消防設備点検・工事業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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消防設備点検・工事業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。消防設備点検・工事業界は、新規需要が限られており価格競争が激しい業界です。

本記事ではそうした消防設備点検・工事業界の市場動向を解説するとともに、消防設備点検・工事業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

消防設備点検・工事業界の概要・市場動向

消防設備点検・工事業界とは

消防設備点検・工事業界とは、オフィスビルや住宅への消防設備の設置やメンテナンスを含む点検を行う業界をいいます。

近年では防火意識の高まりを受けて、住宅でも防災設備を設置する人が増加しています。

消防設備点検・工事業界の市場動向

住宅市場とともに需要が停滞

消防設備点検・工事業界の市場規模は、住宅や建物の新築数やリフォーム件数に伴って変動します。

国土交通省「令和3年度 住宅経済関連データ」によると、新築住宅着工戸数は平成13年度の1,173千戸から令和2年には812千戸まで減少しています。同様に、再建築戸数も同期間で187千戸から62千戸まで減少しており、住宅需要が低下していることが分かります。

消防設備の設置工事は新築住宅やリフォーム住宅に対して実施されるため、対象の住宅数が減少することで市場規模が縮小しています。

今後も人口減少の影響により住宅市場の急成長は見込めないため、住宅向けのサービス需要も低下すると予測されます。

また、総務省消防庁「令和3年版 消防白書」によると住宅用火災警報器の設置率は83.1%であることから既存の住宅に対しての消防設備需要も限定的です。

新規需要は限定的

現在では、住宅向けの需要以上にホテルや病院などの不特定多数の人が出入りする用途の建物向けの需要は少なくなっています。

総務省消防庁「令和3年版 消防白書」によると、令和3年末時点での特定防火対象物へのスプリンクラー設備の設置率は99.4%、自動火災報知設備の設置率は99.5%とほとんどの建物ですでに消防設備が設置されていることが分かります。

したがって住宅以外では、サービスの対象が新たに建築される建物への設置工事か既存設備への点検に限定されるため、将来的には成長が難しい業界であると言えます。

受注単価の低下

消防設備点検・工事の受注単価は年々低下しています。

この背景には、バブル崩壊以降景気が停滞しているために点検・工事時の費用を抑えたい建設会社・ビルメンテナンス会社の意向があります。価格競争が加速していることで中小事業者は苦境に立たされており、マンションやビルなどの管理会社による業者選定時には不利になる場面も頻繁に見られます。

消防設備点検・工事業界のM&A

価格競争が激しくなっている消防設備点検・工事業界では、中小事業者を対象として業界再編が進行しています。

今後も事業を継続させるためには一定以上の規模が必要になることから、大手事業者と零細事業者間の格差が鮮明になることが予測されています。

また、関連業界とのM&Aも増加傾向にあります。建設工事業や不動産事業を営む事業者が消防設備・工事事業を内製化するために買収する事例も見られます。反対に消防設備・工事事業を手掛ける事業者がリフォーム事業に進出するなど、需要の停滞に対応した戦略がとられています。

消防設備点検・工事業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

消防設備点検・工事業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 既存顧客に継続してサービスを提供できる
  • 買い手の顧客を取り込むことができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

消防設備点検・工事業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 消防設備や工事機材をそのまま活用できる
  • 経験豊富な人材を確保できる
  • 事業を多角化できる
  • 海外企業を買収する場合、新規需要を獲得できる
  • 技術力やノウハウを共有できる

消防設備点検・工事業界のM&A・売却・買収事例

九電工による中央理化工業のM&A

福岡県福岡市南区に本社を置き、電気設備工事・空調給排水衛生工事を手掛ける九電工は、消防・防災の専門企業として消防・防災システムや各種サービスを提供する中央理化工業の株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年9月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:営業ネットワークや技術ノウハウの共有

初田製作所によるくおんのM&A

大阪府枚方市に本社を置き、消火器・消火システム・各種防災機器の製造販売を手掛ける初田製作所は、J-STARが投資関連サービスを提供しているファンドが出資するくおんの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:収益基盤の強化

能美防災による日昭設備工業のM&A

自動火災報知設備や消火設備をはじめとする各種防災システムを提供する能美防災は、消防施設工事を手掛ける日昭設備工業の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:大分県への事業進出

あなぶきクリーンサービスによるテクノ防災サービスのM&A

ビル清掃・設備点検を手掛けるあなぶきクリーンサービスは、設備点検・建物メンテナンスを手掛けるテクノ防災サービスの全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:東京地域への事業拡大

永和ファシリティーズによる紘永工業のM&A

消防設備工事を手掛ける永和ファシリティーズは、2014年にアサヒホールディングスの100%連結子会社となった紘永工業の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2019年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:消防工事事業の拡大

日本ドライケミカルによる始興金属のM&A

各種防災設備の設計・施工・保守点検、消火器及び消火設備、消防自動車、自動火災報知設備の製造・販売、防災用品の仕入・販売などを手掛ける日本ドライケミカルは、韓国でアルミニウム製消火器用部材の製造を手掛ける始興金属の株式を取得しました。

  • 実行時期:2017年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:消火器製品群の拡充

日本ハウズイングによる亜細亜綜合防災のM&A

分譲マンションを中心として、オフィスビル・賃貸マンションの建物管理を手掛ける日本ハウズイングは、建物・施設の消防設備に関する工事・点検を手掛ける亜細亜綜合防災の全株式を取得しました。

  • 実行時期:2015年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:技術力の共有

おわりに

本記事のまとめ

消防設備点検・工事業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

消防設備点検・工事業界は、既存建物への設置率の高さや新築住宅着工件数の減少を背景として新たな需要を獲得することに難しさがある業界です。

今後はM&Aを通じて大手事業者による業界再編が加速すると見込まれます。

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