引越し業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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引越し業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。引越し業界は、多数の中小事業者が乱立する中で需要が停滞しているため競争が激化しています。

本記事では、そうした引越し業界の市場動向を解説するとともに、引越し業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

引越し業界の概要・市場動向

引越し業界とは

引越し業界は、引越し(居住から家財や機材を別所に移動させること)を請け負う業界をいいます。

主に、荷物移動の日程調整、引越し料金の見積もり、荷物の搬出・搬入作業などの引越しに関する一連の業務を請け負います。

東証一部上場企業から個人事業主まで様々な規模の事業者が存在します。

引越し業界の市場動向

引越し需要減少により市場競争が激化

引越し需要は景気の先行指標として言われており、景気と連動したオフィスや住居などの着工件数の増減に応じて引越し需要も変動します。

リーマンショック後はマンションやオフィスなどの大型の着工件数が減少した影響で引越し単価が減少しています。

引越し業は、輸送用のトラックと人材を備えていれば特別な法規制なしで参入できるため、個人事業主から大手引越し会社まで多数の事業者が乱立する業界です。したがって、業者の供給過多と単価低下を背景として、競争がますます激しくなってきています。

オンラインマーケティングを通じた営業強化

引越し需要の減少を受け、業界ではオンラインマーケティングを強化する動きが加速しています。

総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告」によると、日本国内における市町村間移動者数は524万7744人で、前年比で0.2%減少しています。同移動者数は1970年半ばから継続して減少傾向にあり、今後も移動者数減少に伴って引越し需要も減少し続けると予想されます。

このような状況下で、限られた需要を取り込む手段としてネットマーケティングが活用されています。実際、大手事業者であるサカイ引越センターは、インターネット経由で案件を獲得することでコロナ禍でも0.3%の売り上げ減少に留めています。

多様なサービス展開による差別化

単価低下と激化する競争に対抗するため、付帯サービスの拡張による差別化が図られています。

従来の物流機能の強化に加えて、家電などの物販、事務代行、電気工事、家電のリサイクルなどの付帯サービスが提供されています。

また、各顧客の荷物量や移動距離に応じて料金設定を細かく設定するなど、顧客の細かいニーズに応えたサービスによる差別化も図られています。特に、業界のほとんどを占める中小事業者には、大手事業者への対抗策として付帯サービスの充実が求められています。

引越し業界のM&A動向

引越し業界の大半は中小企業が占めているため、業界内での競争を背景にM&Aを通じた再編が活発です。

定期的に同業他社を買収して再編を図る大手事業者も存在し、大手事業者によるシェア獲得を企図したM&Aも増加しています。

また、慢性的な人手不足が業界全体での課題となっています。引越し業務における肉体労働のイメージから若者に敬遠されていることが主な要因であり、買収先の人材確保を目的としてM&Aが活用される場合もあります。

引越し業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

引越し業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 買い手の保有する顧客基盤を活用し営業展開できる
  • 買い手のサービスを取り入れることで包括的な引越し業務を提供できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

引越し業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 新規エリアでの事業展開を迅速に推進できる
  • 売り手の抱える人材を確保することができる
  • 売り手の持つ既存のトラックや運送設備を利用できる
  • 新規参入の場合、売り手の保有するノウハウを継承できる

引越し業界のM&A・売却・買収事例

日本通運によるMD LogisticsとMD ExpressのM&A

物流大手会社で引越し事業も手掛ける米国日本通運は、インディアナ州を拠点に医療薬品産業向け物流事業を手掛けるMD LogisticsとMD Expressの全出資持分を取得し、子会社化しました。

  • 実行時期:2020年5月
  • スキーム:持分譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:米国内での医療品物流ネットワークの獲得

トナミホールディングスによるケーワイケーのM&A

富山県を拠点に陸運業を手掛けるトナミホールディングスは、一般貨物自動車運送事業や引越し・事務所移転作業などを手掛けるケーワイケーの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2018年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:配送サービスのノウハウ獲得

サカイ引越センターによるSDホールディングスのM&A

引越し運送業を手掛けるサカイ引越センターは、クリーンサービス事業を営んでいるSDホールディングスの株式を取得しました。

  • 実行時期:2016年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ブランドイメージの向上

鴻池運輸による中電産業のM&A

製造業界やサービス業界での生産・流通から専門工程までの包括的なオペレーションに対応した請負サービスや物流サービスを手掛ける鴻池運輸は、工場の建設設備、上下水道の施設管理受託などを手掛ける中電産業の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:北陸地方でのエンジニアリングサービスの展開

SBSホールディングスによるリコーロジスティックスのM&A

企業向けの物流や保管、放送、流通加工、情報管理などを手掛けるSBSホールディングスは、リコーの物流部門を担当するリコーロジスティクスの株式66.6%を取得しました。

  • 実行時期:2018年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:運送ネットワークの強化

ビックカメラによるエスケーサービスのM&A

デジタル家電や電化製品の販売を手掛けるビックカメラは、首都圏で一般貨物運送業を手掛けるエスケーサービスと株式交換契約を締結し、エスケーサービスを完全子会社化しました。

  • 実行時期:2018年7月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:電化製品の配送・設置・工事における品質強化

丸和運輸機関によるコープデリ生活協同組合連合会のM&A

関東圏で生活協同組合の商品個配事業などを手掛ける丸和運輸機関は、関東運送と国際トランスサービスの両者が受託していた企業であるコープデリ生活協同組合連合会から商品個配事業を譲受しました。

  • 実行時期:2018年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:首都圏での事業展開

おわりに

本記事のまとめ

引越し業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

引越し業界では、引越し需要の減少に伴って業界内での競争が激化しています。また、単価の低下に対応して従来の引っ越し業務に留まらない多様なサービス展開が求められています。

今後、オンラインマーケティングの強化や新規サービスの拡充、人材確保など、業界内での競争力を高めるための手段としてM&Aがますます活発化すると見込まれます。

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