ゴルフ場の業界動向、M&A・売却・買収事例20選!
ゴルフ場は近年M&Aが活発な業界の一つです。ゴルフ場業界では、ゴルフの利用者数減少に伴い、大手企業によるM&Aを通じた寡占化が進行しています。
本記事では、そうしたゴルフ場業界の市場動向を解説するとともに、ゴルフ場におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
ゴルフ場業界の概要・市場動向
ゴルフ場業界とは
ゴルフ場業界とは、ゴルフをプレーする目的でホールを設置したスポーツ施設を運営する業界をいいます。ゴルフ場はゴルフクラブやカントリークラブとも呼ばれ、レストランや浴場、練習場が併設されています。
ゴルフ場の定義として、1.ホールが18ホール以上でコースの総延長をホール数で除した数値が100m以上、2.ホール数が9ホール以上18ホール未満でホールの平均距離が150m、のいずれかを満たす必要があります。
ゴルフ場は、海岸の近くに造られたシーサイドコースと、内陸部に造られたインランドコースに分類されます。
ゴルフ場の市場動向
ゴルフ業界全体の市場縮小
ゴルフ業界の市場規模はバブル崩壊以降低下傾向にあります。
経済産業省「令和元年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業 (個別スポーツの需要喚起策可能性調査) 報告書」によると、 1996年に1兆7,630億円あったゴルフ場の市場規模は、2018年には8,540億円まで減少しています。
ゴルフ場数も2002年の2,460コースをピークに2019年には2,227まで減少しています。
一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会「利用税の課税状況からみたゴルフ場数、延利用者数、利用税額等の推移」では、1ゴルフ場当たりの利用税額は1988年のピーク時から3分の1以下に低下しています。ゴルフ場数が減している状況においても1ゴルフ場当たりの売上高が低下していると推測されるため、供給数以上にゴルフ需要が落ち込んでいることが分かります。
ゴルフ人口の減少
ゴルフ需要の減少の背景にはゴルフ人口の減少があります。
総務省「社会基本生活調査」によると、1991年に1,784万人であったゴルフ参加人口は2016年には890万人まで減少しています。同期間のゴルフ参加率も17.8%から7.9%まで低下していることから、人口減少以上にゴルフ離れが進行していることが分かります。
特に若者のゴルフ離れは顕著で、18歳未満者のゴルフ場利用者数は2012年をピークに減少しています。また、世帯ごとのゴルフ参加率を見ると、世帯収入が高いほど参加率が高いことから経済的余裕のない若者にとってはなじみが薄いスポーツと捉えられる傾向があります。
ゴルフ人口総数が減少する一方で、ゴルフ人口が増加している世代もあります。
ゴルフ参加人口のうち50代以上の割合は、1996年には25.5%でしたが、2016年には52.1%を占めるまで増加しています。同期間のゴルフ参加人口と照らし合わせると、全年代でのゴルフ人口減少に反して50代以上のゴルフ人口は392万人から463万人まで増加しています。
以上より、若者を中心にゴルフ人口を増加させることがゴルフ場を含むゴルフ業界全体の課題と言えます。
ゴルフ以外の娯楽・スポーツの普及
ゴルフ人口減少の要因として経済的要因は前述しましたが、ゴルフ以外の娯楽やスポーツの人気に圧迫されていることも要因の一つです。
スポーツ庁「スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和3年11月調査)」によると、今後始めてみたい運動・スポーツに関する質問で、ゴルフ(コースでのラウンド)と回答した割合はわずか4%で全体15位に、ゴルフ(練習場・シミュレーションゴルフ)と回答した割合は3.5%で全体19位となっています。1位はウォーキングの29.2%であり、気軽に一人で始められるスポーツが上位を占めていることから、ゴルフも新たな魅力を発信する必要があると言えます。
また、趣味・娯楽面でも行動様式が変化しています。
総務省「令和3年社会生活基本調査」では、スマートフォンを利用した音楽鑑賞・ゲームなどの利用度合いが上昇した一方、遊園地などの娯楽施設やカラオケなどの利用度合いは大きく低下しています。スマートフォン一つで完結する娯楽は今後も増加するため、ゴルフを含めてスポーツを趣味・娯楽とする割合は低下すると予測されます。
ゴルフ場のM&A動向
ゴルフ場業界では、事業規模や事業エリアを拡大することで新規顧客の獲得を狙ったM&Aが活発です。経営が苦しくなったタイミングで大手グループの傘下に入る、もしくはゴルフ場を引き取ってもらう事例も頻繁に見られます。
近年でのゴルフ場業界のM&Aの特徴として、大手の寡占化が進行していることが挙げられます。以前まではバブル崩壊により経営難に陥ったゴルフ場を投資ファンドが買い取る動きが活発でしたが、昨今では単一ゴルフ場が大手グループの傘下に入る動きが加速しています。
また、外資系企業による買収のほか、不動産・観光などの他業種企業による買収も見られます。
