運送・物流業界の業界動向、M&A・売却・買収事例30選

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運送・物流業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。禁煙では運送・物流業界は業績が厳しい企業も多く、M&Aを検討する中小企業が増えています。

本記事では、そうした運送・物流業界の市場動向を解説するとともに、運送・物流業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

運送・物流業界の概要・市場動向

運送・物流業界とは

物流業は、商品が生産者やメーカーから消費者に届くまでの輸配送・流通加工・保管・情報管理など多岐にわたる業務を担っている業界を指し、輸配送を行う運送業と、保管サービスを行う倉庫業に分けられます。

運送業はトラック運送業・宅配便業・鉄道業・海運業・空運業に分けられ、運送・物流業界の中小企業はAmazonなどのネット通販の仕事を手掛けるケースが多くみられます。近年、通販のユーザーは増加しており、トラックやバイクの需要は増えています。

業界内には数多くの運送・物流企業が存在し、市場は飽和状態にあるため、激しい価格競争のため利益の出ずらい業界となっています。

運送・物流業界の市場動向

深刻な人手不足

EC市場の拡大により宅配便の需要が伸びている一方、ドライバーの高齢化やなり手不足から深刻な人手不足が起きています。

原因としては宅配業務の負担が大きい、シフトが不規則、長時間労働といったハードな仕事内容のイメージが主な原因となっています。

2015年に政府は「トラック輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会」を設置し、新卒ドライバーや女性ドライバーの増加を目指しています。

こうした人材不足を解消するために、国土交通省は実働性の向上や実車率の向上などの施策を挙げています。

具体的には、宅配BOXの設置による再配達の防止や、IT化による配送スケジュールの最適化などが行われています。このようにドライバーの労働生産性を上げる取り組みが、大手企業を中心に行われています。

利益の出しづらい業界構造

インターネットショッピングの急成長による競争の激化や、ガソリン費の高騰による収益の悪化、企業数増加による価格競争のため運送・物流業を営む中小企業は厳しい状況に置かれています。

業界全体として運送・物流業界は赤字体質であり、また市場は縮小傾向にあります。

このような状況を受けて、日本郵政公社と日本通運の業務提携のように、業界内での生き残りをかけた業界再編が行われています。中小企業の多い業界のため、今後は大手企業への集約が活発化すると見られています。

2024年問題への対処が急務

運送・物流業界には「2024年問題」というものが存在します。

2024年問題とは、2024年4月から働き方改革関連法により「自動車運転業務における時間外労働時間の上限制限」が適用されることを指します。これによりドライバーの労働時間に制限が設けられるため、売上減少やドライバーの収入減少などの影響が出ると見られています。

2024年問題に対応するためには、多くのドライバーの確保が必要になります。慢性的な人材不足が起きている中小企業では対処に限界があるため、問題の解決策としてM&Aを検討する企業が増えています。

運送・物流業界のM&A動向

運送・物流業界では深刻な人材不足が起きています。前述の2024年問題に対応するためにも、ドライバーの確保は急務であり、この問題を解決するためにM&Aを検討する企業がが増えています。

また、運送・物流業界は多くの経営者が引退の時期を迎えており、後継者・事業継承問題の解決を目的としたM&Aも増えています。

さらに、システム投資によって消費者ニーズを満たし新規顧客を獲得するため、大手企業がIT・ベンチャー企業を内部に取り込む動きも見られます。

運送・物流業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

運送・物流業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 大手企業の傘下に入ることで安定した経営基盤を構築できる
  • 2024年問題への解決に繋がる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

運送・物流業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の保有する車両・設備を獲得し事業拡大できる
  • 売り手の持つ技術やノウハウを一度に獲得できる
  • 事業基盤の拡大によるスケールメリットを獲得できる
  • 売り手の抱えるドライバーを取り込み人材不足を解消できる

運送・物流業界のM&A・売却・買収事例

セイノーHDによる貨物自動車運動業者4社のM&A

大手運輸企業西濃運輸グループの持株会社であるセイノーホールディングスは、貨物自動車運送事業を手掛ける西濃運輸、関東西濃、濃飛西濃、東海西濃を西濃運輸を存続会社として合併しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:効率的かつ柔軟性のある物流プラットフォームの構築

