旅行代理店業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

旅行代理店業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。近年は新型コロナウイルスにより経営状況が悪化した旅行代理店のM&Aが増えています。
本記事では、そうした旅行代理店業界の市場動向を解説するとともに、旅行代理店業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
旅行代理店業界の概要・市場動向
旅行代理店業界とは
旅行代理店とは、宿泊施設や交通機関などの事業者と旅行者を仲介する企業を指します。主にホテル・旅館などの宿泊施設の予約、旅行の企画、交通機関の乗車券販売などを手掛けています。
また、企画の過程でレジャー施設・土産物店・地方自治体などとの連携が不可欠で、さまざまな事業者とのネットワーク構築が必要な業界です。
近年ではインターネットを通じた旅行パッケージの販売が一般化しており、宿泊施設や交通機関が運営する予約サイトや、多くの宿泊施設や交通機関を比較・検討できるネット予約専門サービスも増えています。

旅行代理店業界の市場動向
インターネット販売の増加
インターネットによる旅行パッケージの販売は、旅行者が店舗に行かなくても予約できるという利便性や人件費の削減から一気に広まりました。
旅行代理店はインターネットでは価格を抑えたリーズナブルなパッケージを販売し、店舗ではより付加価値の高いパッケージを販売するなど両者を使い分けています。
一方、近年ではインターネット業界からの新規参入も多く、熾烈な価格競争が起こっています。
また、インターネットによって宿泊業者や交通機関が旅行者と直接つながるようになり、旅行代理店を介さず予約する旅行者も増加しています。
コロナ禍終息後のインバウンド増加
コロナ禍以前、訪日外国人の数は年々伸びており、日本旅行業協会が出版している「数字が語る旅行業2021」によると、2015年には訪日外国人の数は出国日本人の数を上回っています。
一方、訪日外国人の数に比べて、旅行代理店の業績の伸びは緩やかです。理由としては、代理店を仲介せずインターネット上のサービスを通して直接やり取りを行う旅行者が増えたことが挙げられ、特にアジア圏の旅行者を取り込めていないのが現状です。
コロナ禍による旅行需要の減少
新型コロナウイルスの感染拡大により、インバウンドが消失し国内旅行者も急激に減少しました。
これにより旅行代理店は大きな打撃を受け、東京商工リサーチによると2021年の旅行業の倒産は31件に上っています。GoToトラベルなどのキャンペーンが実施されるも、コロナ禍以前には程遠い状況です。
そのような中でも今後はコロナ終息を見据えて、各社さまざまな工夫をこらしたツアーの企画や戦略を打ち出しています。旅行者にも感染対策をしながら旅行を楽しむ、という意識が根付きはじめており観光庁の「旅行・観光消費動向調査」によると2022年の4月~6月の旅行者数前年度比は189.3%となりました。
旅行代理店業界のM&A動向
旅行代理店業界は比較的参入障壁が低く、1万社を超える企業が存在します。
コロナ禍を経て生き残りが厳しい状況のため、今後は事業の強化・拡大のために同業でのM&Aが加速すると見られています。
例えば、特定の地域に強みのある旅行代理店の買収によって顧客を獲得するといった事例が見られます。特にコロナ禍で悪化した業績の立て直しや、事業整理、経営の効率化を目指したグループ再編のためのM&Aが目立っています。
また、旅行代理店業界は異業種からの参入も多く、今後は新規参入する企業が旅行代理店業界の既存企業を買収し、ノウハウやサービス体制を獲得するケースも増加していくでしょう。
旅行代理店業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
旅行代理店業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手企業の傘下で安定的・効率的な経営を行うことができる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
旅行代理店業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 同業を買収することで事業の強化・拡大ができる
- 新規参入の場合、既存のサービスやシステムを獲得し短期間で参入できる
- ノウハウや知識をもった従業員をそのまま引き継ぐことができる

旅行代理店業界のM&A・売却・買収事例
近鉄グループホールディングス、あかり、まつかぜによるKNT-CT HDのM&A
交通事業や不動産事業を手掛ける近鉄グループホールディングス、金融事業を手掛ける合同会社あかり、合同会社まつかぜは、クラブツーリズムと近畿日本ツーリストを運営するKNT-CTホールディングズを引受先に第三者割当増資を行いました。
- 実行時期:2021年6月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:400億円
- 目的:経営環境の悪化による債務超過解消と、事業改革のための資本増強
アソビューによるそとあそびのM&A
レジャーや体験スポットの予約サイトを手掛けるアソビューは、アウトドアアクティビティの予約サイトを手掛けるそとあそびを子会社化しました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コンテンツの拡充とユーザーの拡大

第一交通産業による西日本日中旅行社のM&A
タクシーや路線バス、不動産事業などを手掛ける第一交通産業は、主に日中間の旅行代理を手掛ける西日本日中旅行社を子会社化しました。
- 実行時期:2019年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:外国人観光客の獲得およびシナジーの獲得


星野リゾートによるKabuK StyleのM&A
総合リゾートを手掛ける星野リゾートは、定額宿泊サービスを手掛けるKabuK Styleと資本業務提携を締結しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:新たな旅行市場の創造
オープンドアによるベルトラのM&A
旅行比較サイト「トラベルコ」を手掛けるオープンドアは、海外ツアーの予約サイトを手掛けるベルトラを引受先に第三者割当増資を実施しました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:15億880万円
- 目的:資本増強のため
エボラブルアジアによるセブンフォーセブンエンタープライズのM&A
オンライン旅行事業を手掛けるエボラブルアジア(現:エアトリ)は、ハワイ旅行専門ブランドを手掛けるセブンフォーセブンエンタープライズを子会社化しました。
- 実行時期:2019年5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:中長距離ツアーの拡大
おわりに
本記事のまとめ
旅行代理店業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
旅行パッケージのインターネット販売の普及や、参入障壁の低さによる企業の乱立により旅行代理店業界はますます競争が激しくなっています。また、新型コロナウイルスによる旅行需要の低下によって、既存企業の生き残り競争は激しさを増しています。
こうした業界環境を背景に、資本増強や事業整理を目的としたM&Aは今後さらに増加すると考えられています。

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