スーパーマーケット業界の業界動向、M&A・売却・買収事例29選

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スーパーマーケット業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。大規模のスーパーマーケットが順調に売上を伸ばす一方、中小規模のスーパーマーケットは厳しい状況に置かれています。

本記事では、そうしたスーパーマーケット業界の市場動向を解説するとともに、スーパーマーケット業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

スーパーマーケット業界の概要・市場動向

スーパーマーケット業界とは

スーパーマーケットは、全国スーパーマーケット協会によると「単独経営のもとに、セルフサービス方式を採用している総合食料品小売店で、年商1億円以上のもの」と定義されています。

スーパーマーケットは大きく2つに分けることができ、食料品、衣料品、玩具など日常生活に必要なあらゆるものを取り扱う「総合スーパー」と、主に食料品を取り扱う「食品スーパー」に分けられます。

経済産業省の「商業動態統計」によると、2021年のスーパーマーケットの販売額は約15兆円で前年比1.3%増でした。スーパーマーケットの販売額は2020年に大幅に増加しており、要因として新型コロナウイルスによって家で食事をする人が増加したことが挙げられます。

スーパーマーケット業界の市場動向

人材不足が深刻化

他の多くの業界と同じように、スーパーマーケット業界も人材不足が問題となっています。

その解決策としてセルフレジの導入によるレジ店員の削減や、ICタグによる在庫発注管理の無人化が行われており、これにより店舗の早朝深夜営業も可能になっています。

一部の総合スーパーではIoTにより物流センターやプロセスセンターを地域の店舗ごとに最適化し、さらなる機械化に取り組んでいます。

一方、このような機械やITの導入はコストがかかるため、中小規模のスーパーマーケットではあまり進んでおらず、人材不足解決の糸口を見出せない企業が多く存在します。

低価格化に依存しない差別化対応

スーパーマーケットは商品の価格が他店との大きな差別化要因になるため、過剰な価格競争に陥ることがあります。そのため、深夜営業や24時間営業を行うなど、サービス面で他店との差別化を図る企業も現れています。

また、大手企業ではプライベートブランドの展開によって低価格、高品質な商品を販売したり、大規模スーパーマーケットの運営により品揃えを豊富にするなどの対策が取られています。

人口減少により市場は縮小していくと考えられるので、価格以外の面でどのように他店と差別化を行うか、各社対応が求められています。

ネットスーパー・無人スーパーの拡大

近年、店舗に行けない高齢者や富裕層に向けたネットスーパー事業が注目されています。

しかし、多くの消費者は食料品を店舗で買うものと認識しているため、現時点ではそれほど浸透しているとは言えません。今後いかに消費者の目をネットスーパーに向けるかがカギとなっています。

また「Amazon Go」やアリババの手掛ける「フーマ」などの無人スーパーも登場しています。これらの無人スーパーは、カメラやセンサー技術によって店舗の無人化、キャッシュレス化を実現しています。こういった業態は独自性が強いため、既存のスーパーマーケットとは競合になりにくいと見られています。

スーパーマーケット業界のM&A動向

スーパーマーケット業界では大手企業による買収が盛んです。理由としては人口減少による市場規模縮小への対策と、地域密着型スーパーのノウハウ、顧客の獲得が挙げられます。

中小規模のスーパーは大手の傘下に入ることで、経済基盤の確保、大手企業のプライベートブランドの販売が可能になるため、今後も大手企業のM&Aによる業界再編は続くと見られています。

こうした大手企業の勢力に対抗するため、ブランド力の向上や顧客拡大を目的とした中小規模スーパー同士の業務提携も見られます。

また、近年異業種とのM&Aも進んでおり、特定の分野に力を入れることでコンビニやディスカウントストアに対抗する動きも増えています。

スーパーマーケット業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

スーパーマーケット業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 安定した経営基盤を確保することができる
  • 中小規模のスーパーでは難しいデジタル化を投資をかけて推進できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

