コールセンターの売却・買収事例24選!求人・正社員を補完するM&A動向
コールセンター業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。近年ではコールセンター業務の外部委託が進行しており、コールセンター市場は拡大しています。
本記事では、そうしたコールセンター業界の市場動向を解説するとともに、コールセンター業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
コールセンター業界の概要・市場動向
コールセンターとは
コールセンター業界とは、顧客への電話対応業務を事業として請け負う業界をいいます。
総務省「日本標準産業分類」では、コールセンターを「電話等による顧客サポートや苦情対応などの顧客対応の窓口業務を専門的に行う事業所」「通信販売などの受注、消費者からの問い合わせ・苦情などを電話等で受け付ける事業所」「電話をかけて購買を勧誘する事業所」として定義しています。
コールセンターは、顧客への対応方法によって、インバウンドコールセンターとアウトバウンドコールセンターに分類されます。前者は顧客側から商品やサービスに関する問い合わせを受ける電話業務を指し、後者はコールセンター側から顧客へ電話を通じて営業や提案を行うことを指します。
なお、メールやWeb、チャットツールなど電話以外の手段を活用する場合は、コンタクトセンターと呼ばれる場合もあります。
コールセンター業界の市場動向
コールセンター需要の増加
コールセンターの需要は年々増加しています。
一般社団法人コールセンター協会「コールセンター企業実態調査」によると、協会会員企業のうち回答のあった企業を合算した売上は年々増加しています。2022年度調査では年間売上が1兆4,206億円で前年比で17%増加しています。
コールセンター需要増加の要因として、以下の二つが挙げられます。
第一に、コールセンター業務のアウトソーシングが進行していることです。現在業界を問わず人材不足が深刻化しており、労働力不足を解決するための手段としてコールセンター業務が外部委託されています。
これまで正社員ではなく派遣人材やバイトをコールセンター業務に充てていた企業の中にも、働き方改革・労働契約法改正・個人情報保護強化などの影響を受けてインハウスでのコールセンター運営ができなくなり、バイトや派遣から業務委託に求人内容を切り替える企業が増加しています。
第二に、公共分野での大型案件が増加していることです。電力・ガスの自由化に伴い、これまでコールセンター業務を扱うことがなかった企業にコールセンター需要が発生したことで大型のスポット案件が発生しました。
コールセンター拠点の地方分散
近年では、経費節約と地方活性化の二つの観点から地方にコールセンターを移転する企業が増加しています。
前出の一般社団法人コールセンター協会「コールセンター企業実態調査」によると、東京都が最も拠点数が多いものの、北海道・宮城・福岡・沖縄といった地方都市の拠点数も突出していることが分かります。これらの都市では時給が比較的低いために、人件費が運用コストの7割を占めるコールセンターの設置拠点に適しています。
また、地方自治体もコールセンターの誘致支援策を実施しています。
自治体からすると、コールセンターの設置は雇用創出や税収の増加が期待されています。具体的な支援策として、設備費用やオフィス賃料への補助金、研修などの教育支援、地方税の課税免除などの施策が実施されています。
電話以外のチャネル開発
コールセンター業界では、電話での有人対応以外のチャネル開発が進展しています。
ノンボイス化の動きとしてチャットボットやメッセージが活用されており、具体例としてはLINEを通じたサービスが加速しています。スマートフォンの普及率が高くなったことでLINE経由で企業と顧客が直接繋がることが容易になりました。
また、正社員やアルバイトを使わずともAIが自動で回答することで人件費を削減できるほか、顧客からすると問い合わせのハードルが低くなることで気軽に問い合わせできるというメリットも生じます。
データサーバーを自社で保有して運用する形態からWeb上のクラウド内で運用する形態に移行する動きも加速しており、少人数化、省スペース、低コストに寄与しています。
上記のAI化、クラウド化によるコスト削減は今後も加速すると予測されますが、単価が下落することで競争が激化する恐れも懸念されています。
コールセンターのM&A動向
コールセンター業界では需要拡大に伴ってM&Aも活発化しています。
同業者同士のM&Aでは求人募集だけでは補いきれない人材確保が主な目的とされており、自社内で人材を確保することが難しい、もしくはオペレーターの育成や教育にコストが嵩む場合、M&Aを通じて経験のある正社員やアルバイト人材を獲得することが図られます。また、多言語対応を可能にするための人材確保も見られます。
AI化クラウド整備が進んでいない企業の中には、IT企業や通信機器関連企業とのM&Aを通じて業務効率を上げようとする動きも目立っています。
コールセンター業界では業界全体で業務の効率化が進展しているために単価が低下しています。そのため、今後は大手企業による業界再編が加速し、業界内でのM&Aはより活発になると推測されます。
コールセンター業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
コールセンター業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 買い手の資本力を生かしたAI化やクラウド化を実現できる
- 買い手の受注先を取り込むことができる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
コールセンター業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 経験の豊富なオペレーター人材をまとめて確保できる
- 売り手の抱える人材(正社員・バイト)やノウハウによって多言語対応が可能になる
- 売り手と連携してAI化やクラウド化を推進することができる
- 売り手の保有するコールセンター拠点をそのまま活用できる