ゴルフ場業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
ゴルフ場のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 大手の知名度やブランドを活用できる
- コース設計ノウハウを共有できる
- 買い手の会員を取り込める
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
ゴルフ場のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の保有する土地や施設をそのまま活用できる
- 売り手の抱える会員数を増加することができる
- 施設数を拡充することで事業エリアを拡大できる
- 他業種からの参入の場合、ゴルフ場経営ノウハウを獲得できる
ゴルフ場のM&A・売却・買収事例
パシフィックゴルフマネージメントによる足柄森林カントリー倶楽部事業のM&A
ゴルフ事業の経営管理・子会社の株式保有、ゴルフ場の運営・受託などを手掛けるパシフィックゴルフマネージメントは、足柄森林都市から、足柄森林カントリー倶楽部(静岡県駿東郡)事業を新設分割、株式譲渡により取得することを決定しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:新設分割、株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ゴルフ場数の拡大
Right Nowによるアセット・ホールディングスのM&A
投資事業を手掛けるRight Nowは、不動産を運用資産として提供する不動産事業を手掛けるレーサムの子会社で、ゴルフコースに宿泊施設、ヴィラ施設、スパ施設等が融合したトータルリラクゼーション施設「THE RAYSUM」を運営するアセット・ホールディングスの全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ゴルフ場運営の集約化
KSTによるキャスコのM&A
ゴルフ場経営などを手掛けるKSTは、ゴルフシャフトの生産などを手がけるマミヤ・オーピーの子会社で「Kasco」ブランドのゴルフボールやクラブ、グローブ、バッグなどの製造を手掛けるキャスコの全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:5億円
- 目的:製品ラインナップの拡充
アコーディアによる小田急西富士ゴルフ倶楽部のM&A
国内170のゴルフ場と27の練習場を運営するアコーディアは、小田急電鉄から、小田急西富士ゴルフ倶楽部事業を買収することを決定しました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大による収益改善
ユニマットプレシャスによるグッド・ゴルフ・マネジメントのM&A
ゴルフ事業・マリーナ事業・群馬サファリパークの運営などを手掛けるユニマットプレシャスは、マナゴルフクラブ(茨城県常陸大宮市)を運営するグッド・ゴルフ・マネジメントの全株式を取得しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:会員数の増加
太平洋クラブによる金乃台カントリークラブ事業のM&A
ゴルフ場の運営などを手掛ける太平洋クラブは、日本製鉄傘下の日鉄日新ビジネスサービスからゴルフ場「金乃台カントリークラブ」(茨城県牛久市)の経営権を取得しました。
- 実行時期:2021年3月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ゴルフ場運営の経営改善
リソルホールディングスによる亀山湖カントリークラブのM&A
ホテル・ゴルフの運営事業などを手掛けるリソルホールディングスは、東京ベイサイドリゾートの特別清算に伴い、千葉県君津市で会員制ゴルフ場を運営する亀山湖カントリークラブの株式を取得しました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ゴルフ場運営の経営改善
パシフィックゴルフマネージメントによる関電アメニックスの「武庫ノ台ゴルフコース」のM&A
大手のゴルフ場運営会社のパシフィックゴルフマネージメントは、宿泊施設やゴルフ場の運営などを行う関電アメニックスの「武庫ノ台ゴルフコース」を譲り受けました。
- 実行時期:2023年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
小田急スポーツサービスによる富士小山ゴルフクラブのM&A
ゴルフ場・テニスコートの運営を行っている小田急スポーツサービスは、ゴルフ場の運営を行っている富士小山ゴルフクラブを吸収合併しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:両ゴルフ場の連携を強化とサービスの拡充
ゴルフダイジェスト・オンラインによるGDOゴルフテックのM&A
