ゲーム業界の業界動向、M&A・売却・買収事例29選
ゲーム業界は近年M&Aが活発な業界の一つです。ゲーム業界はコロナ禍において成長している市場である一方で、トレンドの移り変わりが激しく、主要企業も多いため業界内の競争が激化しています。
本記事では、そうしたゲーム業界の市場動向を解説するとともに、ゲーム業界におけるM&Aのメリット、今後のM&A動向、買収事例をまとめてご紹介します。
ゲーム業界の概要・市場動向
ゲーム業界とは
ゲーム業界とはゲームの開発・製造・販売を行う業界を指します。
ゲーム会社は「ゲーム機の製造会社」「ゲームソフトの開発会社」「スマホゲームの開発会社」「オンラインゲームの開発会社」の4つに分けることができます。
ゲーム業界の特徴として年々開発体制が大型化しています。ファミコンの時代には数名程度のチームで1つのゲームを開発していましたが、現在は数十~数百人が1つのゲームに携わっています。
また、スマホゲームの登場により、ビジネスモデルが大きく変化しました。これまでのゲーム専用機向けのゲームは売り切り型でしたが、スマホゲームは課金により収益を得られるため継続収入型になってきています。
ゲーム業界の市場動向
ゲーム人口の増加
コロナ禍により自宅で過ごす時間が長くなったため、ゲーム人口が増えたと言われています。
角川アスキー総合研究所「ファミ通ゲーム白書2022」によると、国内のゲーム人口は5,535万人に上ると言われ、初めて5,000万人を突破した前年度からさらに増加する形となりました。
特にアプリゲームユーザーは4,231万人いると見られ、市場規模は約1兆3,000億円に上ると言われています。ゲームの中でも特別なハードを必要とせず、気軽にプレイできるアプリゲームはゲーム市場を牽引する存在になっています。
スキルを持った人材の不足
他の多くの業界と同じように、ゲーム業界でも人材不足が起きています。
ゲームは一度リリースして終わりではなく、定期的なアップデートやイベントの企画が求められており、そのため業務が膨大になることが多いです。その結果として、人手不足が起きていると言われています。
また、ゲーム業界は勢力図の変化が激しく、技術革新の波を受けやすいので、スキルを身につけた人材が転職や独立に踏み切るケースも多く、慢性的に中堅不足の業界であるとも言われています。
eスポーツの台頭
近年eスポーツの台頭がゲーム業界の追い風となっています。
eスポーツとは「エレクトロニックスポーツ」の略称で、電子機器を用いて行う娯楽・競技・スポーツ全般を指します。そのため家庭用ゲームのみならず、スマホゲームなどもeスポーツに含まれます。
eスポーツの市場は右肩上がりに伸びており、一般社団法人eスポーツ連合「日本eスポーツ白書」によると、2021年の市場規模は約87憶円となっています。現在多くの大会が開催されており、今後も市場は大きく伸びると期待されています。
業界全体でこの動きをさらに盛り上げることができるかが、今後の業界動向のカギとなっています。
ゲーム業界のM&A動向
ゲーム業界ではプラットフォームの開発会社が、コンテンツ拡充のためにソーシャルゲームの開発会社をM&Aするケースが増えています。
また、国内の人口は減少していますが、海外の人口は急増しているため、国内で普及したゲームソフトを海外へ展開するために海外の企業をM&Aするケースもあります。
ゲーム業界は技術の発展によりトレンドが目まぐるしく変化します。これらの流れに乗り遅れると大きな需要を逃すことに繋がるため、M&Aを通して他者のノウハウや技術を取り入れ、市場に対応しようとする動きも見られます。
ゲーム業界におけるM&Aのメリット
売り手のメリット
ゲーム業界のM&A活用において、売り手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売却に伴って創業者利益を獲得することができる
- 開発に要した投資資金を、売却により短期間で回収できる
- 後継者が不在の場合、廃業せず事業を継続し社員の雇用を守ることができる
- 後継者問題を解決し、株式譲渡による譲渡収入とともに経営から退くことができる
- M&Aを契機に代表者による借入金の個人保証や担保を解消できる
買い手のメリット
ゲーム業界のM&A活用において、買い手側のメリットは以下が挙げられます。
- 売り手の抱える優秀な人材を獲得し人手不足を解消できる
- M&Aによって自社単独での事業拡大の投資リスクを低減できる
- 異業種からの参入の場合、ゲーム業界への新規参入を実現できる
- 売り手企業の保有する人気タイトルを獲得することができる
ゲーム業界のM&A・売却・買収事例
任天堂によるネクスト・レベル・ゲームズのM&A
日本の大手ゲーム企業である任天堂は、カナダに拠点を置き、「ルイージマンションシリーズ」などを手掛けるネクスト・レベル・ゲームズを子会社化しました。
- 実行時期:2021年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ソフトウェア開発のスピード化、クオリティの向上
ソニー・インタラクティブエンタテイメントによるHaven Entertaiments Studio Inc.のM&A
プレイステーションなどのゲーム機器を手掛けるソニー・インタラクティブエンタテイメントは、カナダに拠点を置くゲーム開発企業であるHaven Entertaiments Studio Inc.を買収しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ラインナップの拡充
ブシロードとSHOWROOMの資本業務提携
アニメ・ゲーム・音楽などをミックス展開するブシロードは、ライブ配信サービスを手掛けるSHOWROOMと資本業務提携を実施しました。
- 実行時期:2022年3月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:新たなデジタル領域のビジネス創出
サイバーエージェントによるBABEL LABELのM&A
メディア事業やゲーム事業を展開するサイバーエージェントは、東京に拠点を置く映像レーベルであるBABEL LABELを子会社化しました。
- 実行時期:2022年1月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ハイクオリティな映像コンテンツの制作
