SES業界の業界動向、M&A・売却・買収事例19選!

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SES業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。SES業界は近年事業として注目度が高まっており、更なる競争力強化のためM&Aを実施する企業が増えています。

本記事では、そうしたSES業界の市場動向を解説するとともに、SES業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

SES業界の概要・市場動向

SES業界とは

SESとはシステムエンジニアリングサービスの略称で、ソフトウェアやシステムの開発・保守・運用を行う事業を指します。

SES会社は顧客の依頼を受けて、要望に合った技術を保持するエンジニアを派遣します。SES契約は労働に対して報酬が支払われ、納品物の品質や状態に対しては責任を負いません。

また、派遣契約とは異なり、SES契約では指揮命令権は雇用する会社にあります。

エンジニアは高い技術力が求められるため、育成には長い期間を要します。そのため業界は慢性的な技術者不足に陥っています。しかしIT業界に対する需要は高まっており、人手不足はさらに深刻化すると見られています。

SES業界の市場動向

市場規模は安定的に成長

2021年度のSES事業を含むIT企業の市場規模は13兆3000億円で、前年度比2.8%増でした。IT業界は2017年以降安定的に成長しており、この傾向は今年度以降も続くと見られています。

拡大するIT業界の中でもSES業界を手掛けるソフトウェア業は特に企業数が多く、競争の激しい業界となっています。ニーズが日々変化する業界のため、顧客の要望にいかに対応できるかが競争を勝ち抜くカギとなっています。

深刻な人手不足

エンジニア不足が近年問題となっており、今後はさらに深刻化すると考えられています。経済産業省「IT人材育成の状況等について」の試算によると、2030年までに40~80万人の不足が出ると見られています。

また、中小企業ではエンジニア不足から、案件を断らざるを得ないケースも発生しています。この問題の解決策として、M&Aにより人材不足解消を図る企業が増えています。

優秀なエンジニアの存在はそのまま企業の価値を高めるため、人材の確保はSES企業の最優先事項の一つと言えます。

多重下請け構造

多重下請け構造とは、発注企業から受注を受けた元請け企業が、二次受け企業さらに三次受け企業に案件を流す構造のことです。SES業界では長年この多重下請け構造が問題になっています。

多重下請け構造は受注した企業が人手不足などの点から他社に依頼するために発生しますが、下請けの企業は低賃金で仕事を引き受けなければならないだけでなく、労働環境が悪化したり責任が不明瞭になるなど、業界全体で取り組まなければならない問題になっています。

しかし、SES業界の多重下請け構造は人手不足と根強く関係しており、簡単に解決できる問題ではないと言えます。

SES業界のM&A動向

SES業界では人材確保を目的としたM&Aが頻繁に行われています。

2021年のIT・ソフトウェア業界のM&A件数は163件で4年連続で過去最多を記録し、2021年の全業種のM&A件数(877件)のうち20%を占めています。

特に、エンジニアなどのリソース確保のための異業種からのM&Aが目立ちました。また海外大手資本がシステム開発費用を抑えるために、SES企業を買収するケースも多く見られています。

人手不足による多重下請け構造を改善するために、同業社間でのM&Aも盛んに行われています。これにより買い手はエンジニアを確保し、売り手は受注階層の上流企業の傘下に入ることで社員の労働環境の向上が期待できます。

SES業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

SES業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売却利益を獲得し、新規事業や主力事業に投資できる
  • 大手企業の傘下に入ることで安定した経営を実現できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

SES業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の有する優秀なエンジニアを確保し、企業の競争力を向上できる
  • 売り手のエンジニアを引き継ぐことで人材不足を解消できる
  • 売り手の持つノウハウや手法を獲得し、更なる業容拡大を目指せる

SES業界のM&A・売却・買収事例

エルテスによるGLOLINGのM&A

ビッグデータを用いたソリューションの提供を手掛けるエルテスは、SES事業を手掛けるGLOLINGを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:人材不足の解消

FPGによるケンファーストのM&A

不動産事業を手掛けるFPGは、フィンテックに強みを持つケンファーストの全株式を取得しました。

  • 実行時期:202年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:5億7,500万円
  • 目的:IT技術の自社製品への活用

データセクションによるFabeeeのM&A

ソーシャルメディア分析などを手掛けるデータセクションは、SES事業を手掛けるFabeeeと資本業務提携を実施しました。

  • 実行時期:2020年7月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:音声解析AI事業の強化

BRANDING ENGINEERによるTSRソリューションズのM&A

ITサービスを手掛けるBLANDING ENGINEERは、SES事業を手掛けるTSRソリューションズを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:人材確保及びシナジーの獲得

