家具・オフィス業界の業界動向、M&A・売却・買収事例29選!
家具・オフィス業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。家具・オフィス業界は異業種からの参入が多く、新規参入のためのM&Aも少なくありません。
本記事では、そうした家具・オフィス業界の市場動向を解説するとともに、家具・オフィス業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
家具・オフィス業界の概要・市場動向
家具・オフィス業界とは
家具・オフィス業界とは、椅子やベッドなどの家具からキッチン用品やバス用品などの生活雑貨まで、幅広く取り扱っている業界を指します。
家具の開発だけでなく、顧客のニーズに合わせてインテリアを提案する空間デザインも家具・オフィス業界に入ります。
家具・オフィス業界は企業によってコンセプトが異なり、ターゲットとなる消費者のニーズに合わせて家具を開発・販売します。オーダーメイドの高級家具から、量産型のリーズナブルな家具を販売するメーカーまで様々です。
一般的に大手家具メーカーは開発から販売まで行い、中小企業は販売のみ行います。大手家具メーカーにニトリ、良品計画、イケア・ジャパンなどが挙げられます。
家具・オフィス業界の市場動向
家具需要の回復
家具・オフィス業界は住宅業界の動向に影響を受けやすいと言われています。理由は引越しや住宅リフォームの際に家具を買い替える人が多いためです。
国土交通省「建築着工統計調査報告書」によると、2021年の新設住宅着工戸数は865,909件で前年比6.6%増でした。
新築戸数は2020年まで減少が続いていましたが、2021年に増加に転じたことは家具業界の生産額にもプラスに働いていると考えられます。
さらに2021年に入り、ホテルやオフィスが再開し需要が回復してきたため、大口の発注も増えつつあります。
生活雑貨需要の拡大
近年のインターネット通販やフリマアプリの台頭によって消費者の購買活動は多様化しました。
大型家具の需要が頭打ちになり、家具メーカーは新たな販売戦略を求められています。
その戦略の一つとして生活雑貨の充実があります。生活雑貨の需要は堅調で、家具・オフィス業界ではキッチン用品やバス用品の品ぞろえを増やすことで、消費者の来店を促すビジネスモデルが増えました。
家具メーカー大手のニトリではインテリア雑貨を取り扱う「デコホーム」の出店を増やし、消費者の需要を取り込んでいます。
都市型店舗の出店が増加
家具メーカー大手は都市型店舗の出店を加速させています。理由として近年都心回帰や車を持たない若者が増えており、駅から近い店舗を新設することで若者の需要を取り込む狙いがあります。
イケアジャパンは2020年から2021年にかけて原宿、新宿、渋谷に都市型店舗を開店しています。従来の郊外型店舗だけでなく、都市型店舗により都心の消費者にもアプローチする狙いがあると考えられます。
ニトリは2015年にマロニエゲート銀座、2017年に東武池袋、2022年には池袋東急ハンズの跡地に出店予定です。
家具・オフィス業界のM&A動向
近年家具・オフィス業界では異業種からの参入や、家具・オフィス業界からの異業種参入を目的としたM&Aが増えています。具体的にはインテリア専門店、家具店、ホームセンターがあります。
2017年にヤマダ電機は家具・オフィス業界への参入意向を示し、2019年には大塚家具を子会社化しました。他業種からの参入で事業規模を大きくする場合、既存企業のM&Aは有効な手段のため今後も継続的な需要が予想されます。
家具・オフィス業界から他業種への参入ではニトリが有名です。ニトリは2017年にアパレル業界への参入を表明しました。アパレル業界への進出により、衣・住の領域で消費者を取り込む狙いがあると考えられます。
また後継者問題は家具・オフィス業界の中小企業にも存在し、この問題解決のためのM&Aも多く見られます。
家具・オフィス業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
家具・オフィス業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
- 創業者利益を獲得できる
- 倒産・廃業のリスクを回避できる
買い手のメリット
家具・オフィス業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 事業エリア・販路を拡大できる
- 内製化によるコスト削減ができる
- 経営基盤を強化できる
- 売り手企業のブランドを活用することができる
家具・オフィス業界のM&A・売却・買収事例
アント・キャピタル・パートナーズによるイーナのM&A
未上場株式等への投資を行う投資会社であるアント・キャピタル・パートナーズは、Webサイト制作、Webマーケティング、EC事業などを手掛けるイーナの株式を取得しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:EC事業の成長性
オカムラとTelexistenceの資本提携
家具・産業用機器の製造を手掛けるオカムラは、ロボットを通じて店舗内の商品陳列業務を遠隔から可能にするサービスを提供するTelexistenceと業務提携を締結しました。
- 実行時期:2021年6月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:店舗運営における両社の問題解決
ヤマダ電機による大塚家具のM&A