東部ネットワークによる東北三光のM&A

運送・物流を手掛ける東部ネットワークは、セメント輸送などを手掛ける東北三光を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大、人材の確保

日本通運と名鉄運輸の資本業務提携

大手運送会社の日本通運は、名古屋市で陸運事業を手掛ける名鉄運輸の株式を20%取得し、資本業務提携を結びました。

  • 実行時期:2016年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:輸送ネットワークの相互利用

日本郵政によるトール・ホールディングスのM&A

日本郵政は、国際宅急便などを手掛ける豪州最大手のトール・ホールディングスの株式を買収しました。

  • 実行時期:2015年5月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:海外への事業拡大

ファイズHDによる中央運輸のM&A

3PLを手掛けるファイズHDは、貨物自動車運送事業を手掛ける中央運輸を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大

ハマキョウレックスによるシティーラインのM&A

3PLを手掛けるハマキョウレックスは、物流センターを手掛けるシティーラインを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業エリアの拡大

ヒガシトゥエンティワンによる山神運輸工業のM&A

3PLを手掛けるヒガシトゥエンティワンは、一般貨物輸送事業を手掛ける山神運輸工業を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウの獲得

クリエイトによるハネイシのM&A

管工機材および住宅設備機器の販売を行っているクリエイトは、一般貨物自動車運送事業を行っているハネイシを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:首都圏の効率的な運送と、拠点配置などの物流機能の荷主と運送会社の連携による強化

GFAによるフィフティーワンのM&A

グループで金融サービス事業等を展開しているGFAは、運送業を行っているフィフティーワンを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループ全体とのシナジー

ハマキョウレックスによる中神運送のM&A

アパレルや食品などを中心に3貨物自動車運送業を展開しているハマキョウレックスは、青果物輸送を中心に事業を展開している中神運送を子会社化しました。

  • 実行時期: 2022年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ノウハウを組み合わせることによる、付加価値の高い物流サービスの提供

山村ロジスティクスによるる中山運送業のM&A

貨物自動車運送事業から警備業まで幅広く事業を手掛ける山村ロジスティクスは、一般貨物自動車運送事業や倉庫事業を行っている中山運送業を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:構内作業と配送の両方を受託することによる売上増加等

大伸化学による山崎梱包運輸のM&A

各種シンナー類の製造及び販売を主業としている大伸化学は、タンクローリー、コンテナ、石油缶等の配送を主な事業内容とする山崎梱包運輸を子会社化しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:製品の安定供給体制、即納体制、品質管理体制の強化

安田倉庫によるOSOのM&A

総合物流企業、倉庫業、運送業、不動産業などを行っている安田倉庫は、運送業、倉庫業を展開しているOSOを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの輸配送・倉庫ネットワークとサービスメニューのさらなる拡充

安田倉庫によるエーザイ物流のM&A

総合物流企業の安田倉庫は、エーザイグループ製品の物流関連業務を担っているエーザイ物流を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:メディカル物流事業におけるサービス向上、拠点の拡充

センコーグループホールディングスによるオーナミのM&A

大手物流会社のセンコーグループホールディングスは、量物や大型貨物の荷役・保管・輸送・通関などを得意とするオーナミを子会社化しました。

  • 実行時期: 2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ネットワークを活用した効率的な輸送と、グローバルな重量物輸送事業の拡大

東部ネットワークによる魚津運輸のM&A

総合物流企業の東部ネットワークは、主に工業用ガスを中心に、セメント・化成品などの輸送サービスを行っている魚津運輸を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:今後の需要増加とそれに伴う輸送増加を見込んだグループを含めた会社の業容拡大

JR九州商事によるプレミアムロジックスのM&A

JR九州グループの基幹商社であるJR九州商事は、ピアノ等の大型楽器や、精密機械を中心とした重量物等の運搬・設置業を営むプレミアムロジックスを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:運送事業への本格参入と、JR九州グループにおける物流事業拡大に向け戦略の構築

宇佐美鉱油によるアサヒエナジ―のM&A

石油製品の販売に関する業務を行っている宇佐美鉱油は、石油製品販売および配送を行っているアサヒエナジ―を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:エネルギーサポート事業の多面的な展開および危険物施設メンテナンスの事業展開

