電子部品業界のM&A・売却・買収事例、業界動向

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電子部品業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。電子部品業界は転換期にあり、海外進出や技術の獲得を狙ったM&Aが多く見られます。

本記事では、そうした電子部品業界の市場動向を解説するとともに、電子部品業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

電子部品業界の概要・市場動向

電子部品業界とは

電子部品業界とは、発展を続けている電子部品の製造・販売を行う業界です。

電子部品は家電製品から自転車、スマートフォンなど生活に関わるさまざまな製品に組み込まれており、私たちの生活に欠かせないものになっています。そのため電子部品業界には今後も安定した需要が見込まれています。

日本の電子部品メーカーの技術力は世界的に評価されており、海外でも3割~4割のシェアを誇っています。しかし、近年は中国や韓国などの国が力をつけており、世界的な電子部品のシェアは大きく変わってきています。

特に半導体産業では他国に後れを取っている状況です。

格安な海外メーカーの出現により、日本の電子部品メーカーは新たな戦略を立てる必要があると言えます。

電子部品業界の市場動向

需要の拡大

経済産業省「生産動態統計」によると、2021年の電子部品業界の生産額は2兆8,338億円で前年比18.9%増でした。

電子部品業界の生産額は2020年まで横ばいでしたが、2021年には大きく伸びました。自動車関連産業では部品や半導体不足の影響はあったものの、車載モーターやコンデンサーなどの受動部品やセンサーなどの需要拡大が要因として考えられます。

また新型コロナウイルス感染防止のため一部工場が停止するなどの影響を受けましたが、テレワークの普及により5Gやクラウドなどデジタル製品の需要が高まりました。

また世界的な脱炭素化の動きからEVも普及しつつあり、それに伴う電子部品の需要も高まっています。

高性能な電子部品需要の高まり

電子部品業界の成長を後押ししてきたスマートフォンに関する需要は、近年鈍化してきています。一方で、新たな技術とそれに伴う需要も生まれています。

例えば近年自動車業界は「100年に一度の変化」と言われており、EVや自動運転などの新たな技術と製品が登場しています。そしてこれらの製品に使われる電子部品の需要も、安定して成長すると見られています。

また、工場の自動化に伴う高性能なファクトリーオートメーション機器や産業用ロボット、IoTや5G、AIなどの技術革新によってさらに高度な電子部品の需要が高まると考えられます。

世界における日本シェアの変化

世界における日本の電子部品メーカーのシェアは現在約35%程度です。

日本の多くの電子部品メーカーは海外売上高比率が7割を超え、企業によっては8割から9割を超すケースも見られます。

しかし近年は中国・韓国・台湾などのアジア圏の電子部品メーカーの成長が著しく、今後シェアが拡大すると考えられています。日本の電子部品メーカーは海外の安価な製品にどのように対抗していくかがカギとなっています。

また長期的な成長が見込まれる半導体の世界市場は約40兆円あると言われており、今後日本がこの市場でどれほど活躍できるかが注目されています。

電子部品業界のM&A

電子部品業界でのM&Aでは、規模拡大を狙ったM&Aは少なく、自社が保有していない技術を持っている企業の買収が主流になっています。近年は多くの革新的な技術が登場していることから、この流れは今後も続くと考えられます。

また中国や韓国の安価な製品に対抗するため、M&Aによって海外に製造拠点を移し、生産コストの抑制を図る企業も増えています。

アジア圏の電子部品メーカーの成長により競争は激化しており、事業ポートフォリオを見直すために一部事業の売却や、事業基盤を安定化するために資本提携を行うケースも見られます。

電子部品業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

電子部品業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 単独では難しい新たな事業に投資ができる
  • 取引先や顧客との関係を維持できる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

電子部品業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 自社の保有していない技術を獲得できる
  • 売り手の顧客や販路を引き継ぐことができる
  • 装置稼働率を向上するとができる
  • 新製品・新技術の開発スケジュールを短縮できる

電子部品業界のM&A・売却・買収事例

KYOCERA AVXによるロームのタンタルコンデンサ事業のM&A

京セラのアメリカにある子会社であるKYOCERA AVXは、LSIやトランジスタ、ダイオードなどの電子部品を手掛けるロームからタンタルコンデンサ事業を譲り受けました。

  • 実行時期:2022年8月
  • スキーム:事業譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:タンタルコンデンサ事業の強化

大泉製作所とフェローテックHDの資本提携

NCTサーミスタ、PTCサーミスタ、MNRバリスタなどを製造する電子部品企業の大泉製作所は、半導体製造装置向けの真空シールで世界シェア7割を獲得しているフェローテックHDは資本提携を締結しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の企業価値向上

佐鳥電機によるSM Electronic TechnologiesのM&A

半導体・電子部品・電子機器と組み込みソフトウウェアの販売を手掛ける佐鳥電機は、インドで電子部品の卸売販売事業を手掛けるSM Electronic Technologiesを関連会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡・第三者割当増資
  • 取引価額:非公開
  • 目的:クロスセルを通じた海外事業の拡

トレックス・セミコンダクターによるCirel Systemsの資本提携

小型で低消費の電源ICを中核とするトレックス・セミコンダクターは、インドのアナログ半導体製品開発のファブレスメーカーであるCirel Systemsと資本提携を締結しました。

  • 実行時期:2019年9月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の弱みの補完

アドテックによるシーアールボックスのM&A

AKIBAホールディングスの子会社であるアドテックは、電源やアイソレーションアンプをメインに、カスタム電源およびマイコン応用製品を手掛けるシーアールボックスを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新規顧客の開拓、業務の効率化

日東工業による北川工業のM&A

愛知県に拠点を置き、分電盤などの電気製品を取り扱う日東工業は、工業用プラスチックおよびEMC対策部品を取り扱う北川工業を子会社化しました。

  • 実行時期:2018年11月
  • スキーム:TOB
  • 取引価額:非公開
  • 目的:新製品開発と海外事業の拡大

村田製作所によるResonantのM&A

電子部品メーカー大手の村田製作所は、アメリカテキサス州に本社を置く電子部品メーカーのResonantを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡・吸収合併
  • 取引価額:約336億円
  • 目的:独自技術の取り込み

おわりに

本記事のまとめ

電子部品業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

日本の電子部品企業は長期にわたり日本の産業をリードしてきました。しかし近年はアジア圏の電子部品メーカーによる安価な電子部品や、AIやIoTなどの技術革新によって業界は転換期を迎えています。

自社には無い技術の取り込みを狙ったM&Aの需要はますます高まると見られ、これからは海外市場を狙ったM&Aも増加すると考えられます。

海外の電子部品メーカーが力を付けていく中で、生き残りをかけた戦略の一つとして今後もM&Aが活発に行われることが予想されます。

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