廃棄物処理業界の業界動向、M&A・売却・買収事例27選!
廃棄物処理業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。人口減少による廃棄物の減少や、生産性の向上により廃棄物処理業者は減少していくと見られ、M&Aによる事業を強化するケースが多く見られます。
本記事では、そうした廃棄物処理業界の市場動向を解説するとともに、廃棄物処理業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
廃棄物処理業界の概要・市場動向
廃棄物処理業界とは
廃棄物処理業界とは、家庭や企業から排出される廃棄物を適切に処理し、最終処分まで担う業界です。
廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分けられ、一般廃棄物は市町村、もしくは市町村の委託業者が処理することが一般的です。
産業廃棄物を処理する場合は、処理基準が設けられており、廃棄物の種類ごとに基準が定められています。
具体的には「分別・保管」「収集・運搬」「中間処理」「再生処理・最終処分」というステップで処理されます。排出業者が廃棄物を種類ごとに分別し、運搬業者が収集・運搬を行い、種類ごとに中間処理が加えられ、再生処理や最終処分が行われて処分されます。
産業廃棄物処理業界の大手企業にはTREホールディングスやエンビプロHD、ダイセキなどが挙げられます。
廃棄物処理業界の市場動向
産業廃棄物処理市場の拡大
総務省統計局「2020年経済構造実態調査」によると、2020年の産業廃棄物処理業界の市場規模は約2兆6,634億円でした。
産業廃棄物処理業界の売上は2013年から右肩上がりに推移しており、2020年に初めて2.6兆円を突破しました。近年は建築物の新設や解体工事が多く、工事に伴う廃棄物や廃液が増加したことが理由として考えられます。
一方、環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況」によると、2019年度に新設された中間処理施設は17個、最終処理施設は7個で、年度によって多少の増減はあるものの、全体として減少傾向にあります。原因として人口減少による廃棄物の減少が考えられます。
脱炭素化の動き
長期的には人口減少に伴う市場縮小が懸念される中、世界的な脱炭素への取り組みをチャンスと捉える企業もあります。
産業廃棄物処理業界大手で、廃油や廃水などの液状廃棄物の処理をメインに扱うダイセキは、廃油を成分・性状に応じて加工することでリサイクル率90%を実現しています。さらに、国内市場の縮小を見越してアジア進出を図っており、市場調査を進めています。
リバーHDとタケエイは2021年10月にTRE HDを設立し、成長戦略の一つに「再資源化の強化」を掲げています。その中で廃プラスチックが原料の固形燃料製造プラントの新設し、太陽光パネルのリサイクル事業も推進しています。
環境制約と資源制約
環境省「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」によると、2013年の最終エネルギー消費量は3億6100万klで、2030年には3億2600万klまで削減することを目標にしています。
また2010年の世界の廃棄物発生量は104.7億トンで、人口増加とともに廃棄物量は増加すると考えられます。そのため再資源化の需要は高まると考えられ、資源循環の重要度が高まっています。
政府は環境制約と資源制約を進めており、今後は企業も社会的責任を考える必要に迫られています。
廃棄物処理業界のM&A
廃棄物処理業界は近年順調に成長していますが、生産性の向上により廃棄物処理業者の数は減少していくと見られています。よって大手廃棄物処理業者が中小企業をM&Aし、企業力を強化するケースが多く見られます。
また、日本の処理技術はレベルが高いと言われるため、技術の獲得を目的としたM&Aも見られます。
廃棄物処理業は運搬も含め、各都道府県の許認可が必要です。特別な事由により廃棄物量が増えない限り、新規業者に許認可が降りるケースは極めて少ないため、新規参入の選択肢としてM&Aが使われることも多いです。
廃棄物処理業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
廃棄物処理業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 事業の稼働率を安定させることができる
- 大手企業の傘下に入ることで、単独では難しい大規模な投資が行える
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
廃棄物処理業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 既存企業を買収することで許認可を取得できる
- 買い手が保有する関連事業との組み合わせによってシナジーを獲得できる
- 売り手の抱える従業員を獲得し教育費を抑えることができる
- 売り手企業のノウハウ・技術を獲得できる
廃棄物処理業界のM&A・売却・買収事例
ダイキアクシスによるアルミ工房萩尾のM&A
水回りの住宅関連商材・浄化槽・産業排水処理を手掛けるダイキアクシスは、サッシ・エクステリア建材の施工・販売を手掛けるアルミ工房萩尾を子会社化しました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:質の高い商材・サービスの提供
エンビプロHDによる富士見BMSのM&A
