食品製造業界の業界動向、M&A・売却・買収事例30選

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食品製造業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。食品製造業界では変化する市場への対応の手段としてM&Aが活用されています。

本記事では、そうした食品製造業界の市場動向を解説するとともに、食品製造業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

食品製造業界の概要・市場動向

食品製造業界とは

食品製造業とは、原材料を加工し食品・飲料の製造・販売を手掛ける業界を指します。

一般的には原料を仕入れ、製造したものを卸売業者に販売し、小売業者や外食業者に渡ります。販売先である小売業者や外食業者に直接商談するケースが多いですが、流通や口座の関係で間に卸売業者が入るケースが多いです。

食品製造業界には大きく分けて、加工部門に原料を供給する「素材型」と、仕入れた原料で加工品を製造する「加工型」があります。素材型には製糖、製粉、製油などがあり、加工型にはパン、菓子、麺類などがあります。

食品製造業界の市場動向

人口減少や低単価化による市場縮小

少子高齢化や食料品の低価格化により、市場全体は縮小傾向にあります。

マクロ環境として日本の人口は減少しているため、これによって国内の食品需要は減少傾向にあり、将来的には供給過多になることが懸念されています。

また、消費者の節約志向や所得水準の減少により、食料品の低価格指向が進んでいることを背景に価格競争が激化しており、国内市場のさらなる縮小が危惧されています。また流通業界の集約化による値下げ圧力も、低価格の一因となっています。

食品製造コストの増大

食品の低価格化が進む一方で、食品製造にかかるコストは上昇傾向にあります。

近年は穀物の高騰や、原油価格の高騰、食の安全を確保するための品質保証などコスト増加の要因が数多く存在します。特に、円安の傾向が強まっていることから、海外から輸入している原料費の負担が増えています。

また、食品ロスや海洋プラスチックごみの問題などへの対応も求められており、食品製造業界は多くの問題の解決が求められています。

こうしたコストの増大に対応するため値上げを検討する企業も多いですが、食品の低価格化に逆行するため難しい状況が続いています。

「食の安全」確保に向けた対応

近年は食品の健康志向ブームなど、消費者のニーズが多様化していると言えます。

また、食品の偽装表示問題などから、消費者の「食の安全」への意識も高まっています。食の安全の確保は企業の存続に関わる重大な問題のため、各社早急な対応を迫られています。

この問題の解決策として、生産・加工・流通の段階において食品の移動を確認する「食品トレーサビリティ」の導入が進んでおり、すでに米・牛肉の分野では義務化されています。

食品製造業界のM&A動向

食品製造業界では、コストの増大や価格競争を背景に近年業界再編が進んでいます。

特に、素材型の企業では他者との差別化が難しいため、コストの削減やスケールメリットの獲得を目的としたM&Aが多く見られています。また、新しい加工品の開発など、事業の多角化を意図したM&Aも行われています。

加工型の企業では、素材型の企業とのM&Aにより事業の多角化を目指したり、海外進出を見据えた外国企業とのM&Aが進んでいます。

また、消費者ニーズの多様化を受け、健康食品を取り扱う企業の食品製造業への新規参入など、周辺企業のM&Aも頻繁に行われています。

食品製造業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

食品製造業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 有力な大手企業のもとで安定的な経営を持続できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

食品製造業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 垂直統合することで製品と流通を一括化できる
  • 新商品の開発に必要な技術やノウハウを獲得できる
  • 売り手と事業を統合することでスケールメリットを享受できる
  • 異業種からの新規参入の場合、技術や設備を短期間で獲得できる

食品製造業界のM&A・売却・買収事例

小林製薬による梅丹本舗のM&A

栄養補助食品を中心に事業を展開する小林製薬は、梅専門メーカーである梅丹本舗を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウの獲得による事業の拡大

不二製油とcottaの資本業務提携

植物性の原料を中心とした食品素材を手掛ける不二製油は、製菓・製パン材料のECサイトを手掛けるcottaと資本業務提携を結びました。

  • 実行時期:2022年5月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:約2億8800万円
  • 目的:新商品の開発を新規需要の創造

亀田製菓によるマイセンのM&A

米菓の製造・販売を手掛ける亀田製菓は、グルテンフリー食品の製造・販売を手掛けるマイセンを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新商品の開発とノウハウの獲得

21LADYによるあわ家惣兵衛のM&A

ライフスタイル事業を展開する21LADYは、和菓子メーカーのあわ家惣兵衛を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の相互活用によるシナジー創出

エア・ウォーターによる元気のM&A

食品・農業・医療関連事業など幅広く展開しているエア・ウォーターは、黒にんにくを製造・販売する元気を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営資源の相互活用によるシナジー創出

味の素とおいしい健康の資本業務提携

食品の製造・販売を手掛ける味の素と、栄養管理アプリや医療機関と連携した患者支援を手掛けるおいしい健康は資本業務提携を結びました。

  • 実行時期:2022年1月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の技術を活用したオープンイノベーションの創造

フジッコによるフーズパレットのM&A

食品製造を手掛けるフジッコは、百貨店を中心に中華総菜を販売するフーズパレットを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウの獲得による事業の拡大

わらべやによるヒガシヤデリカの食品製造事業のM&A

調理済食品の製造販売を行っているわらべやは、セブン-イレブン向けの麺やパンなどの製造販売を行うヒガシヤデリカの食品製造事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2024年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:約24億円
  • 目的:首都圏における麺およびパン事業への参入

アークランドサービスホールディングスによるコスミックダイニングのM&A

「かつや」を中心に飲食店経営を行うアークランドサービスホールディングスは、スーパーや飲食店向け冷凍食品の製造販売を行うコスミックダイニングを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:販路拡充、事業規模拡大

