足場工事業界のM&A・売却・買収事例、業界動向
足場工事業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。足場工事業界は人材不足によって足場工事の需要拡大に対応しきれていない現状がありますが、M&Aによって解決されることが期待されています。
本記事では、そうした足場工事業界の市場動向を解説するとともに、足場工事業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
足場工事業界の概要・市場動向
足場工事業界とは
足場工事業界とは、建築物の塗装の際、金属でできた足場を組んで仮設足場を設営する業界をいいます。仮設足場を扱う会社を仮設足場工事・足場施工会社と呼びます。
仮設足場会社は足場設置工事を行い、足場施工会社は工事の見積もり、資材の手配、工程表の作成、現場管理などのマネジメントを担います。
塗装は高所での作業であるため、足場の設置には作業者の安全面に配慮することが最優先となります。そのほか、周辺住宅へ塗装が飛ばないようにするための配慮や、建設物の倒壊を防止するための作業も足場工事会社が行っています。
足場工事業界の市場動向
堅調な建設需要
足場工事は建築において不可欠な工程であるため、足場工事業界の市場規模は建設業界全体の市場規模と高い相関関係にあります。
かつてはバブル崩壊やリーマンショックを背景として建築業界全体が縮小傾向にありましたが、東京五輪開催が決定された2013年以降は市場規模が拡大しました。
現在はコロナウイルスの影響により一時的に市場成長の鈍化が見られますが、今後は大阪万博やリニア新幹線の開通プロジェクトの影響を受けて需要拡大が見込まれます。
足場工事の先入観に起因する人材不足
建設業界市場の成長に反して建築業界の就業者数は緩やかに減少しています。
総務省統計局によると、建築業の就業者数は2011年以降500万人前後を維持していましたが、2018年以降は就業者数が徐々に減少しています。
人材不足の原因には、建設業務全体に対して長時間でハードな肉体労働が連想されることが挙げられます。この先入観を払拭するためにも、業界全体で働き方改革を推進したり、労働環境を整備することが求められています。
災害復興に伴う建設需要
足場工事を含めた建築業界の市場拡大は東日本大震災の復興事業による需要増加も背景にあります。
日本では地震、水害などの自然災害が頻繁に発生するため、今後も継続的な復興需要が見込まれます。災害への対策として実施される耐震関連の工事や老朽化した建物の建て替え工事も、建築業界の規模拡大に寄与しています。
足場工事業界のM&A動向
足場工事業界では大手企業による中小企業の買収など業界再編の動きが加速しています。
M&Aの主な目的としては人材不足の解消、事業規模の拡大、新規参入が挙げられます。特に、後継者や若い労働力が不足していることが業界全体の課題であるため、M&Aを通じて人材補充を行う企業が増加しています。
また、足場工事業界には関連事業・周辺事業を含めて事業展開を行う会社が多いため、事業ごとの強みを生かしたシナジー創出を目指し、複数事業に跨るM&Aが加速しています。
引き続き成長する市場規模に対応するために、今後も足場工事業界のM&Aは活発化すると予測されます。
足場工事業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
足場工事業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 保有する技術や人材を買い手に承継できる
- 設備、資材などの廃棄コストを削減できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
足場工事業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の人材を活用することで増加する需要に対応できる
- 売り手の保有する営業チャネルを活用できる
- 隣接事業領域を持つ売り手を買収することで新たな顧客ニーズに対応できる
足場工事業界のM&A・売却・買収事例
コンドーテックによるフコクのM&A
金物産業資材・鉄鋼資材・電設資材の製造・仕入れ・販売業を手掛けるコンドーテックは、仮設機材のレンタル、リース、販売・仮設工事全般事業などを手掛けるフコクの全株式を取得しました。
- 実行時期:2020年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:維持修繕分野の事業基盤拡充
コンドーテックによる東海ステップのM&A
金物産業資材・鉄鋼資材・電設資材の製造・仕入れ・販売を手掛けるコンドーテックは、東海地方から関東地方において仮設足場工事を手掛ける東海ステップの全株式を取得しました。
- 実行時期:2020年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:同業や関連業種での協業推進
ダイサンによるMiradorグループのM&A
足場の施工サービスや建築機材の施工及び販売などを手掛けるダイサンは、シンガポールを中心に事業展開し、足場工事、電気工事、絶縁体工事などを手掛けるMiradorグループの全株式を取得しました。
- 実行時期:2019年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:17億4,500万円
- 目的:海外展開の推進
杉孝グループホールディングスによるナカキンリースのM&A
足場・仮設機材のレンタル事業や足場設計などを手掛ける杉孝グループホールディングスは、首都圏西部を中心にレンタル事業を手掛けるナカキンリースの全株式を取得しました。
- 実行時期:2019年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:M&Aを契機とした更なる事業拡大
キムラによるテクノ興国のM&A
仮設足場工事に関するレンタル事業を手掛けるキムラは、住宅用足場の施工サービスや仮設材のリース業務などを手掛けるテクノ興国の全株式を取得しました。
- 実行時期:2018年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:十勝地区でのシェア獲得
おわりに
本記事のまとめ
足場工事業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
足場工事を含む建設市場では、今後も大規模な開発や災害復興に伴う需要拡大が見込まれています。一方で、業界全体として後継者不在や若い労働力の不足を課題として抱えている業界です。
今後は、こうした拡大する需要に対応するために人材確保を目的としたM&Aが活発化していくと考えられます。
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