大手家電量販店のヤマダ電機は、大手家具メーカーの大塚家具と資本提携を締結し、第三者割当により発行される新株式および新株予約権を引き受けることで合意しました。
- 実行時期:2019年12月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:43億7,400万円
- 目的:売り手のブランド力・商品力
ニトリによるネゴロのM&A
家具業界最大手のニトリは、タイでカーペット製造業を手掛けるネゴロ社を子会社化しました。
- 実行時期:2019年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:自社製造能力の強化
イトーキによるダルトンのM&A
事務用品・各種設備を取り扱うイトーキは、研究・教育施設事業を手掛けるダルトンを子会社化しました。
- 実行時期:2016年8月
- スキーム:TOB
- 取引価額:非公開
- 目的:木製家具の内製化による収益向上
フォーバルによるえすみのM&A
中小企業に対しビジネスフォン、OA機器、ウェブサイト制作などを手掛けるフォーバルは、オフィス機器、オフィス家具や家電機器販売を手掛けるえすみを子会社化しました。
- 実行時期:2020年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:既存サービスとのシナジー獲得
ウェブシャークによるYogiboのM&A
バンズの代わりに卵を使用したハンバーガーであるエッグウィッチの販売を手掛けるウェブシャークは、アメリカのビーズソファブランドであるYogiboを子会社化しました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:防衛策としてのM&A
シナモンによるオカムラのM&A
人工知能に関連するプロダクトを提供しているシナモンは、オフィス家具業界のリーディングカンパニーであるオカムラと資本業務提携を行いました。
- 実行時期:2023年07月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:オフィス家具業界への新たな価値創出
フォーバルによる三知のM&A
中小企業向けにコンサル事業を展開するフォーバルは、OA機器・オフィス家具等の卸売を展開している三知を子会社化しました。
- 実行時期:2023年05月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:中国地方における顧客基盤の拡大とサービス拡大
コクヨによるHNI Hong Kong LimitedneoのM&A
文房具やオフィス家具の製造・仕入れなどを行うコクヨは、中国香港に於けるオフィス家具製造・販売を行っているHNI Hong Kong Limitedを子会社化しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:94億4,600万円
- 目的:中国市場における事業拡大
DCMホールディングスによる島忠のM&A
ホームセンター事業を手掛けるDCMホールディングスは、家具・インテリア雑貨などの小売業を行う島忠と経営統合を行いました。
- 実行時期:2020年11月
- スキーム:TOB
- 取引価額:非公開
- 目的:島忠とそれぞれの経営資源の集約
日本毛織によるインテリアオフィスワンのM&A
先端素材やハイブリッド素材を取り扱う日本毛織は、家具・インテリア製品の企画・開発・販売を行うインテリアオフィスワンを子会社化しました。
- 実行時期:2023年06月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:グループの企業価値向上
ユニマットライフによるカッシーナ・イクスシーのM&A
オフィスコーヒーサービス、リネンサプライ等を行うユニマットライフは、家具・生活雑貨の輸入・企画・製造・販売を行うカッシーナ・イクスシーを子会社化しました。
- 実行時期:2023年3月
- スキーム:TOB
- 取引価額:非公開
- 目的:顧客の共有化及びブランドにおけるシナジー効果創出
みずほリースによるRent Alpha Pvt. Ltd.のM&A
業界大手の総合リース会社のみずほリースは、IT機器・オフィス家具などをインド企業へ提供するRent Alpha Pvt. Ltd.を子会社化しました。
- 実行時期:2023年02月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:リースの黎明期にあるインド市場でのさらなる成長
三栄コーポレーションによるゼリックコーポレーションのM&A
生活用品の輸出入販売を行う三栄コーポレーションは、家電製品、業務用調理機器の企画・開発・販売を行うゼリックコーポレーションを吸収合併しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:総合家電事業としての発展
コクヨによるオリジンとエステイツク2社のM&A
文房具やオフィス家具の製造・仕入れなどを行うコクヨは、ダイニングを中心に製造業を行うオリジンと家具販売会社のエステイツクを子会社化しました。
- 実行時期:2023年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:アメニティ家具の販売・生産能力の強化
イトーキによるイトーキ北海道のM&A
オフィス家具の製造・販売大手のイトーキは、オフィス家具販売事業等を運営するイトーキ北海道を吸収合併しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:グループ経営の効率化を図る目的で行われる
