CRO・SMO業界の業界動向、M&A・売却・買収事例28選

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CRO・SMO業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。CRO・SMO業界は近年成長傾向にあり、企業力の向上や海外進出を見据えたM&Aが行われています。

本記事では、そうしたCRO・SMO業界の市場動向を解説するとともに、CRO・SMO業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

CRO・SMO業界の概要・市場動向

CRO・SMO業界とは

CRO・SMO業界とは、Contract Research Organizationと、Site Management Organizationの略で受託臨床試験機関、治験施設支援機関を指します。

CROは、新薬開発の際製薬会社から臨床開発の業務を受託し、SMOは治験を行う医療機関をサポートします。

具体的には臨床試験の準備、治験中のモニタリング、症例報告書の確認・回収、集めたデータの分析、厚生労働省への承認申請書類の作成等です。

CROには臨床開発モニター、データマネジメント、品質管理などの職種があり、特に臨床開発モニターは薬剤師や看護師の資格があれば挑戦できるポジションと言われています。SMOには治験コーディネーターや治験事務局といった職種があります。

どちらも新薬開発に関わるため、社会的意義の大きい業界と言えます。

CRO・SMO業界の市場動向

新薬開発の効率化による需要増加

製薬業界では、生活習慣病などの数千億以上の収益が見込める医療品が出揃っており、今後新たな疾患領域における新薬開発が期待されています。

新薬開発におけるプロジェクト数の増加や、研究費の増大が見込まれるため、製薬会社は業務の効率化を図っています。そのため臨床試験のアウトソーシングが進み、CRO・SMO業界への注目が高まっています。

日本CRO業界には2021年時点で45社が加盟しており、会員会社の総売り上げは約2,256億円で前年比20.8%増でした。1999年には1億円にも満たなかった市場であったことを考えると、近年急成長している業界と言えます。

新型コロナウイルスの影響

CRO・SMO業界も他の業界と同様に、新型コロナウイルスの影響を受けています。

感染拡大防止のため治験患者の採用が困難になり運営施設が封鎖されたため、治験業務が一時的にストップされました。そのため時代に沿った新しい治験の方法を各社模索しています。

また、新型コロナウイルスの新薬開発は目覚ましいスピードで行われ、世界中の製薬会社が着手しています。症状の緩和やウイルスの複製を止めるなど、様々な効能の新薬研究が行われました。

新しい技術の誕生

新型コロナウイルスの世界的な流行により、新たな治験方法の開発が必要になりました。

近年は機械学習ベースのプラットフォーム、人工知能を利用した革新的な試験デザインが誕生し、今後数年間でCRO・SMO業界の状況が変化するのではないかと言われています。

具体的には参加者と医療従事者が医療機関で直接対面しなければ行えなかった治験を、参加者が自宅や近隣のかかりつけ医で行う「バーチャル治験」が注目されています。

今後はCRO・SMOの分野でも、テクノロジーやソフトウェアの活用が考えられます。

CRO・SMO業界のM&A動向

日本のCRO・SMO業界のアウトソーシング率は欧米に比べ低い水準です。

しかし今後は新薬開発の効率化のため、CEO・SMO業界のアウトソーシング率は高まると考えられ、その流れに伴い新規参入のためのM&Aも増えると考えられています。

また、CRO・SMO業界でもグローバル化は進んでおり、市場競争は国際的になっています。そのため海外のCEO・SMO企業の買収や業務提携によって、海外進出を図る企業も見られます。

こういった変化の中で日本のCRO・SMO業界での業界再編は今後も進むと予想されています。

CRO・SMO業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

CRO・SMO業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 単独では難しい海外進出を実現することができる
  • 経営の継続が困難な場合、M&Aによって会社を存続させることができる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

CRO・SMO業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の抱える優秀な従業員や研究者を確保できる
  • 売り手側の抱える既存顧客を取り込むことができる
  • 低コストでCRO・SMO業界への新規参入が可能になる
  • 売り手側のノウハウや技術を獲得することができる

CRO・SMO業界のM&A・売却・買収事例

アイロムグループによるIBERICAのM&A

大学・研究機関を中心とした臨床試験の支援を行うアイロムグループは、開発支援業務と大学との連携により、シーズの探索から上市まで手掛けるIBERICAを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:CRO事業の拡大