コムシードによるアイピープログレスのM&A
モバイルゲーム・ソーシャルゲームの制作を手掛けるコムシードは、ゲームソフトの企画・制作・販売を手掛けるアイピープログレスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:3,000万円
- 目的:両社経営資源の共有によるシナジーの獲得
テンセントによるWake Up InteractiveのM&A
中国に拠点を置くインターネット企業のテンセントは、PCやスマートフォン向けのゲームを手掛けるWake Up Interactiveを子会社化しました。
- 実行時期:2021年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:50億円超
- 目的:海外市場への進出
ブロッコリーによるLANTERN ROOMSのM&A
アニメ・音楽・ゲームなどの企画・販売を手掛けるブロッコリーは、家庭向け・スマートフォン向けのゲーム制作を手掛けるLANTERN ROOMSを子会社化しました。
- 実行時期:2019年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:両社経営資源の共有によるシナジーの獲得
テンダによる熱中日和のM&A
Webシステム・モバイルサイト開発等を行っているテンダは、ロールプレイングゲームの開発企画力に強みを持ちコンピュータソフト・ゲームソフトの受託開発を行う熱中日和を子会社化しました。
- 実行時期:2022年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:オンラインゲーム開発運用におけるノウハウと、コンシューマー事業のビジネスモデル強化
エクストリームによるエス・エー・エスのM&A
ゲーム・デジタルコンテンツなどの企画・開発業務を行っているエクストリームは、エンターテイメントおよびシステムソリューションの2事業を展開する受託開発会社のエス・エー・エスを子会社化しました。
- 実行時期:2022年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:収益機会の拡大、人的開発リソースの補完、アミューズメント施設向けゲーム筐体市場への参入による企業価値向上
ケイブによるでらゲーのM&A
オンラインエンターテイメント事業を展開しているケイブは、「モンスターストライク」などゲームの企画・開発・運営を行っているでらゲーを子会社化しました。
- 実行時期:2022年9月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:約50億2,300万円
- 目的:スマートフォンゲーム開発運営におけるシナジー効果の発揮
エクストリームによるDragami GamesのM&A
ゲーム・デジタルコンテンツなどの企画・開発を中心に事業を展開するエクストリームは、ゲームソフトの企画・開発・販売を行うDragami Gamesを子会社化しました。
- 実行時期:2022年6月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:サービスラインナップの拡充を実現と、安定的な収益の確保
サイバーステップによるネッチのM&A
ネットワーク・エンターテイメントソフトウェアの開発等を手掛けるサイバーステップは、インターネットゲーム等配信事業を行っているネッチを子会社化しました。
- 実行時期:2022年04月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:より優れた運営体制構築と、顧客基盤強化による収益機会の拡大
任天堂によるSRDのM&A
家庭用レジャー機器の製造・販売事業を展開している任天堂は、ゲームソフトウェアおよびWebシステムの受託開発を行っているSRDを子会社化しました。
- 実行時期:2022年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:経営基盤を強化によるソフトウェア開発リソースを安定と、開発効率の向上
URFEETによるNETSURYOのM&A
様々なシステム開発中心とした事業展開を行うURFEETは、ゲーム好きなユーザーコミュニティプラットフォームを運営するNETSURYOはより事業譲渡を受けました。
- 実行時期: 2022年02月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:良いサービスへ発展させるため、開発・運営体制の強化
UUUMによるSamurai工房のM&A
クリエイターサポート事業等を行うUUUMは、プロゲームチーム「Crazy Raccoon」を運営するSamurai工房へ出資し、資本業務提携契約をしました。
- 実行時期:2021年12月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:クリエイターおよび選手の価値向上
マノア・リノによるサンバードのM&A
システムエンジニアリング事業や受託開発サービス事業等を展開しているマノア・リノは、ゲームグラフィック制作のサンバードを子会社化しました。
- 実行時期:2021年08月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:顧客層の拡充
SHIFTによるDICOのM&A
ソフトウェアの品質保証、テスト事業を展開しているSHIFTは、ローカライズ事業およびゲームの開発事業を展開するDICOを子会社化しました。
- 実行時期:2021年7月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:、開発プロジェクト全体を通したシームレスなオペレーションフローの実現
ブシロードによるフロントウイングラボのM&A
TCG部門やメディア部門などのIPの企画・開発・プロデュース事業を展開しているブシロードは、アニメーションやコンピュータソフトウェアの企画/販売等を行うフロントウイングラボを子会社化しました。
- 実行時期:2021年4月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:IPディベロッパー戦略の良い補完関係による企業成長
オルトプラスによるアクセルマークのM&A