金属やプラスチック、リチウムイオン電池などのリサイクル事業を手掛けるエンビプロHDは、静岡県富士市に拠点を置く廃棄物リサイクル業者の富士見BMSを子会社化しました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:業務・経営管理の効率化
大栄環境HDによるセーフティーアイランドのM&A
廃棄物に関する一貫したサービスを提供する大栄環境は、主に近畿地方で産業廃棄物処理を手掛けるセーフティーアイランドを子会社化しました。
- 実行時期:2020年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:質の高いサービスの提供
アシードHDによるロジックイノベーションのM&A
飲料の製造・販売を手掛けるアシードHDは、岡山県に拠点を置き物流・環境事業を手掛けるロジックイノベーションを子会社化しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:付加価値の高い物流サービスの提供
アカルタスHDによる日本ビソーのM&A
廃棄物の運搬・処理、リサイクルを手掛けるアカルタスHDは、ゴンドラによる外壁アクセスシステムと外壁リニューアル工事を提供する日本ビソーを子会社化しました。
- 実行時期:2020年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業エリアの拡大
ツネイシカムテックスによる東広商事のM&A
広島県福山市に拠点を置き廃棄物処理・リサイクル事業を手掛けるツネイシカムテックスは、リサイクルの総合コンサルティングを手掛ける東広商事を買収しました。
- 実行時期:2016年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:アジアのゴミ問題解決
タケエイによる富士リバースのM&A
首都圏を中心に産業廃棄物処理を手掛けるタケエイは、関東・甲信地域を中心に生木などの再生資源化を手掛ける富士リバースを子会社化しました。
- 実行時期:2014年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:バイオマス発電用燃料の生産
環境のミカタによるシーピーセンターのM&A
産業廃棄物及び一般廃棄物の運搬・処理を行う環境のミカタは、リサイクル・リユース事業を行うシーピーセンターを子会社化しました。
- 実行時期:2023年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拡大
ダイセキ環境ソリューションによる杉本商事のM&A
土壌汚染対策事業を行っているダイセキ環境ソリューションは、産業廃棄物の運搬・処理業を行っている杉本商事を子会社化しました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:再生エネルギー等の新規事業の立ち上げ
アサヒプリテック分割準備、アサヒメタルファインの2社によるアサヒプリテックの貴金属リサイクル事業・貴金属精錬、製造、販売事業のM&A
廃棄物処理等を行うアサヒHDグループのアサヒプリテック分割準備およびアサヒメタルファインの2社は、産業廃棄物処理等を行うアサヒプリテックの貴金属事業を譲り受けました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:吸収分割
- 取引価額:非公開
- 目的:グローバルなブランドの確立
タケエイによるJWガラスリサイクルのM&A
廃棄物処理・リサイクル事業等を行うタケエイは、ガラス屑の集荷・再資源化処理・販売を行っているJWガラスリサイクルを子会社化しました。
- 実行時期:2023年4月3日
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ガラスリサイクル需要への対応
クボタによるクボタ環境エンジニアリングのごみ焼却・溶融および破砕・リサイクルに関する事業のM&A
農業関連商メーカーのクボタは、農業機械事業等を行うクボタ環境エンジニアリングの、ごみ焼却・溶融および破砕・リサイクルに関する事業を譲り受けました。
- 実行時期:2023年4月
- スキーム:吸収分割
- 取引価額:非公開
- 目的:連携強化
ヤマダ環境資源開発ホールディングスによるあいづダストセンターのM&A
環境事業への投資を行うヤマダホールディングスグループのヤマダ環境資源開発ホールディングスは、一貫した産業廃棄物事業を行うあいづダストセンターを子会社化しました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:資源循環を中心とした自己完結型システムの構築
日本製鉄による日鉄スラグ製品、エスメント関東およびエスメント中部の3社のM&A
大手製鉄会社の日本製鉄は、廃棄物処理などを行っている日鉄スラグ製品、エスメント関東およびエスメント中部の3社の統合しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:高炉セメントおよびエスメントの需要拡大
ポエックによる川中建設とカワナカ2社のM&A
環境・エネルギー関連機器の販売などを行うポエックは、川中建設と同社傘下の廃棄物事業を持つカワナカを子会社化しました。
- 実行時期:2023年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:収益拡大
三菱ケミカルによるリファインバースのM&A