コールセンター業界のM&A・売却・買収事例
ポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスによるM&A
サービス・プロダクトの企画開発から運用や改善フェーズまでニーズに合わせたサービスを提供するポールトゥウィン・ピットクルーホールディングスは、MIRAIt Service Designを存続会社として、ソフトワイズ、MSD Secure Service、盛達テクノロジーの4社を吸収合併しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:事業集約による効率化
ジェイフロンティアによるAIGATEキャリアのM&A
ヘルスケアセールス事業、メディカルケアセールス事業、ヘルスケアマーケティング事業などを手掛けるジェイフロンティアは、医療人材紹介事業、営業人材紹介・派遣事業、コールセンター運営事業などを手掛けるAIGATEキャリアの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コールセンターの内製化による基盤強化
インバウンドテックによるOmniGridのM&A
マルチリンガルCRM事業、セールスアウトソーシング事業として多言語コンタクトセンターを運営するインバウンドテックは、音声予約システム開発・運営、音声通話システム開発・運営、レンタルサーバー事業などを手掛けるOmniGridの株式65%を取得しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:音声技術の開発ノウハウ獲得
スリーSによる日本社宅サービスの事業譲渡
防犯・防災・警備・安全に関するシステム・設備・機器等の企画・開発・販売・運営などを手掛けるスリーSは、住宅制度運営のアウトソーシング事業などを手掛ける日本社宅サービスからコールセンター事業を譲り受けました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業集約による収益力強化
デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーによるいわきテレワークセンターのM&A
ファイナンシャルアドバイザリー(FA)や監査・保証などのサービスを手掛けるデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーは、コールセンター事業を主軸としたBPO事業を手掛けるいわきテレワークセンターの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コールセンター機能の強化
ジャパンベストレスキューシステムによるアクトコールとTSUNAGUのM&A
コールセンター運営などを手掛けるジャパンベストレスキューシステムは、シック・ホールディングスの100%子会社で住生活関連総合アウトソーシング事業を手掛けるアクトコールと、同じく子会社で、コールセンター運営事業を手掛けるTSUNAGUを株式交換を通じて完全子会社化しました。
- 実行時期:2021年9月
- スキーム:株式交換
- 取引価額:非公開
- 目的:営業リソースの効率化
日本PCサービスによるミナソルのM&A
IT機器の総合サポートサービス業、コールセンター運営、ビジネスソリューション事業などを手掛ける日本PCサービスは、コールセンター事業を手掛けるミナソルの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:サービス提案力の強化
インバウンドテックによるシー・ワイ・サポートのM&A
セールスアウトソーシング事業を展開しているインバウンドテックは、コールセンター事業を行っているシー・ワイ・サポートを子会社化しました。
- 実行時期:2021年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:9,323万7千円
- 目的:事業規模拡大、企業価値向上
MSDホールディングスによるSDホールディングスのM&A
電子商取引システムの開発及び運用を展開しているMSDホールディングスは、ネクスト・セキュリティのコールセンターとして、24時間体制でサービスを行ってきたRiMIC事業を引き継ぐSDホールディングスを子会社化しました。
- 実行時期:2019年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:顧客数増加と業績改善
レカムビジネスソリューションズによるマスターピース・グループのM&A
BPO事業を行っているレカムビジネスソリューションズは、中国国内向けコールセンターサービスの最大手企業の一つであるマスターピース・グループを子会社化しました。
- 実行時期:2018年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:7,000万円
- 目的:中国市場での更なる事業展開
三井物産によるりらいあコミュニケーションズのM&A
金属、エネルギー資源などを扱う総合商社の三井物産は、コールセンター受託の大手のりらいあコミュニケーションズの公開買付けを行いました。
- 実行時期:2023年7月
- スキーム:TOB
- 取引価額:非公開
- 目的:経営基盤の抜本的な強化
スマサポによるプラスサムジャパンのM&A
不動産管理業界に向けたDX推進事業を行うスマサポは、コールセンターの企画・運営・管理などを行うプラスサムジャパンを子会社化しました。
- 実行時期:2023年05月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:業務削減・コスト削減、入居者満足度向上
freeeによるパーソルワークスデザインのクラウド経営管理BPO事業のM&A
スモールビジネス向けサービスの開発・提供を行うfreeeは、コールセンター等を担うパーソルワークスデザインのクラウド経営管理BPO事業を譲り受けました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:バックオフィス業務の効率化