スーパーマーケット業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 一定地域内で更なるドミナント戦略を進めることができる
  • 売り手の顧客基盤をそのまま引き継ぐことができる
  • 売り手の経営資源を統合することで、新たな事業に挑戦しやすくなる

スーパーマーケット業界のM&A・売却・買収事例

イオンによるダイエーのM&A

スーパーマーケット業界で国内最大手のイオンは、1957年に神戸で創業したスーパーマーケットのダイエーを子会社化しました。

  • 実行時期:2013年8月
  • スキーム:株式公開買付
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営回復と企業価値の向上

エービーシー・マートによるオッシュマンズ・ジャパンのM&A

靴の企画・製造・販売を手掛けるエービーシー・マートは、アメリカンスポーツを中心としたスポーツ用品の販売を手掛けるオッシュマンズ・ジャパンを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:スポーツ用品業界への参入

ヤオコーによるせんどうのM&A

埼玉県を中心にスーパーを展開するヤオコーは、千葉県市原市を中心にスーパーを展開するせんどうと資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:協業による更なる事業成長の推進

PPIHによるGRCY HoldingsのM&A

ドン・キホーテなどのディスカウントストアを手掛けるPPIHは、高級スーパーマーケットを手掛けるGRCY Holdingsを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外事業の拡大

イズミによるユアーズのM&A

中国、四国、九州を中心にショッピングセンターやスーパーマーケットを展開するイズミは、広島県、岡山県、山口県、福岡県でスーパーを展開するユアーズを第三者割当増資の引き受けにより子会社化しました。

  • 実行時期:2015年10月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営統合によるスケールメリットの享受

アトラグループによるビーユーのM&A

鍼灸師などのサポートを行うアトラグループは、玩具などを販売しているビーユーを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新規事業への参入

クスリのアオキによるホーマス・キリンヤ、フードパワーセンター・バリューのM&A

ドラックストアと調剤薬局を展開するクスリのアオキは、宮城県と岩手県でスーパーを展開するホーマス・キリンヤと、ホーマス・キリンヤが販売する商品の仕入業務を行っているフードパワーセンター・バリューを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:流通・販売チャネルの統合によるシナジー創出

クスリのアオキによるサンエーのスーパーマーケット事業のM&A

近隣型小売業、調剤業務を行っているクスリのアオキは、食品スーパー2店舗を展開するサンエーのスーパーマーケット事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:地域に根差した店舗づくり

マルミヤストアによるアタックスマート、新鮮マーケットおよびマルミヤ水産3社のM&A

スーパーマーケットの経営を行うマルミヤストアは、スーパーマーケット事業やディスカウントストア事業を行うアタックスマート、新鮮マーケットおよびマルミヤ水産3社を吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営の効率化および安定化

クスリのアオキによる三崎ストアーのスーパーマーケット事業のM&A

近隣型小売業、調剤業務を行っているクスリのアオキは、石川県に食品スーパーを展開する三崎ストアーのスーパーマーケット事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:北陸地区のドミナント戦略強化

オークワによるヒラマツのM&A

チェーンスーパーのオークワは、食品スーパーマーケットを展開しているヒラマツを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営効率の向上

三越伊勢丹ホールディングスによるエムアイフードスタイルのM&A

百貨店業等の事業を行う三越伊勢丹ホールディングスは、スーパーマーケット・卸売り等を行っているエムアイフードスタイルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:店舗網の活用

栄川酒造によるリオン・ドールコーポレーションのM&A

明治2年から酒造店を営む栄川酒造は、スーパーマーケット・CD・書籍販売等を行っているリオン・ドールコーポレーションと資本業務提を行いました。

  • 実行時期:2021年6月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:業績向上

クスリのアオキホールディングスによるスーパーマルモのM&A

クスリのアオキホールディングスは食品スーパーマーケットを行う子会社のルナックスを通して、スーパーマーケットおよび飲食事業を行うスーパーマルモを吸収分割しました。

  • 実行時期:2021年6月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの価値向上

マルミヤストアによる小野商店のM&A

生鮮食品主体のスーパーマーケット経営を行うマルミヤストアは、食品スーパーや農産物直売等を行う小野商店よりスーパーマーケット2店舗を譲り受けました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:営業基盤の強化