エムスリーによるPRI社のM&A

医療情報専門サイトを運営し、M&Aによって医療関連事業を拡大させているエムスリーは、カリフォルニアで3つの治験実施施設を運営するPRI社の全事業を取得しました。

  • 実行時期:2018年9月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アメリカでの販売ネットワークの構築

WDBホールディングスによるDZS社のM&A

CRO事業を展開するWDBホールディングスは、アメリカにある子会社であるWDB Medical Data,Inc.を通じて、アメリカでCRO事業を展開するDZS Software Solutions,Incを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:アメリカにおけるCRO事業の拡大

EPSホールディングスによるACメディカルのM&A

CRO事業、SMO事業を手掛けるEPSホールディングスは、CEO事業、CSO事業を手掛けるACメディカルを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新規顧客の獲得、人材の確保

パーソルテンプスタッフによるメディクロスのM&A

人材サービス会社のパーソルテンプスタッフは、CRO事業を展開するメディクロスを子会社化しました。

  • 実行時期:2015年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:営業力の投入による受託事業の強化

シーエーシーによるモスインスティテュートのM&A

ITコンサルティング企業であるシーエーシーは、東京都でCRO事業を展開するモスインスティテュートのCRO事業を取得しました。

  • 実行時期:2010年3月
  • スキーム:事業取得
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療品開発分野におけるサービスの向上

リニカルによるNuvisan CDD社のM&A

創薬支援、臨床開発、育薬事業を手掛けるリニカルは、ドイツのCRO企業であるNuvisan CDD社を子会社化しました。

  • 実行時期:2014年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:10億2600万
  • 目的:CRO事業の海外進出

WDBココによるWDB臨床研究のM&A

医薬品・医療機器の開発支援を行っているWDBココは、臨床試験のシステム構築などの業務を行っているWDB臨床研究を吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年6月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ワンストップサービスの提供価値向上

トランスジェニックによるMASCのM&A

創薬支援事業などを展開しているトランスジェニックは、CRCや治験事務局に関する業務を行っているMASCを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年03月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:充実したサービス提供

メディカル・データ・ビジョンによるMDVトライアルのM&A

医療・健康分野のICT化事業を行うメディカル・データ・ビジョンは、臨床試験モデルの構築・支援をするSMO会社であるMDVトライアルを吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年1月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:データ治験への流れの加速

メニコンによる板橋貿易のM&A

コンタクトレンズ・ケア用品事業などを展開しているメニコンは、治験・臨床試験の受託などを手掛ける板橋貿易を子会社化しました。

  • 実行時期:2021年1月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:35億6,000万円
  • 目的:海外事業の拡大

DeNAライフサイエンスによるBuzzreachのM&A

保健指導サービスなどを提供しているDeNAライフサイエンスは、治験の臨床試験・臨床研究に関わるSaaS事業行うBuzzreachと資本業務提携を行いました。

  • 実行時期:2020年08月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:コミュニティサービスの開発推進

エムスリーによるヒューマのリクルートメント事業のM&A

インターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っているエムスリーは、被験者リクルートメント業界を牽引するヒューマより被験者リクルートメント事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年5月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:臨床試験支援サービスの提供

CEホールディングスによるマイクロンのM&A

医療を中心としたヘルスケア全般をITで支援するCEホールディングスは、医薬品・医療機器等の開発業務受託機関のマイクロンを子会社化しました。

  • 実行時期:2019年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:1億2,800万円
  • 目的:新しい製品やサービスの提供

アンジェスによるBarcode DiagnosticのM&A

高血圧DNAワクチンの3つのプロジェクトを進めるアンジェスは、イスラエルのバイオハイテク企業であるBarcode Diagnosticと資本業務提携をしました。

  • 実行時期:2019年08月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:開発パイプラインのさらなる拡充

ナレッジスイートによるクリンクラウドのM&A

ビジネスアプリケーションプラットフォーム「Shelter」を提供しているナレッジスイートは、臨床試験データなどに関するSaaSを提供しているクリンクラウドと資本業務提携をしました。

