システム開発業界の業界動向、M&A・売却・買収事例30選

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システム開発業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。システム開発業界は後継者不足や加速するクラウド化を背景に、業界全体として転換期を迎えています。

本記事では、そうしたシステム開発業界の市場動向を解説するとともに、システム開発業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。

目次

システム開発業界の概要・市場動向

システム開発業界とは

システム開発業界とは、企業で行われる業務をシステム化するための設計、プログラミング、テストなどを手掛ける業界のことを指します。システム開発の大手企業はIBM、富士通、NECなどが挙げられます。

システム開発会社は、まず顧客からシステム開発の依頼を受けシステムの内容、納期、予算を検討します。顧客がその提案を受け入れたら、システムの機能設計やプログラミング、運用、サポートを行います。

システム開発会社は大きく大手システム開発会社、SIer、中小システム開発会社に分けられます。

大手システム開発会社は大規模なシステム開発を行い、メーカー系とソフトウェア系が存在します。SIerはシステム開発のコンサルティングから開発・運営まで様々な仕事を請け負う企業を指します。中小システム開発会社は、大手SIerから仕事を受注しているケースが多いです。

システム開発業界の市場動向

多重下請け構造

システム開発業界には大手SIerを頂点とした多重下請け構造が存在します。

多重下請け構造とは、発注企業から受注を受けた元請け企業が、二次受け企業さらに三次受け企業に案件を流す構造のことです。

システム開発業界は参入障壁が低く中小企業が多く存在します。中小企業は多重下請け構造の下位に位置することが多く、下位であるほど途中でマージンが抜かれ利益が少なくなってしまいます。

また、多重下請け構造には責任の所在が不明瞭などの問題も指摘されています。

継続的な成長が見込まれる市場

経済産業省「特定サービス産業動態調査統計調査」によると、2021年のソフトウェア開発、プログラム作成の売上高は前年比18.2%増の11兆255億円でした。大幅増加の原因としては、企業のDX対応やデジタルデータを活用した業務の効率化が挙げられ、在宅勤務に伴うビジネスチャットやオンライン会議システムの導入なども要因の一つです。

企業のDX対応やセキュリティ分野での需要は今後も続くと見られ、システム開発業界はさらに成長していくと考えられます。

深刻な人材不足

近年システム開発業界では人材不足が深刻化しています。システム開発の需要が高まっている中、多くの中小企業は人材不足のため、システム開発の依頼があっても受けられないという状況です。

エンジニアは企業のネームバリューを意識する傾向が強まっており、会社の知名度不足から中小企業は新しいエンジニアの採用が難しくなっています。

また、システム開発のエンジニアは多様な技術と知識が求められるため、育成にも時間がかかっています。

システム開発業界のM&A動向

システム開発業界では、人材不足の解消を目的としたM&Aが多数行われています。システム開発業界は今後ますます成長すると見られ、それに伴って人材不足はさらに深刻化すると思われます。

こうした問題を解決するために、M&Aによって買収した企業のエンジニアを引き継ぎ、人材問題の解決を図るケースが多いです。

システム開発業界の成長を見込んで、新たに参入する企業が既存企業を買収するケースも存在します。M&Aを行うことで新規参入企業は既存企業のスキル・ノウハウ・人材などを引き継ぎ、コストを削減することができます。

また、業務の内製化を目的としたM&Aも行われています。業務を内製化できれば、下請け企業に委託するよりもスピーディーかつ低価格で実現することができます。さらに新しい機能の追加や障害への対応も迅速に行うことができるようになるため、大きなメリットが存在します。

システム開発業界におけるM&Aのメリット

売り手のメリット

システム開発業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 受託開発業から脱却し、自社サービスを開発できる
  • エンジニア育成の高速化、従業員の待遇改善を図れる
  • 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
  • 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
  • M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる

買い手のメリット

システム開発業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。

  • 売り手の抱える人材を獲得し、エンジニア不足を解消できる
  • 売り手企業のノウハウや人材を引き継ぎ、低コストで新規参入できる
  • システム開発業務を内製化し、コスト削減・対応の迅速化を図ることができる

システム開発業界のM&A・売却・買収事例

RoadによるシグニティのM&A

人事コンサルティングを手掛けるRoadは、プッシュ通知サービスを手掛けるシグニティを子会社しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:両社の技術・ノウハウの活用

