業の間での業界再編が加速しています。
国内市場の物流量が減少していることを受けて海外市場へ展開する倉庫会社も増加しているほか、荷主企業である製造企業などが保有する物流会社を倉庫会社へ売却する事例も見られます。
倉庫業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
倉庫業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手事業者の資本を活用して設備投資を実行できる
- 自動化・機械化を実現することで業務を効率化できる
- 買い手の3PL事業に組み込まれることで多様なサービスを提供できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
倉庫業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の保有する輸送網・拠点網を拡大できる
- 売り手の倉庫や設備をそのまま活用できる
- 売り手の抱える経験のある人材を確保できる
- 売り手の顧客網を取り込むことができる
- 業界内でのシェア拡大に繋げることができる

倉庫業界のM&A・売却・買収事例
国分ロジスティクスによる中島運送のM&A
一般貨物自動車運送業、軽貨物運送事業等の物流事業、倉庫事業などを手掛ける国分ロジスティクスは、東京都世田谷区を拠点に、一般区域貨物自動車運送を手掛ける中島運送の全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年9月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:首都圏エリアでの配送機能の強化

セイノーホールディングスによる丸久運輸のM&A
国内・国際輸送、冷凍倉庫、食品宅配、引越などを手掛けるセイノーホールディングスは、食品・飲料関係を中心とした常温・冷蔵・冷凍倉庫業、物流加工業、輸送業を展開し、近年は3LP事業や物流コンサルティング事業を手掛ける丸久運輸の全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:低温流通網の拡充

廣済堂によるエヌティとNeoのM&A
情報ソリューション事業、人材サービス事業、エンディング関連事業を手掛ける廣済堂は、物流倉庫業への人材派遣業を手掛けるエヌティとNeoの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:情報ソリューション事業や BPO 事業等との連携
SBSホールディングスによる東洋運輸倉庫のM&A
総合物流事業、オフィス・住居・物流施設の不動産賃貸・開発事業などを手掛けるSBSホールディングスは、東京臨海部などで倉庫・通関・運送業を手掛ける東洋運輸倉庫の全株式得を取得しました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:最先端倉庫の開発・拡大
福岡運輸によるオー・ケー・ラインのM&A
定温物流・倉庫業、不動産賃貸業、港湾運送・通関業などを手掛ける福岡運輸は、食品小口配送に特化した定温物流・倉庫業を手掛けるオー・ケー・ラインの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:物流拠点の拡大
センコーによるナガセ物流のM&A
括的な物流サービスを手掛けるセンコーは、化学系大手専門商社長瀬産業の子会社で、主に長瀬産業グループが取り扱う製品(化学品や樹脂など)の保管・輸送・流通加工事業を手掛けるナガセ物流の株式過半数を取得しました。
- 実行時期:2020年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:化学物流業界における認知度向上

トナミホールディングスによる新生倉庫と御幸倉庫のM&A
3PL事業を展開する企業グループの持株会社であるトナミホールディングスは、主に中国エリアで食品メーカー系物流を強みとして倉庫業・運送業などをてがける新生倉庫の株式67%と、主に中部エリアでメーカー系物流を強みとして倉庫業・運送業などをてがける御幸倉庫の全株式をそれぞれ取得しました。
- 実行時期:2020年7月(新生倉庫)、2020年12月(御幸倉庫)
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:生産性の向上
おわりに
本記事のまとめ
倉庫業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
倉庫業界は、国内物流量の減少に反して、EC化の進展により需要が拡大している業界です。
現在では倉庫に求められる役割が保管機能に留まらず在庫管理や受発注データの管理など多岐に渡るため、物流網の中でも欠かせない存在になっています。
今後は業務の効率を追求するために機械化・自動化が進行するため、設備投資を行うことができない事業者を対象としたM&Aが加速すると見込まれます。

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