和歌山県のM&A・会社売却・買収事例、事業承継の動向
現在、和歌山県をはじめとした全国の中小企業において、後継者不在や事業の更なる成長を目的としたM&Aが注目を集めています。
本記事では、そうした和歌山県のM&A動向を解説するとともに、和歌山県における会社売却・買収事例や、事業承継の動向をまとめてご紹介します。
和歌山県のM&A・事業承継動向
和歌山県の現状
全国有数の産業集積地域
和歌山県では、伝統技術と温暖な気候の下で育まれた原材料によりものづくりが発展してきた地域です。(和歌山県商工観光労働部「ものづくり和歌山」)
ニットやパイルなどの素材関連産業、漆器や家具などの生活関連産業のほか、化学や機械金属など最先端技術を用いた産業も集積しています。
紀州漆器は室町時代に作られた木椀を起源としており、江戸時代に木地、塗り、加飾などの分業制が導入されて以降庶民の日用品としての需要が高まりました。素材には県内で育まれた紀州材が用いられており、主に和歌山市・海南市・紀美野市などの県北西部を産地としています。
和歌山県の繊維産業は江戸時代の綿織物から始まり、1869年に紋羽織が軍用被服として採用されると、新しい生地が織られ「紀州ネル」と呼ばれるようになりました。
1900年代に入り「紀州ネル」からニット産業に転向した業者の多くは第二次世界大戦により工場への空襲を受けましたが、当時の製造機械が燃え残ったことでニットの産地になり得たと言われています。
化学産業では、第一次世界大戦が勃発して染料の輸入が途絶えていたころに、染料の原料となるアニリンの製造に成功したことが合成染料工業の基礎となりました。
現在では、染料・顔料・情報電子機器材料・医薬中間物・農薬中間物・繊維関連品・食品素材なども製造しており、航空機・宇宙分野などの最先端分野や、原料の天然物シフト・バイオプロセス研究などの環境問題を解決するための技術開発も推進されています。
県内の産業
和歌山県企画部「令和3年経済センサス-活動調査 結果速報(和歌山県分)」によると、和歌山県の事務所数は4万8,553事業所で全国39位、従業員数は万4,959人で全国37位です。
事務所数を産業大分類別でみると、卸売・小売業が25.0%と最も多くを占めており、次いで宿泊・飲食サービス業(11.4%)、医療・福祉(9.7%)の事務所数が多いです。
従業員数では、卸売・小売業が最も多い点は全国と変わりませんが、医療・福祉は全国比で4.1ポイント多く、製造業は0.6ポイント多いです。
和歌山市内の従業員は県内の45.1%を占めています。前回調査(平成28年)の44.2%からわずかに上司していることから、県内の労働者が都市部に集中する傾向が強まっている可能性があります。
和歌山県企画部「和歌山県の商工業」によると、石油製品・石炭製品が製造品出荷額の20.5%を占めており、鉄鋼業(19.5%)、化学工業(14.4%)と合わせて過半数を占めています。
製造業の事務所数は減少傾向にありますが従業員数は平成18年頃から5万人程度で横ばいであるため、製造業事業者の統廃合が進行したと考えられます。
直近の経済状況
和歌山県の経済状況は持ち直しの動きが強まる一方で、一部悲観的な見通しも見られます。
和歌山社会経済研究所「和歌山県内の動向」によると、2022年10~12月期の県内景況BSI(「景気がいい良い」と回答した事業者の割合-「景気が悪い」と回答した事業者の割合)は、-14.2から-8.2まで改善しました。
鉄鋼・金属製品製造業、機械・機械部品製造業において受注環境が改善したことで製造業の業況が改善したほか、卸売業では県内景気の改善を背景に、機械器具卸売業などで業況が改善しました。
また、外食需要・旅行需要の持ち直しからサービス業全体でもコロナ禍以降の最高値を記録するなど、業種を問わず改善傾向が見られました。
日銀短観における全国のDIは6で和歌山県内の水準よりも高いですが、前期からの上昇幅をみると全国が+3ポイントであるのに対して、和歌山県では+6ポイントとなり、製造業の業況が全国を上回る上昇に寄与しました。
今期の景気回復傾向を示した一方で、来期(2023年1~3月期)の景況感は悪化する見通しです。
世界的な金融引き締めに伴う景気後退や原材料価格の上昇が主な原因で、景況DIは今期の-8.2から-13.0まで低下するとみられています。
和歌山県のM&A・会社売却・事業承継動向
和歌山県では倒産件数に対して休廃業・解散数が多いです。
和歌山県における2022年1月の倒産件数は3件で過去10年間で2番目に少なく、9月の倒産件数は6件で過去10年間で3番目に少なかったです。(紀伊民報「1月の和歌山県内倒産は3件 東京商工リサーチ」「和歌山県内9月の倒産6件 東京商工リサーチ調べ」)
一方で、和歌山県の休廃業・解散率は2020年には2.62%、2022年で2.37%と改善傾向は見られるものの、2020年の倒産件数に対する休廃業・解散件数の倍率が4.5倍であったことを踏まえると、依然として休廃業・解散の多さは解消されていません。(帝国データバンク「全国企業「休廃業・解散」動向調査(2022年)」)
この乖離の原因の一つは後継者が不在していることです。
帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022)」によると、県内の後継者不在率(後継者が「いない」、または「未定」とした企業に割合)は46.2%で全国で3番目に良好な結果でしたが、半数近くの企業では後継者が定まっていない状況です。
和歌山県でM&A・事業承継を推進するには
M&A仲介会社などの専門家へ相談する
和歌山県でM&Aや会社売却を推進する手段として、M&A仲介会社などの専門家に相談する方法があります。
