広告代理店業界の業界動向、M&A・売却・買収事例27選

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業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。スマートフォンなどの普及によって広告媒体がインターネット広告・デジタル広告へ移行していることに伴い、広告代理店・Web系代理店のM&Aが増加しています。

本記事では、そうした広告代理店業界の市場動向を解説するとともに、業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

広告代理店業界の概要・市場動向

広告代理店業界とは

広告代理店とは、広告を出したい企業と、広告を掲載するメディアを仲介する企業を指します。

広告代理店には全ての広告媒体を取り扱う総合広告代理店、特定の広告媒体のみを取り扱う専門広告代理店、インターネット広告を取り扱うインターネット広告代理店が存在します。

このように広告代理店はテレビ、ラジオ、雑誌やWebなど様々なメディアに広告を掲載します。この他にも企画・制作を行う会社や、クライアントからの要望を聞き外部の制作会社に発注するケースも存在し、計画・発注・販売などの広告に関する様々な業務を担っている業界です。

広告代理店業界の市場動向

マスメディア媒体による広告市場の縮小

数年前までは不特定多数の消費者の目に留まるマスメディアを使った広告が主流でしたが、近年はマスコミ四媒体と言われる新聞、雑誌、ラジオ、テレビの広告費は年々減少しています。

2021年はコロナ禍からの回復や東京オリンピックにより一時的に回復したものの、2020年まで市場は減少傾向にあります。そのため、マスメディア媒体や紙媒体を主軸としてきた広告代理店の経営状況は今後厳しくなると見られています。

一方で、マスコミ四媒体の事業者が主体となって行うインターネット広告である「マスコミ四媒体由来のデジタル広告費」は2021年に初めて1,000億円を突破し、企業は社会変化への対応を求められています。

インターネット広告市場の成長

紙媒体の広告市場が縮小する一方で、スマートフォンの普及によりWeb媒体の広告市場は急成長しています。

2019年にインターネット広告費はテレビ広告費を抜き、2021年には約27,052億円(前年度比121.4%)と初めてマスコミ四媒体の広告費を上回りました。インターネット広告は見ている人に合った広告が表示されるアドテクノロジーというシステムが採用されており、インターネット広告の成長を後押ししている一つの要因と言えます。

その結果、Web媒体での広告を主軸とするインターネット広告代理店が業績を伸ばしており、今後もこの流れは続くと見られています。

デジタルサイネージ広告市場の成長

デジタルサイネージとは駅・店舗・公共空間などでディスプレイやプロジェクターを使って情報を発信するメディアの総称です。このデジタルサイネージを使った広告市場は急成長しており、2021年は594憶円(前年比114%)となっています。

今後も順調に市場は成長していくと見られ、近い将来にはIoT化によるリアルタイム表示やモバイルツールと連動するタイプのデジタルサイネージが登場すると考えられています。

デジタルサイネージは広告代理店の事業転換を後押しするメディアの一つとして注目されています。

広告代理店業界のM&A動向

マスメディアを主軸とする広告代理店同士のM&Aも見られますが、Web広告の急激な成長によってインターネット広告代理店の技術やノウハウを目的としたM&Aが盛んに行われています。

特に、大手の総合広告代理店による中小規模のWeb広告代理店のM&Aの事例がよく見られます。

売り手としては、インターネット広告が主流となった現代の変化についていけず、売上や後継者不足に悩む中小企業が出てきており、こうした問題の解決策としてM&Aを行う事例が増えています。

少子高齢化による市場縮小や市場飽和によって国内の広告代理店業界に大きな成長を望むことが難しいため、海外進出を目的としたM&Aも加速しています。

特に大手広告代理店が海外の広告代理店をM&Aによって譲り受ける例が多く、大手広告代理店の電通は世界中の広告代理店のM&Aを毎年行っています。また、ADKホールディングスや博報堂DYホールディングスもアジア各国を中心にM&Aを行っており、広告業界もM&Aによってグローバル化が進んでいると言えます。

広告代理店業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

広告代理店業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 会社売却によって経営の再建を図ることができる
  • 買い手の保有するブランド力や顧客チャネルを活用して事業成長を目指せる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