機能商品、素材などの開発・製造を展開する三菱ケミカルは、産業廃棄物を回収処理し再資源化する事業を行うリファインバースと資本業務提携を行いました。
- 実行時期:2020年8月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:廃棄物の適切なリサイクルや有効利用の促進
北日本紡績による金井産業のM&A
合繊、紡績糸の製造事業等を展開している北日本紡績は、産業廃棄物の再生・収集・処理などを行う金井産業を子会社化しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:1億2,500万円
- 目的:本格的なリサイクル事業への進出
ヤマダホールディングスによる三久のM&A
家電販売を主力とするヤマダホールディングスは、産業廃棄物処分業等を行う三久を子会社化しました。
- 実行時期:2021年04月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:SDGsへの取り組みの推進
トキワ薬品化工によるメディカルサービス神奈川の廃棄物関連事業のM&A
特定有害廃棄物事業に取り組むトキワ薬品化工は、特別管理産業廃棄物処理業務等を行うメディカルサービス神奈川の廃棄物関連事業を譲り受けました。
- 実行時期:2022年05月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新たな体制の構築
富士興産による環境開発工業のM&A
地球環境保全への取り組みも行っている富士興産は、優良産廃処理業者の認定を受けている環境開発工業を子会社化しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:新規事業の推進
三菱マテリアルによる小名浜製錬のM&A
三菱グループの大手非鉄金属メーカーの三菱マテリアルは、一般廃棄物および産業廃棄物の処理を行っている小名浜製錬を子会社化しました。
- 実行時期:2023年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:E-Scrapに関する取り組みの促進
リファインバースグループによるコネクションのM&A
廃棄物を元にした再生素材メーカーのリファインバースグループは、産業廃棄物収集運搬・処分業を行っていコネクションを子会社化しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:事業拠点の活用
NAC International Inc.によるPhilotechnics, Ltd.のM&A
原子力発電の使用済み燃料などを扱うNAC International Inc.は、アメリカの放射性廃棄物管理業者のPhilotechnics, Ltd.を子会社化しました。
- 実行時期:2023年01月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:取り扱い廃棄物の拡大
栗田工業によるArcadeグループ3社のM&A
水処理の大手企業の栗田工業は、欧州の水処理装置の製造・販売会社である独・仏・瑞のArcadeグループ3社を買収しました。
- 実行時期:2023年05月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ソリューションの拡充
横河電機によるDublix Technology ApSのM&A
エンジニアリング事業を行っている横河電機は、廃棄物・バイオマス発電プラント向け効率改善業務を担うDublix Technology ApSを子会社化しました。
- 実行時期:2022年05月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:効率改善および利益率向上
三菱重工業と三菱重工環境・化学エンジニアリングによるTuasOne Pte.Ltd.のM&A
共にプラントやインフラ建設などを行う三菱重工業と三菱重工環境・化学エンジニアリングは、廃棄物焼却発電施設の建設・運営事業を行うTuasOne Pte.Ltd.を完全子会社化しました。
- 実行時期:2022年08月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:プロジェクトの受注拡大
Hitachi Zosen Inova AGによるるSteinmüller Babcock Environment GmbHのM&A
ごみ焼却発電やバイオガス施設事業などを展開しているHitachi Zosen Inova AGは、欧州で廃棄物発電施設や排ガス処理設備の事業を展開しているSteinmüller Babcock Environment GmbHを子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:シェア拡大
おわりに
本記事のまとめ
廃棄物処理業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
廃棄物処理業界は市場は近年成長しています。しかし、人口減少による廃棄物の減少や、生産性の向上により事業者は減少していくと考えられており、各社は脱炭素化への取り組みやM&Aによって生き残りを図っています。
今後は環境関連事業や技術の獲得を目的としたM&Aも増加すると見られ、廃棄物処理業界のM&Aはより活発になると予想されています。
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