動物病院のM&A・売却・買収事例、業界動向!事業承継のポイント
近年、動物病院業界では、事業承継(後継者不在)や、他院との差別化、他院との連携による相乗効果の創出など、様々な理由で売り手・買い手ともにM&Aの活用を検討する病院が増加しています。
本記事では、そうした動物病院業界の市場動向を解説するとともに、動物病院におけるM&Aのメリットや、M&A・売却・買収事例を、売り手・買い手それぞれの立場からまとめてご紹介します。
動物病院業界の概要・市場動向
動物病院業界とは
動物病院とは、動物がケガや病気をした際に、獣医師が治療を行う機関です。
動物病院は個人経営の割合が多く、最近では獣医師が経営者を兼ねつつ動物看護師とともに病院を運営しているケースが大半を占めています。
動物の中には個人が飼うペットや、畜産のために飼育されている動物など様々な種類が存在しますが、多くの動物病院は前者の「個人が飼うペット」を対象にしています。
動物病院業界の市場動向
犬猫の合計飼育頭数の減少
猫の飼育頭数は増加傾向にある一方で、犬の飼育頭数は大きく減少傾向にあります。犬猫合計の飼育頭数は2013年以降年平均0.8%の割合で減少を続けています。
日本ペットフード協会の統計によると、国内の猫の飼育頭数は2013年の約840万頭から、2021年には約890万頭と約50万頭増加しています。
一方、国内の犬の飼育頭数は2013年の約870万頭から、2021年には約710万頭と約60万頭減少しており、こうした犬の飼育頭数減少が牽引する形で国内の犬猫合計での飼育頭数は減少傾向を見せています。
動物病院数の増加
犬猫の飼育頭数が減少している一方で、動物病院の数は年々増え続けています。
農林水産省の飼育動物診療施設の開設届出状況によると、2013年には全国に11,032院存在していた動物病院が、2021年には12,435院まで増加しています。
減りゆく犬猫の飼育頭数を、増え続ける動物病院が奪い合う構造となっており、国内の動物病院市場における競争はますます激しいものになっています。
ペットの多様化
ペットブームの影響やペットの家族化などを背景に、以前と比べて犬猫に留まらず様々な種類のペットが飼育されるようになりました。
これによって、動物病院にはペットの種類ごとに適した医療知識や技術が求められています。ペットの種類によっては臨床例の少ないケースもあり、獣医師はより豊富な医療知識や治療経験が必要になります。
ペット医療の技術進化
近年、ペット医療は急速な進化を遂げています。
ペットにもMRIやCT検査が行われるようになり、再生医療や予防医療も広まり始めています。こうした高度医療の普及に対応するためには、先端設備の導入が必要です。
こうした設備購入資金を拠出できる動物病院とそうでない動物病院では、提供できる医療サービスの幅に明らかな差異が生じてきています。
動物病院業界のM&A動向
競争環境の激化に対応するために、M&Aを重要な経営戦略と位置付ける動物病院が増えています。
他院との差別化を実現するために、M&Aを契機としたサービス体制の強化・事業エリアの拡大・優秀な獣医師の確保・技術の向上などを目指す事例が多く見られます。
特定の地域に強い動物病院の買収によって対象地域の拡大を目指す事例や、高度な技術・医療設備を持つ動物病院とのM&Aにより事業の強化を図る事例なども多く見られます。
また、東京都の飼育動物診療施設開設者ハンドブックによると、動物病院を経営するオーナー院長の約8割はオーナー引退時に廃業を選択しています。多くは親族内に後継者がおらず、かつ独力では第三者の事業承継先を見つけることが困難なため、廃業が選択されています。
こうした事業承継問題に対する解決策としても、M&Aによる第三者承継の事例が増えています。
動物病院におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
動物病院のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 買い手のもつ技術や設備を活用し、よりよい医療サービスの提供を目指せる
- 買い手の資本力や経営ノウハウを活かしたIT導入や業務効率化を図ることができる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し従業員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
動物病院のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 現在未進出の地域での顧客基盤を獲得できる
- 資格保有者等の優秀な人材を確保できる
- 自院の持たない技術を取り込むことによるシナジーを創出できる
- (異業種の場合)M&Aを契機にスピーディに新規参入できる
動物病院のM&A・売却・買収事例
YCP Lifemateによる山口獣医科病院のM&A
投資事業やコンサルティング事業を手掛けるYCPグループ傘下でライフメイト動物病院グループの運営など手掛けるYCP Lifemateは、神奈川県で40年以上動物病院を経営してきた山口獣医科病院の動物病院事業を譲り受けました。
- 実行時期:2018年5月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:予防医療や高度医療の充実
JVCCによるFORPETSのM&A
動物病院やトリミングサロンの運営を手掛けるJVCCは、東京都で動物病院とペットサロンの運営を行うFORPETSの発行済全株式を取得しました。
- 実行時期:2017年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:動物病院グループ化の推進
エルムスユナイテッド動物病院グループによるタイグリスのM&A
再生医療や先端獣医療、動物iPS細胞の研究、AIを活用した獣医療などを手掛けるエルムスユナイテッド動物病院グループは、動物病院業界向けIoT事業を手掛けるタイグリスの全株式を取得しました。
- 実行時期:2017年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:IoTの活用による獣医療技術の向上、最適な医療の提供
JVCCによるブイアイエスのM&A
動物病院やトリミングサロンの運営を手掛けるJVCCは、大阪府・兵庫県・東京都・埼玉県で7つの動物病院を運営するブイアイエスの発行済全株式を取得しました。
- 実行時期:2017年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:動物病院グループ化の推進
JVCCによるフジフィールドのM&A
動物病院やトリミングサロンの運営を手掛けるJVCCは、ペットサロン併設型動物病院の事業などを手掛けるフジフィールドの発行済全株式を取得しました。
- 実行時期:2017年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:動物病院グループ化の推進
YCP Lifemateによる川村動物病院のM&A
YCPグループ傘下でライフメイト動物病院グループの運営など手掛けるYCP Lifemateは、東京で40年以上経営を行い、最新の医療機器を用いた高度医療を手掛ける川村動物病院の動物病院事業を譲り受けました。
- 実行時期:2014年
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ライフメイト動物病院グループの運営強化
おわりに
本記事のまとめ
動物病院のM&A・売却・買収事例や業界動向についてご紹介しました。
動物病院業界は、他院との差別化の実現や後継者不在問題を背景に、買い手・売り手ともに積極的にM&Aを検討する病院が増えてきている業界です。
今後、市場の競争環境はますます厳しいものになっていくと予想され、動物病院業界にとってM&Aという経営戦略の重要性はますます高まっていきます。
売り手病院のオーナー様は、まずはM&Aの専門家などに相談し、自院の価値・相場を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
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