金属加工業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

金属加工業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。金属加工業界のM&Aでは単に事業を承継するだけでなく、技術力の継承も重要な目的となります。
本記事では、そうした金属加工業界の市場動向を解説するとともに、金属加工業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
金属加工業界の概要・市場動向
金属加工業界とは
金属加工業界とは、金属部品を加工・製造したり、部品を成型するための金型を製造する業界をいい、金属加工業、金属製品製造業、鉄鋼業に分類されます。
金属加工業は、金属を直接加工したり、金属を加工して製造した金型でプラスチックなどの素材を成形する業種をいい、プレス加工・切削加工・鋳造加工に分類されます。
金属製品製造業は、主に大規模事業者を顧客に製品を製造する受注生産型の製造業をいい、鉄鋼業は、機械や部品の材料となる鋼材を生産する業種をいいます。
金属加工業界の市場動向
景気回復に伴う堅調な市場推移
金属加工業界は、リーマンショック後には世界的な景気後退の影響を受けて市場が縮小したものの、2013年以降は拡大傾向となりました。
金属製品業界は、経済動向に比例する傾向がみられます。近年では米国をはじめとする株式市場が回復し、それに伴って家計の消費動向も改善したことにより、金属加工業界市場も好況下にあります。
一方、これまで金属が使用されていた素材が樹脂に移行したり、金属製品加工の技術が3Dプリンターに代替されるなど、他業種との新たな競争により市場規模を拡大するための障壁も出始めています。
技術力の継承が課題
他業界と同様に金属加工業界においても人材不足が深刻化しており、高齢のベテラン職人の後継者探しが喫緊の課題となっています。
加工技術によっては極めて属人的な業務となるため、技術を持つ職人が退職してしまうと技術の継承が困難になってしまうという課題があります。
海外進出への対応が急務
金属加工業界の主要な取引先である自動車・電機業界は海外進出が加速しているため、コストを考慮して現地で材料調達を行う企業が増加しています。
コロナ禍を契機に取引先企業のサプライチェーンの再構築が進行していますが、今後も海外金属加工企業との競合は継続することが予想されます。
これまでの取引先との関係を維持するためにも、各事業者は海外拠点の設立や短納期納品、多品種小ロット生産などの対応が求められています。
IT化による生産性向上が求められる
海外企業とが有する技術・コスト面での優位が増している状況において、各社は設備投資を含むIT化により生産性や競争力を向上させることが求められています。
例えば、金型製作から金属プレス加工までを一気通貫で手掛ける事業者が「3次元の形状を短時間で測定する機械」や「プレス機の稼働状況に関するデータの取得システム」を導入することで生産性を約3倍まで高めることに成功した事例もあります。
金属加工業界のM&A動向
金属加工業界では、技術力を含めた事業継承が業界全体の課題となっており、M&Aを活用してこの課題を解決しようと取り組む企業が増加しています。
金属加工業界内でのM&Aの特徴としては、サプライチェーンの垂直統合を目的とするM&Aが多く見られます。特に、川上と川下の関係にある、金属加工会社と商社間での垂直統合が多く見られます。
また、技術獲得や事業規模拡大の目的でもM&Aが活用されています。金属加工には様々な手法があり、製造するモノが異なればターゲットも異なるため、自社にない技術や製品を有する企業とのM&Aが活発化しています。
金属加工業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
金属加工業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 技術の継承先を見つけることができる
- 買い手の技術を活用することができる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット
金属加工業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 技術を持った優秀な人材を確保できる
- 自社が取り扱っていない製品を提供できるようになる
- 売り手の技術力を活用してより付加価値の高い製品を製造できる
- 規模の拡大に伴いスケールメリットを享受できコスト競争力を具備できる

金属加工業界のM&A・売却・買収事例
アルコニックスによるソーデナガノのM&A
レアメタル、レアアースなどの製品や関連する原材料などの輸出、輸入、販売を手掛けるアルコニックスは、長野県に拠点を構え金属精密プレス部品の製造、金型設計製作を手掛けるソーデナガノの全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業ポートフォリオの拡充

ヤマシナによる中国山科サービスのM&A
京都市で金属製品の企画・製造・販売を手掛けるヤマシナは、ネジ、プレス品、樹脂成形品の仕入・販売を手掛ける中国山科サービスの全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:1億9,300万円
- 目的:事業体制の補強と販売エリア拡張
戸上メタリックスによる三協製作所のM&A
建設機械部品や産業用配電機器部品の金属加工を手掛ける総合精密板金加工メーカーの戸上メタリックスは、産業用配電機器部品の亜鉛メッキ加工を手掛ける三協製作所を吸収合併しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:金属加工事業への経営資源集約

岡谷鋼機による旭精機工業のM&A
鉄鋼や情報・電機、産業資材、生活産業などの販売を手掛ける岡谷鋼機は、自動車や情報通信、家電などの精密金属加工品の製造・販売事業を手掛ける旭精機工業の第三者割当増資を引き受けました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:1億5,700万円
- 目的:事業活動の効率化
富士紡ホールディングスによる藤岡モールドのM&A
子会社で研磨材事業や化学工業品事業、生活衣料事業、化成品事業等を手掛ける富士紡ホールディングスは、プラスチック用金型の設計や製造、販売を手掛ける藤岡モールドの全株式を取得しました。
- 実行時期:2020年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:化成品事業の規模拡大
ムロコーポレーションによるイガリホールディングスのM&A
自動車を中心とした輸送用機器向けに金属部品の製造を手掛けるムロコーポレーションは、精密樹脂成形部品の製造事業を手掛けるイガリホールディングスの全株式を取得しました。
- 実行時期:2019年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:金属プレス部品以外の製品ラインナップ拡充
藤井産業によるサンユウのM&A
電設資材を中心に太陽光発電や産業機器を手掛ける藤井産業は、制御盤や分電盤の設計・製作を手掛けるサンユウの全株式を取得しました。
- 実行時期:2018年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:産業機械分野の事業拡大

おわりに
本記事のまとめ
金属加工業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
職人の高齢化が進行している金属加工業界では、M&Aを通じて、後継者不在の事業承継問題を解消しつつ、技術力をも継承しようとする企業が増加しています。
また、今後は海外企業に対する競争力を具備するために、戦略的に自社とは異なる加工技術や顧客層を獲得することを目的としたM&Aも活発化していくと予想されます。
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