澁澤倉庫による平和みらいのM&A

総合物流サービスを展開している澁澤倉庫は、静岡県の全域に普通倉庫業、冷蔵倉庫業、などを行っている平和みらいを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの物流ネットワークの拡大と、陸上運送におけるスイッチング拠点としての活用

DENZAIによろ澤田運輸建設のM&A

グループの経営管理・技術研究開発業務を行っているDENZAIは、一般貨物自動車運送および自動車運送取扱事業を行う澤田運輸建設を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:、西日本への営業範囲の拡大

トナミホールディングスによるサンライズトランスポートのM&A

貨物自動車運送などの物流関連事業を展開しているトナミホールディングスは、一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業を行っているサンライズトランスポートを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:シナジー効果創出による事業拡大

カンダホールディングスによる堀切運輸のM&A

総合物流企業のカンダホールディングスは、一般貨物自動車運送事業および貨物運送取扱事業を行う堀切運輸を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新たな得意先の獲得と、さらなるネットワークの発展

安田倉庫による南信貨物自動車のM&A

倉庫業から不動産業まで幅広く事業を展開している安田倉庫は、一般貨物自動車運送事業を主な事業とする南信貨物自動車を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの輸配送ネットワークとサービスメニューのさらなる拡充

カトーレックによる大西物流のM&A

EMS事業とロジスティック事業を軸とするカトーレックは、輸送・共同配送等の物流サービスを展開している大西物流を子会社化しました。

  • 実行時期: 2022年11月
  • スキーム:株式譲渡                                                                                  
  • 取引価額:非公開
  • 目的:さらなる物流サービスの拡充

ANAホールディングスによる日本貨物航空のM&A

航空輸送事業や旅行事業などを行っているANAホールディングスは、定期・不定期航空運送および航空機使用事業等を行っている日本貨物航空を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの成長戦略の加速と、日本を拠点とした国際航空貨物ネットワークと商品・サービスの充実

SBSフレックによる創友のM&A

輸送・保管・流通加工・センター運営などを提供しているSBSフレックは、冷凍・チルド食品を中心とした一般貨物自動車運送事業を行っている創友を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:野田/千葉地区における強固な輸配送ネットワークの実現

ヤマタネによるシンヨウ・ロジのM&A

物流、食品、情報、不動産事業を展開しているヤマタネは、生鮮・食品などを扱い荷とした一般貨物運送事業などを行うシンヨウ・ロジを子会社化しました。

  • 実行時期:2022月4月1日
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:物流事業および食品事業との事業のシナジー創出

日立物流によるCyber Freight International Holding B.V.のM&A

日立系の総合輸送会社の日立物流は、幅広い顧客に対して輸送業務全般のワンストップ・サービスを提供しているCyber Freight International Holding B.V.を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グローバルにおける医薬品事業の拡大

ニチレイロジグループ本社によるNL COLD CHAIN NETWORK(M)SDN. BHD.のM&A

ニチレイグループ会社の低温物流事業を担っているニチレイロジグループ本社は、冷蔵・冷凍倉庫業、利用運送業を行うNL COLD CHAIN NETWORK(M)SDN. BHD.を子会社化しました。

  • 実行時期:2023年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営判断の迅速化による適切な事業投資によるマレーシア事業のさらなる拡大

センコーグループホールディングスによるAirRoad Pty LtdのM&A

物流、商事、ビジネスサポート事業等を展開しているセンコーグループホールディングスは、貨物自動車運送事業、倉庫事業を行っているAirRoad Pty Ltdを子会社化しました。

  • 実行時期: 2021年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:3PL事業拡大、コールドチェーン事業への本格参入

おわりに

本記事のまとめ

運送・物流業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

運送・物流業界は数多くの中小企業が存在し、価格競争が激しいだけでなく、人材不足や2024年問題などにより多くの企業の経営が厳しい状況にあります。さらには、多様化するインターネットショッピングへの対応も迫られています。

こうした動きに対抗するため、近年運送・物流業界M&Aを行う企業が増加しています。今後はデジタル化による業務効率化を目的に、大手企業がIT企業を買収するケースも増えていくと見られています。

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