新東京デリカによるワタミの食品製造販売事業のM&A

水産食材に強い食品メーカーを子会社に持つ新東京デリカは、集中仕込みセンターを運営するワタミより食品製造販売事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2018年10月
  • スキーム:会社分割
  • 取引価額:9億4,000万円
  • 目的:両グループの更なる発展

丸大食品によるトーラクのM&A

ハム・ソーセージ等の食肉の加工販売を行う丸大食品は、乳加工食品の製造販売を主に行っているトーラクを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:12億円
  • 目的:研究開発力の融合

ヨシムラ・フード・ホールディングスによる国分グループ本社のM&A

食品製造業支援を行うヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の流通加工等を担う国分グループ本社と資本業務提携契約を行いました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値向上

オーイズミによる下仁田物産のM&A

不動産賃貸等多岐にわたる事業を展開するオーイズミは、農産食料品の味付加工・保存加工及び販売を展開している下仁田物産を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年01月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値向上

ヨシムラ・フード・ホールディングスによるおむすびころりん本舗のM&A

食品製造業支援を行うヨシムラ・フード・ホールディングスは、乾燥食品の製造を行っているおむすびころりん本舗を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年3月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:4億500万円
  • 目的:両社のさらなる成長

ヨシムラ・フード・ホールディングスによるマルキチのM&A

食品製造業支援を行うヨシムラ・フード・ホールディングスは、カニ等の製造加工・販売を行う企業マルキチを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外販路・ネットワークの融合

ニップンによるオーケー食品工業のM&A

中食事業など食品事業を幅広く展開しているニップンは、油あげおよびあげ加工品の製造販売を主業にするオーケー食品工業を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループ全体の企業価値向上

ヨシムラ・フード・ホールディングスによる林久右衛門商店のM&A

食品製造業支援を行うヨシムラ・フード・ホールディングスは削り節等の製造・加工・販売業を行っている林久右衛門商店を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:業績の拡大

フジタコーポレーションによるTOMONIゆめ牧舎のM&A

飲食店等の運営を行っているフジタコーポレーションは、牧場の経営および乳製品の生産販売等を行っているTOMONIゆめ牧舎を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年2月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益性および企業価値の向上

ツルヤ化成工業による京都フードパックのM&A

健康食品を中心とした食品の製造・加工を行うツルヤ化成工業は、食肉の加工・卸業を行っている京都フードパックを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:EC事業領域への参入

DAIZによるミヨシ油脂のM&A

植物性食品の開発・製造・販売を行っているDAIZは、加工油脂の研究開発・製造・販売を行っているミヨシ油脂と資本業務提携を締結しました。

  • 実行時期:2022年06月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:「ミラクルミート」の付加価値向上

マルハニチロによるマリンアクセスのM&A

食品製造・加工・販売事業等を展開しているマルハニチロは、マグロを主とする水産物の調達、加工を行うマリンアクセスをグループ化しました。

  • 実行時期:2021年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:マグロ事業の更なる拡充

カルビーによるカルビーポテトのスナック菓子の製造事業のM&A

菓子・食品の製造・販売を行うメーカーのカルビーは、馬鈴薯等の加工品製造販売などを行っているカルビーポテトよりスナック菓子の製造事業を吸収分割しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:競争力強化

稲畑産業による大五通商のM&A

大手化学専門商社の稲畑産業は、乾燥野菜・水産加工品の製造販売等を行っている大五通商を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益拡大

伊藤忠製糖によるツルヤ化成工業のM&A

糖類の製造加工・販売などを行っている伊藤忠製糖は、健康食品を中心とした食品の製造・加工を行うツルヤ化成工業と資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2023年5月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:機能性素材分野の拡大

日新製糖による伊藤忠製糖のM&A

砂糖を中心とした食品の製造販売を行う日新製糖は、糖類の製造加工・販売などを行っている伊藤忠製糖と経営統合をしました。

  • 実行時期:2023年1月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値の向上

Minerva S.A.によるBreeders & Packers Uruguay のM&A

グローバルに食肉処理場を持ち輸出を行うMinerva S.A.は、ウルグアイにて食肉加工を行うおりBreeders & Packers Uruguay を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外展開の強化・拡大

シャトレーゼによる菜花堂のM&A

パン製造販売事業やFC店展開をしているシャトレーゼは 、パンなどの小麦粉加工食品の製造販売を行っている菜花堂を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値向上

マルハニチロによるSai Gon Food Joint Stock CompanyのM&A

食品製造・加工・販売を行っているマルハニチロは、日本向け水産加工品の製造販売を中心に発展しているSai Gon Food Joint Stock Companyを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新たな水産加工拠点の確保

加藤産業によるNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock CompanyのM&A

加工食品卸大手企業の加藤産業は、ベトナムにて食品の加工・卸売業、輸入販売業を行っているNam Khai Phu Service Trading Production Joint Stock Companyを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:取扱商材の拡大とベトナム市場での基盤強化

Morinaga Nutritional Foods, Inc.によるTurtle Island Foods Holdings, Inc.のM&A

乳製品メーカーの森永乳業の連結子会社であるMorinaga Nutritional Foods, Inc.は、米国の植物由来食品製造企業であるTurtle Island Foods Holdings, Inc.を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年02月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:植物由来食品事業の拡大

おわりに

本記事のまとめ

食品製造業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

食品製造業界は少子高齢化や価格競争によって市場が縮小傾向にあります。また、原材料の高騰や食の安全確保への対応を迫られることで負担すべきコストは年々上昇しています。

こうした問題を背景に、食品製造業界ではM&Aによる業界再編が進んでいます。また、ニーズが多様化したため、周辺業界のM&Aも頻繁に実施されており、今後もこうした傾向は続くとみられています。

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