ラストワンマイルによるブロードバンドコネクションのM&A
ライフラインサービスをワンストップで提供しているラストワンマイルは、コールセンター、ライフライン事業などを行うブロードバンドコネクションを子会社化しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:3億200万円
- 目的:業容拡大
ワークポートによるWORKPORT ASIA Co., Ltd.のM&A
人材紹介サービスを展開しているワークポートは、コールセンター業務などを行っているWORKPORT ASIA Co., Ltd.を子会社化しました。
- 実行時期:2022年06月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:迅速な面談設定やサービス品質の向上
インソースによるビー・エイ・エスのM&A
講師派遣型研修、公開講座などを行うインソースは、コールセンターサービス・セットアップサービス等を行うビー・エイ・エスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年06月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:DX関連サービスの拡充
ライクによるライクスタッフィングとライクワークス2社のM&A
総合人材サービス事業等を手掛けるライクは、コールセンター事業や総合人材サービス事業を行うライクスタッフィングとライクワークス2社を吸収合併しました。
- 実行時期:2022年6月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:競争力強化
NCS&Aによるフューチャー・コミュニケーションズのM&A
建設コンサルタント業を展開しているFCホールディングスは、コールセンター事業および人材派遣事業を展開しているフューチャー・コミュニケーションズを子会社化しました。
- 実行時期:2022年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:成長戦略の柔軟な推進
CRGインベストメントによるママスクエアのM&A
M&A・投資事業を展開しているCRGインベストメントは、コールセンターの運営や各種BPOサービスを展開しているママスクエアと資本業務提携を行いました。
- 実行時期:2022年01月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:付加価値の創造
インパクトホールディングスによるジェイエムエス・ユナイテッドのM&A
マーケティング支援業務を展開しているインパクトホールディングスは、コールセンター・バックオフィスなどの運営サービスを行うジェイエムエス・ユナイテッドを子会社化しました。
- 実行時期:2020年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:9億5,000万円
- 目的:収益拡大
スズケンによるEPファーマラインのM&A
医療用機器の開発製造事業を展開しているスズケンは、メディカルコンタクトセンター事業などを営むEPファーマラインを子会社化しました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:プラットフォーム構築の加速
インバウンドテックによるインデンコンサルティングのM&A
セールスアウトソーシング事業などを行っているインバウンドテックは、通話機能を活用した事業を展開するインデンコンサルティングのテレビ電話型通訳サービス事業を譲り受けました。
- 実行時期:2022年9月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ビジネスの拡大
エクシオグループによるアイティ・イットのM&A
システムソリューション分野に事業を展開しているエクシオグループは、コンタクトセンターの運営などを行うアイティ・イットと株式交換を行いました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:株式交換
- 取引価額:非公開
- 目的:事業規模拡大
ワールドホールディングスによるワールドスタッフィングのM&A
人材ビジネス・教育ビジネスの請負を展開しているワールドホールディングスは、コールセンター等の人材サービスを行うを行っているワールドスタッフィングと株式交換を行いました。
- 実行時期:2023年7月
- スキーム:株式交換
- 取引価額:非公開
- 目的:機動的かつ柔軟な戦略の策定
おわりに
本記事のまとめ
コールセンター業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
コールセンター業界は求人も多く各社人材の取り合いとなっており、インハウスで抱える正社員・派遣・バイトのオペレーター不足や、コールセンター業務の外部委託推進の流れを受けて、年々需要が増加している業界です。
一方、拠点の地方移転やAI化などが推し進められたことで単価が低下しているため、今後は大手事業者が牽引する形でM&Aを通じた業界再編が加速していくとみられています。
M&A・事業承継のご相談はハイディールパートナーズへ
M&A・事業承継のご相談は経験豊富なM&Aアドバイザーの在籍するハイディールパートナーズにご相談ください。
ハイディールパートナーズは、中堅・中小企業様のM&Aをご支援しております。弊社は成約するまで完全無料の「譲渡企業様完全成功報酬型」の手数料体系を採用しており、一切の初期費用なくご活用いただけます。
今すぐに譲渡のニーズがない企業様でも、以下のようなご相談を承っております。
- まずは現状の自社の適正な株式価値を教えてほしい
- 株式価値を高めるために今後何をすればよいか教えてほしい
- 数年後に向けて株式価値を高める支援をしてほしい
- どのような譲渡先が候補になり得るか、業界環境を教えてほしい
ご相談は完全無料となりますので、まずはお気軽にご相談ください。