コムチュアによるソフトウエアクリエイションのM&A

ソフトウェア開発を手掛けるコムチュアは、富士通を主要顧客とするソフトウエアクリエイションを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年3月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:5億480万円
  • 目的:人材の獲得と事業の拡大

フーバーブレインによるGHインテグレーションのM&A

サイバーセキュリティ対策などを手掛けるフーバーブレインは、受託開発事業を手掛けるGHインテグレーションを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年3月
  • スキーム:株式譲渡と株式交換
  • 取引価額:2億6,640万円
  • 目的:人材の獲得と事業の拡大

Success HoldersによつP&PのM&A

テクノロジー事業を手掛けるSuccess Holdersは、SAP ERP導入コンサルティングを手掛けるP&Pを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億5,900万円
  • 目的:成長戦略の推進

パワーソリューションズによるエグゼクションのM&A

金融機関向けにシステム開発を行うパワーソリューションズは、SES事業を手掛けるエグゼクションを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億1,500万円
  • 目的:サービスの価値向上と事業の拡大

ベーシックキャピタルマネジメントによる中央システムのM&A

中小企業を対象とする投資ファンドを運営するベーシックキャピタルマネジメントは、業務アプリケーション開発などを手掛ける中央システムを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ファンドの経営知見を活かした事業拡大

GMOペイメントゲートウェイによるビュフォートのM&A

クレジットカード決済サービスの提供を行うGMOペイメントゲートウェイは、決済領域のシステム開発を行うビュフォートを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:システム開発力の強化

大東建託パートナーズによるセイルボートのM&A

総合的なビル運営管理を行っている大東建託パートナーズは、賃貸業務をデジタルサポートする「キマRoom!」を提供するセイルボートを子会社化しました。

  • 実行時期:2023年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:デジタルプラットフォームを通じた新たな価値の提供

ブリヂストンによるアセントロボティクスのM&A

タイヤ事業で世界首位を誇るブリヂストンは、産業用ロボット向けのAIソフトウェアの研究・開発、販売を行っているアセントロボティクスと資本業務提携契約を締結しました。

  • 実行時期:2023年2月
  • スキーム:資本業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ピースピッキングロボットシステムの開発と実用化

ダブルスタンダードによるアスタースのM&A

企業向けビッグデータの生成・提供を行っているダブルスタンダードは、WEB関連のシステム開発を行うアスタースを子会化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの成長

SYSホールディングスによるアシックのM&A

総合システム会社のSYSホールディングスは、制御系・業務系システムの設計・開発などの事業を展開しているアシックを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループ事業の拡充

SYSホールディングスによるネットパーク21のM&A

総合システム会社のSYSホールディングスは、ICTサポートや情報システム開発、アウトソーシング等の事業を手掛けるネットパーク21を子会社化しました。

  • 実行時期:2022年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グループの事業を拡充とグループの収益力向上や競争力強化

アイリッジによるプラグインのM&A

O2Oソリューションの提供を中心とするアイリッジは、業務システム開発を行うプラグインを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:開発体制の一層の強化を図り、OMO領域のさらなる成長

ダイコク電機によるグローバルワイズのM&A

パチンコ産業向け電子機器メーカーのダイコク電機は、クラウドサービスなどのシステム開発を行うグローバルワイズを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:既存サービスのクラウド化とグループの中長期にわたる持続的な成長とさらなる企業価値の向上

バリストライドグループによるクロノスのM&A

ECサイト構築運営など幅広い事業を展開するバリストライドグループは、ITエンジニア向け育成トレーニングなどの事業を行っているクロノスを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:顧客基盤の拡大

ビーウィズによるドゥアイネットのM&A

デジタル技術を活用したコンタクトセンター・BPOサービスの提供を行うビーウィズは、アプリ・ソフトウェアなどのシステム開発等を行うドゥアイネットを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:映像音声共有化システム「VSCore」の高度化と事業の加速

ニーズウェルによるコムソフトのM&A

独立系のシステムインテグレータのニーズウェルは、生命保険・銀行・証券系の金融系システム開発に強みを持つコムソフトを完全子会社化しました。

  • 実行時期:2022年10月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:「金融系システム開発力」のさらなる強化

システムシェアードによるアプリのM&A

システム開発事業、およびクラウド事業を展開しているシステムシェアードは、大手空調機器メーカー向けの組込み開発を主に行うアプリを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:ンジニアの相互交流を通じた人材育成・採用、新規事業の推進