夢真ホールディングスによるアローインフォメーションのM&A

建設技術者やITエンジニアの派遣サービスを行う夢真サービスは、SES事業を手掛けるアローインフォメーションを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年6月
  • スキーム:株式取得
  • 取引価額:非公開
  • 目的:エンジニアの育成強化、販路拡大

クレスコによるエニシアスのM&A

システム開発・設計を手掛けるクレスコは、SES事業やアプリケーション開発を手掛けるエニシアスを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:2億8,000万円
  • 目的:クラウド事業の獲得

インフォネットによるスプレッドシステムズのM&A

WEBサイトの作成・運用・保守を手掛けるインフォネットは、SESやフロントエンドエンジニアリングを手掛けるスプレッドシステムズを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益基盤の構築

データセクションおよびディーエスエスによるThe ROOM4DのSES事業のM&A

AI・システム開発を行うデータセクションおよびディーエスエスは、システムの受託開発事業を行うThe ROOM4DよりSES事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年9月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:エンジニア人材・競争力の強化

アピリッツによるY’sのM&A

Webシステム開発・などを行うアピリッツは、IT人材派遣事業、WEBサイト・動画制作などを行っているY’sを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億7,590万円
  • 目的:中期的な成長戦略の達成と企業価値の向上

デジタルハーツホールディングスによるアイデンティティーのM&A

エンタープライズ事業を展開するデジタルハーツホールディングスは、IT人材プラットフォーム事業を行うアイデンティティーを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:16億1,500万円
  • 目的:豊富な人材をベースの獲得

アトモスによるバリューアークコンサルティングのM&A

機械設計技術者派遣などを行うアトモスは、ステムエンジニアリングサービス等の提供を行うバリューアークコンサルティングを吸収合併しました。

  • 実行時期:2023 年10月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:金融機関など幅広い顧客への対応

I-FREEK GAMESによるアイフリークモバイルのM&A

SES事業等行う予定のI-FREEK GAMESは、コンテンツクリエイターサービス事業を展開するアイフリークモバイルの事業の一部を譲り受けました。

  • 実行時期:2023年8月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:人的リソースの活用

ゼネテックによるログインのM&A

エンジニアリングソリューション事業等を行うゼネテックは、SES事業等を行うを行っているログインを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:関西エリアにおける顧客基盤強化

Kaizen PlatformによるハイウェルのM&A

企業の事業成長を支援を行うKaizen Platformは、SES事業等を行うハイウェルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:5億3,000万円
  • 目的:グロースハッカー人材の活躍の場の提供

テモナによるサックルのM&A

クラウド型システムを提供しているテモナは、SES事業、プログラミング学習事業を行っているサックルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億円
  • 目的:グループとしての開発力の強化

アクシスによるヒューマンソフのM&A

各種コンピュータ関連事業を行っているアクシスは、システム関連運営事業やSES事業を行っているヒューマンソフを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:4億1,500万円
  • 目的:事業拡大

データセクションによるFabeeeのM&A

ソーシャルメディア分析事業などを行うデータセクションは、SES事業や受託開発事業を行うFabeeeと資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2020年07月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:採用活動の強化と柔軟なエンジニアリソースの確保

フーバーブレインによるGHインテグレーションのM&A

生産性の向上支援事業等を展開するフーバーブレインは、受託開発や国内大手SIerへのSES事業を行うGHインテグレーションを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年09月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:第4次産業革命に向けた新たな戦略

アイフリークモバイルによる行うリアルタイムメディアとリアリゼーションの2社のM&A

CCS事業を展開するアイフリークモバイルは、SI事業を主に行うリアルタイムメディアとリアリゼーションの2社をを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年1月
  • スキーム:株式交換
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業の強化と推進

おわりに

本記事のまとめ

SES業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

SES業界は年々安定的に成長している一方で、人手不足を背景とした多重下請け構造の問題を抱えています。

IT需要は今後ますます市場が拡大すると見られているため、こうした人手不足の解決が求められています。そのため、人手不足解消を目的としたM&Aはこれからさらに増加していくものと見られています。

また、SES業界は買い手の需要が高い業界のため、売り手にとって好条件で売却できる可能性が高いと言えます。SES事業の売却は売却益の獲得だけでなく、従業員の労働環境向上や安定的な事業継続なども期待できます。

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