フジによるニチエーのM&A

総合小売業を展開しているフジは、スーパーマーケット11店舗を展開しているニチエーの事業を継承する新設会社を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客の支持拡大

イズミによるマルヨシセンターのM&A

ショッピングセンター等の小売事業をコアビジネスとするイズミは、小商圏型店舗を展開しているマルヨシセンターと資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ドミナント戦略の強化

エコスによる与野フードセンターのM&A

食品スーパーマーケット事業を中心事業とするエコスは、食品スーパーマーケットを展開している与野フードセンターを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:競争力の強化

穴吹興産によるママのセンターのスーパーマーケット事業のM&A

スーパーマーケットを運営する子会社を持つ穴吹興産は、ママのセンターのスーパーマーケット事業を承継しました。

  • 実行時期:2019年10月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:2億7,800万円
  • 目的:経営の合理化と収益力の向上

アークスによる伊藤チェーンのM&A

食品流通企業グループを形成するアークスと地域に密着した食品スーパーマーケット事業を行う伊藤チェーンは、株式交換による経営統合を行いました。

  • 実行時期:2019年9月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営の効率化と顧客満足度の向上

ジャパンミートによるタジマのM&A

スーパーマーケット事業、外食事業等を展開しているジャパンミートは、地域密着型の「スーパーマーケットタジマ」を展開しているタジマを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値向上

楽天による西友のM&A

事業を多方面に展開している楽天は、日本全国にスーパーマーケットを展開している西友の株式を一部取得しました。

  • 実行時期:2020年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:DXの加速化

バローホールディングスによる三幸のM&A

スーパーマーケット・ドラッグストア・ホームセンター事業を主力とするバローホールディングスは、スーパーマーケットを展開する三幸を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:スーパーマーケット事業全体の収益改善

アークスによるみずかみのM&A

スーパーマーケットなどの運営を手掛けているアークスおよび事業子会社ベルジョイスは、スーパーマーケット事業を展開しているみずかみと経営統合を行いました。

  • 実行時期:2023年7月
  • スキーム:経営統合
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営基盤・グループシナジーの活用

イオンによるいなげやのM&A

スーパーでの小売やディベロッパーなどを展開するイオンは、スーパーマーケット事業とドラッグストア事業を展開しているいなげやを子会社化しました。

  • 実行時期: 2023年04月
  • スキーム:経営統合
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の統合活用と店舗基盤強化

丸久によるハツトリーのM&A

食品スーパーマーケット事業を行っている丸久は、スーパーマーケットおよびボランタリーチェーンを運営しているハツトリーを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シナジー効果創出

JMホールディングスによるスーパーみらべるのM&A

スーパーマーケットや青果仲卸などの事業を行うJMホールディングスは、食品スーパーを展開しているスーパーみらべるを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:店舗網の拡充

G‐7ホールディングスによる99イチバのM&A

フランチャイジーとして業務スーパー事業の展開などを行うG‐7ホールディングスは、ミニスーパー「mini ピアゴ」を展開する99イチバを子会社化しました。

  • 実行時期: 2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:12億2,500万円
  • 目的:企業価値向上

7-Eleven, Inc.によるBrown-Thompson General PartnershipのM&A

コンビニエンスストアを展開する7-Eleven, Inc.は、オクラホマ州にコンビニエンスストアを108店舗展開するBrown-Thompson General Partnershipを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:店舗網の拡充による収益拡大

おわりに

本記事のまとめ

スーパーマーケット業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

スーパーマーケット業界では人口減少による市場規模の縮小に直面し、激しい市場競争が繰り広げられており、また、人材不足によって中小規模のスーパーは厳しい状況に置かれています。

このような問題を解決する手段として、大手企業と中小企業のM&Aは今後ますます増加すると見られています。また、他社との差別化を図るため、異業種とのM&Aもますます注目を集めています。

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