アサヒ衛陶によるチャミ・コーポレーションのM&A
衛生機器などの販売を行うアサヒ衛陶は、輸入家具やオフィス家具及び日用品の卸販売などを行っているチャミ・コーポレーションを子会社化しました。
- 実行時期:2022年9月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:1,333万円
- 目的:販売から設置までの一貫したサービスの提供
フォーバルによるアベヤスのM&A
中小企業向けにコンサル事業を展開するフォーバルは、事務用品・オフィス家具の販売を行っているアベヤスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年04月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:顧客基盤の獲得
コーユーイノテックスによるジービーエス、ジービーエスシステムズ、およびカインドビジネス3社のM&A
国内外の企業向けにFF&Eのレンタルを行うコーユーイノテックスは、ICT機器事業を展開しているジービーエス、ジービーエスシステムズ、およびカインドビジネスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:サービス部門の効率性を最大化
FPKナカタケによる無錫三和塑料製品有限公司のM&A
施設向け特注家具・住宅設備向けOEM作成を行うFPKナカタケは、オフィス家具部品等の製造販売を行う無錫三和塑料製品有限公司を子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:1,500万円
- 目的:安定的な経営
MSD第一号投資事業有限責任組合による家具等の企画開発・販売を行うコンランショップ・ジャパンのM&A
投資事業組合のMSD第一号投資事業有限責任組合は、家具等の企画開発・販売を行うコンランショップ・ジャパンの株式を譲り受けました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:より一層の成長と収益力の拡大
フォーバルによる三好商会のビジネスソリューション事業のM&A
中小・小規模企業のDX化推進の支援を行っているフォーバルは、オフィスコンシェルジュを目指す三好商会のビジネスソリューション事業を譲り受けました。
- 実行時期: 2020年04月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:アイコンサービスの事業拡大
SANEIによるFLUSSOのM&A
給排水器具等の製造・販売を行うSANEIは、バスタブおよびバスルーム製品のデザイン開発・製造・販売を行うFLUSSOを吸収合併しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:水栓金具事業の拡大
バスタブによるblisspa japanのM&A
バスタブ及びバスルーム製品のデザイン開発・製造販売を行うHIDEOは、高級浴槽、シャワートイレの輸出入販売を行うblisspa japanを子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:国内および海外市場への事業開拓の加速
識学によるティーケーピーのM&A
経営・組織コンサルティング事業を行っている識学は、フレキシブルオフィスを法人向け中心に提供するティーケーピーと資本業務提携を行いました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
フォーバルによる奈良事務機のM&A
中小・小規模企業のDX化推進の支援を行っているフォーバルは、オフィス家具等の仕入販売などを行っている奈良事務機を子会社化しました。
- 実行時期: 2022年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:GDX支援やアドバイザーの育成支援
ニフティによるディノス・セシールの通信販売に関する事業のM&A
音声通話対応サービス事業などを行っているニフティは、総合通信販売事業により家具などを販売するディノス・セシールが行う通信販売に関する事業を譲り受けました。
- 実行時期:2021年3月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業価値向上
オカムラによるDB&B Holdings Pte.LtdのM&A
オフィス環境事業、商環境事業に取り組むオカムラは、オフィスの設計、内装工事を行っているDB&B Holdings Pte.Ltd社を子会社化しました。
- 実行時期: 2021年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:海外事業の強化
おわりに
本記事のまとめ
家具・オフィス業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
家具・オフィス業界は他業種からの参入が活発です。また家具・オフィス業界から他業種への参入も見られます。
こうした新規参入を効率的に実施するため、M&Aが取られています。
また大型家具の需要が減少し、新たな戦略が必要な家具・オフィス業界では、M&Aによる業界再編はますます進むと考えられます。
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