  • 実行時期:2019年8月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:業務の自動化・効率化

IQVIAサービシーズジャパンによるビーアイメディカルのCSO事業のM&A

臨床試験業務支援など、医薬関連サービスを広く手掛けるIQVIAサービシーズジャパンは、臨床試験のMR派遣を主に行うビーアイメディカルのCSO事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2019年3月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:効率的なグループ運用体制の構築

UBEによるエーピーアイコーポレーションのM&A

ライセンス型事業とCDMO事業を展開しているUBEは、治験薬製造受託品等の製造販売を行っているエーピーアイコーポレーションを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年08月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:高品質かつ安定的な供給体制の確立

EPSホールディングスによるEPSインターナショナルのM&A

ヘルスケア分野の総合アウトソーシング企業のEPSホールディングスは、治験国内管理人事業を手掛けるEPSインターナショナルを吸収合併しました。

  • 実行時期:2022年9月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:時代に即したソリューションの提供

エスアールエルによる新潟縣健康管理協会の受託臨床検査事業のM&A

受託臨床検査事業を展開するエスアールエルは、各種健康診断業務を行っている新潟縣健康管理協会の受託臨床検査事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2020年2月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客基盤拡大

ビー・エム・エルによる愛媛メディカルラボラトリーのM&A

臨床検査薬および医療情報システムの販売を手掛けるビー・エム・エルは、受託臨床検査事業を行っている愛媛メディカルラボラトリーを吸収合併しました。

  • 実行時期:2023年8月
  • スキーム:吸収合併
  • 取引価額:非公開
  • 目的:経営効率の向上

ナチュラリによる東北薬理研のM&A

高度医療機器等の販売等を行っているナチュラリは、臨床試験受託事業を展開している東北薬理研を子会社化しました。

  • 実行時期: 2023年04月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:事業拡大

東邦ホールディングスによるキュービクスのM&A

医薬品等製造販売事業を展開している東邦ホールディングスは、受託解析サービス等を行っているキュービクスと独占的販売に関する業務提携を行いました。

  • 実行時期:2021年01月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:独占的な販売権の取得

EPメディエイトによるマイクレン・ヘルスケアのM&A

医療機器開発支援事業を展開するEPメディエイトは、医療機器選任製造販売業などを行うマイクレン・ヘルスケアを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年6月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療機器開発業務をワンストップで実施するサービスの提供

イワキによるスペラファーマのM&A

医薬品原料・医薬品の製造販売を行うイワキは、統合型CMC研究受託企業であるスペラファーマを子会社化しました。

  • 実行時期:2020年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:60億円
  • 目的:CMC研究受託業務の強化

エムスリーによる新日本科学SMOのM&A

インターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っているエムスリーは、SMO事業が主業の新日本科学SMOを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:10億円
  • 目的:ITインフラや顧客基盤の活用

JSRによるCrown Bioscience InternationalのM&A

ライフサイエンス事業等を展開するJSRは、創薬探索開発受託サービスを提供しているCrown Bioscience Internationalを子会社化しました。

  • 実行時期:2018年6月
  • スキーム:現金対価の逆三角合併
  • 取引価額:約44億円
  • 目的:シームレスな価値提供

ハイレックスコーポレーションによるEVAHEART,INC.のM&A

医療用工業品の開発、製造販売を行っているハイレックスコーポレーションは、補助人工心臓の治験委託を受けているEVAHEART,INC.を子会社化しました。

  • 実行時期:2019年09月
  • スキーム:第三者割当増資
  • 取引価額:5億8,500万円
  • 目的:グループの企業価値向上

おわりに

本記事のまとめ

CRO・SMO業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

新薬開発の効率化が求められる今日は臨床試験のアウトソーシングが増え、CRO・SMO業界は成長傾向にあります。また、ITテクノロジーやソフトウェアを活用した新しい形の治験も考えられており、注目を集めている業界です。

そのため他業種からの新規参入も増えており、参入に際してM&Aを実施するケースも見られます。

海外企業からの受託も増えており、海外進出を見据えた海外企業との業務提携や買収も今後ますます増加していくと考えられます。

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