デロイトトーマツグループによるリップルマークのM&A

監査・保証業務、コンサルティングサービス等を提供しているデロイトトーマツグループは、ERP導入やCRM導入などのシステム構築を行っているリップルマークを吸収分割しました。

  • 実行時期:2022年7月
  • スキーム:吸収分割
  • 取引価額:非公開
  • 目的:クライアントのDX推進を支援する体制の抜本的な強化

テモナによるサックルのM&A

BtoC事業者向けクラウド型システム「サブスクストア」を提供するテモナは、システム受託開発やSES事業を行うサックルを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:3億円
  • 目的:グループとしての開発と力の強化サブスクリプションビジネスを支援するソリューションの開発

バルテスによるミントのM&A

ソフトウェアテストサービス事業をメインとした品質向上支援サービスを提供するバルテスは、大手金融機関のシステム開発を手掛けるミントを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年4月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:金融系システムの品質向上支援、品質コンサルティングサービスにおいてシナジー効果創出と、グループにおける事業収益増強、経営基盤の強化

スカラによるエッグのM&A

「医療と健康」「農業と食」「教育」「地方創生」の4領域にIT/AI/IoT技術を有するスカラは、ソフトウェア開発会社のエッグを子会社化しました。

  • 実行時期:2022年2月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:10億600万円
  • 目的:事業成長

ケイズグループによるアンフォルムのM&A

鍼灸整骨院事業を中核にウェルネス分野で多角化しているケイズグループは、 銀行系の業務アプリケーション開発を手掛けるアンフォルムを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年12月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:SES事業の継続と、全体としてのさらなる企業価値の最大化

ファイズホールディングスによる日本システムクリエイトのM&A

ECソリューションを包括的に提供する企業グループのファイズホールディングスは、コンピュータシステムの開発などを行う日本システムクリエイトを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:1億7800万円
  • 目的:グループのDXを推進と、グループの経営理念の実現

フォトロンによるISLWAREのM&A

電子応用システムの開発、製造、販売、輸出入事業を展開するフォトロンは、中小規模のシステムニーズに対するソリューションを提供するISLWAREを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:優秀なエンジニアの確保と育成

インバウンドテックによるOmniGridのM&A

マルチリンガルCRM事業、セールスアウトソーシング事業を展開するインバウンドテックは、音声予約システムおよび音声通話システムの開発・運営を行うOmniGridを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年11月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:約9億4450万円
  • 目的:クラウドをベースとした安定収益と音声技術の開発ノウハウの取得

ツクイホールディングスとNTEPの業務提携

​デイサービス事業、住まい事業、在宅事業等の事業を手掛けるツクイホールディングスは、医療用システムの開発を行う​大学発ベンチャーのINTEPと提携を開始しました。 ​

  • 実行時期:2021年8月
  • スキーム:業務提携
  • 取引価額:非公開
  • 目的:未来型介護の実現と、介護業界におけるDXの促進

JMDCによるアイシーエムのM&A

医療統計データサービス事業を展開しているJMDCは、アイシーエムは、医療システム開発および販売を行うアイシーエムをグループ化しました。

  • 実行時期:2021年8月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:医療提供者向けサービスをより一層強化し拡充と、ヘルスデータの集積と利活用の加速

ODKソリューションズによるECSのM&A

情報処理等を手掛けるアウトソーシングサービスODKソリューションズは、システム開発および保守管理、技術者派遣事業を行うECSを子会社化しました。

  • 実行時期: 2021年7月16日
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:中四国地方への事業拡大と、新たなソリューション提案

freeeによるLikha-iT IncのM&A

統合型クラウドERP、オープンプラットフォーム等の事業を展開しているfreeeは、フィリピンのシステム開発会社Likha-iT Incを子会社化しました。

  • 実行時期:2021年7月
  • スキーム:株式譲渡
  • 取引価額:非公開
  • 目的:グローバルな開発拠点の確保と、開発力の基盤となる人材確保

おわりに

本記事のまとめ

システム開発業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。

システム開発業界は今後ますます成長していくと見られている一方で、需要の増加に伴う人材不足の深刻化や、業界の多重下請け構造が問題となっています。

これらの問題の解決策としてM&Aを活用する事業者が増加しており、今後この傾向はますます強まっていくと見られています。

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