ゴルフの総合サービスを行うゴルフダイジェスト・オンラインは、ゴルフレッスン事業を営むGDOゴルフテックを吸収合併を決定した。
- 実行時期:2023年1月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:経営資源の有効活用
パシフィックゴルフマネージメントによる足柄ゴルフのM&A
ゴルフ事業の経営管理を行うパシフィックゴルフマネージメントは、足柄森林カントリー倶楽部を運営する足柄ゴルフを子会社化しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:長期的に安定した収益基盤の構築
アコーディア・ゴルフによるネクスト・ゴルフ・マネジメントのM&A
ゴルフ場の運営・管理を行っているアコーディア・ゴルフは、練習場の運営・管理を行っているネクスト・ゴルフ・マネジメントを吸収合併しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:ノウハウの融合
ワイヤードパッケージによるゴルフリサーチのM&A
ゴルフリサーチ社へ事業への投資などを行うワイヤードパッケージ は、ゴルファー創出事業などを行うゴルフリサーチと資本業務提携を行いました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:新しい価値提供
フォートレス・インベストメント・グループLLCによるネクスト・ゴルフ・マネジメントのM&A
国際的な投資ファンド運用会社のフォートレス・インベストメント・グループLLCは、ゴルフ場およびゴルフ練習場の運営・管理を行うネクスト・ゴルフ・マネジメントの株式を譲り受けました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:グループとしての規模拡大
アジアゲートホールディングスによるA.Cインターナショナルのリゾート事業および土地・建物のM&A
リアルエステート事業などを行うアジアゲートホールディングスは、ゴルフ・リゾート事業を行うA.Cインターナショナルのリゾート事業および土地・建物を譲り受けました。
- 実行時期:2021年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新たな事業への投資の加速
パシフィックゴルフマネージメントによるゴルフプロパティーズのM&A
ゴルフ事業の経営管理を行うパシフィックゴルフマネージメントは、アコーディア・ネクストゴルフグループが所有する4ゴルフ場を持つゴルフプロパティーズを子会社化しました。
- 実行時期:2020年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:PGMグループとして新しいゴルフ場の開設
平川商事による西日本開発のM&A
ゴルフ・フィットネス事業等11事業を展開している平川商事は、両ゴルフ場の運営を行っている西日本開発を子会社化しました。
- 実行時期:2020年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:本事業を強化するとともによる質の高いサービスの提供
市川興業による宇部興産開発のゴルフ場事業のM&A
ゴルフ場の経営を主業としている市川興業は、ゴルフ場を運営する宇部興産開発の運営するゴルフ場事業を譲り受けました。
- 実行時期:2020年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:本事業の中長期的な発展
リソルによるTLCゴルフリゾートおよび三木よかわカントリー、関西カントリー3社のM&A
ゴルフ場を保有するリソルは、ゴルフ場経営を行っているTLCゴルフリゾートおよび三木よかわカントリー、関西カントリー3社を子会社化しました。
- 実行時期:2023年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:長期的に安定した収益基盤の構築
GOLFTEC ST LLCによるSkyTrakグループのM&A
ゴルフレッスンチェーンを展開している GOLFTEC ST LLCは、一般向けゴルフ弾道測定器を行っているSkyTrakグループの事業の一部を譲り受けました。
- 実行時期:2022年8月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:約156億円
- 目的:収益性の向上
おわりに
本記事のまとめ
ゴルフ場業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
ゴルフ場業界では、ゴルフ場の減少や若者のゴルフ離れを背景に市場が縮小しています。
他スポーツとの競争も激化する中で競技人口も減少しており、大手運営会社を中心にゴルフ場運営をより効率化、集約化し収益性を担保するための手段として、M&Aが活発化しています。
今後も大手事業者を中心にこうした動きはますます活発化していくものと考えられます。
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