ソーシャルゲームの新規開発や運営受託等に注力しているオルトプラスは、オンラインゲームやインターネット広告の開発を展開しているアクセルマークのゲーム事業の全部又は一部を事業譲渡を受託しました。
- 実行時期:2020年9月
- スキーム:事業譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ロックチェーンゲームの開発およびパブリッシング等によるさらなるシナジー創出
CRI・ミドルウェアによるアールフォース・エンターテイメントのM&A
音声・映像関連のデジタル技術を軸にミドルウェア製品を幅広く展開しているCRI・ミドルウェアは、数多くのオリジナルゲーム、有名IPタイトルの開発を行うアールフォース・エンターテイメントを子会社化しました。
- 実行時期:2020月5月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:生産性の向上、開発管理ノウハウの融合による付加価値の高い製品・サービスの提供と新しい次世代コンテンツプラットフォームの構築
オルトプラスによるモブキャストゲームスのM&A
ソーシャルゲームの企画・開発・運営を主たる事業としているオルトプラスは、 ゲーム事業を展開し「mobcast」の運営を行っているモブキャストゲームスを子会社化しました。
- 実行時期:2020年3月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:ゲームポートフォリオの強化と収益力を拡大
テンダによるアールフォース・エンターテインメントのM&A
ソーシャルゲーム・ソーシャルアプリ開発などを手掛けるテンダは、ゲーム用ソフトウェアの企画、制作、販売、運営を行っているアールフォース・エンターテインメントを子会社化しました。
- 実行時期:2023年2月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:コンシューマー事業の強化
カヤックによるPapillonのM&A
ゲーム制作・広告企画などを行っているカヤックは、eスポーツ大会開催ツールを東南アジアに向けて展開しているPapillonを子会社化しました。
- 実行時期:2022年11月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:eスポーツ事業の東南アジア展開に踏み出すことによるグループ全体としての競争力強化と企業価値向上
フューチャーインベストメントによるネイロのM&A
有価証券の保有、運用、投資業務を行っているフューチャーインベストメントは、ゲームソフトウェア開発事業や音楽制作事業等を行っているネイロを子会社化しました。
- 実行時期:2022年10月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:メタバース業界への新たな付加価値提供と基盤事業の強化
カヤックによるeSPのM&A
ゲーム制作・広告企画などを行っているカヤックは、eスポーツスクール事業を行っているeSPを子会社化しました。
- 実行時期:2022年8月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:5億6,000万円
- 目的:事業領域の拡充
BANDAI NAMCO Entertainment Europe S.A.S.によるReflector Entertainment Ltd.のM&A
家庭用ゲームとネットワークコンテンツの企画・開発・配信を行っているBANDAI NAMCO Entertainment Europe S.A.S.は、コンテンツの企画や家庭用ゲームなどの開発を行っているReflector Entertainment Ltd.を子会社化しました。
- 実行時期:2020年12月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:欧米における家庭用ゲームの日本発・現地発タイトルのポートフォリオ構築
ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるFiresprite LimitedのM&A
「プレイステーション」や「toio」に関わる販売事業を展開するソニー・インタラクティブエンタテインメントは、最先端のハードウェア向けに完成度の高い作品を開発するFiresprite Limitedを買収しました。
- 実行時期: 2021年09月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:非公開
- 目的:これまで提供していないジャンルにおけるSIEの独占タイトルの強化
ドリコムによるMADORCA Inc.のM&A
ゲーム事業およびメディア事業を展開しているドリコムは、アジア市場をターゲットとしたモバイルゲーム開発会社MADORCA Inc.と資本業務提携をしました。
- 実行時期:2021年10月
- スキーム:資本業務提携
- 取引価額:非公開
- 目的:モバイルゲームの日本国内外でのさらなる展開
マイクロソフトによるActivision BlizzardのM&A
ソフトウェア開発、販売の大手IT企業マイクロソフトは、米ゲーム会社のActivision Blizzardを買収しました。
- 実行時期:2022年01月
- スキーム:株式譲渡
- 取引価額:687億ドル
- 目的:ゲームビジネスの成長を加速と、メタバースの構成要素の提供
おわりに
本記事のまとめ
ゲーム業界の市場動向、M&A動向、買収事例についてご紹介しました。
コロナ禍における巣ごもり需要を契機にゲームの市場規模はますます大きくなっています。特に、誰でも気軽に遊べるアプリゲームが人気を集めており、近年ではeスポーツの台頭もゲーム人気を後押ししています。
一方で、ゲーム業界は技術の進歩によりトレンドが頻繁に変化するため、常に新しいソフトの開発やアップデートが求められます。そのため慢性的な人手不足に陥っており、その解決策としてM&Aが行う企業が増えています。
また、海外のゲームユーザーを狙った海外企業とのM&Aや、新しい技術やノウハウを獲得するためのM&Aも禁煙では多く見られています。
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