広告代理店業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 自社にない技術・ノウハウを獲得できる
  • 売却側の顧客を引き継いて事業拡大できる
  • 自社が未参入の新たな分野に新規参入できる

広告代理店業界のM&A・売却・買収事例

ニューラルポケットによるフォーカスチャネルのM&A

AIによる画像解析と端末処理技術を組み合わせたソリューション提供を手掛けるニューラルポケットは、富裕層のマンション特化型のデジタルサイネージを手掛けるフォーカスチャネルの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:2億5000万+アーンアウト条項に基づく追加支払い(譲渡後6か月の売上高に応じて最大追加1.5億円)
  • 目的:営業力・ノウハウの取得

博報堂DYホールディングスによるSY PartnersとRED PEAK GROUPのM&A

広告代理店の持株会社である博報堂DYホールディングスは、ニューヨークとサンフランシスコに拠点を置きコンサルティングを手掛けるSY Partnersと専門マーケティングサービスを手掛けるRed Peak Groupの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2014年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:欧米地域での事業展開加速

ローカルフォリオによるリードプラスのM&A

AIを活用したインターネット広告の運用及びコンサルティングを手掛けるローカルフォリオは、テクノロジーを活用した中小企業向けのコンサルティングを手掛けるリードプラスを吸収合併しました。

  • 実行時期:2021年9月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:デジタルマーケティングによるサービスの拡充

フィードフォースによるアナグラムのM&A

データフィード、ソーシャルログイン領域でサービスを展開するフィードフォースは、インターネット運用型広告を手掛けるアナグラムの株式を50.1%取得し連結子会社化しました。

  • 実行時期:2020年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:より高度なマーケティングサービスの共同開発

港北出版印刷による相鉄エージェンシーのM&A

商業印刷などを手掛ける港北出版印刷は、相模鉄道などを統括する相鉄ホールディングスの子会社で広告代理業を営む相鉄エージェンシーの株式を90%取得しました。

  • 実行時期:2013年1月
  • スキーム:株式取得
  • 取引価額:非公開
  • 目的:相鉄ホールディングスによる選択と集中

フォースリーとクリエイターニンジャのM&A

アフェリエイトを中心としたインターネットマーケティングを手掛けるフォースリーと、YouTubeクリエイター向けのプラットフォーム及びツールの開発を手掛けるクリエイターニンジャは資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の販売力と開発力を掛け合わせたシナジーの創出

GMOアドパートナーズ株式会社による株式会社シフトワンのM&A

インターネット広告会社向けの卸売業務を手掛けるGMOアドパートナーズは、動画ソリューション事業を手掛ける株式会社シフトワンの全株式会社を取得し連結子会社化しました。

  • 実行時期:2017年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:動画広告のクリエイティブ強化

C4メディアによるHandEのM&A

広告代理業を中心とするC4メディアは、ジェンダーレスの肌補正機能付き乳液の販売を行うHandEを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年08月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:外部アドバイザーとしてのブランド監修

ユーグレナによるはこのM&A

微細藻類ユーグレナに関する研究開発活動を行っているユーグレナは、インターネット広告代理店事業を行うはこを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ヘルスケア事業に関連するグループの成長

EストアーによるウェブクルーエージェンシーのM&A

ネット通販の総合支援事業を展開するEストアーは、高いクオリティを有した広告代理事業を行っているウェブクルーエージェンシーを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値拡大

駅探によるプラウドエンジンのM&A

交通情報の乗換案内サービスを提供している駅探は、DSPプラットフォームを持つ広告代理店のプラウドエンジンを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:法人向け事業への展開

ベクトルによるターミナルのデジタル広告事業のM&A

「戦略PR事業」を主軸とするベクトルは、Webソリューションを中心としたデジタル広告事業を展開しているターミナルのデジタル広告事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年9月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:11億円
  • 目的:効果的なマーケティングサービス提供

mannakaによるtildeのM&A

マーケティング分野におけるコンサルティング事業を行うmannakaは、広告事業を主業とするtildeを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:価値提供の幅の拡大