M&A仲介会社とは、M&Aの専門家であるM&Aアドバイザーが売り手企業と買い手企業の間に立って、中立的な立場でM&Aの成立を支援する会社です。
M&Aにおいては法務的な手続きや税務処理、相手企業の選定まで、幅広い領域の専門性が必要不可欠であるため、こうした専門のアドバイザーに相談することは有効な手段の一つと言えます。
M&A仲介会社は得意領域や事業規模によって多数の会社が存在しているため、自社に合った会社を見つけることが重要です。
公的機関や金融機関へ相談する
和歌山県事業承継・引継ぎ支援センター
和歌山県事業承継・引継ぎ支援センターとは、国の委託事業として事業の存続に関する様々な課題の解決を支援する公的な相談窓口です。
和歌山事業承継・引継ぎ支援センターが取り組む事業承継ネットワーク事業では、和歌山県が中心となって商工会議所・商工会・金融機関・士業等専門家などの支援機関が組織されており、早期・計画的な事業承継準備を促すための「事業承継診断(アンケート)」を実施して、事業承継に向けた個別支援を必要とする経営者への支援を行っています。
和歌山県よろず支援拠点
和歌山県よろず支援拠点とは、中小企業、小規模事業者、NPO法人、一般社団法人、社会福祉法人などの中小企業・小規模事業者、創業予定の方のための無料経営相談所です。
売上拡大・資金繰り・創業・商品開発・後継者問題など経営上のあらゆる相談に回数無制限で対応しています。
2023年2月時点では、12名のコーディネーターが在籍しています。
和歌山県商工会連合会
和歌山県商工会連合会とは、国や都道府県の小規模企業施策(経営改善普及事業)の実施機関で、地域の事業者が業種に関わりなく会員となり互いの事業の発展や地域の発展のために総合的な活動を行う経済団体です。
和歌山県には30つの商工会と7つの商工会議所が設置されています。
経営支援、販路開拓、税務・記帳支援、労務支援のほか、金融や信用保証に関する相談や斡旋などにも取り組んでいます。
和歌山県信用保証協会
兵庫県信用保証協会とは、信用保証協会法に基づいて中小企業・小規模事業者が金融機関から資金を借り入れる時に、公的な保証人となって資金借り入れを支援する公的機関です。
利用希望者は金融機関で融資申込と併せて信用保証の申込手続きを行い、信用保証協会が金融機関から提出された保証委託申込書及び信用保証依頼書に基づいて保証審査を行います。
資金使途は、運転資金、商品・原材料仕入資金、手形・買掛金決済資金、労賃、設備資金、事業用不動産購入資金、店舗・工場の新築増改築資金、機械購入資金などの「事業資金」に限定されています。
和歌山県のM&A・売却・買収事例
サイバーリンクスによる南大阪電子計算センターのM&A
官公庁向けクラウドサービス事業を手掛けるサイバーリンクス(和歌山県和歌山市)は、大阪府南部エリア、和歌山県及び奈良県の地方自治体向けに基幹システムを提供する南大阪電子計算センター(大阪府貝塚市)の全株式を取得しました。
- 実行時期:2018年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:医療機関向け事業分野でのシナジー効果
ヤマイチエステートによるユニチカエステートのM&A
分譲マンション事業、戸建住宅事業、不動産賃貸事業、不動産管理事業、シニア事業、レジャー事業などを手掛けるヤマイチエステート(和歌山県和歌山市)は、不動産業を手掛けるユニチカの連結子会社であるユニチカエステート(大阪府大阪市)の全株式を取得しました。
- 実行時期:2016年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:17.5億円
- 目的:経営資源の効率化
サイバーリンクスによるモバイル・メディア・リンクのM&A
流通・官公庁向けクラウドサービス、トラストサービスおよび移動体通信機器の販売を手掛けるサイバーリンクス(和歌山県和歌山市)は、移動体通信機器の販売を手掛けるモバイル・メディア・リンク(和歌山県和歌山市)と株式交換契約及び合併契約を締結した。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式交換、吸収合併
- 取引価額:非公開
- 目的:店舗シェアの拡大
サイバーリンクスによるシナジーのM&A
流通・官公庁向けクラウドサービス、トラストサービスおよび移動体通信機器の販売を手掛けるサイバーリンクス(和歌山県和歌山市)は、自治体向けシステムの販売、設計、開発、導入、支援、アウトソーシングを手掛けるシナジー(沖縄県宜野湾市)の全株式を取得しました。
- 実行時期:2022年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:1億5,000万円
- 目的:官公庁クラウド事業におけるサービス拡充
農業総合研究所による世界市場のM&A
農産物流通販売事業等を手掛ける農業総合研究所(和歌山県和歌山市)は、日本産青果物等の輸出事業を手掛ける世界市場(東京都品川区)の第三者割当増資を引き受け、子会社化しました。
- 実行時期:2016年8月
- スキーム:第三者割当増資
- 取引価額:非公開
- 目的:海外輸出のためのプラットフォーム作り推進
おわりに
本記事のまとめ
和歌山県におけるM&A・事業承継の動向や、会社売却・買収事例をご紹介しました。
和歌山県でM&Aを行う際は、和歌山県で実績のあるM&A仲介会社などの専門家や、全国を対象にM&Aを取り扱う仲介会社を活用することがおすすめです。
各M&A仲介会社は、業種や地域、取引規模、手数料体系などで強みが分かれ、提供しているサービスも異なるため、地域への強みに加え、こうしたポイントも事前に確認しておくとよいでしょう。
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