インバウンドテックによるEPARKのM&A

マルチリンガルCRM事業などを手掛けるインバウンドテックは、ソリューション事業および広告代理店事業を行っているEPARKを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新規サービスのビジネスシナジーの創出

日本創発グループによるアド・クレールのM&A

デジタルコンテンツ事業等を行うグループ会社の日本創発グループは、印刷業務や広告代理店事業等を行っているアド・クレールを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年5月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:付加価値の高いサービスの提供

ドリームインキュベータによるピークスのM&A

ビジネスプロデュース等を行っているドリームインキュベータは、広告の企画・コンサルティング等を行うピークスの全事業を新設子会社を通して譲り受けました。

  • 実行時期:2021年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引1日価額:非公開
  • 目的:事業拡大

フィードフォースによるUnknownのM&A

SaaS事業などを展開するフィードフォースは、広告プラットフォーム運用代理事業を展開するUnknownと資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:サービス領域の拡大

ゲンダイエージェンシーによるRitaのM&A

広告事業を主力とするゲンダイエージェンシーは、動画広告プラットフォーム事業において強みをもつRitaを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新しいデジタルメディアを活用したサービスの提供

ケアネットによるアドメディカのM&A

医師・医療従事者向けの情報提供事業を展開しているケアネットは、広告代理店事業を担うアドメディカの患者向け医療相談事業を承継しました。

  • 実行時期:2023年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業と資源の選択と集中

テレビ東京ホールディングスによるエー・ティー・エックスのM&A

認定放送持株会社であるテレビ東京ホールディングスは、アニメ専門のCS放送『AT-X』を運営するエー・ティー・エックスを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:テレビ東京グループのアニメ事業の強化

KDDIによるCyberZのM&A

パーソナルセグメント、ビジネスセグメント事業を展開しているKDDIは、スマートフォン広告代理事業などを行うCyberZ業務提携契約を行いました。

  • 実行時期: 2021年07月
  • スキーム:業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新たな配信・視聴体験の創出

アートリフォームによる遊のM&A

全面改装から水回りのリフォームを行うアートリフォームは、リフォーム事業に加えて広告代理業務なども行う遊を子会社化しました。

  • 実行時期: 2021年01月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:1億5,000万円
  • 目的:経営資源を集中

ベクトルによるキーワードマーケティングのM&A

「戦略PR事業」を主軸とするベクトルは、運用型広告の運用代行などを手掛けるキーワードマーケティングを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:マ ーケティング効果の最大化

シャノンによる後藤ブランドのM&A

統合型マーケティング支援システムを提供するシャノンは、広告運用代行サービスなどの広告事業を行っている後藤ブランドを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年06月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:広告運用代行を組み合わせた幅広いサービスの提供

東京きらぼしフィナンシャルグループによるビー・ブレーブのM&A

きらぼし銀行などの管理を行う東京きらぼしフィナンシャルグループは、広告業を行っているビー・ブレーブを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:企業価値向上やデジタル化の推進

GNコンサルティングによるADWAYS INNOVATIONS INDIA PVT. LTD.のM&A

経営コンサルティングを行っているGNコンサルティングは、インドにおいて広告代理事業およびメディア事業を展開しているADWAYS INNOVATIONS INDIA PVT. LTD.を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの再編

バンダイナムコエンターテインメントによるGenies Inc.およびジーニーズのM&A

ライフエンターテインメントなどの分野に強みを持つバンダイナムコエンターテインメントは、アバター広告代理店業を行うGenies Inc.およびジーニーズと資本業務提携契約を行いました。

  • 実行時期: 2020年11月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新しいアバター事業の展開

おわりに

本記事のまとめ

広告代理店業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

広告代理店業界は技術の発展に伴って、動画広告などのインターネット広告や、AIやIoTの技術を駆使したデジタルサイネージの発達により、今後ますます成長していくと考えられています。

また、近年では国内の大手広告代理店の海外進出による市場拡大も注目されています。

こうした市場環境に対応するための重要な経営戦略として、Web媒体やデジタル技術に強みを持つ会社のM&A、海外企業とのM&Aも今後さらに増加していくものと見られています。

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